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六甲フィルハーモニー管弦楽団 第18回定期演奏会

ヒューマニティ溢れた熱い演奏戻る


六甲フィルハーモニー管弦楽団 第18回定期演奏会
2004年9月5日(日) 14:00  神戸文化ホール大ホール

ニールセン: 序曲「ヘリオス」
ハイドン: 交響曲第104番ニ長調「ロンドン」(*)
ニールセン: 交響曲第4番「不滅」

(アンコール)ステンハマル: カンタータ「歌」より間奏曲

指揮:森 康一(*)、松井真之介


意欲的なプログラムのためかお客さんは少なかったけれど、とても熱い演奏会でした。 特にニールセンの「不滅」は、聴き所ともいえる左右2対のティムパニの強打もさることながら、ヒューマニティ溢れた熱い演奏で全体を歌い上げた実に素晴らしい演奏に感動しました。 なかでも第3楽章の悲痛なヴァイオリンの響きの透明感、またアンサンブルの要になるヴィオラが健闘していたのが印象に残りました。 そして感動のクライマックスは「消し去ることの出来ないもの」を高らかに歌いあげ、指揮者とオケが一体になった演奏は実に見事でした。
またハイドンの交響曲「ロンドン」、気負うところのない端正な佳演で気に入りました。 オーソドックスな解釈ながらスマートでチャーミングな演奏はかえってアマオケでは難しいと思います。 終楽章などよく言われることですけど、ベートーヴェンの足音が聞こえるようですけど、常にハイドンらしい暖かさと優しさを失わない演奏を楽しみました。
冒頭のニールセンの序曲「ヘリオス」、こちらは初めて聴く曲なのではっきりいえませんけど、誠実な演奏でした。 ただ元の曲調が単純なこともあって表層的な感じが否めませんでした。
なおアンコールは、なんとステンハマルのカンタータ「歌」より間奏曲。 豊かなアンサンブルが実に見事でした。 初めて聴いた曲ですけど、そして多分、ほとんどの人はステンハマルの名前さえ知っていなかったと思いますけど、いい曲を書く人だな、ということが分かったのではないでしょうか。 充実した演奏に、オケが引き上げはじめても拍手が惜しみなく贈られていたのが印象的な演奏会でした。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

前日は倉敷まで日帰り小旅行。 その疲れが溜まってて、朝のうちは行くのやめよかな〜と思っていましたけど、家でゴロゴロしてても何も始まりません。 ニールセンの「不滅」なんてそうそう聴ける曲ではないし、ギリギリになって重い腰をあげて家を出ました。
地下鉄で少々眠ったせいでしょう、体調はやや持ち直してきました。 昨日通った東海道本線を快速電車で今日は神戸まで。 ここから湊川神社の横をだらだらと登っていくと大倉山の神戸文化ホール。 もう何度来ていることでしょう。 随分とお馴染みのホールになった感じがします。 開演15分まえに到着。

ホール入口のエスカレータ前にスーツ姿のお兄さんがいます。 チケットをお持ちですか? と声をかけてくださいましたので、いえ、と応えてチケットを有り難くいただきました。 入場無料の演奏会ですけど、札束みたいなチケットの束がホール入口横にも置いてあります。 無駄な感じがするのですけど、入場者数をカウントするのに必要なのでしょうね・・・きっと。
チケットをちぎってもらい、パンフレットを受け取ったら脱兎のごどく2階席へ直行。 中央通路のすぐ後ろの席がお目当てです。 ここ、足もとが広くて楽なんです。 しかも席の前にある壁の部分が低いので、足掛けにもなります。 お行儀悪いけど、靴を脱いでくつろがせていただきました。 周りのおじさん連中もまた同じようにくつろいでいます。 おじさんはみな疲れているんです・・・ってか。

ホール2階席に入りは2〜3割で、1階席は前の方しか見えませんけど6割入っているかなってところでしょうか。 プログラムが意欲的ですものね、入場無料の演奏会なのに勿体ないことです(これは演奏終了後にも強く思いました)。 
とりあえず開演まで、老眼がかった目をしばたきながらパンフレットを読んで自習です。 序曲「ヘリオス」のことなど、なんだか読んだだけで想像できましたし、「不滅」って開始早々のところのクラリネットが重要なテーマの呈示なんですね。 なるほどね、勉強になりました。

