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天理シティーオーケストラ 第4回定期演奏会

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天理シティーオーケストラ 第4回定期演奏会
2004年11月28日(日) 14:00  天理市民会館

スメタナ: 交響詩「モルダウ」(連作交響詩「わが祖国」より)
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第5番「皇帝」変ホ長調 作品73

(アンコール)ドビュッシー:喜びの島

シベリウス: 交響曲第2番 ニ長調 作品43

(アンコール)シベリウス:交響詩「フィンランディア」
(アンコール)J.シュトラウス:ラデツキー行進曲

独奏:三木康子(p)

指揮:安野英之


シベリウスの交響曲第2番の冒頭、とても柔らかな響きが重なりあい、豊かで素晴らしい音楽に一気に惹きこまれました。 この曲、色々な演奏で聴いていますけれど、この演奏のような暖かさを感じたことはこれまでにありません。 心が暖まるような感動を覚えました。 また全曲を通しても、とても気持ちののった演奏でした。 特に終楽章では輝かしいブラスと芯のしっかりとした弦楽器による充実した響き。 全員一丸となった演奏に感激しながら聴いていました。 とても素晴らしい演奏でした。
三木康子さんをソリストに迎えた皇帝協奏曲。 三木さんのピアノは粒立ちが良く、煌くみたいなのですけど、しかっりと深みも感じさせて歌いあげました。 オケもしっかりとしたサポートぶり。 端正な演奏だったと思いますけど、終楽章のフィナーレは縦ノリのリズムで区切るようにして入り、一気に燃えてきちっと曲を締めました。
モルダウも端正ですっきりとした情感を感じさせる演奏でした。 力強くタイトなクライマックス、音量が上がって熱気が篭っても音楽の型が決して崩れてしまうことはありませんし、響きそのものが刺激的になることもありません。 輝かしく整ったブラスで盛り上げ、最後は全員が息を揃えてフィニッシュ。 とてもよく纏まった演奏でした。
全体的に高音弦が少ないせいか、若干コクみたいなものがもう少し欲しいと感じた部分もありましたけれど、どの曲もそれ以上に気持ちのよくのった演奏に満足しました。
今回もまたブラスバンドの女子高生でしょうか、3人組が各自スコアを持って楽しそう演奏を聴き、またアンコールのときなど人一倍大きな拍手を贈って大喜びしていたのが印象的でした。
天理市民会館には始めて入りましたけど、新装になって綺麗になったホールだけではなく、集まって来られているお客さんの雰囲気がとても気持ち良く、清々しい感じもしたハート・ウォーミング(heart-warming)な演奏会でした。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

始めて行くホールなのでちょっとドキドキします。 14時開演なので、35分前に近鉄の天理駅に到着。 でも悲しいかな、明日の会議のため、今夜新幹線で東京に移動です。 演奏会の前、JR天理駅のみどりの窓口で新幹線の座席指定をすることにしました。 日曜の夜、単身赴任族が東京に戻ってゆきますので、19時台の新幹線は予約しないとダメなんです。

しかしここでドキドキ度が一気に上昇。 前に3人並んでいたのですけど、駅員さんが一人で改札も兼務です。 しかもJR天理駅は自動改札じゃないので、Jスルーカードも駅員さんがお客さんのカードを預り、改札内の専用?端末に差し込んでます。 しかもお客さんの問合せの受け答えもしないといけないし・・・その度に「ちょっと待ってください」って、みどりの窓口は後回し・・・ゲゲゲ。 おまけにみどりの窓口に並んでいる人も、切符の変更(しかも満席で変更できず、さあどうしましょう?)なんて手のかかることをやったものだから20分位並んでいました。 僕の指定なんて僅か1〜2分で処理されたのですけれど、これは参りました。

