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甲南大学文化会交響楽団 第44回定期演奏会

ドラマティックな音楽戻る


甲南大学文化会交響楽団 第44回定期演奏会
2004年12月18日(土)18:30 神戸国際会館こくさいホール

サン=サーンス: 「アルジェリア組曲」よりフランス軍隊行進曲(*)
ブラームス: 悲劇的序曲
ラフマニノフ: 交響曲第2番ホ短調

指揮:田久保裕一、石井規之(*)


田久保さんの熱い指揮にオーケストラが見事に応え、ドラマティックな音楽を堪能しました。 田久保さんの指揮を拝見するのは1年ぶり。 昨年末もこの甲南大学交響楽団を指揮されていましたけれど、いつもながらの熱い音楽表現は変わりません。 全身を使った指揮姿を見ているだけで、次に何をしなければならないのかが手にとるように判るみたいです。 オーケストラもそのような田久保さんにのせられて集中力が高まり、見事な演奏で応えていたのが印象的でした。
今回の演奏会では何といってもメインのラフマニノフの交響曲第2番。 とても素晴らしい演奏に感激しました。 特に第3楽章の美しさは言葉に出来ないほど。 聞き惚れてしまいました。 また全曲を通しても、豊かな情感がひしひしと伝わってくる演奏でした。 ラフマニノフ特有の甘美なメロディをよく歌わせているのですけれど、オーケストラの響きに若者が持つ特有の張りのようなものがあるせいでしょう、清楚で爽やかな感じがします。 甘美なメロディのオンパレードなのにベタつくところが全くりません。 そして田久保さんにドライブされたオケの響きが充分に熱くて、ドラマティックな音楽に痺れました。
また、ブラームスの悲劇的序曲もうねるような響きでこちらもドラマティック。 激しく悲嘆に暮れて絶望するのではなく、覇気をもって絶望の底から這い上がってくる底力のようなものを随所に感じさせる演奏でした。 底光りのする艶も感じさせた音楽に唸りました。 
学生指揮によるフランス軍隊行進曲は派手さを抑え、キリッと纏めた演奏が見事でした。 豊かな響きの弦、暖かな木管、抑制をよく効かせた金管とパーカッション。 指揮者とオーケストラが一丸となって音楽を盛り立てていました。
いずれも相当に練習を積まれたのではないでしょうか。 そのためにアンコールはなし。 最後は田久保さんの計らいで4回生の皆さんが立たされ、演奏の成功と今後の門出を祝い、観客より惜しみない拍手が贈られていました。 心に残る素晴らしい演奏でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

余裕を持っていたはずが、家でゴロゴロしていたせいで気付いたら出るのが遅れていて慌てました。 しかも大阪駅では異常な混雑。 そう、ルミナリエがありました。 切符を買うのに並び、しかも電車も通勤ラッシュ並みの満員。 三ノ宮に着いてもホームからなかなか下に降りることが出来なかったし、改札も混みあっていて出られそうにありません。 幸いにも東口が空いていたので、こちらから抜け、ついでに帰りの切符も買いました(これも後で正解だと分かりました)。 この時点で開演15分前。 遅刻することは無いのでしょうけれど、それでも駅前の歩道橋も、そこを降りた歩道も人でいっぱい。 気が気ではありません。 けっこうイラチなんです。

人ごみを掻き分けるようにしてホールに到着。 ホールに入ってからの長いエレベータもイラチの僕には辛いものがあります。 もうホールに入っているのだから安心してもいいのに・・・。 ロビーは人が多く、卒業される方のご家族も多いのでしょう、華やかな雰囲気。 そこを抜けて2階席へと駆け上ります。 ちょうど良さそうな席には、VTRのカメラ2台とスティール・カメラが据えられています。 ぐるっと見渡して、カメラの横あたり、前から2列目の34番に着席。 高い位置からステージを見下ろす感じです。 1階席は7割くらい入っていたでしょうか(最終的には8割くらいかな)、2階席はまだまだ余裕がありました。 これでやっと気持ちも落ち着いてきました。 パンフレットを読みながら開演を待ちます。

