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京都大学交響楽団 第176回定期演奏会

熱い情感のこもったラフマニノフ戻る


京都大学交響楽団 第176回定期演奏会
2005年1月17日(月) 19:00  ザ・シンフォニーホール

(阪神淡路大震災の追悼演奏):J.S.バッハ: G線上のアリア

ブラームス: 大学祝典序曲 op.80
シューベルト: 交響曲第7番「未完成」 ロ短調 D.759
ラフマニノフ: 交響曲第3番 イ短調 op.44

指揮:岩村 力


ラフマニノフの交響曲第3番の熱く情感のこもった演奏に痺れました。 あまり耳馴染みのない曲なのですけれど、この演奏でもって、この曲の持っている魅力や醍醐味を知ったように思います。 ラフマニノフ特有な熱っぽいロマンティシズムと独特な色彩感を感じさせたモダニズム、それらが見事に合体した演奏に満足しました。
指揮者の岩村 力さんはNHK交響楽団のアシスタント・コンダクター。 N響アワーでインタビューを拝見したことがある程度ですが、暖かみを感じさせる音楽作りだったでしょうか。 機能的なこのオケを若さに任せて走ることなく、緩急やメリハリをきちんとつけてオケをしっかりとリードし、特に暖徐部分でテンポを落としてしっとりと歌わせていたのがとても印象的でした。
そのような岩村さんの魅力がよく出ていたのが、演奏会に先立って阪神淡路大震災の追悼のために演奏されたバッハのG線上のアリアでしょう。 かなり落としたテンポ設定から、コントラバスの響きにのせ、心に染み入るように紡いだヴァイオリンのアンサンブル。 生きて音楽を楽しめる幸せをしみじみと感じ入った瞬間でした。
なおブラームスの大学祝典序曲はケレン味なくすっきりと纏めた演奏。 シューベルトの未完成交響曲も熱のこもった演奏だったと思います。 ただし、前者はよく揃ってはいるけど響きの調和や深みに欠けるように感じましたし、後者では暖徐部分でテンポを落としてしっとりと歌わせたのを容赦なく断ち切ることの繰返しのようにも感じました(対比させていたのでしょうけれど)。 特に後者では繰返しをすべて履行していたはずで、それもあって少々退屈に感じてしまったことからそう思えたのかもしれません。
普通のアマオケならば巧い・見事などと手放しに褒めるべきところなのですけれど、ちょっとこのオケとしては注文をつけたくなってしまったことは許してください。 
いずれにしてもラフマニノフの交響曲第3番の演奏の素晴らしさはまた格別でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

今年始めての演奏会です。 定時になったのでとっとと退社し、シンフォニーホールに向いました。 以前は大阪シンフォニカーの会員になっていたこともあり、年に10回くらいはこのホールに入っていましたけど、このところアマオケ主体になっているので入るのは久しぶりです。 アマオケでこのホールを使うってことはやはり贅沢なことなのでしょうね。

さて、ホール入口で当日券(A席)を購入し、座席を引き換えたらEE−44が出てきました。 正面2階席、いい席(好きな席)です。 京大オケの演奏会は座席指定でしかも席を選べないのでこれは春から縁起がいいみたい。 ロビーで時間を潰して開演10分前を切ったころに座席につきました。 2階席正面はほぼ満席(左隣は空いてました、これもラッキー)、両サイドは6割、3階席も2割以上でよくお客さんが入っています。

定刻、いつもの儀式はなくオケのメンバーが整列入場。 しかも弦楽奏者のみで、6-5-4-3-2の編成。 席についてチューニングが始まって気付きました。 今日は阪神淡路大震災の10年目にあたるので追悼演奏があるのでしょう。 案の定、指揮者の岩村力さんが登場してその旨のスピーチがあり、バッハのG線上のアリアを演奏するので、終了後は拍手をしないで欲しいとのことでした。

このG線上のアリア、実に素晴らしい演奏でした。 かなり落としたテンポ設定から、コントラバスの響きにのせて心に染み入るように紡いだヴァイオリンのアンサンブル。 そして演奏終了後には指揮者もオケのメンバーもその場で黙祷、静寂の時がホールに流れました。 生きて音楽を楽しめる幸せをしみじみと感じ入った瞬間でした。

いったん全員が退場したあと、オケのメンバーが再登場。 14型でしょうか(14-14-10-9-7 数え間違いがあるかもしれません)。 チューニングを行ったあと岩村さんが登場しました。 今日は儀式(音楽部長の先生のスピーチ)は無いようです。

