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京都市立音楽高等学校 第31回オーケストラ定期演奏会

清冽で誠実、好感のもてる演奏戻る


京都市立音楽高等学校 第31回オーケストラ定期演奏会
2004年10月9日(土)18:30 京都コンサートホール・大ホール

プーランク: バレエ組曲「模範的な動物たち」
チャイコフスキー: ピアノ協奏曲第1番変ロ短調作品23

 独奏: 山本祐梨子(p)
 指揮: 藏野雅彦

プッチーニ: 「グローリア・ミサ」より「キリエ」「グローリア」

 独唱: 竹田昌弘(T)
 合唱: 京都市立音楽高等学校
 指揮: 葛西 進

シューマン: 交響曲第1番変ロ長調作品38「春」

(アンコール)ラヴェル: 古風なメヌエット

 指揮: 藏野雅彦


若さのよく出た演奏でした。 若さといっても、はっちゃきになって頑張るというのではなく、清冽な演奏はいずれも好感のもてるものでした。
藏野さんは、いつもながらエネルギッシュなんですが、大きく振って、かなりはっきりとした音楽造りで無理をさせなかったのは先生としての一面でしょう。 オケもそれによく応えていました。
プーランクの冒頭こそやや固かったけれど、しだいに演奏にのってきたようです。 最後は輝かしいブラスと迫力のある大太鼓、大きく熱い演奏で盛り上げたあとやさしく締めくくりました。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は、山本祐梨子さんの独奏。 柔らかなタッチが魅力的でしたけど、速いパッセージも鋭く決めた後半は力強くもありました。 また、オケも雄大さを表現すべくたっぷりとしたサポートぶり。 見事な演奏でした。 たださすがにロシア的な泥臭さまでは感じませんでしたけれど。
休憩を挟んでから竹田さん指揮による学生合唱とオケによるプッチーニの「グローリア・ミサ」。 敬虔なキリエ、オペラ的でもあるグローリアともに、コントロールのよく効いた合唱はとても素晴らしいものでした。 またオーケストラは弦に透明感、柔らかな管楽器の響きによって、プッチーニ22歳の作品が、これら若い演奏者による真摯な演奏で蘇ったかのように感じました。
メインのシューマンの交響曲第1番「春」は、藏野さんのエネルギーがオケにも乗り移ったような感じの演奏。 華やかで元気、快活でチャーミング、まさに人生の春といった感じでしょう。 フィナーレはかなりな速度で走り込んだあと朗々したエンディングで決めて、ブラボーも飛んでいました。
たしかに若さからくる生真面目さを感じた部分もありますし、ソロの演奏は上手くても全体からするとちょっとバランスを欠いたように感じた部分もありました。 しかしそれは致し方ないところ。 今から老成してもらっては困ります。 これから経験をうんと積んで、才能をもっと伸ばしていって欲しい思いながら会場を後にしました。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

京都市立音楽高等学校の演奏会。 京都市立堀川高等学校音楽部といったほうがまだ名前のとおりが良いでしょうか。 数々の演奏家を輩出している名門高校の演奏会です。
ちょっと興味が湧いたのですけど、あいにくの台風。 朝からTVで台風の動きを確認し、行くか・止めようか・・・と思案していましたけど、コースが東寄りとなり、雨もあがったことから出かけることにしました。

家を出るときにちょっとバタバタしたんですけど、西大寺で電車に乗り遅れたのはショックでした。 目の前で電車の扉が閉まったんですけど、もっとショックだったのは次の電車が15分も待たない来ないこと。 しかも竹田での乗り換えにどれだけ時間がかかるのかも分からないですから、着くまではほんと気が気ではありませんでした。 とにかく1時間半かかってホールに到着。 開演15分前でした。 やはり京都コンサートホールへ行くときには事前にインターネットの乗り換え案内などでチェックしないとダメですね。

ホールに入ると3階中央に直行。 ここも前の方はけっこう人が座っていたんで、後ろから2列目の真中に入り込みました。 大向こう、ってな感じです。
さっそく分厚いプログラム(全66ページの半分は広告)で予習です。 事前に聞いていた話では、高校の絶対的な人数が少ないため、卒業生や現役の演奏家が参加されているとのこと。 確かに弦楽器を中心に卒業生や関係者が多く加わっていますけど、管楽器の中心に、いずれのポジションもメインは在校生によって編成されているようです。 腕達者な先輩たちからサポートを受ける合奏は、学生さんにとっても得がたい経験の場になるのではないでしょうか。

開演10分ほど前からメンバーが三々五々集まってきます。 ステージも客席もほぼ満席状態となって定刻です。 なおオケは14型で、藏野さんが指揮されるからでしょう、対抗配置です。 藏野さん、いつものとおりやや大股で登場。 客席に向かってにこやかに挨拶をしたあと、オケのほうを向いてから左右を確認。 準備はいいかな、そんな感じでしょうか。 この学校の先生としての一面を見たような感じがしました。

