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かぶとやま交響楽団 第30回記念定期演奏会

いつもながらの尖(とん)がった音楽を存分に戻る


かぶとやま交響楽団 第30回記念定期演奏会
2004年5月16日(日) 14:00 伊丹アイフォニックホール

モーツァルト: 交響曲第32番 ト長調 KV318
レーガー: モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ イ長調 作品132
ドヴォルザーク: チェロ協奏曲 ロ短調 作品104

(アンコール)Frank Bridge (林 裕 編曲):「Scherzetto」

独奏: 林 裕(vc)

指揮: 中村晃之


簡単に言うなら、大変な熱演・・とだけ言っておけばいいのでしょうが、いつもながらの尖(とん)がった音楽・演奏を存分に楽しませていただきました。
500席ほどのアイフォニックホールで聴くドヴォルザークのチェロ協奏曲っていいですね。
大きなホールで聞くと、どこか散漫な感じがしてしまうのですけれど、奏者の表情と響きが手に取るように分かります。 それにソリストの林さん、艶やかでハリもありました。 元大阪フィルの首席奏者だそうですけれど、演奏に華も感じさせます。 オケマンあがりの方は、テクニックは確かでも、どことなく地味な感じがするように思っています。 でも林さん、表情は豊かだし、甘ったるくもなく、存分に弾ききり、この曲を堪能させてもらいました。
また、かぶ響はいつも以上に気合入ってましたね。 管楽器のソロも巧かったけど、縦ノリのリズムでとにかく鳴らす鳴らす。 ビシバシとこの曲を進めてました。 小さいホールですから、林さんのソロも埋もれることなく、よく届きますので問題ありません。 ただあまりに元気のいいオケの音楽が続いたので、第3楽章では聴き疲れてしまったようでした。 全体的に音量を下げて、強弱の幅を持たせ、歌わせるべきところはクサいほどにたっぷりと歌わせたら・・・なんてふっと思いましたけど、このオケの特質からすると、こんな臭みは似合わないですね。 これでいいのだ、って思い直しました。
そんなオケの気合は、レーガーのような緻密な音楽によくマッチしていたと思います。 分奏(ヴァイオリンのインとアウトでも分奏するのですね)もバッチリ決めて、終始集中力の途切れない変奏曲とフーガはとても見事な演奏でした。 このオケの特質を充分に生かした音楽だったのではないでしょうか。
またオケを絞り込んで進めたモーツァルトの交響曲第32番。 こちらも個人的にはとても面白いものでした。 モーツァルトの音楽って、ロココ風の甘さを削ぎ落とし、ストイックに演奏するのも結構好きなんです。 現代的なスタイルにきちんと耐えるモーツァルトを楽しませていただきました。 


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

雨の中、慌てて家を飛び出しました。 それで疲れたんでしょうか、途中の電車の中では爆睡してまして、目覚めたら乗継ぎ駅でした。 また大慌てで電車を飛び出し、ドタバタやってようやくJR伊丹駅に到着。 極めつけは、以前この駅に一家で来た時、捨て猫が居たよなぁ〜なんて思い出して余所見をしながら歩いていたら・・・ゴツン! 柱に思いっきり顔をぶつけてしまいました。 右目の上、眉毛の辺りを直撃。 しばらく右目が見え難いほど痛かった。 ん!もう・・・でもこの怒りをぶつけるところがありません。 とほほ・・・な気持ちのまま20分前にホールに到着しました。

目の上には小さなたんこぶが出来ているみたいです。 ちょっとまだ痛いけど、音楽を聴くのにはまったく支障はありません。 いつもながら左ブロックの上のほう(K-11)に座りました。 席に落ち着いたらプログラムを読んで予習です。 以前はCDを聴き込むような予習をしていましたけど(持っていない曲の時には友人に借りたりもしましたけど)、最近はもっぱら演奏開始前の予習のみ。 時間が取れないのが大きな理由ですけど、変な比較をせずに直接そのオケが演奏する音楽に接したいと思っていることもあります。 もちろんケース・バイ・ケースですけれどね。 しかし、いつもながらこのオケのパンフレットは詳しい。 毎回いい勉強をさせていただいています。

