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奈良交響楽団 第45回定期演奏会

いつもにも増して気合の漲った牧村さんと奈良響戻る


奈良交響楽団 第45回定期演奏会
2004年5月30日(日) 13:30 奈良県文化会館国際ホール

シベリウス: ヴァイオリン協奏曲  ニ短調 op.47
ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番 ニ短調 op.47

(アンコール)ブリテン:マチネミュージカルより「夜想曲」

独奏: 福冨博文

指揮: 牧村邦彦


ショスタコーヴィッチの交響曲第5番。 ものすごく気迫のこもった演奏で、かつ深い想いの伝わってくる演奏に満足しました。 演奏のキズの無さなら、先日聴いた大阪フィル(保田信義さん指揮)には及びませんけれど、聴いたあとの満足感が全く違います。 牧村さんはいつもどおりのスタイリッシュで格好良い指揮姿なんですけれど、一挙手一投足にはいつもにも増した気合の漲りを感じました。 オケもそんな牧村さんに見事に応え、緻密でかつダイナミックな音楽を作り上げていました。 ありったけの力をこめたような終楽章エンディングの集中力も見事でしたけれど、綺麗で穏やかな弦のアンサンブルから透けて見え隠れする不安や悲しさ、また各木管のソロにもそれを漂わせていた第3楽章は本当に素晴らしかった。 とにかく全編、一筋縄ではいかない複雑な表情を垣間見せつつ、聴き手を飽きさせない集中力の高さ。 この音楽をより深遠なものにしていたと感じました。
またこれに先立って演奏された、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。 都会的なシベリウスだったと思います。 魅力的でした。 ソロにちょっと線が細く感じる部分はあったと思いますけれど、充分に艶やかで情熱的な演奏に満足しました。 またここでも牧村さんの指揮によく応えたオケを称えたい。 自然な呼吸と盛り上がりによって、聴き手をぐっと惹き付けていました。 とくに終楽章のクライマックでの盛り上がりは何よりも素晴らしかったですね。 ソロの速いパッセージも見事なら、牧村さんと一体になったオケもうねるようなサポートが情熱的でした。 もちろんシベリウスらしいクールさをどこまでも失わなかったことも言わねばなりません。 日頃、なぜか奈良響の演奏会には辛口なうちの嫁はんも「とてもよかった、いい音楽を聴けた」と喜んでいたことを付け加えておきます。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

天気予報では雨でしたけど、とても暑い日になりました。 しかも蒸し暑い。 そんな中、午前中は町内会の草刈りと庭木の手入れをしましたので身体はへとへと。 正直、家でごろごろしていたい気分もありましたけど、頑張って一家揃って出かけました。 
なお今回は、長女が学校の友達と待ち合わせて5人で別行動。 一足先に出てゆきました。 自身の中学生の頃を振り返ってみても外に出かけたい年代ですけどね、行く先がクラシックの演奏会なら心配ないでしょう。 
僕と嫁はんと長男は遅れて開演10分程前にホールに到着。 先に出た長女達も僕たちも結局のところ2階席の最前列に陣取ってました。 長女達はステージに向かって左、僕たちは右。 別の場所でも良かったんですけどね、このホールは最前列は楽ですからね。

さて定刻。 司会のお姉さんが出てきたのにちょっと吃驚しました。 そういえば今回、初めて聴くクラシックと題されて、親子150組が招待するようなことがホームページに書かれていたことを思い出しました。 プログラムに挿み込まれた冊子の紹介をし、マナーのことを繰返し言ってましたけど、お話の内容は少々型どおりだったかな。 でも司会付き演奏会っていいんじゃないですか(僕は好きですよ)。 曲の解説があってもよかったんじゃないかな・・・って欲張ってはいけませんかね。

お姉さんが引っ込んで、チューニングの開始。 なんかお話のあとだからそう思うのかもしれませんけれど、いつも耳にしているはずのチューニングの音がとても荘厳な響きに聴こえてきました。 絶対音感があるわけではないのですけれど、じつはチューニングにも上手/下手があると思っています。 チューニングのやり方そのものがぎこちないと感じるオケもあれば、チューニングをしているメンバーの態度によっても影響してくるのでは、と素人ながら思っています。 もっと大袈裟に言えばチューニングから音楽が始まっている、とも思うのですけど、今回の奈良響のチューニングは自然と期待が高まってゆく感じのするものでした。 結果的にはそれが大当たりだったのではないでしょうか。