教会の鐘のような音が開演5分前を告げます。 しばらくするとオケ・メンバーが整列入場。 サブコンミスが登場してチューニングを行います。 パンフレットを見ると、この曲は3回生を主体にして編成されているようです。 長身でスマートな学生指揮者の石井さんが登場。 長身で律儀そうな青年、そんな印象をもちました。

サン=サーンスのフランス軍隊行進曲もまた、そのような石井さんと学生オケらしく派手さを抑えてキリッと纏めた演奏が見事でした。 豊かな響きの弦、暖かな木管、抑制をよく効かせた金管とパーカッション。 指揮者とオーケストラが一丸となって音楽を盛り立てていました。

響きの豊かな弦楽器に続き、暖かな木管楽器の響きによる充実した開始。 艶を感じさせるホルンも抑制をしっかりとかけ、派手さを抑えた行進曲。 軽やかにかつ芳醇な感じで進みます。 トランペットも抑制がしっかりとかかっていて突出しませんけれど、主体は豊かで張りのある弦楽器でしょう。 とにかく安定した音楽です。 トロンボーンの甘さを感じさせる吹奏、輝くようなトランペット、タイトなホルンでぐんと盛り上がってゆきますけど、響きはあくまでもまろやかです。 パーカッションも響きを抑え、全体の音楽をの中にきちっと収まっていてはみ出しません。 かといって生気のない音楽のような感じは微塵もなし。 全員一丸となった音楽は気持ちいい感じです。 最後のトランペットのソロが甘く吹いて見事。 よく纏まって全曲を締めました。 バランス感覚に優れた音楽でした。

全員がいったん退場したあと再入場。 ここから4回生主体のオケとなります。 オケも14型(14-12-12-8-8)に拡大。 コンミスが登場してチューニングを行ったあと、指揮者の田久保さんが元気よく出てこられました。

ブラームスの悲劇的序曲。 激しく悲嘆に暮れて絶望するのではなく、覇気をもって絶望の底から這い上がってくるような底力のようなものを随所に感じさせた演奏でした。 底光りのするような艶も感じさせた音楽に唸りました。 うねるような響きはドラマティックな感じもしました。

田久保さん、指揮台の上でちょっと長めの間合いをとってからようやく両手を広げます。 広げた両手を徐々にすぼめるようにして集中力を高めていったあと、一気に振り始めます。 オケからよく締まった和音が弾けて飛び出しました。 熱い音楽の開始。 地の底から湧きあがってくるような弦楽器の響きによる主題呈示。 響きに艶を感じました。 ぐっと盛り上がらせたあと、オーボエの可憐な響き。 ここでの弦楽器のトレモロも艶やかでした。 田久保さんはふわっと振って第2主題を歌わせたあと、大きな波で寄せては返すようにして曲に熱気を注入してゆきます。 タイトなホルン、木管楽器は身体を動かしての熱演です。 展開部、オーボエが行進曲調に歌いますと、田久保さんは木管アンサンブルに気遣いながら曲をじっくりと瞑想的な感じで進めます。 再現部ではオーボエとフルートによる主題の再現、ホルンが柔らかく吹き、弦楽器による第2主題も少々明るさを感じますけど、力がみなぎっているようです。 張りのある響き、そしてその響きがうねるように増減するので聴き応えがあります。 より一層力がみなぎってきて、弦楽器と管楽器のぶつかり合いもバッチリ決まります。 トロンボーンが入いると響きに粘りを増しました。 それらがすっと退いたあとのクラリネットのソロが素敵。 フィナーレはティムパニが重く弾力のある響きで割って入り、弦楽器が粘りつくような感じでドラマティックに音楽を盛りあげ、激しく一気に締めくくりました。 田久保さんの指揮にとても実によく応えたオケの演奏に唸りました。

