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大阪ハイドンアンサンブル 第10回定期演奏会

熱い想いの伝わってくる活気ある演奏戻る


大阪ハイドンアンサンブル 第10回定期演奏会
2004年7月17日(土) 18:30 いずみホール

ハイドン: 交響曲1番 二長調 Hob.I-1
ハイドン: 交響曲104番「ロンドン」二長調 Hob.I-104
ベートーヴェン: 交響曲3番 変ホ長調 op.55

アンコール: モーツァルト: アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618(弦楽合奏版)

指揮: 杉田圭一


意欲に満ち、活力あふれた演奏会でした。 なかでも英雄交響曲がとても素晴らしかった。 しっかりとした構成感に、壮大さ、緻密さが同居し、均整のとれた確かな演奏は、充実という言葉以外は想い浮かぶものはありません。 使われていた楽譜は最近主流になりつつあるベーレンライターの新版。 しかし古器演奏を妙に意識せず、従来からの演奏スタイルを踏襲。 全体的に自信に満ち、堂々とした演奏内容。 しかしフィナーレに至っては気色ばんで盛り上げても良さそうなところを逆にぐっと抑え、等身大で見事に纏めあげた真摯さ。 実に見事でした。 これまでの10年間の実績を総決算し、これから新たな第一歩を踏み出す決意を感じさせた演奏でした。
またオーケストラの名前に使われているハイドンの交響曲。 第1番と最終となる第104番「ロンドン」を組み合わせた意欲的なプログラミング。 そしてこれらの演奏もまた活気がありました。 これからの活躍をわくわくするほどに予感させた第1番。 ベートーヴェンに繋がる重厚さ、力強さを感じさせた第104番。 いずれも熱い想いの伝わってくる活気のある演奏でした。
このオケは初めて伺わせてもらいましたけれど、10回の記念演奏会だからでしょうか。 女性奏者が各自色とりどりのドレスにて登場。 演奏内容だけでなくステージ上の見た目の華やかさも添えていました。 なかなか良い趣向だと思いました。
とにかく10年、ごくろうさまでした。 そしてこれからも古典派の音楽を大切に取り上げていってくださるハイドン・アンサンブルのますますの発展を期待します。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

風が吹いているのがよかったですね。 暑いなか子供たち二人を連れて森之宮からいずみホールまで歩きました。 17時半、ちょうど座席交換開始時間に到着。 いつもなら開場15分くらいまえにやってくることが多いのですけど、もうずらりと列ができていて吃驚しました。 早めに来て正解でしたね。 子供たちをホール前で適当に放し飼い状態にし、僕だけ列に並んでいたら嫁はんもやってきました。 交換してもらった座席はQ−12〜15。 ちゃんと通路側からお取りしました、と丁寧に言ってもらったのが嬉しかったです。 

さて、時間もあったし、とりあえず腹ごしらえをしにOBPに行き、開演10分前にはホールに戻ってきました。 いつもなら、あわてて座席交換に向かっている時間ですけどね。 もうそれは済んでますから、余裕でホールに入ります。 けっこうな人が集まってますね。 1階席はほぼ満杯といった感じでした。

定刻になってオケ・メンバーが登場すると、いきなり拍手。 記念演奏会だからでしょうか。 このいきなり拍手にも驚きましたけど、女性奏者の方の衣装がまるでソリストのよう。 色とりどりの衣装を身にまとって登場すると、うわぁ〜綺麗ねぇ〜っていう感じのため息が会場から漏れ、拍手にも一層熱が帯びているようでした。 さて、オケは対抗配置で、8型でしょうか、Vn1から順に 8-7-6-6-3 の編成のように見えました。 チューニングも終え、にこにこと杉田さんが登場。 いよいよ演奏会の始まりです。

