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宝塚市交響楽団 第38回定期演奏会

熱く語ったドヴォルザークの交響曲第7番戻る


宝塚市交響楽団 第38回定期演奏会
2004年11月13日(土) 18:30  いたみホール

ブラームス: 大学祝典序曲 作品80
モーツァルト: ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
ドヴォルザーク: 交響曲第7番ニ短調 作品70

(アンコール)ドヴォルザーク: スラヴ舞曲第10番、第8番

独奏: 東郷麻矢

指揮: 佐々木宏


熱く語ったドヴォルザークの交響曲第7番に何度も身を乗り出して聴いていました。 
急激な盛り上がり、さっと翻しての歌と、集中力の高い演奏に耳を奪われました。 でも実は最初のブラームスの大学祝典序曲を聞いたとき、あまりの急激な盛り上げぶりにかなり戸惑っていました。 強弱をはっきりとつけるためか、指揮者の佐々木さんの少々暴力的にも思えた急激な盛り上げ方。 ついていけませんでした。 この調子でメインの交響曲を演られたらたまらんなぁ、なんて思っていたのですけれどそれは杞憂。 メリハリのついた演奏は予想通りでしたが、安定した中低弦・ティムパニの上にヴァイオリンが乗り、チャーミングな木管楽器とよく締まったブラス、重層感のよく出た音楽には腰が据わっていました。 そして何よりよく歌っていました。 充実した音楽は終楽章まで集中力が途切れず、粘りを増して感動的なフィナーレ。 素晴らしかった。 いずれの演奏も熱演といえるものでしたけれど、さすがにこの演奏にはオケの皆さんも気合が随分入っていたのでしょう。 終演後、オケのあちこちから満足そうな笑み、すごかったねぇ、といった感じの笑みがこぼれていたのがとても印象的でした。
なおこれに先立って演奏されたモーツァルトのピアノ協奏曲第20番。 かなり思い入れの深い曲なのですけど、今回の演奏では、カッチリとしたオケの伴奏に乗せた端正で真摯な演奏を楽しみました。 でもそんな真摯な響きの中にそこはかとない華やかさが感じられたのは東郷さんによるところでしょう。 軽やかなタッチながら深みと華やかさを感じさせたピアノ。 特に第2楽章がとても素敵でした。 終楽章はちょっと走りすぎた感はありましたけれど、でも疾走する悲しみとして理解できる演奏です。 こちらもよく纏まった素敵な演奏でした。
大学祝典序曲は先にも書いたように、急激な盛り上げ方に驚いていました。 佐々木さんの気迫の篭った指揮姿に、血管が切れないのか、なんて余計なことを思ったりも・・・とにかく熱い演奏で突っ走った感じでした。
アンコールも含めて佐々木さんの基本的なアプローチは同じように思いました。 曲に真摯に立ち向かい、きちんとメリハリをつけた音楽といった印象です。 そしてオケは、そんな佐々木さんに常に全力で応えていました。 機動力の高さを感じました。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

JR大阪駅で1本前の快速電車に乗れたので開場時間をちょっと過ぎた頃にホールに到着。
いたみホールは3度目かしら。 奈良を出て大阪府を越えて兵庫県に行くことについて、最初の頃は遠征みたいなちょっと構えた気分を持ちましたけど、最近は慣れてきました。 かえって隣の京都コンサートホールや長岡京のほうが遠いような感じのするこの頃です。

さて、ホールに入ると2階席に直行。 ここの2階席は初めて入ります。 このホールを使う他のオケの場合、2階席は親子シートになっているため遠慮していました。 ぐるっと見渡すと2階席のスペースは1階席とほぼ同等の広さではないでしょうか。 2階席の最前列も空いていたのですけど、混み合いそうだったので、中央通路のすぐ後ろに陣取りました。 26-28という番号の席(体系がよく分かりませんけど一応記録しておきます)。 通路側でゆったりと聴きたかったことがあります。 すっかり座席指定の演奏会は苦手になってしまいました。

定刻を告げるブザーが鳴り、照明が落ちてからメンバーが登場。 左右の扉から規則正しい整列入場です。 オケは通常配置で14型でしょうか、コントラバスは8本の編成となっていました。 入念なチューニングを終え、長身の佐々木さんが登場。 このオケのトレーナーも務めておられる方だそうです。 これまでにも2度指揮されて3度目の登場とのこと、息の合った演奏会期待されます。

まずはブラームスの大学祝典序曲。 爽やかだけど深みも感じさせた導入に緻密さを感じたあと一気に盛り上がります。 リキ入っているな・・・って思いましたけど、これは序の口でした。 とにかく熱い熱い(もうひとつ熱いと繰り返しても良いくらいの)演奏でした。 会場はそんな熱演にウケていたようですけど、すみません、僕にはちょっとストレートに過ぎた感じを持ちました。
とにかく演奏の強弱がとてもはっきりしています。 まろやかなファゴットによる第3の学生歌のあと木管アンサンブルがチャーミングに歌っていたのを強奏で掻き消すあたりなど、ちょっと暴力的にも思えたほどでした。 そしてフィナーレも、あっくるな、くるな、やっぱり来た、って感じでの盛り上がり。 オケはきちっと付いてきていて、それは見事だったのですけど、コントラバスも懸命に弾いているわりには全体がやや薄っぺらく感じたのはやはり走りすぎたせいでは・・・そんな印象がぬぐえませんでした。

