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関西大学交響楽団 第56回定期演奏会

流麗で情感ある演奏戻る


関西大学交響楽団 第56回定期演奏会
2004年12月8日(水) 19:00  吹田市文化会館メイシアター 大ホール

チャイコフスキー: スラブ行進曲(*1)
ボロディン: 交響曲第3番「未完成」(*2)
チャイコフスキー: 交響曲第6番ロ短調op.74「悲愴」

指揮:竹本泰蔵、中山智左希(学生,*1)、織田映子(学生,*2)


学生オケらしくフレッシュでイキの良さに加え、流麗で情感ある演奏を楽しみました。 
ことに竹本さんは独特な美感をお持ちのようでした。 また学生指揮者のお二人は、前回よりも格段に進歩したバトンテクニックに目を見張りました。 しかもお二人とも暗譜。 相当に練習を積まれたのではないでしょうか。 オケと一体となった演奏はとても素晴らしいものでした。
スラヴ行進曲は、3回生の中山さんのしなやかな棒が曲想をうまく引き出していました。 冒頭、コントラバスに向かって右手を伸ばして深い響き引き出していたことも見事なら、フィナーレでの盛り上がり、オケ音量が上がるのとは逆に徐々に小さく振ってオケの集中力を高めてゆき、エンディングを大きく振ってダイナミックに纏めた着地も実に素晴らしいものでした。 情感に迫力もありました。
ボロディンの交響曲第3番、こちらは2回生の織田さんのキレの良い棒で旋律をすっきりと歌わせていました。 織田さんの棒捌き、ぐいっと下げてから、スパっと上げる所作はヴァイオリンの弓捌きから来ているのでしょうか。 とにかく、懐かしく感じさせる旋律がてんこ盛りのこの曲を爽快に演出。 ぐいぐいとオケをのせて生気があり、旋律の歌いまわしもとても見事でした。
悲愴交響曲は、マーラーの交響曲からゲーム音楽までジャンルを超えて活躍されている竹本泰蔵さんの指揮。 竹本さんの経歴には、1977年に開催されたカラヤン・コンクール・イン・ジャパンでベルリンフィルを指揮して第2位に入賞。 その後、カラヤンに招かれてベルリンフィルの演奏に参加されたとの記載があります。 そのことを裏付けるかのような流麗な音楽作りに、「えっ」とか「おっ」って思うような場面があちこちにありました。 とにかくどの場面でも響きが柔らかくて、明るさがあるのが特徴的です。 深刻ぶらない悲愴交響曲。 独特な美感を漂わせた演奏でした。 カラヤン流に言われるとしたら、スタイリッシュな悲愴交響曲、とか、スポーツカーみたいな演奏って言われるのかもしれません。 あちこちでこの曲を聴かせてもらっていますけれど、このような流麗な演奏は記憶にありません。 オケもそのような竹本さんの要求によく応えてとても見事でした。 4回生の皆さんにとってはとても良い思い出になった演奏会ではなかったでしょうか。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

平日の夜の演奏会って久しぶり。 一応会社員なので、仕事が気になります。
今日は特に何もないみたいなのですけど・・・でも、ちょっと気になった事項があったので、定時になってからメールを送ってとっとと退社。 ちょっとヤクザだったかな。 でも文末には「なお本日は誠に勝手ながら定時退社いたしますので、ご連絡はメールまたは明日以降によろしくお願いいたします。」と書いてます。 でもやっぱヤクザだな・・・

とにかく会社を出て、阪急電車の駅に直行。 乗り継ぎ無しの電車がすぐにやってきたので、ホールには開演45分前に到着しました。 すぐさま2階席へ。 
いつも愛用の中央通路後ろの足もとの広い席はパス(後ろに大きな三脚にカメラが据付られていたので)。 右ブロック最前列の通路側 す-30,31 を確保しました。 かなり早い時間の到着ですけど、1階席はもうけっこう人が入っています。 結果的に1階席はほぼ満席状態になり、2階席も8割は入ったのではないでしょうか。 時間がたっぷりあったので、パンフレットを丹念に読みながら開演を待ちます。 迂闊にも4回生にとっては卒業公演だということをパンフレットで気付きました。 なるほど、この時期に大学オケの演奏会が多いのにも納得しました。