ホールには10分前に到着。 慌てて階段を駆け上がって2階席・・・かと思ったら1階席の後方でした。 後ろから3列目、右ブロックの中央通路側 W-24 を確保しました。 全体が見渡せる場所で隣も居ませんので楽チンです。 しかもイスの座り心地も改築効果でしょう、すこぶるよろしい。 そしてステージを見ると、薄暗いなか、青白いのライトが指揮台のあたりを照らしています。 この照明、ちょっと幻想的な気分にもさせてくれて、とてもいいですね。

オケの皆さんは、三々五々ステージに出て来られて練習をされています。 整列入場できちっと仕切って始まるのもいいのですけど、こうやってステージで練習されているのを耳にすると、こちら側の気持ちとしても、そろそろ始まるんだなぁ〜と期待も徐々に高まってきます。
ブザーが鳴り、開演を告げるアナウンスに続いてコンサートマスターが登場。 チューニングをして準備完了。 指揮者の安野さんがにこやかに出てこられて始まります。

1曲目はモルダウ。 端正ですっきりとした情感を感じさせた演奏でした。 力強くタイトなクライマックス、音量が上がって熱気が篭っても音楽の型が決して崩れてしまうことはありませんし、響きそのものが刺激的になることもありません。 輝かしく整ったブラスで盛り上げ、最後は全員が息を揃えてフィニッシュ。 よく纏まった演奏でした。

柔らかいフルート、そしてクラリネットのめくるめくような漣(さざなみ)に続き、小さなピチカートのあと、伸びやかで綺麗な弦楽器が滑るように歌います。 上々の滑りだし。 巧かったです。 そして、情感にもたれかかることのないスキッとした演奏が続きます。 ブラスにも抑えが効いていて、ホルンも控えめに響かせます。 弦楽器が響きを増しますと、ステージの右側の中低弦と左側の高音弦がしっかり分離。 低音の上にヴァイオリンが乗って旋律を奏でています。 柔らかな木管とハープ、ちょっと湿り気を感じさせるヴァイオリン、いずれも優しく軽やかに響きます。 しかし次第に音楽に熱気がこもってきて、ヴァイオリンに主旋律が戻ると、弓をいっぱいにつかって歌いあげます。 ヴァイオリンの人数が少ないせいもあるのでしょうか、洗練された歌のよう。 土俗的な匂いはありません。 音楽がさらに熱気を増し、タイトに盛り上がってゆきます。 でも、音量が上がって熱気が篭っても音楽の型が崩れません。 輝かしく整ったブラスで更に盛り上げても刺激な響きはなし。 ただし弦楽器だけになると、数の少なさが出てしまうのかな、ちょっと不安定に感じた部分もありましたけど、最後は全員が息を揃えてフィニッシュを決めました。

暗転。 ヴァイオリンと管楽器奏者がいったん引っ込み、ヴィオラが少し後ろに移動してピアノを出します。 ピアノはスタンウェイのコンサート・グランドを使っているとのことでした。 オケ・メンバーが揃ってチューニングをして準備完了で、淡いピンクのドレスを来た三木さんと指揮者の安野さんが登場して始まります。

皇帝協奏曲。 三木さんのピアノは粒立ちが良く煌くみたいですけど、しかっりと深みも感じさせて歌いあげました。 オケもしっかりとしたサポートぶり。 端正な演奏だったと思いますけど、終楽章のフィナーレは縦ノリのリズムで区切るようにして入り、一気に燃えてきちっと曲を締めました。

第1楽章、柔らかなオケの響きに、煌びやかなピアノが登場。 深みも感じられるピアノの響きで華麗な開始。 オケは中低弦がしっかりとし、この上でヴァイオリンが奏で、雄大かつ爽やかな感じ。 若干ヴァイオリンの響きが堅いかな。 安野さん、オケの左右を見ながら大きく歌い上げようと指示します。 ピアノは相変わらず美しい響きで粒立ち良く、深みも感じられます。 スタッカート気味にオケが力を増すと、ピアノもそれに相対するように弾きます。 ストレートの真っ向勝負みたい。 ピアノが上下行するときの集中力も高く華麗。 再現部でしょうか、全体に力がこもってきて、綺麗なんですけど媚びたようなところのない誠実に演奏で繰り返されます。 木管楽器が可憐に響き、ホルンも朴訥な感じ。 最後はオケ、ピアノともに力を増しつつ呼応し、明るい響きでスパっと終わりました。

