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やまなみグリーネ管弦楽団 第19回定期演奏会

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やまなみグリーネ管弦楽団 第19回定期演奏会
2004年9月26日(日)14:00 やまなみホール

(追悼)モーツァルト: アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618

モーツァルト: 交響曲第25番ト短調 K.183
マーラー: 交響曲第4番 ト長調

独唱:三原美文(S)

指揮:河野正孝


このところ加齢のせいかしら、素晴らしい演奏を聴くと涙腺が緩んでしまいそうになるのですけれど(もちろん涙は出しませんけど)うるうるときた演奏会でした。
マーラーの交響曲第4番。 とにかくオケ全体の気持ちが素晴らしく乗った演奏でした。 思わず身を前に乗り出すようにして聴いた場面も数知れません。 弦楽器の編成は 8-7-6-6-4 という極めて小型ながらも3管編成。 ステージ上はすし詰め状態で、木管奏者のベルアップも大変では? と余計な心配もしたくなるほどでしたけれど、バランスも申し分なく、前述のとおり素晴らしい演奏に感激しました。 逆にマーラーの交響曲第4番という大曲をこんなにも間近で、しかも各奏者の方の熱演に接することが出来たことは素晴らしい経験になりました。 オーケストラの中で聞いたらこんな感じなのかもしれません。 特筆したい場面はいっぱいありますけど、1点挙げるならば第4楽章の三原さんのソプラノによる第4節の「Sanct Ursula selbst dazu lacht.」でしょうか。 声の伸びも素晴らしくて溜息が出るほどでした。 曲が終ってしまうのが残念に思える演奏に久しぶりに出会いました。 感謝しています
なおこれに先立って、吉岡前館長を追悼するため、プログラムにないモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」を演奏会の冒頭に演奏。 オケとソプラノの柔らかい響きがホールに満ちて、こちらも気持ちの伝わってくる演奏でした。
モーツァルトの交響曲第25番。 気合の篭った演奏はまさしく疾風怒濤。 最近レコードでハイドンを聴く機会が多くなっていることもあり、ハンドンとの繋がりに自然と想いをはせていました。 指揮者の河野さんはいずれの曲でもオケの自主性に任せている場面が多くあり、細かな指示で抑えたり整えたりする小細工を使わず、常に曲を前に前にと進めている感じ。 ただしこの25番の交響曲では、コンミスの響きが少々際立って聴こえるなどバランスの悪さも感じなくはなかったのですけれど、常に前向きであった演奏を支持したいと思いました。
とにかく昨今の財政難により活動を支えてきた財団が休眠化。 今回は財団から離れ、自主活動として初めて開催した定期演奏会だったそうです。 たとえ逆境であってもこの素晴らしいホールの名を冠したオーケストラとして今後も演奏を続けて欲しいと心より願うばかりです。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

初めて聴かせてもらうオケ、そして初めて行くホールの演奏会ってワクワクします。 最寄駅から奈良市街まで出て、久しぶりにJR関西本線のディーゼル列車で大河原駅へ向いました。

ところでこの関西本線。 本線と付くのですけど加茂から亀山は非電化単線区間です。 でもこの鉄路の先は名古屋に続き、かつては急行や特急も駆け抜けていたはず。 往時を偲ばせる長いホームに1両や2両のディーゼルカーが停まり、そして追い越しのための線路が敷いてあったのだろう空き地が駅構内に広がっています。 しかも毎月第4土曜日には日中のダイヤが運転休止されて保線作業を行っているとか・・・関西本線がこんなに寂れた鉄道になっていたのにはちょっと驚きました。
しかし、高校通学時に天王寺駅で見ていた高床式の旧式ディーゼル車はさすがに無く、キハ120という新型ディーゼルカー。 ワンマンなのでちょっとバスっぽいですけど綺麗です。 今回は大河原まででしたけど、笠置から木津川沿いの風景も旅情を感じさせてくれてとてもいい雰囲気。 機会があればもっと先まで乗ってみたい線路になりました。
なお、大河原駅の窓口で帰りの切符を買ったのですけど(なんと自動券売機がありません)、JAマークのジャンパーを着たおじさんが(この駅の駅長は農協組合長が兼務されているみたいです)パソコンを使って発券してくれたのはみどりの窓口で買うのと同じサイズの切符。 同じ480円でもJR奈良駅で買った券売機のよりも格段に有難く思えました。
おっと、鉄道の話で脱線しちゃぁいけません。 話を元にもどしましょう。]

