BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
第11回 天理の第九演奏会

歓喜を歌い上げた素晴らしい合唱戻る


第11回 天理の第九演奏会
2004年12月23日(祝・木) 16:00  天理市民会館やまのべホール

ベートーヴェン: 交響曲第8番 ヘ長調 op.93 (*1)
ベートーヴェン: 交響曲第9番 ニ短調「合唱付き」op.125 (*2)

演奏:(*1) 天理シティオーケストラ
   (*2) 天理第九管弦楽団、天理第九合唱団、合唱指導:千葉宗次

独唱:畑田弘美(S)、福島紀子(A)、ニ塚直紀(T)、萩原寛明(Br)

指揮:安野英之


「合唱付き」という標題から「付き」の文字を除き、「合唱」そのもの、といった感じの熱い第九を楽しみました。
ホールの天井に届きそうな感じの急勾配の席で歌った合唱団は、見るからに壁のよう。 そしてその壁から、力強い歌声がビンビンとホールに響き渡ってきました。 声そのものがよく揃っていることによる力強さも見事なのですけど、指揮者の安野さんの指示に的確に従ったコントロールの巧さ。 これらが感動の要因になっていたと思います。 また終盤、艶のあるテノールのフレーズが全体の合唱の中から浮き上がって聴こえてきたのにも感激しました。 ダイナミックでかつ華のある合唱が素晴らしかった。
また演奏での楽譜はベーレンライター版によるもの。 オーケストラの楽器は対抗配置でしかも金管楽器も左右に割り振られたスタイルから(弦楽器を対向配置にしても管楽器は通常配置のことはよくありますけど、ホルンを左側、ティムパニとトランペットとトロンボーンを右側に配置)、速いテンポ設定で強靭な感じで進めた第1楽章、やはり速いテンポから鋭いリズム処理が印象的だった第2楽章、そして一転して流麗でいとおしむような第3楽章と進めたあと、合唱団・独奏者とともに高らかに歓喜を歌い上げた素晴らしい演奏は感動的でした。
1年を締めくくるのに相応しい素晴らしい第九の演奏会でした。
またこれに先立って演奏された第8交響曲もまたベーレンライター版による清新な演奏で覇気があり、小気味良さが特徴的な演奏でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

今回の演奏会、天理市制50周年、天理ライオンズクラブ創立40周年、第13回山の辺芸術祭参加とのことで凄い人気らしく、前売り券は完売とのこと。 今回から座席指定となり、しかも早めに座席を引き換えたほうが良いとのアドヴァイスも受けました。
それに従って指定座席引換え時間の14時半より10分前にホールに到着しましたが、既に列が出来て引換えも始まっていました。
行列にはステージに向かって「左」「右」と書かれた2つがあり、ちょっと迷って「左」の列に。 通常は「右」で聞くことが多いと思うのですけど、趣向を変えてみたかったのですけど、こおいう時に限って並んだ列の方が進み具合が遅いはなんで・・・ でもまぁ時間はたっぷりとあるし、ちょっと後悔したけども、大人しく並んでいました(2人前のオジサンは怒ってましたけど)。

ホール開場は15時。 引換えが終わってもホールはまだ開いていません。 前回このホールにはドタバタとやってきて、演奏会終了後も出張のために脱兎のごとく帰ったので、前にちょっと気になっていた天理本通を散策に出かけました。 アーケードの中にどんなお店があるのかなぁ〜とチラチラと眺めつつ、そしてこの先に何があるのだろう、なんて思って歩くのですけど、延々とアーケードが続きます。 少々歩き疲れた頃、ようやくアーケードを抜けたら天理教本部の礼拝場?。 壮大な建物です。 見上げて、ふぅ〜と一息ついて、また元来た道を引き返しました。