20分間の休憩。 2階席も4割くらいの人がはいってきたようです。 学生さん、しかもカップルが多いみたいで(ルミナリエだし)、客席にも活気のようなものを感じます。
教会の鐘のような予鈴のあと、しばらくしてオケが入場。 先ほどよりもオケは拡大して16型でしょう。 コンミスが登場してチューニング。 先ほどのチューニングより、合わせる音に気合のようなものを多く感じたのは気のせいでしょうか。 いよいよメインのラフマニノフの交響曲第2番。 好きな曲でもあるので期待が高まります。 田久保さんが大股ですっすっと歩いて登場しました。

ラフマニノニの交響曲第2番。 そのような期待を遥かに上回った素晴らしい演奏に感激しました。 特に第3楽章の美しさは言葉に出来ないほど。 聞き惚れてしまいました。 また全曲を通しても、豊かな情感がひしひしと伝わってくる演奏でした。 ラフマニノフ特有の甘美なメロディをよく歌わせているのですけれど、オーケストラの響きに若者が持つ特有の張りのようなものがあるせいでしょう、清楚で爽やかな感じがします。 甘美なメロディのオンパレードなのにベタつくところが全くりません。 そして田久保さんにドライブされたオケの響きが充分に熱くて、ドラマティックな音楽に痺れました。

第1楽章、田久保さんがコントラバスに向かって振り始めると、唸るような響きが導き出されます。 ふわっとした木管楽器のあと、透明感のあるヴァイオリン。 ゆったりと大きな波にのせられているかのようで、音楽の波に惹きこまれてゆきました。 静かな音楽なのですけれど、とても充足感のある響きです。 上から見ているので、ヴァイオリンのパートなど、腕だけでなく頭や身体全体が綺麗に揃って動いているのがよく分かります。 もちろん他のパートも同じように動いていて、皆さんの気持ちもよく合わさっているのでしょう。 甘美なメロディを綺麗に歌わせながら、感情も徐々に高まってゆきます。 ホルンの響きの裏でトランペットやトロンボーンがしっかりと支えています。 コールアングレの響きもエキゾチックで素敵でした。 そして弦楽器にしだいに情感がのってきて、大きくうねるようになってクライマックスを築きます。 けど、退くのもまたとても自然になだらかに下がります。 ヴァイオリンのソロ、繊細で艶があって綺麗。 クラリネットのソロも哀感がこもっていました。 しばし聞き惚れていました。 クライマックス、ぐぃぐぃと盛り上がって音量をあげますけど、音の密度も高くなっているのでしょう、騒い感じなどまるでありません。 トランペットとトロンボーンの掛け合いを見事に決め、シンバルと大太鼓もよく抑えられていて感動的に盛り上げます。 そしてここかたもまた自然でなだらかな下降。 その後、情感を増した音楽としたあと、田久保さんが身体を大きく左右に動かし、しゃがんでから伸び上がるなど、全身を使って音楽を活気つけます。 フィナーレはティムパニがリズム感よく叩き、弾むように演奏したあと、コントラバスがグィと締めて着地しました。

第2楽章、今度田久保さんはヴァイオリンのほうを向いて振リ始め、ヴァイオリンを疾走させます。 ホルンが威勢良く吹きカッコイイ。 更に勢いづいてきて、響きが熱くなってゆきます。 でも響きはスマートでかつ柔らかいタッチのまま。 素晴らしい。 シンバルと大太鼓が割って入ったあと、瑞々しい弦楽器の響きも印象的。 潔いスネアが入ってきます。 金管楽器の抑制はよく効いていて明るい響き。 その響きの中には低音金管楽器の重量感ある響きもきちんとあり、聴き応えのある音楽です。 チェロが一斉にスコアをバサッとめくっていて気合が入ってます。 それを合図にしたのではないけれど、弦楽器が力を増し、スピードがのってきます。 ホルンの勇壮な響き。 木管楽器のアンサンブルもしっかりと裏で吹いています。 いったん静かになり、たゆたうように歌わせたあと、また集中力が高まります。 鉄琴の愛らしい響きを垣間見せながらも力をより増します。 トランペットとトロンボーンによるファンファーレに艶がのっていました。 エンディングまで集中力は途切れることなく、最後は小刻みに演奏したあと、コントラバスで切り落としました。