やまなみグリーネ管弦楽団。 この関西本線大河原駅から徒歩5分のところにある京都府南山城村のやまなみホールを本拠地として活動するアマチュア・オーケストラです。
また、やまなみホール。 小規模なホールですけど黒川紀章氏が設計した音楽専用ホールで音響が良いことで知られています。 やまなみ国際音楽祭が開催されていることでも有名です。
そしてこのやまなみグリーネ管弦楽団の第19回定期演奏会。 なんとマーラーの交響曲第4番がかかるとのこと。 その意欲的な試みに立会いたくて出かけて来たのですけれど・・・パンフレットを見て吃驚。
今回の演奏会は、昨今の財政難により補助金が打ち切られたことにより財団が休眠化したため自主活動として開催する初めての定期演奏会なのだそうです。 しかも、やまなみグリーネ管弦楽団、やまなみ国際音楽祭の生みの親であり、やまなみホール前館長で過日お亡くなりになられた故吉岡氏への追悼も兼ねた演奏会にもなっていました。
なんだか浮かれ気分でホールに入り、あっ三原剛さんがいるなんて思っていたのですけど(奥様のご出演ですから当然ですけど)、事の重大さに初めて気付いた愚かさに恥じ入るばかり。 真剣に聴かなくては・・・

1時間に1本の同じ列車でやってきたお客さんは10数名かな。 加茂からの列車だと開場直後にホールに到着するのですけど、大半は自動車で来られるお客さんでしょう。 既に3割位のお客さんが入っていました。
前の方の座席を取り外したので客席は300席くらいでしょうか。 取り外したぶんステージを前にせり出してはいますけどステージ上にはイスと楽器が所狭しと並んでいます。 そのステージの前に立ち、見上げるように客席を眺めて前から10段目(後ろから4段目かしら)の中央に陣取りました。 しかし背の高くない長女がもっとステージをよく見たいと言うことから左側ブロックに平行移動。 ここに落ち着きました。 パンフレットを読みつつ開演を待ちます。 開演を予告するブザーが鳴るころには客席の7割が埋まっていました。 もうちょっと入ってもいいのにな・・・

オケメンバーが出て来られて着席するとステージ上は満杯。 ヴァイオリンの3プルト目でステージが終わってまして、奏者の方が後ろを振り返って下を見、「落ちないよな」と苦笑しながら確認されていました。 また舞台右隅では古味さんも本当にギリギリっていう感じの所で大きなコントラバスを抱えておられました(奈良フィル奏者ですね。 このオケのトレーナをされているようです)。

小さなホールなのでチューニングの音もかなり大きな音で響きます。 いよいよ始まり、期待が高まります。 
指揮者の河野さんと歌手の三原さんがそろって登場。 アレっ・・て思っていたら、前館長の吉岡さんを追悼するため、プログラムには無いモーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプスの演奏をされるとのこと。 パンフレットに書かれた業績を思い返しながら聴きました。
演奏もまたそのような団員の敬虔な気持ちのよく伝わってきくるものでした。 三原さんの声の響きは豊かで、時折指揮を横目で確認されながら、柔らかく丁寧に歌っておられたのが印象的でした。 ご冥福をお祈りいたします。

さて改めて河野さんが登場。 大急ぎで指揮台を中央に押し戻し、モーツァルトの交響曲第25番の開始です。 気合の篭った演奏はまさしく疾風怒濤。 最近レコードでハイドンを聴く機会が多くなっていることもあり、ハンドンとの繋がりに自然と想いをはせるような演奏でした。 指揮者の河野さんは細かな指示で抑えたり整えたりする小細工を使わず、曲を常に前に前にと進めている感じ。 ただ躍動的に進めるあまり、コンミスの響きが少々際立って聴こえたり、各楽器の響きが充分にブレンドする間もなく進むなど、少々バランスの悪さを感じなくもなかったのですけれど、常に前向きであった演奏を支持したいと思いました。

第1楽章、河野さんのハナ息が聞こえると躍動感のある音楽が飛び出しました。 オーボエが艶のある響きで応えたあと、またハナ息とともに音楽が溢れます。 熱気のある音楽で上行・下行がくりかえされるこの曲をぐぃぐぃ引っ張っていく感じ。 各楽器の分離が良く、しかも響きが上に昇って拡がるものと直接音がストレートに届くものが聞き分けられます。 小さくて天井の高いこのホールの特徴でしょうね。 でも若干コンサートミストレス(トレーナーの八幡 順さん)の響きが際立って聴こえてくるようでした。 頑張って引っ張ろうとしている感じでしょうか。

第2楽章、その響きにアンバランスが生じたように感じたのがここの冒頭。 皆さん懸命に演奏されているけれども、どこか響きが混ざり合わないって感じ。 何かいびつな感じのアンダンテでしたけれどそれも後半には挽回。 優しい響きにはほの暗さも感じるようになっていました。