まずはハイドンの交響曲第1番。 初めて聴く曲ですが、急-緩-急の3楽章形式で、いずれも躍動的で活力を感じさせる演奏でした。 
第1楽章、やわらかい響きによる開始。 躍動的な第1ヴァイオリンが全体を引っ張ります。 ホルンが裏で朴訥とした音で裏を支えています。 要所をバシッと決めて曲をぐんぐんと進めていました。 やや第1ヴァイオリンの旋律に偏った感じにも思えましたけど、初めて聴く曲だからよくわかりません。
第2楽章、若さを彷彿とさせた緩徐楽章。 第1ヴァオリンと第2ヴァイオリンの掛け合いがあり、中低弦の響きも増しました。 ゆったりとしているんですけど、リズム感があって活力を感じさせる音楽でした。 
第3楽章、大きくなった楽想は引き締まっていて温かみも感じさせます。 覇気を持った演奏で一気に聞かせて終わりました。
プログラムにも書かれていたように、こらから何か新しいものが始まるぞ、といったわくわくするような演奏でした。

管楽メンバーが増員、打楽器メンバーが登場。 ヴァイオリンも1名づつ増員されたでしょうか。 ハイドン最後交響曲で第104番の番号を持つ「ロンドン」。 堂々とした音楽は、重厚さ、力強さを感じさせ、ベートーヴェンを予感させた演奏でした。 そのぶんハイドンらしい洒脱さは薄まっていたようですけど、活気のある演奏には違いありません。 演奏者の気合を十二分に感じた演奏でした。

第1楽章、杉田さんの鼻息が聞こえてから、重厚な序奏が始まりました。 じっくりと腰を据えて曲を進めたあと、アレグロの主部。 第1ヴァイオリンによる柔らかい主題呈示のあと、力を増しながら曲をぐいぐいと進めてゆきます。 木管、金管も一体となって、ぐわんぐわんという感じで音の塊がやってくるようでした。 ティムパニは柔らかく響きが深く、要所をきちんと決めています。 またオケ全体の音キレがよかったので、引きずるような場面は全くありません。 愛らしい木管の響きもありましたけど、堂々とした音楽でフィナーレまで突っ走って終わりました。

第2楽章、棒を離した手で暖かい響きを演出した開始。 しばらくして棒を持ち、なだらかに曲を進めていきます。 ファゴットが柔らかく絡んできたあと、全奏を一気に躍動的に盛り上げるけれど一体感は全く失われず。 句読点きちんとつけたを音楽です。 木管アンサンブルが美しく奏で、抑えを効かせたヴァイオリン、そして最後は柔らかいホルンの響きをともなって曲を締めました。

第3楽章、縦ノリのリズムのメヌエットは大きく弾ませています。 メリハリを効かせた曲の進行はちょっと几帳面だったかしら。 曲調かわって、今度はなだらかな曲の進行に暖かさをふわりと感じますけど、やはり音楽は活気があります。 若干ハイドンらしい洒脱さがあってもいいかな、なんて思いながら聴いていると、最後は指揮棒で大きくすくうようにして曲を終えました。

終楽章は、杉田さんがかがんで小さくなった慎重な曲のスタート。 すぐに活気のある音楽になると、今度はぐぃぐぃと曲をノセて、力のこもったクライマックスを築きます。 ホルン、トランペットともに全体の音色によくマッチしていたのが印象的。 とくにホルンはナチュラル・ホルンのような響きでしたね。 溌剌として牧歌的に歌ったあと、活気に満ちた音楽が壮大なフィナーレとなって結実して全曲を終えました。 

20分間の休憩。 この間もお客さんは増えたのでしょうね。 2階バルコニー席にもお客さんが入ってきました。 さていよいよメインのベートーヴェンの英雄交響曲。

しっかりとした構成感に、壮大さ、緻密さが同居。 均整のとれた確かな演奏は、充実という言葉以外は想い浮かぶものはありません。 とても素晴らしい演奏でした。 
なお、使われていた楽譜は最近主流になりつつあるベーレンライターの新版ですが、古器演奏を妙に意識することなく、従来からの演奏スタイルをしっかりと踏襲。 全体的に自信に満ち、堂々とした演奏内容でした。 しかしフィナーレに至っては、気色ばんで盛り上げることなく、逆にぐっと抑えた等身大の音楽として見事に纏めあげた真摯さ。 これは本当に見事でした。
これまでの10年間の実績を総決算し、これから新たな第一歩を踏み出す決意をも感じさせた演奏でした。 ますますの発展を期待します。