さてホールは8割位埋まったでしょうか。 定刻となり、モーツァルトの交響曲第32番。 オケは、8・6・5・3・2(vn1,vn2,va,vc,cbの順)の小振りな編成でした。
先に予習しないと書きましたけれど、実は、この曲だけはちょっと前にクリップス/ACOのCDで聴いていました。 しかし、そんなことも忘れてしまうほど印象の違う演奏でした。 引き締まっていて、強靭さも感じたモーツァルト。 鋭角的な演奏は、とても現代的なんですけど、神経質に陥らずに自信に満ちていました。 モーツァルトの音楽って、ロココ風の甘さを削ぎ落とし、ストイックに演奏するのも結構好きなんです。 そんな現代的なスタイルにきちんと耐えるモーツァルトを楽しませていただきました。 
第1楽章の冒頭から、引き締まったリズムが躍動的。 しかもしなやかさも失っていませんでした。 第2楽章のアンダンテも基本的な演奏スタイルは同じ。 引き締まった演奏で集中力が途切れません。 フルートやオーボエが清潔な響きを添えていたのが印象に残りました。 第3楽章は熱い音楽となってフィナーレへとなだれ込みました。 しかし最後はふわっと着地してこの曲を終えました。 いわゆる現代風なんですけど、ちっとも冷たい感じのしないモーツァルトが面白かったなぁ。

メンバーが増強されて、8・8・5・6・4(vn1,vn2,va,vc,cbの順)。 これにホルンが2人から4人になってハープも追加されました(奏者は男性)。
このマックス・レーガーによる「モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ」。 実にこのオケらしいプログラミングだったと思いました。 滅多に演奏されることのない音楽を聞かせていただくだけでもありがたいのですけれど、このオケの特質にもよく合っていたようです。 緻密でかつダイナミックな音楽がとても素晴らしかった。 そして弦楽器の分奏も見事。 特にヴァイオリンはインとアウトでも弾き分けているのですね。 こんなのを実際に見ながら聴かせてもらうと、この曲の醍醐味もバンバンと伝わってきました。 終始集中力の途切れない素晴らしい演奏に感激しました。

主題は、お馴染みのトルコ行進曲付きのピアノソナタK.331の第1楽章のテーマ。 これをオーボエを中心に木管楽器がゆったりと歌いまわし、清楚なモーツァルトの世界が表現されていました。 弦楽器も加わっての緻密なサンサンブルでは、左右に振り分けられたヴァイオリンが更にインとアウトで別の旋律を弾き分けています。 こんなのを見ながら聴かせてもらうのは興味深く、面白いものでした。
第1変奏、音楽が煌(きら)びやかになり、音楽も拡大します。 指揮者の中村さんの動きも大きくなりました。
第2変奏、その中村さんがより大きく動き、地面から音楽をすくいあげるような感じ。 茫洋とした感じのする音楽になっていました。
第3変奏、ここまで来ると原曲が分からなくなりました。 短調で、不安げで、瞑想的なのですけれど、熱い音楽は相変わらず脈打っています。
第4変奏、力の篭った演奏でしたね。 なんか指揮者の動きを見てて、あれよあれよという間に終わった感じです。
第5変奏、ここまでくると現代音楽に近くなったようです。 面白い展開を楽しみました。
第6変奏、ほっと一息ついた感じでしょうか。 愉しい感じのする曲の始まりから、ゆったりとした木管楽器が響きます。 主題も見え隠れしてましたね。
第7変奏、ホルンが主題を吹きゆったりと曲を展開し、そして音楽が大きくなったあと、ゆったりと優しく終わりました。
第8変奏、泣きそうな表情の中村さんに導かれ、ヴァイオリンが悲しげな旋律を歌います。 そして音楽は幻想的に拡大されてゆき、ここでもヴァイオリンがインとアウトに別れました。 小さなホールで間近で感じることのできる音楽は本当に素晴らしいな、と思えた瞬間でした。 そして音楽はしだいに熱っぽくなったあと静かに終わりました。
そしてフーガは、第1ヴァイオリンから第2ヴァイオリン、ヴィオラとチェロ、コントラバスのあとは木管楽器、そして金管楽器だったかしら。 最初は繊細な音楽でしたけど、楽器が加わる毎に、音楽が緻密に組み合わされ、響きが増殖してゆきます。 とても力の入った演奏となり、ピーク時には中村さんの顔が怒ったようにも見えたほどです。 その後、ゆったりと歌わせたあと、また縦ノリのリズム。 最後は指揮棒を右上に祓(はら)うようにして曲を終えました。 すごい熱演というか、力演でしたね。 チカラの入った演奏に感激しました。