第3楽章、大きく力を漲らせた開始。 まさにシュトルム・ウント・ドランク、疾風怒濤のようなメヌエットに聴き入りました。 トリオの管楽器アンサンブルもチャーミングな演奏ではあったけどどこか直裁的。 直接音でストレートに訴えかけてくる感じ。 そしてオケはまた力を漲らせたメヌエットにもどってゆきました。

終楽章、河野さんは上体を前屈みにし、肩から腕を振り子のように左右に大きく動かし、更に勢いのある音楽を演出。 左の高音弦、右の低音弦を常に対向させ、力強く懸命に駆け抜けた感じで、熱い悲しみが迸り出てくるようでした。
常に前に前にと進む音楽には我武者羅さも感じました。 よくモーツァルトに熱演は要らないなんて知ったかぶりを言っているのですけど、間違っているのかもしれませんね。 疾風怒濤。 このところレコードでよく聴いているハイドンとの繋がりにも自然と想いを馳せさせる演奏に少なからず感嘆し、聴き入っていました。

15分の休憩。
ちょっと経ってからトイレに立ったのですけど、団員の方も小用を足されていました。 小さなホールなので楽屋が狭く、オケ団員の方の控え室は別に用意されているようです。 なおトイレでは、今の演奏どうでしたか? と顔見知りの人に聞いていたりして(実は三原さんだったりしたのですけど)、まぁ三原さんは別格としても、このように団員の方ととても近い距離感っていいよなぁと感じた瞬間でした。
ロビーに上がると、お茶席が用意されているとのアナウンスにあったとおり、大きなガラス窓越しに木津川を眺めながらお抹茶が頂けるようになっています。 春先だと景色はもっと綺麗だったかもしれません。 とにかくこじんまりと落ち着いた素適なホールです。

さてホールに戻るとステージ上は相変わらずすし詰め状態。 メンバーの方の出てこられてメインプログラムのマーラーの交響曲第4番のスタンバイ完了です。
弦楽器の編成こそ 8-7-6-6-4 という極めて小型ですけど3管編成。 打楽器は4名にハープ奏者も1名います(ハープはちょっと小型だったかしら)。 木管奏者のベルアップなんて大変では? と余計な心配もしたくなるほど詰ってました。 先のモーツァルトでちょっと心配したバランスについては、結果として全くの杞憂であったことを先に言っておきます。

逆にマーラーの交響曲第4番という大曲をこんなにも間近で、しかも各奏者の方の熱演に接することが出来たことは素晴らしい経験になりました。 オーケストラの中で聞いたらこんな感じなのかもしれません。 確かに演奏上の事故はありましたけれど、すごく想いの伝わってくる演奏に感激しました。 このところ加齢のせいもあって素晴らしい演奏を聴くと涙腺が緩んでしまいそうになるのですけれど(もちろん涙は出しませんよ)、うるうるときた演奏でした。
特筆したい場面はいっぱいありますけど、1点挙げるならば第4楽章の三原さんのソプラノによる第4節の「Sanct Ursula selbst dazu lacht.」でしょうか。 声の伸びも素晴らしくて溜息が出るほどでした。 

第1楽章、ちょっと早めのテンポ設定による開始だったでしょう。 フルートが柔らかく甘い響きが素適。 この後もクラリネット、オーボエ、ホルンと好演が続きました。 ちょっと心配していた響きのバランスは、先のモーツァルトとは違ってよく整っています。 テンポがやや速いせいでしょうね、コントラバスが早いフレーズで追いつかない場面もありましたけど気力でカバー、問題なし。 第2主題のヴィオラが柔らかく演奏したあたりから落ち着いてきたかな。 ホルンソロがとにかくよく歌っていました。
あとで気付いたのですけど、ホーボエとホルンはトレーナの先生方(オーボエは大阪チェンバーオケの香野友美さん、ホルンは大阪市音楽団の辻浩二さん)でした。 でもオケ全員が一丸になって音楽は進んでゆきます。
展開部のクライマックスへと徐々に登りつめていくあたり、弦が薄いかなと思いつつも、見通しの良い音楽でハッとすることの連続。 木管のベルアップでこんなにも響きが変わるのも体感できました。 もちろん弦楽器も粘りが感じられて見事です。 クライマックス直前のラッパが出だしほんのちょっとだけ躓いたみたいだったのが惜しかったけれど後のソロは見事にクリア。 充分なパワーを持ったクライマックからの下降ではリタルダンドをかけるような弦楽器の運びに力を感じました。 鈴が鳴るところから再現部かしら。 ここからは落ち着いてじっくりと曲が進みます。 弦楽器に粘りが出てきて、息づいたピチカートのあと、畳掛けるようなフィニッシュ。 ふぅ、もう大変な熱演の連続でした。