予告ブザーが鳴り、オケのメンバーが整列入場。 ステージ上には座席がいっぱい並んでいるため(最初は16型)、左右から一列になり、座席の間を抜け、アリの行列のように(失礼)奥から詰めて座ってゆきます。
しかし、お客さんも続々と入ってくるので、席を探して歩きまわるためホール内がザワついています。 1階で並んだ席を確保するのを諦めたのでしょうか、壁際に立っている人も数名見えました。 ようやくホール内が落ち着いてきたので照明が落ち、コンミスが登場。 チューニングをして準備完了です。 赤でしょうか、チーフを首に巻いた学生指揮者の中山さんが登場。

スラヴ行進曲、言わずと知れたチャイコフスキーの有名曲ですけれど、とても充実した演奏に満足しました。 暗譜の中山さんはしなやかな棒さばき。 これによって曲想をうまく引き出していました。 冒頭、コントラバスに向かって右手を伸ばして深い響き引き出していたことも見事なら、フィナーレでの盛り上がり、オケ音量が上がるのとは逆に徐々に小さく振ってオケの集中力を高めてゆき、エンディングを大きく振ってダイナミックに纏めた着地も実に素晴らしいものでした。 

コントラバスの方向に向かって一歩踏み出し、指揮棒を持った右手をフェンシングの剣のように前にすっと伸ばして振りはじめます。 するととても締まって唸るような響きが湧き上がってきました。 いい響きです。 ゆったりと他の弦楽器も歌いはじめます。 落ち着いて、憂いも感じさせる見事な開始に聴き入りました。 管楽器が端正に吹いて、音楽が高揚してゆきます。 とてもよく締まった音楽。 若干、管楽器と弦楽器の間に隙間を感じないでもありませんけど、それぞれによく纏まった演奏だからでしょう。
曲調が変わって、コントラバスのピチカートに乗せて管楽器が歌い始めます。 ここもタイトできちっとした音楽が立派です。 ゆったりと曲を進めてから、じわじわっと盛り上げてゆきますが、中山さんの腕の動きはとてもしなやか。 曲想をよく現しているのが見ていてもよく感じられます。 前回は左手の動きなど、やりたいことは分かるけど、今一歩に感じた部分がありましたけど、今回はそんな風に思えた場面はまるでありません。 しなやかに振って曲を盛りたててゆきます。
ティムパニの張りのある響きから、リズム感よく纏めてフィナーレへ。 音量がしだいに上がってゆきますけど、中山さんの振りはかえって小さくなります。 胸の前あたりで自分の身体に平行に上下に動かし、オケの集中力を高めているのでしょう。 ぐいぐいと音楽をタイトに高揚させていったあと、最後は大きくしなやかに振ってダイナミックな音楽として着地。 見事。 この巧い纏め方に大きな拍手を贈りました。 

ステージは暗転し、一度全員が引き上げます。 仕切りなおしでしょう。 再度メンバーが登場して着席。 今度は14型。 サブコンミスが出てきてチューニングしたあと、今度は学生指揮者の織田さんが登場です。

ボロディンの交響曲第3番、聴く者に懐かしさを感じさせるような旋律がてんこ盛りのこの曲を爽快に演出して見事でした。 織田さんも暗譜で、キレの良い棒から旋律をすっきりと歌わせていたのが印象的。 この織田さんの棒さばき、ぐいっと下げてから、スパっと上げる所作はヴァイオリンの弓さばきから来ているのでしょうか。 とにかくぐいぐいとオケをのせて生気のある音楽が迸り出てきます。 そして旋律の歌いまわしもとても見事なのに感心しました。 この音楽を堪能しました。