ちょっと話は横道にそれますけど、指揮者の佐々木宏さん。 パンフレットに書かれた経歴の冒頭に「桐朋学園大学音楽部卒業。 指揮を小沢征爾、秋山和義・・・に師事」と書かれています。 だから流麗に振るのかと思っていたのですけど、基本は縦振りで、無骨な感じすら受けました。 しかも両手を下から上に何度も突き上げるようにして、まるで音楽を掘り起こしてゆくかのような盛り上げ方を随所に見せていました。 しかもその気迫ときたら、2階から見ていても、血管が切れるのでは、と余計なお世話をしたくなるほど。 ぐいぐいと曲を前に前にと進めてゆくのですけど、とにかくハンパじゃない気合を感じる指揮ぶりでした。
なお指揮者の指揮棒の使い方には2通りあるようです。 1つは指揮棒の先で指揮する方法、もう1つは指揮棒を握った手で指揮する方法だそうですけれど、佐々木さんは後者と見ました。 しかも拳、グーで指揮しているって感じを持ちました。

さて舞台が暗転。 全員退場したあとピアノを中央に運びます。 最後に残った一人がステージ上をチェックして準備OK。 メンバーが再登場すると、今度はコントラバスが4本、10型ではなかったでしょうか。 

モーツァルトのピアノ協奏曲第20番。 かなり思い入れの深い曲なのですけど、先日の枚方フィルでは意外にもゆったりとした歌で演奏を楽しみました。 今回の演奏では、カチッとしたオケの伴奏に乗せた端正で真摯な演奏を楽しみました。 でも真摯な響きの中にそこはかとない華やかさが感じられたのは東郷さんによるところでしょう。 軽やかなタッチながら深みと華やかさを感じさせたピアノ。 第2楽章がとても素敵でした。 終楽章はちょっと走りすぎた感じはしましたけれど、でも疾走する悲しみとして理解できる演奏です。 カッチリと纏まった素晴らしい演奏でした。

第1楽章、ヴァイオリンがフレーズをちょっと切るようにして導入部の始まり。 メリハリをつけた音楽はよく揃っています。 軽やかにピアノが登場。 深みも感じます。 転がるように弾いてオケにバトンタッチ。 オケはカチっとした伴奏で、木管楽器も綺麗に響きます。 ファゴットのまろやかさが素適です。 テンポは中庸でしょうか、ピアノの高音域が煌くようでもあり、ヴァイオリンの透明感も高くてとてもポテンシャルの高い演奏を楽しみました。 主題が戻り、オケの力が増して充実した演奏のあとカデンツァに突入。 ベートーヴェンのでしょう。 端正でややスタッカート気味かしら。 技巧は充分なのですけど、でもちょっとタメを少なく感じて音楽が前に前にと進めてゆくようでした。 力の入ったオケが入ってきて、駆け抜けて結びました。

第2楽章、華やかさを感じるピアノによる開始。 粒立ち良く煌びやかなのですけど深みも感じます。 ピアノが優しく軽やかに弾き、オケもそっとそれに寄り添うよう。 ヴィオラでしょうか、中音弦がちょっとせり出しきて量感もあって見事です。 オケもこれまでには余り感じることのなかったゆったりと歌う場面も感じ、華を感じさせます。 短調になると、哀しみを感じさせますけど、必要以上にメリハリをつけず自然な流れ。 ホルンの響きには潤いも感じますし、木管楽器も綺麗な響きが弦の合間から聞き取れます。 そして主題が戻り、オケもたっぷりと歌ってこの楽章を締めました。 この楽章、とても素晴らしかった。

終楽章にはアタッカで入り、決然とピアノが弾き始めますと、少々速いテンポでしょうか。 オケもスピードを上げて追随します。 ティムパニが先の細いマレットで小気味良くタンタンと打ち、縦ノリのリズム。 ピアノの響きにも力が入っているようです。 ただ速いフレーズではピアノの響きがちょっと流れて聴こえる場面もあったかしら。 とにかくピアノもオケも真摯な音楽で駆け抜けてゆく感じです。 でも軽軽しくなんかなく、よくピアノを鳴らしていますし、オケの木管も速いテンポで精一杯のフレージングで歌いかけていたのが素適です。 カデンツァ、緩急をつけていたようです。 オケが入り、トランペットも柔らかく響いて力を増したフィナーレとなって全曲を締めました。 
終楽章は個人的にはちょっと走りすぎたかなって思いましたけど、疾走する哀しみっていう言葉がふっと浮かぶようなよく纏まった素敵な演奏でした。