第3楽章、この楽章では指揮棒を置いて振り始めます。 大きくゆったりと歌う弦のアンサンブルが美しい。 裏でホルンがやさしく寄り添っています。 クラリネットのソロ、懐かしさを感じさせてとても見事な演奏。 ここでもファゴットが後ろでそっと支えていて雰囲気を高めています(ここでファゴットのセカンドには宇治原さんがおられるのを発見しました)。 弦楽器に旋律が移り、甘く、でも爽やかで美しい音楽にため息が出るほど。 ヴァイオリンのトップ奏者の演奏、オーボエの哀しみを込めたような響き、ヴィオラのピチカートなどなど・・・田久保さんは、両手を大きく振って感情を高め、すくうようにして深い想いを引出し、また拳を握って力をこめます。 オケも見事に反応し、各パートがせめぎあうようになって感情をより一層高めます。 ただただ迸り出てくる素晴らしい音楽に身を任せていました。 
音楽がそっと終わり、一呼吸とってからホルンの甘い響き。 素敵です。 これに負けじとヴァイオリンのソロが応えます。 そしてコールアングレ、フルート、オーボエなどの木管、ヴィオラと次々に可憐に歌ったあと、ヴァイオリンが優しく静かにすべてを受けとめるように連綿と美しい音楽を奏でて進めます。 息をのむような美しい音楽が続きます。 しだいに感情が高まってゆき、金管が入る手前では、田久保さんが平手で金管奏者に向かって抑えるような合図を送ったからでしょう、とても柔らかい金管の響きでオケも応えます。 ここでもホルンの響きが素敵。 そしてまた情感のある弦楽器によって曲が進められ、最後はそっと消え入るように終えました。 あまりの音楽の充実度にふぅと大きなため息が出ました。

第4楽章、力のこもった開始から小気味よく進みます。 ホルンの斉奏はまろやかな感じ、トランペットは煌びやかでした。 三連譜のリズムでぐいぐいと曲を進めますけど、先の楽章の印象が強かったせいでしょう、若干はやるような気持ちを感じないでもありません。 もうちょっと艶っぽさが欲しいところなんですけど、時折コントラバスが入ってきて響きに芯を感じさせていたのが印象的でした。 曲調が変わって強靭な音楽に変身。 集中力がしだいに高まってゆきます。 ここでもコントラバスの響きが心地よかった。 管楽器と弦楽器が呼応。 緊張感が高まり、金管ファンファーレ、パーカッションも入って音楽が高揚します。 このあたりまでくると地に足のついた音楽となっていて、主題が戻ってくると充実した響きです。 田久保さん、かがみ込むようにしてからぐっと伸び上がって音楽を更に高揚させます。 ティムパニがリズム感よくぐっと音楽を盛り上げてから、オケがまだ熱っぽく歌いあげます。 トランペットのトレモロが決まっていました。 響きが柔らかく輝かしい金管とパーカッションが加わってぐぃぐぃと盛り上げ、渾身の力がこもった音楽は全員一丸。 駆け出しますと、最後は田久保さんが力強く左右に広げた手で全曲を締めくくりました。 感動的なエンディングで、大きな拍手でホールは埋め尽くされました。

カーテンコールでは、田久保さんから指名されて次々に立たされるオケメンバーの皆さんの晴れやかな笑顔、満足感に満ちた表情が示すおおり素晴らしい演奏会でした。 相当に練習を積まれたのではないでしょうか。 そのためにアンコールはなし。 最後に田久保さんの計らいで4回生のみが立たされ、演奏の成功と今後の門出を祝って観客より惜しみない拍手が贈られました。 卒業生の皆さんはもちろんのこと、観客として参加した自分にとっても心に残る素晴らしい演奏に満足し、ルミナリエの興奮の残る三ノ宮の街に出ました。