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枚方フィルハーモニー管弦楽団 第60回定期演奏会

演奏者の方々の心の暖かさが伝わってきた戻る


枚方フィルハーモニー管弦楽団 第60回定期演奏会
2004年10月31日(日) 14:00  枚方市民会館大ホール

ベートーヴェン:「エグモント」序曲 op.84 (*1)
モーツァルト: ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466 (*2)
ラフマニノフ: 交響曲第2番ホ短調 op.27 (*3)

(アンコール)レハール: 金と銀 (*1)

独奏: 余田佳子(p)

指揮: 佐々木實(客演 *1)、寺坂隆夫(*2)、生島 靖(*3)


合奏の好きな人達が集まった人間性を感じさせた素晴らしい演奏会でした。 時には合っていないこともあるけれど、出来ること以上のものを常に目指した一生懸命な演奏は、機能性一辺倒のオケではともすると失われがちな音楽の歓びを感じさせてくれます。
真摯で誠実な演奏だったエグモント序曲。 常にゆったりとしたテンポ設定で進められたモーツァルトのピアノ協奏曲第20番は、独奏者の余田さんの語り口に魅了されました。 とても優しいタッチなのですけれど輝きや深さもしっかりと感じるのです。 またオケも丁寧につけて余田さんをサポートをしつつ、第1楽章のフィナーレなどは熱く語っていたのが印象的でした。 そして何よりもメインの大曲のラフマニノフの交響曲第2番。 温かみを感じさせるアンサンブルで、ロシア的な暖かさみたいなものを随所に感じました。 中でも第3楽章の後半、ヒューマニティという言葉が自然と浮かんできて、旋律に身を任せているうちに不覚にも涙が出そうになりました。 とにかく音楽に対して真摯です。 常に心を合わせた合奏を心がけていらっしゃるように思いました。 そんな演奏者の方々の心の暖かさ伝わってきたのではないでしょうか。
なお今回の演奏会の当日券売上は、先日の兵庫北部の台風と新潟中越地震への被災者への義援金にされるそうです。 社会人アマチュアオーケストラの存在意義っていうと大袈裟かもしれませんけど、そのようなことを考えさせてくれるオーケストラの一つです。
50周年、ますますの発展を期待しています。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

京阪特急っていうと京橋の次は三条っていう頭があります。 だから淀屋橋のホームで何度も確認してから電車に乗り込みました。 緑色の車体でベンチシートの特急ってのにも違和感を覚えます。 しかし、特急に乗れたので枚方市駅には開場時間をちょっと過ぎたころに到着。 ちょっと早いかな、なんて思いながらホールに向かったら、なんと長蛇の列に驚きました。
ぎゃぁ、当日券を買わなくては・・・このオケの演奏会、大抵は無料なんですけど今回は記念演奏会だからでしょうか、500円となっています。 人ごみで判りづらかった当日券売り場を見つけました。 人を掻き分けるように売り場にたどり着いたら張り紙に「売上は兵庫台風水害義援金、新潟中越地震義援金に全額寄付します」と書かれていました。 ほほぅ・・・

やっと当日券を手にすると、大急ぎで列の後方に並びます。 でもなかなか進みません。 あとで判ったのですけど、入口が1箇所で受付も1箇所の待ち行列ですから、捌けないはずです。 早めに到着したので焦りはしませんでしたけど、3回くらいねじったヘビのような行列でちょっとづづ進みながら、情報処理試験の待ち行列理論の公式ってどんなんやったかな・・・なんてふっと思ってしまいました(すっかり忘れてたのですぐに考えるのは止めましたけど)。 暫くすると整理の人が出て来て、列を調整したので当日券売り場は判り易くなりました。 よかった。

さてホール1階は、半分以上埋まっていたかしら。 確か以前は2階席は立入禁止。 でも今回は特に何もなっていないようです。 改装されたみたいで(同じイメージですけど)2階席もOKにしたのかも。 とにかく階段を駆け上がってみると、さすが2階席はガラガラでした。 最前列の中央付近に陣取り、一息ついて2階のトイレに行ったのですけど、人も少ないせいかトイレの電灯が点いてません。 スイッチを探したけど分からないんで暗いなかで小用を足し、とにかく準備は完了。