それでもまだ時間に余裕があったので100円ショップで時間を潰し、25分前にホールに戻ってきました。 ホールに入るとロビーコンサートをやっていて、その柔らかな金管の響きを耳にしながら(クリスマスソングのようでした)、混み合う人の間を抜け、とりあえず引き換えた座席(P-15)に座ってしばし休憩。 寒いなか歩いたので少々疲れたみたい。 体力不足が身体にこたえます。 休んでいたらロビーコンサートも終わったみたい。 お客さんがどんどんと入ってきて、オケメンバーも三々五々ステージに集まって練習を始めます。

そのステージをよく見ると、オケはヴァイオリンを左右に振り分けた対向配置。 でもヴァイオリンが乗っているあたりは、ステージを前方に拡張していて、ステージの板の下には鉄パイプが覗いてます。 またステージ後方、合唱団が乗る席が「そびえ立つ」という表現がぴったりくるような感じ。 50度以上の角度はあるのではないでしょうか? 
プロ用VTRを担いだ撮影の人もいて会場内は華やかな雰囲気。 このVTR、あとで見たらTVN(奈良テレビ)のマークがあったので放映されるのでしょうか。 とにかく客席は満員、後方には当日券の立ち見(パイプ椅子)席に座っている方もおられます。

いよいよ定刻。 まずは天理市長さんの挨拶のあと、晴れやかな笑顔でコンサートマスターの栄嶋さんが登場。 チューニングのあと指揮者の安野さんも微笑みをたたえながら登場して始まります。

ベートーヴェンの交響曲第8番。 弦楽器の編成は 10-8-8-6-4 の10型かしら。 ベーレンライター版による演奏とのことで、楽譜の内容については無知ですけど、清新な演奏には覇気があり、小気味良さが特徴的な演奏でした。 
ただ個人的には、この曲はメンゲルベルクのこってりとした演奏で馴染んでしまっていることもあり(すみません)、ヴァイオリンの響きの薄さがちょっと気になったりもしました。 ヴァイオリンの位置がステージの前にせり出てしまっているせいもあるのかもしれません。 しかしながら、少人数での気合の入った演奏はテンポよく、ベートーヴェンの時代の音楽に近づけようという熱い想いがひしひしと伝わってきました。

第1楽章、ティムパニの強打でちょっと吃驚。 でも爽やかな弦の響きが馴染んだ旋律を駆けてゆきます。 木管楽器も愛らしい響きで応えます。 裏で吹くファゴットが素適な響きだったのが印象的でした。 ティムパニがタイトに打って要所を締め、ぐいぐいと曲を進めてゆきます。 主題を繰返し(すべての主題を繰り返していたようです)、気合が入っていますけど、若干ヴァイオリンの響きがちょっと薄いみたい。 少人数で演奏するベートーヴェンの時代の音楽の再現かと思っていたのですけど、でもどことなく薄い・・・ それを感じているせいでしょうか、コンマスの栄嶋さんが気を吐いていて、力強くまた恐ろしく速く弾いていたが目に焼き付きました。 とにかくテンポ良く、キレのいい演奏で曲を進めたあと、力の入ったフィナーレのあとふわったした着地で終了。

第2楽章、安野さんが指揮棒を置いて手で振り始めます。 低弦の響きがうまくブレンドされた開始から小気味良い演奏です。 またここでも栄嶋さんが弓をたっぷり使って全体をリードしていたのが印象的。 ここでは響きがステージの左側(第1ヴァイオリン、チェロ、コントラバス)からよく聞こえてくるのに対して、右側の響きがちょっと寂しい感じがした場面もありました。 でも弦と管のミックスはとてもいい感じ。 響きがブレンドされていました。 最後は響きを開放するような感じで締めました。

第3楽章、チェロとコントラバスの響きが芯になった堂々としたスタート。 金管楽器も伸びやかで全体の響きによく溶け込んでいます。 ホルンの響きも柔らかで素敵で、クラリネットは明るい響きが印象的でした。 音楽が朗らかになります。 てらいのない爽やかな音楽、そんな感じでしょうか。