ブラームスの大学祝典序曲。 ケレン味なくすっきりと纏めた演奏でした。 金管楽器や打楽器は相対的に抑え気味で弦楽器主導の演奏だったと思います。 またその弦楽器も各パートはよく揃っていました。 でも各パートの響きの調和というか醸し出されるような深みに欠けていたようにも感じてしまいました。 きちんとしたラインに従って演奏はされているのですけど、管楽器と木管楽器の間になんとなく隙間があるようにも思えたり・・・やる気の無さは全く感じないのですけど、何なんでしょうね。 
しかし一般的にはとても巧い演奏と言っていいと思います。 エンディングでは集中力をより高めて充実感も感じられてカッコよく終わりましたので、曲と指揮者とオケとの相性とか練習量とかの問題かな(よく分かりませんけど)。 
とにかく京大オケなんでちょっとレベルを高くして聴いてしまっている面がありますので許してください。

全員がいったん退場。 ティムパニの組替え作業を行って小型のもの2つに交換してから再入場。 でもオケの編成は14型のままのようです(14-14-10-9-7)。

シューベルトの未完成交響曲。 先ほどよりも熱のこもった演奏だったと思います。 暖徐部分ではテンポをぐっと落として歌わせていて、これが素適なので、こちらもしっとりした気分に酔っていたのですけど、それが容赦なく断ち切られてしまう。 対比させていたのでしょうけれど、いいなぁ〜と思っていたらバサッと切られてしまことが延々と繰返されていました。 おまけに、すべての主題の繰返しを履行してからでしょうか、延々と繰り返されるワンパターンにも思えてしまいました。 しまいには、来るな来るな・・・やっぱり来た、って感じで聞いてしまいました。 これはオケのせいではなく、聴き手の問題かもしれません。 とにかくこの曲も普通のアマオケならば、巧い・見事などと手放しに褒めるべきところなのですけれど、すみません。

第1楽章、チェロとコントラバスがゆったりと奏で始めます。 弦楽器の漣にのせてクラリネットとオーボエによる主題。 ちょっと緊張気味だったかしら(若干ビビッた感じに思えました)。 ティムパニが先の小さな青いマレットで堅い音を打ったのにもちょっと吃驚しました(バランス悪かったみたい)。 でもこのあとチェロがゆったりと主題を歌ってしみじみとさせます。 ヴァイオリンに引き継がれて綿々と歌ってとてもいい感じです。 そして、これを断ち切るような全奏。 京大オケらしくスマートに引き締まり、またよく整っています。 さて主題の繰返し、先ほどのクラリネットとオーボエも安定していますし、ティムパニも決めました。 テンポを落としてまた綿々と歌います。 岩村さん、指揮棒を持たず(どの曲の指揮でも指揮棒を持っていませんでした)、広げた両手でゆっくりと舞うような感じで情感を込めます。 ほとんど振っていないように思えるほどゆったりと動いています。 しかしこれを断ち切るかのように、今度は握った拳を縦に振ってぐぃぐぃと曲を進めます。 メリハリをつけて、要所をバシバシッと決めてゆく明快さが出ています。 対比させているのだと思いますけれど、しかし同じ事が幾度となく繰り返されてしまうと、機械的といった感じにも思えてきました。 いったんそう思えてしまったら僕の聴く意欲がどんどんと飛んでいってしまったみたいでした(すみません)。

第2楽章、冒頭のホルンの響きが宙を舞うようで素適でした。 美しく優しい感じのする開始で、遅いテンポ設定でじっくりと歌わせています。 またオケのメンバーには若さがあるからでしょう、綿々と歌っても清々しさを感じます。 しかし徐々に盛り上がってくると、律儀さが勝ってくるせいでしょうか、リズムがまた堅くなってしまいます。 これも指揮者による対比のように思えます。 巧いオーボエのソロで心を洗われたあと、やはりその印象を払いのけるかのように断ち切って盛り上がります。 来るな、来るな・・やっぱり来たって感じで少々白けてしまいました。 これでまた主題が反復されて、同じことの繰返し。 本当にすみません、あとは惰性で聴いてしまいました。 
大学祝典序曲で感じた隙間のようなものはなく、冒頭こそやや堅さを感じたものの、全体としてはかなり豊穣な感じのした演奏でした。 巧い演奏には間違いないのですけれど、指揮者と僕との相性の問題なのでしょうかね、どうしたものかな、ちょっと困ってしまいました。 G線上のアリアでは、生きて音楽を楽しめる幸せをしみじみと感じた、のになぜかその後は幸せに感じないのですから・・・