1曲目はプーランクのバレエ組曲「模範的な動物たち」。 初めて聴く曲なので、よく分からないのですけど、冒頭はやや固かったけれど、しだいに演奏にのってきたようです。 最後は輝かしいブラスと迫力のある大太鼓、大きく熱い演奏のあとやさしく締めくくりました。 全体的にはきちっと纏めたという感じでしたけど、ときどき楽器が全体のバランスからはみ出たようにも感じた部分もありました。 事故ってはみ出すというよりも、全体の響きの質に合わさっていないみたいなんで経験量かもしれませんね。 もとよりフランス音楽は苦手なんで聴き違いもあるかもしれませんので、間違っていたら許してください。

第1曲目「夜明け」、やや緊張気味のオーボエとフルートでしたけど、柔らかい弦楽器にサポートされて次第に調子が出てきて艶も感じるようになりました。
第2曲目「恋するライオン」、実はこれ見失ってました。 大太鼓が強打して吃驚したところでしょうか。 このあとは音楽にうねりも出てきて、いいなぁと思って聴いてましたけど、あまり印象には残っていません(すみません)。
第3曲目「中年男と二人の愛人」、輝かしい全奏から軽快なメロディが気持ちよかったな。 ホルンを始めブラスが柔らかく香るようでもありました。
第4曲目「死ときこり」、第1ヴァイオリンがよく揃っていて、ゆったりと進んでいきました。 全奏でぐっと盛り上がったあともすぐに悠揚とした感じでした。
第5曲目「2羽の雄鶏」、おどけた感じがよく出てました。 軽やかでリズミカル。 最後はけっこう熱い演奏になっていたようです。
第6曲目「昼の食事」、やさしい弦のアンサンブルのあと、大太鼓の強打でちょっと吃驚。 しかしなだらかとなり全体を優しく締めました。
若さが所々ストレートに出た部分もあったようですけど、清冽な感じもする演奏ではなかったでしょうか。

暗転し全員引きあげてから大急ぎでピアノを出します。 オケは12型に絞って全員揃って準備OK。 

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の独奏は、卒業生で先生でもある山本祐梨子さん。 柔らかなタッチが魅力的でした。 だた第1楽章では一番遠い席で聴いていることもあるせいかやや音像が遠く感じた部分もありましたけど、第2楽章の語りかけるようなフレーズが素晴らしかった。 そして第3楽章では速いパッセージを鋭く決めて力強くもありました。 また、オケも雄大さを表現すべくたっぷりとしたサポートぶりで見事な演奏。 たださすがにロシア的な泥臭さまでは感じませんでしたけれど充実した演奏でした。

第1楽章、柔らかいけど芯のしっかりしたホルン斉奏が見事。 また透明感の高い弦楽器のあとから、響きを深くとった柔らかいタッチのピアノが入ります。 やや音像が遠いかな、というのが最初の印象。 でもピアノをよく鳴らしているのですけど、力まかせでないところに誠実さがあって好感が持てます。 オケはたっぷりとした演奏でサポート。 低弦が柔らかいのに芯があります。 とにかく弦楽器が安定しているため演奏全体が落ち着いて進むようです。 最初はちょっとオケに埋もれ気味かなと思っていたピアノも中盤になって雄弁というか、耽美的なしっかりと歌い込むような感じ。 美しいです。 オケも大きく呼吸するように曲を進めます、でもどこかしら生真面目さを感じる部分も覗かせるのは仕方ないところかな、雄大さはあってもロシア的にならないのはいたし方ないところでしょう。 でもとても頑張っていますよ、ゆったりと進めたあとフィナーレは大きく強く締め上げました。

第2楽章、瑞々しいピチカートに、フルートが柔らかくてよかったな。 ピアノもこれに応えて優しく語り掛けるよう。 しかもピアノの響きには煌き感もちょっと増した感じです。 木管楽器もややストレートながら艶やかでなサポート、チェロはひそやかな感じで、いずれもしっかりしたものでした。

第3楽章、弾力のある開始ですけど、過激な感じはありません。 ずっと思っていたんですけど、ティムパニの音が深いんです。 ピアノのタッチは速いパッセージになっても、これまた柔らかさと煌き感があるんでちっとも暴力的な感じがしません。 溌剌とした感じで音楽が盛り上がってゆきます。 ちょっとここも生真面目な感じのした部分ですけど、学生ですからね、泥臭くはなりません。 フィナーレは大きくなり、ティムパニの強打と抑制の効いた金管でゆったりとした足取りにてゴールしました。
点と画とをしっかりとつけた感じも受けましたけど、端正さの中に若さを感じた演奏でした。

20分間の休憩。 ステージの後ろは合唱団のためにスペースを空け、オケは10型に縮小しかつ金管楽器は第2ヴァイオリンの後ろに集結した配置となりました。

グローリア・ミサ、オペラ作家プッチーニ22歳の時に作曲したこのミサ曲は、初演は大成功で評判も良かったのにもかかわらず出版と演奏を禁じたそうで、1951年に発見され、翌年シカゴで復活演奏された曲だそうです。 今回はテノール独唱を関西ニ期会の竹田さんを迎え、指揮者の1955年から教鞭をとっておられる葛西さんが当たられました。 