席に戻り、パンフレットを読んでいましたけど、定刻を過ぎても始まりません。 よく見えませんけど1階席には8〜9割は入っているみたいです。 まだ待ち行列があるんでしょうね、きっと。 ようやく10分遅れでメンバーが登場しオケの準備も完了です。 しっかしこの感想文も本文に入るまでにずいぶん長くかかってしまったようです。 すみません、とっと、次いってみよう。

1曲目は佐々木實さんの指揮によるエグモント序曲。 真摯で誠実、重厚さよりも構成感をしっかりともたせた演奏でした。 緊張からか冒頭でちょっと乱れたようでしたけど、気合の入ったスタートでした。 オーボエ、フルート、クラリネットと木管楽器はいずれも美しく入ってきますけど、ややヴァイオリンの響きが軽めだったかしら。 弦楽器全体にも、もうちょっと練り込まれた感じが欲しいような気もしましたけど、左右(高音弦と中低音弦)の対比などよく纏まっていました。 フィナーレでも、ティムパニが小気味良く打ち鳴らされ、ホルンやトランペットの斉奏もタイトで抑制がかけられた、きちっとした演奏でした。
指揮者の佐々木さんは、この団の創立当初に指揮をされていた方だそうです。 その容姿もまったく出てきた音楽のような感じで、きちっとした演奏も頷けました。

暗転。 団員さんが大勢でピアノを中央に運び出したりイスを並べ直しています。 皆さんの動きを見ていると、本当に手作りの演奏会という感じです。 予め手順は決めているのでしょうけど、遅れているところを皆で助け合っているみたい。 自分の持ち分が終わったからって引っ込まない、なんだか一緒にお手伝いしたくなるような気持ちになります。
そんな様子を垣間見ながらプログラムを読んで吃驚したのは、ピアノ独奏の余田佳子さんのこと。 プロフィールは適当に書いてくださいね、って言われているそうです。 主はオルガン奏者でしょうか、ピアノ奏者でしょうか、いずれにしても鍵盤楽器なのは理解できますけどコントラバス奏者でもあるようです(ホームページを見ると、今もオケにトラ参加されているそうです)。 この枚方フィルにも学生時代にコントラバス奏者として参加されていたとのこと。 ついでですけど趣味はスキーと登山だそうで、スキーの腕前は国体11位の経歴の持ち主とのこと。 高ぶらずしかも容姿端麗な体育会系・・・期待が膨らみます。

そのモーツァルトのピアノ協奏曲第20番。 余田さんのピアノの語り口に魅了されました。 とても優しいタッチなのですけれど輝きや深さもしっかりと感じた素晴らしいものでした。 そしてオケも丁寧につけて余田さんをサポートをしながら、第1楽章のフィナーレなど熱く語っていたのが印象的。 とにかくこの曲は聴き慣れていてハードルの高い曲です。 CDやレコードなどではストイックな演奏でないと受け付けない部分があるのですけど、この演奏、とても柔らかく輝くよう。 そしてある種ロココ調にも感じた演奏に感じ入ったしだです。

第1楽章、ゆったりと刻むような序奏の開始。 巧い滑り出しです。 力を増すと低弦が心地よく響いてきます。 コントラバスは先ほどまでの5本から3本に減っていますけど、ちょうどいいバランス。 木管楽器も綺麗です。 徐々に哀しみを深くしつつ音楽が息づいたあとにピアノが登場。 優しいタッチで耳をそばだてました。 柔らかいのですけど輝きがあります。 テンポは遅めです。 でも決してもたれず、軽やかに囁きかけるように進みます。 オケもこれを受けて丁寧にサポート。 トランペットはロータリー式2本。 響きを突出させることなくきちっと全体の響きに収めています。 ピアノは追い込みをかける部分でもテンポをそれほど上げません。 ゆったりと慈しむように曲が進めます。 軽やかでロココ調にも思えるのですけど、音楽の深みも充分に感じます。 なんかサラっとしているようですけど、生半可なことでは出来ないように思えます。 さてオケもフレーズの最後を僅かに引きずるようにしたり、切るようにしたりして熱演です。 ティムパニもやや熱気を感じさせて、そしてカデンツァ。 ベートーヴェンのものでしょう。 柔らかく、しかも粒立ちの良いタッチ。 ゆったりと歌ったあと力強くなってもそのタッチは全く変わりません。 力強くても軽快で、ピアノを充分に鳴らして盛り上げていました。 オケも熱くそれに応えてフィナーレを形成しました。

