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けいはんなフィルハーモニー管弦楽団 演奏会

都会的な洗練された音楽戻る


けいはんなフィルハーモニー管弦楽団 演奏会
2004年6月13日(日) 14:00 けいはんなプラザ・メインホール

ウォルトン: 「スピットファイア」前奏曲とフーガ
ハイドン: 交響曲第96番「奇蹟」ニ長調 Hob.I-96
ドヴォルジャーク: 交響曲第7番 ニ短調 Op.70

(アンコール) ドヴォルジャーク: スラヴ舞曲第8番

指揮:藏野 雅彦


都会的な洗練された音楽による演奏会でした。 まずウォルトンのスピットファイアーの前奏曲とフーガ、楽しく判りやすい感じのする曲でしたね。 映画音楽らしいといえばそうですけど、エルガーっぽい堂々とし、気合の入った演奏を聴けたのがよかったですね。 よかったというか、嬉しかった、というのが正しいかもしれません。
ハイドンの「奇蹟」交響曲も、緻密でメリハリの効いた演奏でした。 指揮者にもよく反応していました。 ここまでハイドンをきちんと演奏出来るアマオケってなかなかないんじゃないですか。 音楽がまったく弛緩しませんし、よく統制されています。 巧いですね。 ただここまで巧いと、ウィットやユーモアを感じさせるような自主性みたいなのが欲しくなる思うのは、欲張りでしょうか。 
メインのドヴォルザークの交響曲第7番、都会的な洗練された演奏でした。 力が漲っても絶叫しないし、情緒的なメロディも田舎臭くなりません。 ここでもオケの巧さがよく出ていたように思います。 熱くもなるし、決してバランスを崩さない演奏の巧さを感じました。 藏野さんはここでも的確な棒さばきで曲を進めていて、演奏に熱気をこもらせていました。 またオケもよく反応していて、聴き応えのある音楽となっていました。 


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

前日までの梅雨空は何処に・・・といった感じの暑い日差しを浴び、バスでけいはんなプラザに向かいました。 ところでこの奈良交通バスは変です。 今回も戸惑っている方が何人もいました。 このバス、往きと帰りでは料金の払い方が違うんですね。 往きは後払い、帰りは先払い。 同じ路線なのに変ですよね。 とにかく僕は、けいはんなの演奏会に行くようになり、このバスにも乗る機会が年に2回増えたので、この変なシステムにも慣れました(それでもちょっとドキドキ感あり)。 ささっと料金を払い、バスの乗客の先陣をきってホールへと向かいました。

今回も開場10分前に到着しました。 バスの到着時間は変らないので、これに合わせて10分早く開場して欲しいなぁ〜 なんて思いながら待ってました。 その間、どこかの学生オケの方とOGの方でしょうね、お話しされているのをなんとなく聞きながら暇つぶし。 その内容から、今度藏野さんが指揮される大学の方でした。 練習している曲名で学校名が分かるなんて、僕もちょっと藏野さんのおっかけっぽくなってきたみたですね(苦笑)。

開場、最終的には8割近くの方が入場したと思います。 開場と同時に入ったので、席は選び放題だったので、中央やや後方に陣取ることにしました(S−L2)。 もうちょっと後ろのほうがよかったかな。 さて、ステージを見るとオケはお約束のように対向配置。 藏野さんはいつもこうなんですけど、ちゃんとそうなっているのを見ると安心しますね。 あとは時間までプログラムを読んで予習。 オケのメンバーの方が三々五々出てきて練習を始めます。 開演の5分前にはほとんどのメンバーがステージに乗っていたみたい。 思い思いに練習しているので、けっこう騒々しい感じですけど、期待もまた高まってきます。 定刻にコンミスの方が出てこられて静まりました。

入念なチューニングを終え、藏野さんがゆっくり歩いて登場。 いつもは勢いよく出てくる印象があったのですけど、ここはステージが狭いからでしょうか。 しかし客席に向かって一礼し終えた藏野さん、客席を真っ直ぐに見詰めて「ヨシ」と自分に気合を入れているのが判りました。 
そうやって始まったウォルトンのスピットファイアーの前奏曲とフーガは、楽しく判りやすい感じのする曲でしたけれど、エルガーっぽい堂々とした気合の入った演奏でした。 映画音楽らしいといえばそうですけど、この演奏を聴けたのがよかったなって思いました。 嬉しかった、というのが正しいかもしれません。 そんな気持ちになって演奏でした。