第4楽章、気合を集中させて一気に駆け出します。 ティムパニが気合十分。 やはり高音弦の響きが薄いぶん緻密に盛り上ってゆく感じ。 リズムは縦ノリ。 各パートがよく揃ってこのリズムに乗って曲をぐいぐいと進めゆきました。 ちょっと即物的な感じもする演奏で、小気味良くフレーズを切ってリズムに乗ることを繰り返したあと、フィナーレを端正にして全体を纏めました。 全員一丸となっていた演奏は爽快感がありました。
どうしても最初にこの曲を聞いたメンゲルベクルのロマンティックな演奏を意識してしまって、響きに厚みが欲しくなってしまったことから抜け出せませんでした。 すみません。

15分の休憩のあと、コンサートマスターの栄嶋さんも含めオケメンバーが全員集合。 天理シティーオーケストラに天理教音楽研究会の人達も加わった合同演奏とのこと。 弦楽器の編成は 12-10-8-8-6 の12型に拡大。 メンバー表を見たら、以前会員だった大阪シンフォニカー交響楽団の方も数名参加されていることにも気付きました。 栄嶋さんが立ち上がってチューニングのあと、人でいっぱいのステージを上を縫うようにして指揮者の安野さんが登場。

ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」、と日本語では「付き」と書くとオマケのようにも感じるのですけど、今回の演奏はその「付き」の文字を除き、「合唱」そのもの、といった感じの熱い第九でした。 ホールの天井に届きそうな感じの急勾配の席で歌った合唱団は、見るからに壁のようにそびえ立ち、力強い歌声がビンビンとホールに響き渡っていました。 声そのものがよく揃っていることによる力強さも見事なのですけど、指揮者の安野さんの指示に的確に従ったコントロールの巧さもまた感動の要因に結びついていたと思います。 また終盤、艶のあるテノールのフレーズが全体の響きの中から浮き上がって聴こえてきたのにも感激しました。 ダイナミックでかつ華のある合唱がとても素晴らしかった。
またオーケストラの演奏は、こちらもベーレンライター版によるもの。 速いテンポ設定で強靭な感じで進めた第1楽章、やはり速いテンポから鋭いリズム処理が印象的だった第2楽章、そして一転して流麗でいとおしむような第3楽章と進めたあと、合唱団・独奏者とともに高らかに歓喜を歌い上げた素晴らしい演奏は感動的でした。 1年を締めくくるのに相応しい素晴らしい第九でした。

第1楽章、冒頭の茫漠とした和音にも覇気を孕ませて鋭く立ち上がってゆきました。 凄く速いテンポ。 ティムパニが締まった音で要所を締め、グィグィと曲を進めてゆきます。 ヴァイオリンの響きも深くなり、コントラバスの響きにもふくよかさが増したようです。 木管アンサンブルが清楚に演奏するのは先と同じでしょうか。 でも、とにかく速い。 波がよせてはかえすように盛り上げてゆきます。 主題を繰り返して、オケもますますノッてきたみたい。 各パートの分離がよく、しかもその響きがうまくブレンドされて混ざり合っていて感動的に感じ。 しかし、とにかく速い。 展開部が終わって圧倒的なクライマックス。 ティムパニの強打、輝くような金管ファンファーレと力強く進めていますけど、チェロとコントラバスが常に落ちついて悠然としています。 軽量級のオケですけど、強靭な響きが有無を言わせない感じ頂点を築いたあと、おごそかな感じで進めて、またものすごい速さで駆け抜けて力強く終結。
けっこう力が入っていたのでしょう。 オケメンバーの方もふぅ〜とため息をついておられるのが散見されました。

第2楽章、鋭いリズムで弾けるように始まります。 艶やかな第2ヴァイオリンの響きには気迫がこもっていて、ここから半時計廻りに弦パートで旋律を進行させ、激しい縦ノリのリズムで盛り上がります。 ホルンの斉奏は力強さもありますけどまろやかな感じ。 主題をより一層熱い音楽として繰り返します。 中間部の木管楽器のアンサンブルが明るく爽快な感じ。 ここもまた速いテンポです。 ホルンが甘く吹き、オーボエが愛らしく応え、裏のファゴットもよく歌っています。 そしてまた冒頭の主題が戻ってまた力強く速く演奏して、駆け込むようにエンディングに走り込み、最後はふわっと着地。