第2楽章、羽毛のように柔らかいけど粒立ちのはっきりしたピアノによる開始。 うっとりします。 オケは若干緩みそうな部分を散見しますけど丁寧に丁寧にとつけています。 とにかくピアノが常に優しい語り口。 軽やかにスタッカート気味に進めていて、曖昧さを全く感させません。 曲が進み、曲調が激しくなってもテンポ設定は遅いまま。 切々と語りかけてきます。 淡々としているかのように見えて、ほのかな色彩を感じさせるピアノが素適です。 エンディングは指揮者の寺坂さんと顔を見合わせながら終わりました。

第3楽章、ここもややテンポを遅めにとった開始です。 オケが活気つき、左右(高音弦と中低音弦)の対比をつけティムパニが重い音で締めます。 ピアノは何度も書いているとおり気負い込むことはなく軽いタッチ。 でも重さもあって端正です。 指揮者の寺坂さんは低弦に要求を入れて音楽をぐっと盛り上げるようにしてピアノをサポート。 ピアノもまたそれに応えて息がぴったり。 音楽を歌い上げてゆきます。 途中、1階席の前のほうでは子供が走り回る場面もありましたけど、素晴らしい音楽の流れに身を任せて集中して聞けました。 カデンツァも優しいタッチは最後まで衰えることなく明快な音楽として歌っていました。 オケの出だしはちょっと揃わなかったかな。 そのせいかやや杓子定規的になったように思いましたけど、柔らかいトランペットの音とともに力の篭ったフィナーレは誠実そのもの。 全曲を纏めました。
ハードルの高い曲だけに、どのように感じるか内心心配していたのですけど、とにかくタッチの柔らかさと明快さが同居したピアノに聞き惚れていました。

20分間の休憩のあと、いよいよ大曲のラフマニノフの交響曲第2番。 プログラムによると第1楽章の主題の繰返しこそしないもののカット無しの版での演奏されるとのこと。
その演奏は常に温かみを感じさせるアンサンブルが素晴らしいものでした。 ロシア的な暖かさみたいなものを随所に感じ、特に第3楽章の後半、ヒューマニティという言葉が自然と浮かんできました。 このところ加齢のせいか、いい音楽を聴くと何故か涙がでそうになるのですけど、ここで旋律に身を任せているうちに不覚にも涙が出そうになりました(出してませんよ)。 とにかく音楽に対して真摯なのでしょう。 常に心を合わせた合奏を心がけていらっしゃるように思いました。 そんな演奏者の方々の心の暖かさが伝わってくる演奏でした。

第1楽章、あたりは柔らかいけど重いコントラバスの響きのあと、ふわっとした木管、透明感のあるヴァイオリンと上々の滑り出し。 密やかで自然なクライマックスを築きながら、じっくりと歌ってゆきます。 コールアングレの旋律、エキゾティックで素晴らしかった。 ここからオケ全体に粘りが入って歌いあげてゆきます。 クラリネット第2奏者のお姉さんが身体をくねらせながら歌い込んでいるのがとても印象的でした。 オケがだんだんと活気づき、すっと退いてまた歌う。 どこか演歌っぽい感じも受けたのは気のせいでしょうか。 ヴァイオリンのソロ、ちょっと濡れたような響きです。 クラリネットは端正、ホルンは懐かしい響きで曲を進めたあとクライマックスになりますけど、管と弦が呼応しあい、打楽器の抑制が効いたしっかりと引き締まったピークを形成。 この後も明るさを感じさせるヴァイオリン、気持ちの乗った木管楽器は暖かさを感じさせたアンサンブルが展開します。 フィナーレはまた抑制を効かせて盛り上げたあと、力を込め、念を押すようにした終始。 背の高い指揮者の生島さんの両手が腰のあたりでグッと握られていました。

