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豊中市民管弦楽団 第31回定期演奏会

エレガントでかつ熱く感動的なフィナーレ戻る


豊中市民管弦楽団 第31回定期演奏会
2004年11月14日(日) 14:00  豊中市民会館 大ホール

ワーグナー: 楽劇「ニュールンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
ベートーヴェン: 交響曲第9番「合唱付き」

独唱:並河寿美(S),西原綾子(A),水口健次(T),篠原良三(Br)

合唱指揮指導:清原浩斗

指揮:谷野里香


オケの響きが濡れたようでエレガントでした。 まろやかで恰幅のよいワーグナー、しっかりと歌い込み最後は熱く歌いあげた第九。 どちらも見事な演奏に満足しました。
マイスタージンガーは終始柔らかい響きで統一されていて、なるほどこのようなアプローチもあったのかと新鮮な感動を覚えました。 もちろん女性指揮者だからそうなった、なんていうつもりはありません。 純粋に紡ぎだされてくる音楽に酔いました。
ベートーヴェンの第九も、基本的なオケのアプローチはワーグナーと同じでしょう。 よく締まった演奏なのですけど、弦楽器の濡れたような響きがとても耳あたりが良いのが印象的でした。 谷野さんはいつもながらの小さな振りで的確にオケに指示を与えますけど、要求しているもの以上の音楽がオケから出てくるみたいです。 谷野さんが楽譜をめくるために指揮棒がほとんど動いていないような状態であっても、量感のあるフレーズがオケから途切れることはありません。 相当練習を積まれていて、本番では無理をさせないテンポ設定をとって、オケの自主性に信頼を寄せているように思えました。 だから終始ちょっと遅めのテンポでじっくりと歌い込みながら曲を進めていたようです。 しかし、終楽章で合唱が入ると一転。 合唱団はこの日のために集められたアマチュア合唱団。 谷野さんは大きな振りをして合唱団を纏め、テンポも上がって大きく華やかに盛り上げます。 そして熱く燃えた感動的なフィナーレに結び付けました。 
アマチュア演奏家による第九と銘打たれていましたけど、見事な演奏に大きな拍手を贈りました。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

家を出たらパラパラっと雨。 夕方から雨の予報でしたけど、どんよりとした空を見上げて駅まで足を速めました。 その雨は局所的かつ一時的なものだったらしく、曽根に到着すると曇ってはいるものの雨の気配は感じません。 よかった。 曽根駅からも足を速め、開場直後の豊中市民会館に向います。 電車から見えた長い列はまだありましたけど、ハガキによる招待状の列は短く、ほんの1〜2分でホールに入ることが出来ました。 これもよかった。 
ちなみに演奏会で配布されるアンケートに感想を書くと次回の招待状が送付されてくる仕組みになっています。 今回もそれを利用させていただきました。

さてこのホールには2階席が無いため(小さなバルコニーのようなものがあるみたいですけど立入禁止)1階に入ります。 全体が見渡せる後ろのほう、ってことで後ろから6列目くらいかしら。 「は-39」に陣取りました。 右側ブロックの通路側。 いつもながら楽して聴けるところという選択です。

ついでにこのホール、いつも思うのですけど、年季が入ってます。 独特の匂いがしますし、イスのスプリングの感触もたまらなく懐かしい感じ。 お尻の下で、コイルが入っていますって主張しているような座席です。 1960年代後半、「ちびっこ喉自慢」っていう公開TV番組があって、当時の大阪厚生年金会館(現在の森之宮青少年会館)に見に行ったことがありますけど、ここでも公開録画が巡演してきたのではないかなぁ、なんて不思議なことを毎回思い出してしまいます。

広いホールなのですけど、どんどんと人が入ってきます。 定刻の5分前を告げるブザー。 後ろの方には黒いスーツ姿の男性、白ブラウスに黒のロングスカートの女性がいっぱいいます。 最初は団員の方かなと思ってましたけど、合唱団の方でした。 出番前に演奏を聴こうと集まってきているようです。 仲間同士、ご家族や親戚の方と連れ立って席につかれていました。 そして定刻のブザー。 ほぼ8割の入りでしょうか。 照明が落ちてオケのメンバーの方が整列入場しました。 オケは14型でしょうか、コントラバスは8本です。 チューニングを終え、谷野さんが登場。 ちょっと微笑んでおられたかしら。