第1楽章、オーボエの哀愁を含んだメロディが素適。 聞き惚れているうちに木管楽器が奏で始め、弦楽器が懐かしいメロディを歌い始めていました。 音楽の中にすっと入り込みます。 中山さんはしなやかな棒さばきでしたけれど、織田さんの指揮はとてもキレが良いのが特徴的です。 木管の囁きに、弦楽器がグィと割り込んでくるあたりなど実に潔い感じがします。 懐かしい感じのする旋律が次から次へと歌われてゆくのですけれど、オケの中低弦が頑張っているせいでしょう、安定した重心のうえにこれらがバランス良く流れてゆきます。 再現部のオーボエから弦楽器の各パートが歌いまわすあたりも見事でした。 このあたりも聞き惚れてしまってよく覚えていません。 とにかく最後は優しく歌わせてから、そっと締めました。

第2楽章、第2ヴァイオリンの囁きに管楽器がのります。 5拍子ですか、よく纏まっているだけでなく、音量を増して生気あふれるスケルツォがとてもいい感じです。 弦楽器がよく揃っていて、威勢よく、分奏も見事。 もちろん管楽器も要所をきちんと纏めていますけど、ここは弦楽器が主役でしょう。 ここでも聴き応えのある演奏を楽しみました。
左手を回してスパっと音楽を切って落とし(ここも潔い)、クラリネットの優しい響きが郷愁を誘います。 場面転換が見事。 情感あふれる心温まるような音楽です。 中音弦が健闘。 オーボエの甘い響きのソロ、弦楽器が更に情感を高めてゆきます。 フルートやホルンも甘く入ってきて、なんだかじ〜んとくるものを感じました。 そして音楽がしだいに活気ついてきて、生気ある音楽が駆けだして、最後はリズム感よくチャンチャンと終了。 オケも指揮者も一体となってとても見事でした。 よくこなれた音楽を堪能させていただきました。

15分の休憩。 1階席はほぼ満席、2階席も8割以上は入っているようです。 コンミスが登場。 チューニングを行ったあと、にこやかに指揮者の竹本さんが出てきました。 

指揮者の竹本泰蔵さん、マーラーの交響曲からゲーム音楽までジャンルを超えて活躍されているマルチプル・コンダクターとパンフレットに紹介があります。 経歴として、1977年に開催されたカラヤン・コンクール・イン・ジャパンでベルリンフィルを指揮して第2位に入賞。 その後、カラヤンに招かれてベルリンフィルの演奏に参加されたと書かれています。 その経歴を裏付けるような流麗な音楽作りに、「えっ」とか「おっ」って思うような場面があちこちにありました。 とにかくどの場面でも響きが柔らかくて、明るさがあるのが特徴的です。 深刻ぶらない悲愴交響曲。 独特な美感を漂わせた演奏でした。 カラヤン流に言われるとしたら、スタイリッシュな悲愴交響曲、とか、スポーツカーみたいな演奏って言われるのかもしれません。 あちこちでこの曲を聴かせてもらっていますけれど、このような流麗な演奏は記憶にありません。 オケもそのような竹本さんの要求によく応えて見事でした。 4回生の皆さんにとってはとても良い思い出になった演奏会ではなかったでしょうか。

第1楽章、コントラバスの低い響きの上で、うごめくようなファゴットによる旋律の呈示。 ここのコントラバスの響きがそれほど強調されず、ファゴットもどこか優しさにも似た響きの明るさを感じました。 中山さんのスラヴ行進曲のほうが集中力や重低音の迫力があったでしょう。 竹本さんは、大きくゆったりと振り、全体を纏めてゆきます。 ホルンやヴィオラの響きもあっさりとした感じ。 第2主題も軽く歌いながらすっすっと前に前にと進んでゆくみたい。 スタイリィッシュな音楽です。
展開部でしょうか、力強くタイトに盛り上がったあと、また流れるように歌いはじめます。 ここではテンポをぐっと落とし、優しく軽やかに。 竹本さんの爽やかな笑顔が垣間見えます。 木管楽器のソロ、ここではテンポをあげて軽やかに吹奏し、裏で吹くファゴットも柔らかく響かせていました。 弦に旋律が戻るとまたゆったりとやわらかく歌うよう。 クラリネットが甘い響きを聴かせてくれたあと、強靭な音楽が疾走。 力強いけれど、けっして騒々しく感じることはありません。 流麗で、響きが柔らかく艶っぽくもあります。 嵐がおさまると、コントラバスのピチカートに表情をつけるような指示を送る竹本さん。 そしてまたクライマックス。 うねるように盛り上げてゆきますけど、余計な力を感じさせません。 スポーツカーで疾走するかのよう。 終結部は、柔らかい低弦のピチカートに甘い響きのトランペット、木管が奏でたあと、静かに幕を閉じました。