第2楽章、鋭さよりもロシアの土俗的な雰囲気を醸し出したような開始。 ややテンポを遅めでしょうか。 ヴァイオリンは透明感があり、ホルンはちょっと甘い響き。 そしてホルンの斉奏がまた戻ってきて畳掛けるようなのですけれど、ホルンの響きはまろやかさを失いません。 生島さんのハナ息から、タイコとシンバルが叩かれて場面転換。 金管は明るい響き。 そしてまた打楽器が鳴る熱い音楽なのですけれど、どこか朴訥とした感じも漂っています。 けっしてユルイのではありません。 クラリネットの太い響きといい、懐かしさとか、暖かさとを感じるのです。 スヴェトラーノフがボリショイ歌劇場のオケを振った録音ってこんな感じだったよな、なんて思いながら聴いているうちにぐっと音楽を掴みこむようにして終わりました。

チューニングを実施してから第3楽章。 冒頭、ちょっと乱れたかしら。 なんか違和感を感じましたけどすぐにゆったりとした弦楽器が歌いはじめ、クラリネットの長いソロ旋律で懐かしさがこみあげてきます。 クラリネットは端正な響きで変な色がついていないからでしょうか、すっと心に染みてくる感じ。 弦楽器もそれに応え、フレーズを大きくとってゆったりと引継ぎます。 コールアングレとオーボエの絡みも素適で、さらに弦楽器もまた暖かく歌います。 じっくりと歌いつつクライマクスを築くあたりなど、しみじみとしいて、ああっいいなぁ、なんて素直に感じました。 音楽がすっと退き、今度は甘いホルンの響き、弦楽器、木管楽器ともに素晴らしい。 確かに多少のミスはあっても、暖かな血のかよった人間が演っている音楽です。 柔らかく暖かいアンサンブルに身を任していたら、日頃の鬱憤も吹き飛んだみたいで元気も出てきます。 そして何より涙だって出そうになりました。 ヒューマニティ、そんな言葉が自然と脳裏をかすめ、しみじみと聴き入っているうちに生島さんの左手がくるっと一回転して曲を締めました。

終楽章、快活な開始ですけど、ここでもややテンポを落としていたようです。 ホルンやトランペットがまろやかで、抑制が充分に効いています。 やはり人間味を感じさせ、暖かさをもったクライマックスを築きますと、生島さんが大きく振って甘美なメロディを歌わせます。 金管が常にセーブされているのですけど、生気も感じさせて見事。 透明感を感じさせる弦楽器、そしてフルートとオーボエの綺麗な響きです。 ここで生島さんのハナ息で場面転換。 曲をたったと進め、一丸となってクライマックスにのぼりつめてゆきます。 合奏が本当に好きなんでしょう。 聴かせてもらっていると、演奏されている皆さんの心や気持ちが伝わってくるみたいです。 柔らかいトランペットやトロンボーン、オケ全体でじっくりと歌いあげてゆきます。 惜しむらくは全奏になるとヴァイオリン走者の数がやや少ないことかしら。 それでも充分な力強さとまろやかさが共存した音楽となって全曲をまとめあげました。 
終始勢いで押しきるようなことのなく歌を感じさせた演奏でした。 大曲お疲れ様でした。

このあとは50周年記念のスピーチや花束贈呈などがあり、アンコールとして明るく爽やかなレハールの金と銀を演奏。 オケの皆さんもこれまでの演奏とはちょっと違って大役を終えたリラックスさも感じました。 会場全体が喜びに包まれた感じとなって演奏会はお開きとなりました。 終演は16時45分かな。 ちょっと長かったけれど、しかしとても充実した演奏会に満足して会場を後にしました。