この楽章が終わると、合唱団員が登場。 オケもパーカッションとコントラファゴットのメンバーが加わります。 合唱団員の中には、最上段に登ってからあまりの高さに下を覗き込む人もいるほどで、手をあげると天井に届きそうな感じです。 中央に男声、両脇と下3段は女声といった布陣。 半分くらいの人が並んだ頃にオケがチューニングを実施。 全員揃ったあと、独唱者が指揮者の前に並びます。 これで準備OK。

第3楽章、これまでとは 180度違う流麗な演奏でした。 クラリネットとファゴットの優しい響きのあと、ゆったりと弦楽器が歌い始めました。 旋律をいとおしむように、感情をこめて、じっくりと響きを重ねて進めてゆきます。 第2ヴァイオリンとヴィオラの旋律が素敵に響き、第1ヴァイオリンもしっとりと爽やかに歌います。 刺激的なところのまったくない優しい響き。 木管アンサンブルの裏ではじくピチカートもまろやかで瑞々しく感じます。 ホルンのソロはちょっと控えめだったかしら。 しっとりと歌ったあと、スマートでかつ力強い響き。 煌くようなファンファーレ。 それもすっと退き、もとの流れるような旋律にもどします。 安野さんも身体を左右に揺らせていました。 音楽を流したあと、そっと終結。

第4楽章、輝かしくタイトなトランペット、響きを絞ったティムパニでの導入のあと、低弦が堂々と入ってきます。 テンポは通常よく聴く感じでしょうか。 よく締まった低弦の響きが印象的に曲を進めたあと。 歓喜の主題はそっと歌い始めます。 変な色はつけず、厳かで控えめでオーソドックスな感じ。 裏で吹くファゴットが朴訥としていていい雰囲気です。 透明感あるヴァイオリンが優しく歌い込んでゆきながら、次第に熱を帯びてゆきます。 曲調が一転、一気に力強い音楽となると同時に合唱団が起立。 バリトンが艶のある声で歌い始めます。 木管楽器が綺麗な響きで色を添えています。 合唱が張りのある締まった声で歌うと曲がぐっと拡大するとともに引き締まります。 反応も良く素晴らしい合唱です。 独唱ではソプラノが深みのある声で健闘していました。 
行進曲、ピッコロの響きにコクが感じられてとても素敵でした。 テノールの独唱は高い音域に独特な響きがあるのが魅力でしょうか(喜歌劇楽友協会の公演でも拝聴したことがあります)。 オケが活気づきますけど、各パートが本当によく頑張っていて素晴らしい。 速度がぐんぐんと上がって、コントラバスの弓の動きがすさまじい速さです。 しかしそれにも増して歌い始めた合唱団が素晴らしかった。 タイトによく締まった声が、壁のような合唱団の席からビンビンとホールに響き渡ってきます。 この曲は合唱曲だということを再認識しました(ここまでは前座だったのか、そんな感じもしたほどです)。 特に艶を感じさせるテノールのパートが全体から浮き上がって聴こえてきたのには感激しました。 曲は大きく盛り上がってゆきますけど、安野さんの指揮に従って、抑えるべきところはぐっと退いて見事なコントロール。 この日のために練習を重ねてこられたのでしょう、その成果はありありと出ていました。 金管ファンファーレ、特にトランペットとトロンボーンが天使の楽器のように吹奏するなか大きく高らかに歌いあげたあと、凄いスピードでオケが疾走。 最後は念をおすような感じで全体を締めくくりました。
まさしく「合唱」そのもの、といった感じで熱く感動的な第九でした。

このあと入場時に配布された光る棒(何というのでしょう)を会場内の全員が持ち、指揮者の安野さんはその光る棒で指揮もして、蛍の光を合唱。 そして最後は、合唱団員の方が客席に向かって揃ってお辞儀をしてお開きになりました。