そんな不安を抱えた20分の休憩を終え、オケは16型に拡大されたようです(15-14-11-9-8 って数えたのですけど、ちょっと自信ありません)。

ラフマニノフの交響曲第3番、しかしそんな不安は杞憂でした。 熱く情感のこもった演奏に痺れました。 あまり耳馴染みのない曲なので、直前にCDで予習したのですけれど、この演奏でもって初めて、この曲の持っている魅力や醍醐味を知ったように思います。 ラフマニノフ特有な熱っぽいロマンティシズムと独特な色彩感を感じさせたモダニズム、それらが見事に合体した演奏にこれまでのことは忘れてしまいました。 満足しました。 本当に素晴らしかった(では今までのは何だったのか、単に自分自身の思い入れが強すぎたのかもしれません)。

第1楽章、クラリネットとホルンとチェロが過去を懐かしむような導入部から一気に主部へと駆け上る機動力。 そしてオーボエとファゴットにヴァイオリンも加わった主題にはうねりも感じさせた充実した開始でした。 チェロによって始まった第2主題は情感のこもった暖かさに懐かしさも感じさせます。 裏で吹いているオーボエなども密やかに奏でていて、弦楽器と管楽器が響きあっていました。 トロンボーンとトランペットの響きも充分に引き締まっていて、ヴィオラの奮闘が光ったあと、濃厚なロマンティシズムを感じさせるクライマックス。 ここでのトランペットのソロは熱っぽく、その後のソロ・ヴァイオリンはウェットな感じでした。 素晴らしい。 音楽の充実度がこれまでとずいぶんと違う感じがします。 とにかくすべての楽器が有機的に絡み合っています。 熱っぽく展開される主題を存分に味わいました。 そして最後は打楽器も入って頂点を築いたあと、情感のこもったアンサンブルが熱気を孕んだままこの楽章を閉じました。

第2楽章、ハープの伴奏を伴ったホルン・ソロに続き、ソロ・ヴァイオリンが甘くしっとりと歌って見事。 芳醇な弦楽器の響きに続き、フルートのソロも巧かったし、バス・クラリネットがしみじみとさせて憂色が漂ってきます。 情感を感じさせたうねるようなアンサンブル。 岩村さん、やはりこのようなアダージョでのリードの巧さが光っているようです。
息づいたピチカートからのスケルツォ、ここでも芳醇さを感じさせるヴァイオリン。 これが奏でる行進曲風の旋律に艶を感じましたし、中低弦も芯になって躍動感があります。 絶妙のタイミングで金管が顔を覗かせてハッとさせられますし、クライマックスでの打楽器もタイトに盛り上げます。 またこのとき、ティムパニ奏者が早業で、腕がクロスしていたのは見ていても実にカッコ良かったな。 これ以外でも実演でないと味わえないような演奏を満喫しました。
そして曲はまた熱っぽい弦楽器によるアダージョに戻ります。 ウェットなソロ・ヴァイオリン、コールアングレで望郷の思いのようなものを感じました。 クラリネットとファゴットが効果的な響きで分け入ってきたあと、歩むようなピチカートで締めくくりました。 
楽章を終えたあと、会場からも深いため息のような吐息があちらこちらから漏れていました。

第3楽章、カラフルでカッコ良い音楽が始まります。 トランペットのソロ、また揃って合いの手を入れる部分も見事に決め、色彩感があふれます。 この部分ではティムパニが先が小さくなった青いマレットに持ち替えて小気味良く叩いていました。 そして弦楽器も大きくうねるように曲を進めてゆきます。 ファゴットがいい音色でのどかな感じを出したあと、また力強くカラフルな演奏。 それを止めて、また走り始めます。 オケの機動力の素晴らしさは京大オケの持ち味でしょう、よくそれが出ていました。 とにかくこの後は息もつかせような曲想の変化を楽しみました。 濃厚なロマンティシズムも随所に感じますけど、イキのいいオケなのでストレートに響いてもたれるような感覚はありません。 オーケストラ音楽の醍醐味を存分に味合わせてもらった感じ。 金管なんて陳腐な感じにも思える合いの手を入れているのですけど、絶妙な感じで挟み込まれるのでワクワクしてきて面白かった。 この色彩感ってラフマニノフ独特なモダニズムなのでしょう、そんなことを感じました。 さて、明るく朗々と吹いたトランペットのあとだんだんと速度があがり、それが全奏となって一気に駆け抜けて全曲を閉じました。

熱く情感のこもった演奏に痺れました。 パンフレットにも前期の作品なる交響曲第2番と比べてもかなり複雑かつ刺激的なリズムを持った作品と書いてありますけど、それを実に見事に活写した演奏で、初めてこの曲の持っている面白さや魅力、醍醐味を知りました。 今年初めての演奏会に満足して会場を後にしました。