定刻、オケの入場。 ホルンは6本、弦は12型のようでコントラバスは4本、管楽器は2管編成だったでしょう。 チューニングを終えると、さっそうと指揮者の松井さんが登場。 団内指揮者だそうですけど自信たっぷりに見えます。 パンフレットによるとまだ20歳台後半の方のようです。

ニールセンの序曲「ヘリオス」。 ギリシアの太陽神の名を持つこの曲は、ニールセンがエーゲ海に旅した時に経験した夜明けから日没までの風景を、太陽神になぞらえて壮麗に描いた曲とのこと。 確かに薄暗い夜明けから徐々に明るさが増して太陽が顔を覗かせる、そして燦燦と輝いたあと、徐々に翳って地に没する・・・簡単に説明するとこんな感じで、冒頭のチェロとコントラバスの低い響きから始まり、弱音のホルンが太陽を表す。 ただしここのホルンは難しいですね。 精一杯頑張っているのがよく伝わってきました。 このあと、ヴィオラが暖かな響きを加え、第2ヴァイオリンに続いて第1ヴァイオリンが朝の爽やかさを演じたあと凛としたオーボエで朝の空気が伝わってきます。 そしてホルンの響きが増し、トランペットが輝くように吹くとエーゲ海の太陽が燦燦と輝いている・・・どうでしょう、この曲を聴いてなくてもなんとなく想像できてしまうあたり、曲自体に深みに乏しいような気がしました。 若干安定しない部分もありましたけど、誠実な演奏は好感が持てるものでした。

オケのメンバーが入れ替わり、管楽器のメンバーが大幅に抜けました。 弦も10型に絞り込まれましたけど、コントラバスは4本のまま。 なお見た目の話ですけど、メンバーが中央付近に集まっているのに、コントラバスとティムパニが同じ位置でちょっと離れているような感じ。 ティムパニは左奥、コントラバスは右隅だからなんとなく全体のバランスは取れているみたいですけど、ここは時間をかけても中央付近に全員が集まるのも良かったのではないか、なんて思って見ていました(余計なことをすみません、そう思っただけです)。 
指揮者はやはり団内指揮者の森さん。 律儀そうな青年です。 やはり20歳台後半の方だそうです。

そのハイドン最後の104番の交響曲。 オーソドックスな解釈ながらスマートでチャーミングな演奏、気負うところのない端正な佳演を気に入りました。 このような演奏ってアマオケではかえって難しいと思われます。 見事でした。 終楽章などよく言われることですけど、ベートーヴェンの足音がそこまで聞こえるようです。 もちろんハイドンらしい暖かさと優しさも失わない演奏。 丁寧に演奏してかえって退屈になったり、逆に勢いだけで運ぶ安易さはなく、充実した演奏を楽しみました。 もっとメンバーが中央付近に集まっていたら、更に躍動感なども出てきたのではないでしょうか、そんなことも思った演奏でした。

第1楽章、よく締まったいい響きです。 響きが内包されていて、ゆったりと、いとおしむように音楽を進めます。  ふわっとした感じで主部へ。 丁寧な曲の進めかたですけど、気合が先走りすることなく、すっと力を抜いているような軽妙さも忘れていません。 ヘリオスでは、いささか薄っぺらい響きがストレートに出てきて練り込み不足にも思えたのですけど、ここではヴァイオリンを中心にしたしっとりと濡れているような響きがとても心地よい感じです。 抑制の効いた管楽器も全体の響きにすっぽりと収まっています。 落ち着きと快活さを備えたハイドンにぐっと身を乗り出して聴いていました。

第2楽章、よく纏まって端正でかつチャーミングな音楽です。 弦のアンサンブル、特にヴァイオリンがよく歌っていてようです。 ここに木管楽器も美しい響きでもって絡んできて、音楽もしだいに大きく強くなります。 でも音楽が勢いで崩れることなく柔らかな響き、もちろん芯もちゃんとあって見事でした。

第3楽章、スマートな音楽ですけどしっかりと地に足がついています。 ここでもコンミスを中心にした弦の統率力が素晴らしい。 のどかな曲調の部分でも弛緩することなく、じっくりと歌いあげていきます。 指揮者の左手によるゆったりとして柔らかな表情付け、気負うところのない音楽ですけど決してチャーミングさを忘れないところがいいですね。