第2楽章、冒頭の5拍子のワルツ。 難しいところです、チェロがうまく揃いません。 竹本さんが指揮台の上で踊って集中力を高めようとしています。 ヴァイオリンが入ってきて挽回したようですが、楽器が少なくなると、まだちょっと脆さも感じますけれど、徐々に調子が出てきたようです。 鼓動のようなティムパニの響きのうえでヴァイオリンがしっとりと歌います。 竹本さん、ここまでくると安定している中低弦をほとんど見ず、主旋律を歌う高音弦や管楽器に表情をつけていました。 音楽の肌触りがよく、木管アンアサンブルなども要求によく応えて巧いものでした。 そして各管楽器に優しく指示を与え、最後は弾むようなピチカートのあと冒頭の1小節をまあるく演奏して締めました。

第3楽章、明るい響きによる開始。 管楽器は抑制し、弦楽器主体で軽やかに進んでゆきました。 ティムパニも柔らかくしなやかな打音。 クラリネットが奏でる旋律も優しい響きで控えめな感じ。 ふわっとまろやかに盛り上げてゆきます。 すべての響きの角が取れているみたい。 ティムパニの強打からぐいぐいと盛り上がってゆきますけど、しなやかさは失いません。 金管ファンファーレも響きの柔らかさが特徴的なんですけど、けっしてヌルい音楽ではありません。 スパっとしたキレのよさもしっかりと持ち合わせています。 もちろん分奏もしっかりしています。 とにかくどの楽器も響きが柔らかいのです。 だから全奏になっても刺激的ではないし、余計な粘り気も少ないみたい。 熟成されたような感じにも思えて、余裕を持ち合わせているみたいな美感を感じます。 だから我を忘れたような強打につぐ強打のフィナーレではなく、高揚感を持ったふわっとしたフィナーレでまとめました。 ここで大きな拍手。 ちょっと残念でした。

終楽章、じんわりとした感じの弦の響き、やはり響きの角が取れている独特な響き。 綺麗なんです。 だからでしょうか、深刻ぶった風ではなく、どこか淡々とした感じもする哀切の音楽になっています。 ファゴットの情感を感じさせた響きが素敵。 オケは優しくゆったりと歌ってスマートです。 このようなスタイリッシュにまとめている悲愴交響曲を聴いたのは初めてでしょう。
そしてストレートに盛り上げてゆき、スパッと止めます。 そして甘美さを含んだ弦楽器が奏でると、ホルンも遥かな想いを抱かせるように吹いて呼応します。 力強さは感じますけど、何度も書くように柔らかく角が取れた響きで美しい演奏です。 ゆったりとまた弦が奏ではじめます。 するとしだいに哀しみを増してきたみた。 しっとりとした感じが強くなります。 静かにドラが鳴りました。 トロンボーンが入ってさらに少々粘りつくような感じで、じんわりとした音楽となって盛り上がりました。 そして最後はチェロとコントラバスが柔らかく響き、コントラバスが最後に太い響きを残してそっと全曲を締めくくりました。

独特な美感を感じさせた悲愴交響曲でした。 それで途中ちょっと戸惑ったりもしましたけれど、パンプレットにも書かれてあるとおり「悲愴」という固定概念にとらわれない演奏といっていいでしょう。 このような演奏に出会えたことは自分にとってはいい経験になったと思います。 大きな拍手を惜しみませんでした。
カーテンコール時、指揮者の竹本さんも嬉しそうな笑顔で客席と一緒になって拍手をし、オケを讃えていたのも印象的でした。 この演奏会で卒業される皆さんにとってもいい経験になったのではないでしょうか。