冒頭の金管ファンファーレ、明るく堂々としていました。 トランペットは柔らかくて輝かしいし響きが魅力的。 弦楽器、とくにヴァイオリンには透明感があって、この曲を明るく元気にしていたように感じます。 映画音楽らしい感じですね。
一瞬の間をもってフーガに突入。 第2ヴァイオリンとヴィオラの合奏に続いて、第1ヴァイオリンとヴィオラ、これに低弦が加わり、ぐいぐいとフーガが拡大されていきました。 工場で戦闘機(名機スピットファイアー)が量産されていく場面だそうですね。 縦ノリのリズムで藏野さんは盛り上げたあと、静かな中間部に。 ここではヴァイオリン・ソロが切ない旋律を奏でます。 これは疲れた主人公が自宅に戻って眠る場面とか、よく演出されていました。 そんな静寂を破り、またフーガがより大きな音量で繰り返されます。 よく締まったリズム感のよい演奏が続いたあと、やや型どおり的な終結。 映画音楽っぽく、なんか判りやすい音楽がしますね。 でも、もちろん演奏は気合の入った堂々としてて、エルガーっぽさも感じた演奏は聴き応えありました。

ステージは暗転。 多くのメンバーが引っ込み、オケの編成が小さくなります。 コントラバスは4本から2本に縮小され、6-6-5?-4?-2(vn1,vn2,va,vc,cbの順)だったでしょうか。 ハイドンの交響曲第96番「奇蹟」の準備万端整い、緻密でメリハリの効いた演奏が展開されました。 ここまでハイドンをきちんと演奏出来るアマオケってなかなかないんじゃないですか。 音楽がまったく弛緩しませんし、よく統制されています。 巧いですね。 ただここまで巧いとなると、ウィットやユーモアを感じさせる自主性みたいなものが欲しくなるのは、欲張りでしょうね。 あとホールの響きのせいでしょうか、バラけているのでは決してないのですけど、響きがちょっとダンゴになって届いてくるような感じ聴こえた部分がありました。 特に第2楽章がそうだったかな。 これなんか、多少バラけるほどの自主性が感じられるとより面白かったかな〜 なんて欲を持って聴いていたからそう思えたのかもしれませんけれど。

第1楽章、集中力を感じさせるゆったりとして大きな序奏から始まりました。 そしてオーボエの響きから主部に入ると、快活さよりも柔らかさを感じさせる音楽になります。 フルートの響き、歌いまわしが綺麗だったのが印象に残りました。 だんたんとメリハリを利かせた音楽となったのは展開部でしょうか、力を感じます。 再現部ではそれが快活な音楽になり、トランペットの締まった音色もよく全体にマッチしています。 漫然と音楽を流さない巧さを感じました。 フィナーレは大きく音楽を膨らませてふわっと着地した感じも見事でした。

第2楽章、ややメリハリをつけ、語りかけるようなアンダンテの開始。 この後、ぐっと力をこめ、息づいた音楽が展開されていきます。 元気いいですね。 やはりここでもフルートを始め木管楽器の柔らかい音色が素適です。 藏野さんの指揮のもと、音楽が大きくなったり小さくなったりと、オケもよく反応しているのですけど、なんかスキッと響きが届いてこないようにも感じました。 けっしてバラけているような感じではないのですけどね、ホールの響きかしら。 ちょっとダンゴになった響きが届けられたように感じたのが残念というか、不思議でした。 ふわっとした響きを狙っていたのかもしれませんね。

第3楽章、力感をもったメヌエットでした。 元気で明るく活気ある音楽が進んでゆきます。 打点を明確にし、要所でぐっと力を込めるような藏野さん。 余計な小細工はせず、メリハリをつけたやや開放的な音楽つくり。 はっきりとしてて判りやすく小ざかさを感じさせないハイドンの音楽ですね。 ここではオーボエ・ソロがいい音色で素適でした。 ほんのり甘くてね。 そしてこのソロにホルンの柔らかい響きが交わってくるから文字通り交響曲ですね。 力を感じさせる合奏の合間にこのようなソロが入った明るい音楽でした。

終楽章、統制が行き届き、緻密な響きが組み合わされた開始。 見事です。 藏野さんの指揮のもと、メリハリをつけた音楽が進んでゆきます。 ウィット感が欲しい気もしましたけど、そこまで要求するのは贅沢かもしれません。 後半になり、力が漲ってきます。 打点を明快にした音楽が一気に進んで幕となりました。 緻密さと元気さの合わさったハイドンでした。 なかなかここまでハイドンを聞かせるアマオケって無いのではないでしょうか。 

オケの皆さんも満足そうな顔で起立。 そこで気付いたのですけれど、ホルンが通常クラリネットの位置に居て、トランペットはヴィオラの後ろでティムパニの前に居ました。 ラッパの直接音を避けるような配置だったのかもしれませんね。 とにかくよく考えられ、指揮者にもよく反応していたハイドンでした。