お姉さんの話もあったせいか、一際大きな拍手に迎えられて、福冨さんはにこやかに、牧村さんはきりっと引き締まった表情で登場。 お二人ともスマートで格好良いですね。 そんなことはともかく肝心の演奏は、都会的なシベリウスのヴァイオリン協奏曲だったと思います。  福冨さんのソロ、ちょっと線が細く感じた部分はありましたけどれど十分に艶やかで情熱的な演奏。 また牧村さんの指揮によく応えたオケはとても自然な呼吸と盛り上がりによって聴き手をぐっと惹き付けていました。 そして終楽章のクライマックの盛り上がりが何より素晴らしかった。 ソロの速いパッセージも見事なら、牧村さん指揮によるオケもうねるようなサポートが情熱的。 もちろんシベリウスらしいクールさをどこまでも失わなかったことも言わねばなりません。 初めて聴く人のプログラムとしてはちょっと難しい曲だったかもしれませんけれど、魅力的な演奏でした。 なお日頃なぜか奈良響の演奏会には辛口なうちの嫁はんも「とてもよかった、いい音楽を聴けた」と喜んでいたことを付け加えておきます。

第1楽章、冷んやりとした透明感のある序奏から福冨さんの艶やかなソロが入ってきました。 繊細な感じですね。 徐々に情熱的なソロになってゆきますけれど、若干線が細いようにも感じました。 オケは牧村さんの指揮によく応えた好サポートでこれを支えます。 抑制を効かせながらのリニアで自然な盛り上がりは必要以上に熱くならず、頂点を極めたあと、すっと潮が引くような潔さもあります。 頂点でのティムパニの響きは重くタイトでケレン味のなさが本当に素晴らしかった。 これ以外でも演奏の核になっていたといってもいいと思いました。 さて中盤をすぎて福冨さんのソロにいくぶん堅さが取れてきたでしょうか。 それでも熱くなりすぎず、けっこう淡々と演奏しているようですけど、細かな動きが多くて大変みたいですね、この曲。 そしてエンディングは情熱的となって、オケも入ったクライマックスを築いて、スパっと断ち切るような着地。 響きが一瞬で消えたように終わりました。

第2楽章の前にチューニングを実施、柔らかい木管アンサンブルと優しい響きのソロが展開します。 牧村さんの指揮は打点が明確できちっとしていますよね、アマオケ相手だからってこともないでしょうけど、見ていても判りやすいような感じです。 大阪シンフォニカー時代から協奏曲の伴奏を多く手がけられていたこともあり、手馴れたものを感じはするんですけど、今日はいつもにも増して情熱的な動きをしていたようです。 そんなこともあってか、ソロとオケ、またオケの弦楽器と管楽器の響きもよくマッチしていたようです。 オケもそれによく応えて、例えばホルンの長い持続音なども見事にこなしていましたね。 とにかく自然な曲運び、音楽の呼吸のようなものが感じられ、身を委ねていた楽章でした。 そして最後はソロ・ヴァイオリンの消え入るような響きで曲を終えました。

その響きが消えたあとほとんど休みなく行進曲調の第3楽章。 福冨さんのソロも歌います。 ここでも終始重く切れのいいティムパニが芯になっていたようですね。 ずいぶん熱っぽい音楽になってきました。 清涼剤のようなフルートなど木管楽器の音色も散りばめられてます。 クライマックスの盛り上がりはタイトで、ソロの速いパッセージも見事なら、牧村さん指揮によるオケもうねるようなサポートがとても情熱的。 もちろんシベリウスらしいクールさをどこまでも失わない、都会的っていうのでしょうかね。 カッコ良い音楽でぐっと盛り上げて曲を閉じました。 この盛り上がりは感動的でしたね。 初めて聴く人のプログラムとしてはちょっと難しい曲だったかもしれませんけれど、とても魅力的な演奏でした。

休憩を挿んでショスタコーヴィッチの交響曲第5番は、ものすごく気迫のこもった演奏で、かつ深い想いの伝わってくる演奏に満足しました。 演奏のキズの無さなら、先日聴いた大阪フィル(保田信義さん指揮)には及びませんけれど、聴いたあとの満足感が全く違います。 牧村さんはいつもどおりのスタイリッシュで格好良い指揮姿なんですけれど、一挙手一投足にはいつもにも増した気合の漲りを感じます。 またオケもそんな牧村さんに見事に応え、緻密でかつダイナミックな音楽を作り上げていました。 ありったけの力をこめたような終楽章エンディングの集中力も見事でしたけれど、綺麗で穏やかな弦のアンサンブルから透けて見え隠れする不安や悲しさ、また各木管のソロにもそれを漂わせていた第3楽章は本当に素晴らしかった。 とにかく全編、一筋縄ではいかない複雑な表情を垣間見せつつ、聴き手を飽きさせない集中力の高さ。 この音楽をより深遠なものにしていたと感じました。