第4楽章、タイトな響きで充実した開始。 ベートーヴェンの足音がもうそこまで来ている、そんな風によく言われますけど、まさしくそんな感じ。 余計なことは一切しないような指揮からは、曲の持つ良い面のみを引き出そうとしているみたい。 端正でタイトでありながら、充分に暖かく優しい響きはまさにハイドンです。 指揮とオケの一体感。 しばし聴き惚れているうちにコーダとなって壮大に曲を締めくくりました。 
なんかもっと聴いていたい気分でした。 繰り返しますけど、アマオケでここまでやるのは難しいのではないでしょうか。 充実した演奏に拍手を贈りました。

15分の休憩。 席でまたパンフレットを読み予習です。 「不滅」はバルビローリの演奏が染み付いててちょっとハードルが高い曲なのですけど、ここはそんなこと忘れて出直ししないとダメですものね。 なおオケは舞台右側にティムパニ奏者が増え、弦楽器は12型でしょうか、コントラバスも6本に増強。 ホルンも6本で、トランペットとトロンボーンも各4本となりました。 いよいよ始まります。 意気揚揚といった感じで松井さんが登場しました。

松井さんは棒を持たずに構え、鼻息が2階席まで聞こえるほど、エネルギーを溜めた開始。 すごい勢いで駆け抜けていきます。 速いスピードでやや響きが薄いようにも感じましたけど、ここは突っ走るしかない、そんな感じです。 やがて静かになり、重々しいチェロの響きのあとヴィオラの響きに乗せたクラリネットの主題からひろびろとした音楽が素敵。 このクラリネットが「消し去ることの出来ないもの」ですね(予習の成果)。 しかしそれはまた不安気に響いたあと再現部かしら、金管の咆哮が高らかに響きます。 ここまでちょっとオケの響きを薄く感じていましたけど、重厚感が出てきたようです。 オケもちょっと余裕が出てきたのかもしれません。

第2楽章(にあたる部分)、暖かなクラリネットとファゴットの響き、そして柔らかいフルート、凛としたオーボエによる響きが溶け合って美しい音楽。 よく歌っています。 弦のピチカートに乗せ、瑞々しい音楽に、どこか一抹の不安も感じさせてよかったな。

第3楽章(にあたる部分)、厳しさを感じさせる透明なヴァイオリンが悲痛な叫びのよう。 左奥のティムパニ、右手前のコントラバス、その間のチェロとヴィオラ、ピチカートがよく合っています。 弦のアンサンブル、ヴィオラが要になっているのが素晴らしい。 曲調に明るさが見えても、まとわりつくような悲しみをどこかに感じさせる音楽が見事です。 そして木管のユニゾンが現われ、しだいにクライマックスに上り詰めてゆく真摯な音楽が続きます。

第4楽章(にあたる部分)、松井さんが手を縦に振って断ち切るようにしてヴァイオリンの長く広がってゆく旋律。 それが最初のティムパニで叩きつけられ、しだいに激しい音楽に。 金管ファンファーレが入ったころ、ようやく右側のティムパニ奏者で席につきます。 曲はいったん静かになったあと、左右のティムパニのバトルの開始。 右側のティムパニは赤いマレットでタイトな音で対抗するかのよう。 ヴァイオリンの速いパッセージには艶があります。 またトランペットにはトレモロのような響きも聞こえ、オケが一体となってこの曲を進めているのがよく分かります。 決して派手な演出だけで突っ走っているのでないですね。 ほとんど舞台に釘付けのようになって見て聴いていました。 そして最後、消し去ることの出来ない(不滅の)人間賛歌を大きく謳いあげ、それを松井さんが掬いあげるうようにしてふわっと曲を纏めました。
その響きがホールから消えると熱く大きな拍手に包まれました。 ヒューマニティ溢れた熱い演奏、高らかに全体を謳い上げた素晴らしい演奏に感動しました。

惜しみない拍手に応え、アンコールはステンハマルのカンタータ「歌」より間奏曲。 豊かなアンサンブルが実に見事でした。 こちらも初めて聴いた曲ですけど、そして多分ほとんどの人はステンハマルの名前さえ知っていなかったと思いますけど、いい曲を書く人だな、ということが分かったのではないでしょうか。 
充実した演奏に、オケが引き上げはじめても拍手が惜しみなく贈られていたのが印象的な演奏会でした。