ニュールンベルクのマイスタージンガー前奏曲。 まろやかで恰幅のよいワーグナーでした。 終始柔らかい響きで統一されていて、なるほどこのようなアプローチもあったのかと新鮮な感動を覚えました。 もちろん女性指揮者だからそうなった、なんていうつもりはありません。 純粋に紡ぎだされてくる音楽に酔いました。

冒頭から柔らかい膨らみを感じさせる響きが印象的でした。 ティムパニも当たりの柔らかい響きです。 テンポを落としてゆったりと進んでゆきますが、コントラバスが芯になって弛緩した雰囲気はまるでなし。 ホルンの強奏、トランペットの煌き、トロンボーンとチューバも勇壮ですけど、すべて角が取れた響きで統一されています。 音楽が静かになっても、弦楽器がゆったりと歌い込みます。 木管アンサンブルがチャーミングに響き、音楽が次第に盛り上がってゆくのですけど、ここもとても自然な盛り上がり。 ファンファーレもゆったりとしてまろやかな響きでフィナーレ。 ここでは音楽が一段を大きくなり、恰幅の良いワーグナーを形成して爽やかに幕を引きました。 終始ビロードのような柔らかい響きに満ちたワーグナー。 この曲をこんな風に聴けたことに大いに満足しました。

20分間の休憩。 いよいよベートーヴェンの第九。 こちらも基本的なオケのアプローチはワーグナーと同じでしょう。 よく締まった演奏なのですけど、弦楽器の濡れたような響きがとても耳あたりが良いのが印象的でした。 谷野さんはいつもながらの小さな振りで的確にオケに指示を与えますけど、要求しているもの以上の音楽がオケから出てくるみたいです。 谷野さんが楽譜をめくるために指揮棒がほとんど動いていないような状態であっても、量感のあるフレーズがオケから途切れることはありません。 相当練習を積まれていて、本番では無理をさせないテンポ設定をとって、オケの自主性に信頼を寄せているように思えました。 だから終始ちょっと遅めのテンポでじっくりと歌い込みながら曲を進めていたようです。 しかし、終楽章で合唱が入ると一転。 谷野さんは大きな振りをして合唱を纏め、テンポも上がって大きく華やかに盛り上がります。 そして熱く燃えた感動的なフィナーレに結び付けました。 アマチュア演奏家による第九と銘打たれていましたけど、見事な演奏に大きな拍手を贈りました。

第1楽章、ホルンの持続音に丁寧な響きのヴァイリンからオケの中を響きが回ってゆきます。 各パートともによく締まっていて、ゆったりと盛り上がります。 充実した音楽で、しっかりと地に足が着いているような感じ。 高音弦がステージの左から、低音弦が右からきちんと分離して届られます。 各パートの分離が良いのですけど、弦の響きに潤いを感じるのと、テンポが遅めだからでしょうか、機械的な感じがまったくしません。 クライマックスでも集中力高く盛り上がり、潤いが粘りに変わっています。 谷野さんはいつもどおり淡々と振っているのですけど、とても充実したアンサンブルに聞き惚れました。 エンディングでは熱気が加わり、集中力が一段と高まります。 力が入っているのは感じますけど、荒っぽく打ちつけるような感じはまるでなく、常に角の取れた響きで堂々と歌いあげたあと、ふわっとした感じで締めました。

第2楽章、艶を感じさせる弦楽器が緻密に鳴り、ティムパニが要所をバッチリ決めます。 ブラスも加わって熱くなるのですけど、やはりこの楽章もちょっと遅めのテンポ設定でしょう。 しかも映画「時計仕掛けのオレンジ」で使われたこの楽章の音楽とはまるで正反対の柔らかさに唸りました。 木管楽器の各パートもよく締まった響きでオケ全体の響きにマッチしています。 ホルンもタイトに締めますけど、やはり音楽は弦楽器が主役。 しかも中低弦がよく響いています。 ヴィオラが雄弁に語って充実感がありました。 ベートーヴェンにエレガントっていう言葉は似合わないかもしれませんけど、そんな雰囲気で主題を戻すと少々熱っぽい音楽に。 でもここでも走ったり激したりしません。 じっくりと音楽を進めます。 谷野さんの鼻息が届き、左手で気合を入れたあと、ふわっと着地しました。