15分の休憩のあと、メインのドヴォルザークのチェロ協奏曲。 オケには、第2ヴァイオリンの後ろ(ステージ右奥)にトロンボーンとチューバが入りました。 ステージが狭いのでこの位置なのでしょうか。
ところで、このチェロ協奏曲。 いつも大きなホールで聴いていることもあり、なかなか満足する演奏に出会えません。 チェロの響きがオケに埋もれてしまうからでしょうか、どこか焦点が定まらないような気がしてならないのです(いつも大きなホールの後ろの方で聴いていることも大きいと思いますけれど)。 しかし、今回は違いました。 500席ほどのアイフォニックホールで聴く、ドヴォルザークのチェロ協奏曲っていいですね。 なんたって奏者の表情と響きが手に取るように分かります。 それにソリストの林さん、艶やかな響きに張りもありました。 元大阪フィルの首席奏者だそうですけれど、演奏に華も感じさせた見事な演奏でした。 オケマンあがりの方は、テクニックは確かでも、どことなく地味な感じがするものなのですれど、表情は豊かで、甘ったるくもなく、存分に弾ききっていました。 とにかくこの曲を堪能させてもらいました。
また、かぶ響はいつも以上に気合入ってました。 終始、縦ノリのリズムで鳴らし、ビシバシとこの曲も進めます。 管楽器のソロの素晴らしいものでした。 そしてオケの音量が大きくなっても、小さいホールですからね、林さんのソロも埋もれることなく、直接音がよく届きます。 全く問題なし。 ただあまりに元気いいオケの音楽が続いたせいでしょうか、さすがに第3楽章までくるとちょっと聴き疲れしてしまいました。 全体的に音量を下げて、強弱の幅を持たせ、歌わせるべきところはクサいほどにたっぷりと歌わせたら・・・なんてふっと思いましたけど、このオケの特質からして、こんな臭みは似合わないですね。 これでいいのだ、って思い直しました。 とにかく熱演につぐ熱演に感激しました。

第1楽章、とても熱い音楽の始まりでした。 舞台の左からコントラバス、右からトロンボーンが攻めてくるようです。 途中フルートとホルンの朴訥としたソロも挿みましたけれど、また縦ノリのリズムになってぐっと盛り上げたのち、林さんにバトンタッチ。 その林さん、実に引き締まった音で弾力がありました。 そしてよく歌うのも特徴的でした。 小さなホールでのダイナミックな演奏といった感じ。 オケも入ってグッとまた盛り上がり(中村さんの鼻息もよく聞こえる力の入れよう)、すっと退いからの静かなチェロのソロになると、緻密でかつ歌う表情がまた素晴らしい。 間近に聴かせてもらっているので、手に取るように変化が楽しめました。 そしてまたぐんぐんと盛り上がってゆき、林さんも嬉しそうな表情で楽器を歌わせてオケと対抗。 直接音がよく届いてくるので、オケに全く埋もれることなく音楽を楽しめました。

第2楽章、木管アンサンブルによる開始からやや音量が大きめな感じ。 そしてチェロのソロ、懐かしさ・優しさを感じつつ、更にオケの音量が増します。 強靭な感じもするオケの響きをバックに、林さんのソロは艶やかな響きでかつダイナミック、繊細さも見事に弾き分けて客席を魅了していました。 当然感情移入もあるのでしょうが、これだけよく楽器を鳴らし、華も感じさせるなんて素晴らしいですね。

第3楽章、オケの力がぐっと増し、縦ノリのリズムで力が入っています。 低弦も唸るように鳴って、なんか音量変化が中音量より上で変化しているみたいな印象。 林さんのソロもそれに対抗して弾いていましたけれど、ちょっと鳴りが悪く聞こえるような印象を持ったのは、オケの音量が大きくなったため? 雨の湿気で響きが鈍くなったため? ちょっと疲れてきたせい? なんてふっと思いました。 たぶん僕のほうが聴き疲れしてしまったせいかもしれませんね。 ヴァイオリンのソロは清楚な響きでしたね。 中村さんは、この後もやや足早にこの曲を進めて行きました。 ソロ・オケとも非常な熱演なんですけれど、個人的には、ちょっと余裕が少なく、やや一本調子に走っているような感じも受けた楽章でした。 全体的に音量を下げて、強弱の幅を持たせ、歌わせるべきところはクサいほどにたっぷりと歌わせたら・・・なんて思いました。 しかしすぐに、いやいや、このオケの特質からしてそんな臭みは似合わない・・・と思い直しました。 そんなことを考えていたら、音楽が更にぐっと大きく盛り上ったフィナーレになっていました。

とにかく熱演につぐ熱演といった感じ。 このオケらしい尖(とん)がった音楽・演奏を存分に楽しませていただきました。
なお外に出ると、来た時とは違って強い雨が降っていました。 この雨の湿気が第3楽章のソロに影響しなかったのかなぁ・・・なんて思いつつ会場を後にしました。