この曲も初めてきく曲でしたけど、しっかりとコントロールの効いた合唱がとても素晴らしいものでした。 男声は少ないものの、力がありました。 女声も柔らかくて清楚。 オーケストラ演奏もまた抑制とバランスがよく、充実していました。 竹田さんのソロは艶のある声でオペラ的だったかしら。 演奏もまたこの部分から劇的な感じになってゆきました。

パンフレットには、このミサ曲の初演時には劇場的すぎるとの評もあったと書かれていましたけど、キリエは全くそんな感じはなく、とても敬虔で荘厳な感じさえする曲でした。 演奏も艶やかで透明感の高い弦楽アンサンブルが見事でした。 柔らかい合唱ととてもよくマッチしていました。 これはいい曲だなと思いました。

グロリアは、ちょっと長かったというのが正直なところ。 でも清楚な女声合唱と快活なオケで明るく始まり、この後も華やかで輝かしく感じる合唱は敬虔さも感じられて美的。 テノールのソロがまるでオペラのアリアのように入ってきてから劇場音楽のように拡大されてゆきました。 でも終始木管アンサンブルは常に柔らかく混じり合い、透明感の高いヴァイオリン、温かみの感じられるヴィオラ、チェロやコントラバスも柔らかいけれど芯のしっかりしたサウンドは相変わらずで、これに下支えされて素晴らしい演奏が展開されてゆき、劇的に曲を閉じました。 でもやはりここでの主役は合唱でしょう。 無理なく揃ってよく伸びる声はたっぷりとしていたし、時には輝かしくもあって、充実した歌声に満足しました。

舞台はまたも暗転。 合唱団のいた位置にオケが拡大します。 今度は最初と同じく14型。 まずは予備のヴァイオリンを楽屋に引っ込めてから座席移動、ティムパニを1個出し、譜面台も増やして譜面を配布・・・皆さん手際行く動いているのに感心します。 でも、この時点で8時半。 疲れてきたね、と囁く声も周りから漏れていました。 でもこれからがメイン・プログラムのシューマンの春ですから期待が膨らみます(この曲、けっこう好きなんです)。

そのシューマンの交響曲第1番「春」は、藏野さんのエネルギーがオケにも乗り移ったような感じの演奏でした。 でも藏野さんはここでもオケに過大な要求をすることなく、大きく振って華やかで元気、快活でチャーミング、まさに人生の春といった感じの演奏に仕上げていました。 そしてフィナーレではかなりな速度で走り込んだあと朗々したエンディングを決め、会場からはブラボーも飛んでいました。 熱演だったと思いました。

第1楽章、煌びやかなファンファーレ。 三度低い1841年版をぶつけてくるのかな、と密かに期待していましたけど、通常版のようでした(パンフレットには、1841年成立と書かれていましたので)。 ゆったりと力強く、粘りも感じさせる弦楽器はこれまでとちょっと違う感じにも思えるもの。 でも次第に弦楽器はこれまでの透明感が高く明るい響きになっていったようです。  木管楽器はチャーミングだったかしら。 オーソドックスな感じなんですけど、要所でのトランペットが輝かしいのが特徴的でした。 

第2楽章、藏野さんはチェロとコントラバスの方向を見、ゆったりと音楽を始めます。 オーボエを始めとする木管楽器がいい音色です。 チェロのメロディのところも裏の木管がよく聴こえていました。 落ち着いた感じなんですけど、エネルギッシュな雰囲気を感じるのは藏野さんの個性でしょうか。 中弦も雄弁になってよく頑張っていたからかもしれません。
第3楽章、ほとんど休みなく突入、力強い音楽です。 弦楽器には弾力が感じられます。 管楽器と弦楽器との呼応も見事に決めていて、クラリネットやフルートもまたよく歌っていたのが印象的でした。 最初のトリオのところかしら、若干オケが乱れたようにも感じましたけど何事もなかったように進行。 終結部はやや足早に進めていたようです。

終楽章、ここもアタッカで突入。 大きく輝かしい序奏部、このあとじっくりと曲を進めて徐々に拡大してゆきました。 華やかで元気な音楽には若いエネルギーがみなぎっているようです。 ホルンの斉奏はよく揃っていましたけど、若干音量は控えめ。 木管アンサンブルは艶があるけどちょっとストレートに響かせたかしら。 皆さんゴールに向かって一丸になって進みます。 フィナーレのトロンボーンの斉奏でぐっと盛り上げ、かなりの速度で走ったあと、朗々としたエンディングで全体の幕を閉じるとブラボーも飛び、大きな拍手に包まれていました。

なおアンコールはラヴェルの「古風なメヌエット」。 これが終わったのが9時25分。 3時間もの長丁場でした。
いずれの演奏も清冽で誠実、好感のもてるものでした。 たしかに若さからくる生真面目さを感じた部分もありましたし、演奏は上手くても全体からするとちょっとバランスを欠いたように感じた部分もありました。 しかしそれは致し方ないところでしょう。 今から老成してもらっては困ります。 これから経験をうんと積んで才能を伸ばしていって欲しい思いながら会場を後にしました。