第1楽章、コントラバスに向かって指揮棒を持った右手をフェンシングの剣のようして振り始めると、くるりと踵を返してヴァイオリンに振り分ける。 そんな仕草の格好良さもさることながら、決して底の浅さを感じさせない充足感のある開始でした。 決して重々しくはないけれど、コントラバスの悲痛なうめきに対するヴァイオリンの悲しいまでに美しい透明感。 意味深い音楽です。 ホルンでほんのちょっとバラけたように感じた部分もありましたけど、すぐに持ち直しタイトに吹いて大丈夫です。 あとフルートが美しかったし、クラリネットもしっとりした感じがよかったですね。 ハープの音はちょっと太めではっきりと響いていたかな。 ピアノが入って曲が大きく展開、オケに力が漲りますけど緻密に響きを重ねて音量が大きくなった感じ。 単にデカイ音にしただけじゃありませんね。 トランペットもよく締まってて全体の響きによく溶け込んでいます。 ところどころ綻(ほころ)びが無いわけではありませんけど、緻密な組み立てによって音楽が進行してゆくさまは立派でした。 聞き惚れていました。

第2楽章へはほとんど休みなく入った感じです。 今度は力が入って強靭な感じのするコントラバスとチェロによる開始から、ホルン、クラリネット、フルートとリズム感良く曲が展開します。 一体感がありますね。 この後、ヴァイオリンの明るいソロにフルートのソロもひと時の安らぎをよく表現していました。 そして演奏はまたリズミカルになって、最後は力をこめたエンディング。 スパっと切って、ホールに響きが残りました。

第3楽章のまえにチューニングを行って、今度は比較的長めのインターヴァル。 気持ちを改めて始まった音楽は、心に染み入るような弦楽アンサンブルでした。 ハープとフルートが加わり、いずれも穏やかさの中に潜む不安感が感じられます。 一筋縄ではいかないショスタコーヴィッチの深い世界を垣間見るようです。 そして音楽に次第に熱さがこもってきました。 ここではチェロとコントラバスに指示する牧村さん、力をこめた拍子に思わず大きな足音も聞かれるほどの気合の入れよう。 とにかくそんな牧村さんにオケは弦と管ともによく健闘していました。 オーボエやクラリネットのソロ、ともに綺麗だけれども悲しみを秘めた響きで彩ってました。 そして最後のハープとチェレスタも穏やかななかにも悲しさを漂わせていたように感じたのは気のせいでしょうか。 とにかく響きの中から透けて見え隠れする不安や悲しさを漂わせた音楽がとても素晴らしいものでした。

アタッカで入った第4楽章、関西では同じみのテーマ部分、タイトで力強く速い展開でした。 とにかくオケの機動力が見事ですごい集中力。 我武者羅で力任せに演っているのではありませんね。 緻密に計算された音の集合体。 トランペットなど、トップ奏者の響きに、セカンド奏者の包み込むような響きも聞き分けられました。 すごくいい感じ。 そしてシンバル、ティムパニの強打で最高潮のあと、すっと退き、今度はホルンの優しい響きのソロもまた見事でした。 ヴァイオリンに抑揚をつけて音楽を全く弛緩させない牧村さん。 音楽は静かになってもほの暗さは相変わらずです。 スネアドラム(この奏者の響きはタイトで格好良いですね、シベリウスのティムパニの時もそう思いましたけど)から徐々にまた音楽が拡大。 牧村さんはコントラバスに気合を入れてクライマックスもまた集中力抜群。 最後、牧村さんは打楽器奏者をしっかりと見据えながらの指揮で、弾力あるティムパニの強打、大太鼓の締まった響きでホールを満たし、そして指揮棒を右上から袈裟懸けにするように左下に切り捨てるようにしてこの曲を終えました。 迫力満点でしたけど、とにかく全編、一筋縄ではいかない複雑な表情を垣間見せつつ、聴き手を飽きさせない集中力の高さ。 この音楽をより深遠なものにしていたと感じました。 素晴らしい演奏に満足しました。