第2楽章、柔らかいホルンに妖艶なヴァイオリンのソロ。 ヴァイオリンのソロはちょっと音量を絞っていたのでしょう。 全体の響きに綺麗に収まっていました。 柔らかい音楽はとても躍動的でもあって、しっかりとしています。 小回りの効く小編成オーケストラの特質がよく出ていたようです。 素晴らしい音楽が続くのでその音楽に酔ってしまった感じ、とにかく聞き惚れていました。
トランペットのソロが艶やかに鳴ります。 柔らかいけど芯のある低弦に支えられ、音楽がまた進行。 こんなに間近に団員の方が懸命に演奏されているのを目の当たりにし、届けられる音楽を聴いていると、ホールの中で一緒の時間を過ごしていることそのものがとてもかけがえの無い貴重な時間であり、その時間を共有していることの喜びを感じます。 とにかく、ただただ届けられる音楽に身を委ねて聴いていました。 ここから詳細はよく憶えていません。

第3楽章の前にチューニングを実施。 三原さんも入場されて席に着きます。 ドレスは純白ではなく、ほんの少しパールがかったホワイトでしょうか。 華美を抑えたシンプルな白のドレスがかえって清楚さを引き立てています。
ヴィオラとチェロが優しく響く開始。 チェロは古楽器のような響きだったのが特徴的で、それをヴィオラがオブラートで包むような感じです。 ここにヴァイオリンの透明な響きが重なってきて、柔らかく静かなコントラバスとハープの調べにも支えれるようにして曲が進みます。 ハープは小型のものかしら、いつも見ているものよりもちょっと小さく感じました。
オーボエの凛とした響き、エキゾチックで素晴らしかった。 ファゴットも素適な響き、ホルンも柔らかく応えます。 ティムパニの連打でピークを迎えると、木管もベルアップして曲をぐっと引き締めます。
ところでこのティムパニ奏者の方、いくぶん年配の方で黒ぶち眼鏡をかけ、楽師という言葉がピッタリあてはまるような風貌でした。 しかも、かなり低い位置に座ったまま打つのですけど(打面が胸のあたりかな)絶妙のタイミング。 要所をきちんと締めていることもあって音楽が常に安定しています。
何度かこのティムパニの連打で緊張感を高めつつ、河野さんは音楽を大きく呼吸させ、歌わせます。 そして一瞬止まったあと、クライマックスへとストレートに登りつめてホルン、トランペットそしてティムパニをタイトに響かせると、すっと退く。 そしてまた優しい音楽に戻って場面転換がきちんと決まっていました。 ハープ、中音弦が優しく奏でたあと、消え入るかのように、ふわっとした着地を決めました。

終楽章、冒頭のクラリネットの出だしは惜しかったけれど、それを挽回するのに余りあるような柔らかくて見事なソロ。 オーボエ、フルートへと受け渡されていったあと、三原さんの当たりの柔らかい歌にバトンタッチ。 声の響きがやや深く、オケの響きにもよくマッチした歌声ではないでしょうか。 オケはソロを引き立てるためやや抑え加減で進めます。 歌が終わると元気を取り戻して音量アップ。 なおテンポ設定はメリハリをつけていたようです。 緩急の差をちょっと大きくつけていたみたい。 三原さんには遅めのテンポ設定のほうが良かったかもしれません。 そして三原さんもノッてきたこともあると思いますけど、後半ほど良くなってきたようです。 前半はちょっとオケを気にしている場面もありました。 でも後半はたっぷりとして伸びやかに歌い、実に清楚でキュート。 とても素晴らしかった。 特に第4節の「Sanct Ursula selbst dazu lacht. (聖ウルスラ様もにっこりとなさる)」のところはハイライトだと思うのですけど、涙が出そうになりました。 とにかく聞き惚れたまま、ハープとコントラバスの響きが消えて全曲が終了。 ああっもっと聴いていたかった。

確かに演奏には事故はありましたけど、オケ全体の気持ちが素晴らしく乗った演奏はかけがえのないものでした。
いつも演奏会に伺う時には、この時間、このホールで、この演奏に立ち会った人でないと共有できないものがあると思い、精一杯聴かせてもらうようにしているのですけれど、久しぶりに曲が終ってしまうのが残念に思える演奏に出会えました。 このような素晴らしい演奏に立ち合わせていただくことができて感謝しています。 皆さんどうもありがとうございました。
そして逆境であってもこの素晴らしいホールの名を冠したオーケストラとして今後も演奏を続けて欲しいと心より願うばかりです。