第1楽章、杉田さんの鼻息のあと、タイトな和音が2つ。 歯切れがよく透明感のある音楽で主題を奏でます。 先ほどまでのハイドンでは、やや音楽がダンゴになって聞こえていたのですけど、音場が左右に大きく広がり見通しの良い音楽となってクライマックスを築きます。 木管のアンサンブルで、あれ、落ちたかな・・・と思った個所がありましたけど、後のフレーズでも同じように音が無かったので、慌ててパンフレットを読んだら「ベーレンライター(新全集版)」との記載がありました。 道理で・・・なおこの後も繰り返しをすべてやっていたようでした。 とにかく覇気のある演奏なのですけれど、勢いだけでなく各フレーズの運びがよく練りこまれています。 爽やかで、潔い音楽はリズミカルで弦と管の繋がりも見事でした。 また高らかなトランペットやホルンの響きも全体の響きのなかにきちんと埋め込まれています。 清冽な響きを伴い、弾むようにしてこの楽章を閉じました。

第2楽章、ゆったりと重いけれど透明感のある音楽。 時折コントラバスの唸りも入ります。 オーボエが憂色の響きでいい音でした。 ゆったりと、しかもストイックに纏めた音楽は、決して引きずるようなことなく、流れが滞りません。 中間部、明るい旋律が木管楽器に現われ、クライマックスには荘厳さも感じました。 それもすっと潮が退くようにして展開部でしょうか。 弦の見事なアンサンブル。 曲を展開させて、怒涛の頂点を築いたあと、主題を慈しむようにして曲を閉じました。 決してダレはしなかったけど、繰り返しのせいでしょうか、正直ちょっと長いなぁ、と感じた楽章でもありました。

第3楽章、弦と管が一体となった充実した響きによる開始。 分奏、アンサンブルともやや熱気を持っていました。 全奏ではやや力任せでわ〜っと演っているように感じた個所もありましたけど、これも気合が入っていたからでしょう。 ホルンのトリオは甘く遥かな響きで決めました。 このあとの弦の分奏は緻密に決め、管楽器とのつながりもよく、力をクレッシェンドさせた充実したエンディング。

第4楽章は、やや間をとったあと気力に満ちた開始でした。 冒頭こそちょっと気負いを感じましたけど、ピチカートが太くまろやかでよく揃っていたのが印象的でした。 杉田さんは要所で鼻息がよく聞こえる気合の入れよう。 しかしコントロールをよく効かせた音楽は、すでに冒頭の気負いはなく、リズミカルに盛り上げてゆきます。 緻密に計算された音楽だと感じましたけど、決して冷たさはありません。 構成感を重視した演奏は躍動的であり、鍛えられた音楽、といった感じでしょうか。 テンポを上げて舞曲風の主題も筋肉質。 ぐんぐんとオケをノセました。 曲想が変わって木管によって美しく主題が演奏したあと、壮大なスケールで全体を盛り上げました。 この嵐が静めてから、さあエンディング。 更に大きく派手に盛り上がるのかな、との安易な予想は見事に裏切られ、地に足をしっかりと着けた等身大のフィナーレ。 気色ばんで突っ込んで無理やり盛り上げてもよかったのでしょうけど、真摯な演奏で全曲を締めくくった見識。 実に素晴らしいものでした。 これまでの10年間の実績を総決算し、これから新たな第一歩を踏み出す決意を感じさせた演奏だと思いました。

なおアンコールは、弦楽合奏によるモーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス。 中低弦が豊かな演奏で、心を暖かくする合奏は本当に素晴らしいものでした。 これからも古典派の音楽を大切に取り上げていってくださるハイドン・アンサンブルのますますの発展を期待します。