第2楽章、柔らかいコントラバスのピチカートに、おごそかな感じのする弦楽アンサンブルによる開始。 そこに明るく粒立ちのよいピアノが語りかけてきます。 ホルンが柔らかく、オーボエが可憐にからんでとても素適。 詩情を感じる演奏です。 安野さんは棒を置いて手で指揮されていたようです。 華麗に輝くようでいて、しっかりとした芯(力)を感じさせる三木さんのピアノ、柔らかな木管も相まって静かに歌い込んでゆきました。

第3楽章、アッタカで力強いピアノ。 オケも端正に音楽を盛り上げます。 よく纏まった音楽です。 オケもピアノもストレートに燃えている感じ。 弦の分奏もよく決まっています。 なかでも中低弦がしっかりとし、息づいているのが印象的。 ピアノも力を増し、オケと協調しあいながら音楽がぐんぐんと進みます。 ティムパニが中央で小気味良く叩き、縦ノリのリズムで音楽にメリハリをつけてフィナーレへ。 演奏に熱気が増しても音楽は端正な感じ。 そして最後は一気に燃え、きちっと曲を締めました。 
ちょっと小ぶりな感じのエンディングは、品よく纏めたという感じでしょうか。 終始きちっとした演奏でした。 かえってそれで単調に感じる部分も無くはなかったのですけど、よく纏まった演奏は見事だったと思います。

三木さんのアンコールはドビュッシーの「喜びの島」。 初めて聴く曲です。 ラヴェルの曲かな、と思って聴いていたのですけど、ドビュッシーでした。 明快なタッチで響きが多彩。 もちろん深みも感じます。 ベートーヴェンでも思ったのですけど、どこか端正で響きなのですけど明るさを感じるのは三木さんのお人柄が出ているのかもしれません。 そんなことを感じました。

15分間の休憩。 しばらくしてからトイレに行ったら、女子トイレに長蛇の列。 男子トイレは問題なく用を足しましたけど、他人事ながらちょっと心配した瞬間でした。 席にもどってパンフレットを読んだりしているうちに開演を告げるブザー。 皆さんトイレに行けたかな。

メインのシベリウスの交響曲第2番。 パンフレットには「調性やリズムが輻輳し、弦楽器に大変高度な技術が求められるこの曲は、アマチュアオーケストラにとって大変な難曲」と書かれています。 でも、この曲の冒頭に心が暖まるような感動を覚えました。 柔らかな響きが重なりあい、響きあって、豊かで素晴らしい音楽。 一気に惹きこまれました。 この曲は有名曲なので、色々な演奏で聴いていますけれど、この演奏のような暖かさを感じたことはこれまでにありませんでした。 また全曲を通しても、とても気持ちののった演奏でした。 特に終楽章では輝かしいブラスと芯のしっかりした弦楽器による充実した響き。 全員一丸となった演奏に感激しました。 とても素晴らしい演奏でした。

第1楽章、柔らかくふわっとした開始。 中低弦がふくよかに響きます。 木管楽器もチャーミング。 ホルンも柔らかく甘い。 柔らかな響きが重なりあい、響きあって、豊かで素晴らしい音楽に惹きこまれました。 これまでの経験からも、ちょっとない響きの暖かさに感動しました。 引き締まった低弦のピチカートがよく聴こえ、しかも息づいています。 ぐんぐんと音楽が盛り上がってくると、柔らかさと強さの両面を併せ持った音楽。 ホルンの斉奏も力強いけれども響きの角が取れたまろやかさを感じます。 伸びやかな弦楽器も素敵だし、熱気を孕んだブラスもタイトでカッコ良い。 そしてそのブラスは、ステージの左側にホルン、右側後列にトロンボーン、チューバ、前列にトランペットが居て、左右で呼応しあい協調しあいます。 弦楽器もまた左側の高音弦と右側の低音弦も同様に呼応しあって協調。 ティムパニが中央で的確な打音で要所を締める充実した音楽に聞き惚れていました。