20分の休憩のあとコントラバスが8本に戻って、オケは12型でしょうか。 メインのドヴォルザークの交響曲第7番。 大学祝典序曲での急激な盛り上げ方にかなり驚いたので、どのような演奏になるのか、ちょっと(かなり)不安に思っていたのですけど杞憂でした。
急激な盛り上がりのあと、さっと翻して歌がありました。 そして終始途切れることのない集中力を持った演奏に耳を奪われ、何度も身を乗り出すようにして聴いていました。 とにかく前2曲と比してオケの響きの充実感が違います。 安定した中低弦・ティムパニの上にヴァイオリンが乗っています。 そこにチャーミングな木管楽器とよく締まったブラスが絡みますので響きに重層感があります。 腰の据わった音楽なのによく流れる旋律と歌。 粘りを増して感動的なフィナーレも見事でした。 終演後にオケのあちこちで満足そうな笑み、すごかったねぇ、といった感じの笑みがこぼれていたのがとても印象的でした。

第1楽章、じっくりとした開始から中低弦が時折唸りをあげるように盛り上がります。 ティムパニのロールはちょっと重く響きを抑え加減にしていて充実感のある音楽を演出。 それが頂点に達すると強く打ちすえてインパクトあります。 木管が柔らかく囀り、佐々木さんもやさしくふわっふわっとするアクション。 突き進んだ感のある大学祝典序曲と随分と違うのに驚きました。 コントラバスのピチカートも柔らかく聞こえ、中音弦が曲を支えている感じがします。 そしてクライマックス、タイトで重いティムパニ、ホルンとよく締まった響きで勢いも充分。 でも騒々しさを全く感じません。 佐々木さんは同じように熱演なのですけど、練習量の差なのでしょうか、それともブラームスとドヴォルザークの解釈の違いなのでしょうか。 僕は前者と思いましたけどどうでしょうか。 大きく歌わせたあと、すっと静め、気合を込めて盛り上げる。 オケもそれに見事に応えて機動力の高さを感じます。 しばし聞き惚れていました。 エンディングは畳掛けるように盛り上げたあと、やはりすっと退いて、ホルンの素晴らしい響きを聞かせ、最後は手綱を締めるようにして纏めました。

第2楽章、クラリネットの響きが素適だったのを始め、ファゴット、オーボエ、フルート、いずれも美しくゆったりと歌っていました。 弦楽器もピチカートがまろやかで、しかもヴァイオリンの湧き上がってくるような響きも素適です。 ゆったりとした演奏から徐々に明るさが射し込んできます。 メリハリをつけたあと、またゆったりと歌わせてホルンの遥かな響きを堪能。 クライマックスではタイトに盛り上がりますけど、終始中低弦がよく動いていて聴き応えがあります。 そしてオーボエのソロにクラリネットが絡み、フルートも入り、木管楽器はどれもチャーミングで素晴らしい。 そっと着地するかようにこの楽章を終えました。

第3楽章、やや速いテンポかしら、弦パートがよく分離しかつ響きあっています。 集中力の高い演奏で、めくるめく曲が進んでゆくのを一生懸命追いかけるようにして聴いていました。 ふわっと木管楽器が入ってきました。 少々熱気さめやらぬって感じでしたけど、オケが活気づいてきて、力強くフリアントを繰り返します。 流れるような旋律に縦ノリのリズムがうまく絡みあって聴こえるのは、ここでも中低弦の響きがしっかりとしているからでしょう。 一層力を増して演奏し、最後は残響を残して切り落としました。

終楽章、更に集中力を高めた演奏で力強く盛り上げます。 トランペットが輝かしい響きで射し込まれます。 低弦がしっかりと曲を支え、タイトなティムパニ、感動的な盛り上がりでした。 ずんずんと曲を進めて拍をズラす部分はあっさりと通過。 相変わらず佐々木さんは全力投球でインテンポで進めているようなのですけど、力強さだけではない粘りも充分に感じます。 もうごちゃごちゃと考えてないで、とにかく身を任せて聴く、ひたすら耳を傾けて聴く、そのような音楽のチカラを感じた演奏。 ひたすら聴いてました。 トロンボーン(?)の響きが心地よく、ティムパニがタイトに打ち鳴らして大きく音楽を盛り上げたあと、大きくゆったりと、何度も粘って粘って、これでもかっていう感じで全曲を終えました。 充足感のあるフィナーレでした。
しばしの静寂のあと会場から大きな拍手で包まれ、佐々木さんが舞台袖に下がると、オケのメンバーの方々もようやく緊張の糸が切れたようです。 オケのあちこちで満足そうな笑みがこぼれていました。 すごかったねぇ、といった感じで皆さん話あっておられたのだと思います。 その笑みもとても印象的な演奏でした。 お疲れさまでした。