20分間の休憩のあと、いよいよメインのドヴォルジャークの交響曲第7番。 ウォルトン、ハイドン、そしてドヴォルジャークと続きますが、時代は18、19、20世紀と違うものの、いずれもイギリスにて初演された音楽です(プログラムより)。 一見とりとめのない選曲のように見えて、このオケのこだわりも見えてくるようですね。

そのドヴォルジャークの交響曲第7番。 都会的な洗練された演奏でした。 力が漲っても絶叫しないし、情緒的なメロディも田舎臭くなりません。 ここでもオケの巧さがよく出ていました。 熱くもあるし、決してバランスを崩さない演奏の巧さを感じしました。 藏野さんはここでも的確な棒さばきで曲を進めていて、演奏に熱気をこもらせていました。 そしてオケの皆さんも蔵野さんによく反応し、聴き応えのある音楽となっていました。 ただし感動的だったかというと、ちょっと何かが足りなかったような気がしないでもありません。 好みの問題かもしれませんけれど、音楽って難しいですね。 

第1楽章、豊かなチェロとヴィオラの響き、ここにコントラバスのピチカートも加わります。 ちょっと慎重な感じを覚えた開始でしたけれど、すぐに元気な音楽になります。 緩急をつけ、ゆったりと歌わせる部分とたたみ掛けるような縦ノリの音楽が展開します。 歌わせる部分もスマートで若々しく、都会的なセンスを感じさせます。 ここでも木管楽器の音色が綺麗でしたね。 あと後半、音楽が高揚した場面でもトランペットがよく締まった響きで突出せず、きちんとした音楽が崩れません。 さすがです。 巻き込むようなウネリ感を持たせ、たたみかけていったフィナーレ。 最後はゆったりと響きを凝縮するようにして終わりました。

第2楽章、クラリネットを主体にした木管楽器にやわらかい弦のピチカート。 そして弦楽器が懐かしい思いを込めた旋律を歌います。 ここも田舎臭くならず都会的な印象です。 でも熱い思いが込められているからでしょうか、スタイリッシュに纏めているのともちょっと違いました。 ホルンの斉奏はよく歌う朗々とした響き。 チェロの旋律もまたよく歌っていました。 藏野さん、メリハリつけてぐっと盛り上げては、すっと退いて大きく振って歌わせる若々しい音楽造りをしていました。

第3楽章、何よりよく纏まり、力が入って統制されたスケルツォでした。 もちろん歌ってもいました。 何度も書いていますけど、泥臭くはなく都会的ですけど、迸(ほとばし)るような感じがよく出て見事でした。 きちんとした音量コントロールもされていたようです。 それによって余裕を感じさせるような前半だったでしょうか。 ただ中間部でなんとなく取りとめの無さも感じた部分はあったように思いましたけど、フィナーレでは力をぐっと増しました。 ここでもウネるような感じもよく出て見事、余裕を感じさせる演奏で締めました。

アタッカで入った終楽章、音楽は元気に、更に熱気を帯びてきました(このために前の楽章では余力を残していたのかな)。 藏野さん、リズム感良く、ぐぃぐぃっと音楽をのせてきます。 ただホールの響きの関係でしょうか、それともコントラバスが4本だからでしょうか、ビンビンと響いてくるって感じじゃなく、全体の響きがわっ〜とやってくる感じ。 低弦の分離が良くないのかな、ちょっと音がダンゴになるみたいなんですね。 もう少しシャキシャキっとして欲しい感じだったんですね(個人的な趣味です、無視してください)。 拍をズラす部分はあっさりと通過(ここもハッキリとつけて欲しいのが個人趣味)。 オケが静かになり、緻密な音楽を鳴らしたあと、フィナーレに向かって力をまた漲らせます。 力のこもった行進曲調となり、ここでの拍をズラす部分もすっと通過してぐぃっと盛り上げます。 力のこもったエンディングは金管ファンファーレを大きく鳴らして開放的に纏めました。 ちょっと勢い込んだ感じもしたエンディングでしたけど、とても熱い音楽にあふれていました。 そして決してバランスを崩さない演奏の巧さを強く感じました。 藏野さんの的確な棒さばきにオケの皆さんもよく反応もし、聴き応えのある音楽となっていました。

アンコールは、没後100年ということもあり同じくドヴォルジャークのスラヴ舞曲第8番。 こちらも元気いっぱいで、結構弾き飛ばしているような感じでした。 個人的にはこのような自由度の高い演奏のほうが聴いてて面白く感じるんですよね。 巧い/下手とかっていう以前、演奏が終わった開放感があるからかもしれませんね。 そんなことも感じました。
そして最後はオケ全員が客席に向けてお辞儀をしてお開き。 このお辞儀、コバケンさんの演奏会でもやっていますけど、いいですよね。 お疲れさまでした。