合唱団が登場します。 中央に男声、両脇に女声という配置。 詰襟姿の学生は高校生でしょうか、数名いらっしゃいました。 オケがチューニングし、合唱団が全員揃ったあと、ソリストが登場。 この方々はプロ。 並河さん(S)は大阪シンフォニカーで、篠原さん(Br)は喜歌劇楽友協会でお耳にしたことがあるはずです。 合唱団の前、オーケストラの後ろに座りました。

第3楽章、優しい木管アンサンブル、しっとりと濡れたような弦楽器。 ここでも中音弦が柔らかくよく歌っていました。 弦楽器の響きの間から顔を覗かせるフルートやオーボエも素適に響きます。 この楽章もまたテンポを遅くとってしっとりと歌いあげてゆきました。 ちょっとした管楽器での事故やアンサンブルの乱れのようなものも感じましたけど、皆さんの心は一つ、谷野さんに向かって集中して乗り切ってゆきます。 ホルンのソロは朴訥とした感じ。 ここから音楽が活気づきます。 クライマックスをタイトに築いたあと、またじっくりと歌い、そっとこの楽章を終えました。

第4楽章にはアタッカで入ります。 艶のあるトランペットの吹奏から、ゆっくりとした感じの開始。 低弦が重厚な感じですけど、谷野さんはチェロとコントラバスの方を向き、集中力を高めながらじっくりと歌わせています。 無理に響きを引き出すのではなく、あくまでも気持ちを一つにして充実した音楽つくりをされているみたいです。 だから歓喜の主題もおごそかにゆっくりと奏でられます。 弦楽器の各パートに潤いがあり、優しいファゴットの響きも素適。 そしてオケが一体となって音楽が進みます。 艶のあるトランペットの響きでたっぷりとした感じの音楽となって盛り上がってバリトンソロの登場。 朗々として声量充分。 合唱もよく揃った歌唱です。 ソリスト4名が立って歌うと、それぞれ粒の揃った歌唱でぐっと盛り上がりました。 スパッと切ったあとしばし静寂。 行進曲、オルガンのような重厚な響きによる始まり、パーカッションはぐっと控えめですけどピッコロがぐっと前面に出た感じ。 テノールがまろやかな声質で歌います。 ぐっと盛り上がると速度も上がります。 ホルンの斉奏がまろやかにしかも力強く吹奏、谷野さんは低弦に指示して音楽が一段と活気づきます。 オケには必要最小限の指揮でしたが、合唱団には大きく指揮をし、集中力をより高めてい歌い込ませるようです。 合唱団もそれに応え、キリッ引き締まった声で反応します。 男声合唱の部分「Seid umschlungen Millionen!」のヤマ場、もうちょっとパワーが欲しいようにも感じましたけどなかなか立派。 そこに女声が入ると華やかになります。 ホルンも高らかに吹き(見事)、オケも活気づいて熱気が高まります。 ソリストがすっと立ち上がって競演、よりいっそう力が漲ります。 音楽はうねるようにして盛り上がってゆき、打楽器も入り、オケからは底鳴りのするような響き。 ソロ歌唱が消えると、感動的なエンディングに突入。 トランペットが高らかに吹き、負けずに合唱も高らかに歌いあげて、走り、縦ノリのリズムでぐいぐいっと押したあとは、さっと翻してふわっと全曲結びました。 熱く燃えた感動的なフィナーレでした。

感動的な音楽で締めたことも見事でしたけど、いずれのパートでも柔らかい響きで絶叫的に盛り上げる場面は皆無。 充実した演奏でした。 アマチュア演奏家による第九と銘打たれていましたけど、プロ・アマ関係なく、素晴らしい演奏に大きな拍手を贈りました。