第2楽章、ティムパニのトレモロからコントラバスとチェロによる見事に揃ったピチカートが繰り返されました。 そして、ファゴットの深く張りのある響きがとても素晴らしいものでした。 そしてこの主題がじっくりと受け渡され、その間まったく集中力が途切れず見事。 クライマックスもじっくりと歌い上げます。 民謡調の穏やかなメロディ、弦楽器が歌ったあと、明るく優しいフルートが入ります。 このたあり、ちょっとテンポを落としていたかしら。 そして緊張感の高まり、それをすっとまた抑えた強弱の変化も見事についています。 トランペットのソロが甘く切なく吹くとホルンやフルートも絡み、そしてまた力を増すなど、対比・呼応などとても見事でした。

第3楽章、安野さんのハナ息でしょうか、弦楽器がそれに合わせて飛び出します。 低弦の響きが充実しています。 グイグイと力を増したあと、突然中断。 ティムパニの打音に導かれ、オーボエの可憐なソロが響きます。 そしてチェロのソロも甘く切なく、またオーボエが戻ってきて、弦楽器や木管楽器も加わり、心に染み入るような音楽。 素晴らしい。 ティムパニが赤いマレットを持ってオケとともに冒頭の嵐の部分が割り込みます。 迫力があり、力強さだけではなく緻密さも感じる音楽。 オーボエが戻り、クラリネットやフルートも優しく寄り添いますけど、また音楽に力が入ってきてぐんぐんと活気づいてきます。

第4楽章、アタッカで突入。 やや前のめりな感じにも思えた雪崩れ込み。 輝かしいブラス。 やはりちょっと早めのテンポ設定でしょうか、このあたり前に前にと曲を進めていました。 かなり気合が入っているようです。 もうちょっとここに粘り気が欲しい感じがしましたけど、高音弦が少ないためかもしれません。 皆さん一所懸命なのでこれは欲というものでしょう(すみません)。 音楽が静かになり、チェロとヴィオラの響きの上で木管楽器が静かに歌います。 するとブラスが吹いてこれが遮られ、盛りあがったあとは展開部かしら。 コントラバスのピチカート、透明なヴァイオリン、じっくりとした音楽がまた進みます。 チェロがだんだんと速度を上げ、木管、続いて金管、叙情的にじわじわっとクライマックスへと登りつめ、そして大きく歌う第1主題。 ヴァイオリンが弓をいっぱいに使って大きく歌い、力を増し艶も感じました。 高らかに清々しく歌い上げた感じ。 そしてまたじっくりと進めてから全員が一丸となった熱い音楽で輝かしいフィナーレを形成。 最後は安野さんの右手がすぅーと上に伸びて曲を締めました。

高らかに歌い、輝かしいフィナーレもとても見事でした。 でもやはり冒頭のあの響きの暖かさ豊かさがとても印象的でした。 ハート・ウォーミング(heart-warming)な演奏。 とにかく全員一丸となった演奏に、感激しながら最後まで聴かせてもらいました。 素晴らしい演奏でした。

このあとアンコールとして力強いフィンランディア。 そして会場と一緒になったラデツキー・マーチで散会。 
今回もまたブラスバンドの女子高生でしょう。 3人組で各自スコアを持ち、楽しそう聴いていた子たちがとても嬉しそうでした。 そしてアンコールでも人一倍大きな拍手を贈って楽しんでいたのも印象的でした。 集まって来られているお客さんの雰囲気がとても気持ち良く、清々しい感じのした演奏会でした。 
でも哀しいかな、出張のためにそのような気持ちを持続できず、ちょっと長引いた演奏会のために駅まで走って帰らねばならなかったのはとても残念でした。