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吹田市交響楽団 第59回定期演奏会

しっかりとしたリズムに乗った新世界戻る


吹田市交響楽団 第59回定期演奏会
2005年1月30日(日) 14:00  吹田市文化会館メイシアター 大ホール

(災害の被災者への追悼演奏):J.S.バッハ: G線上のアリア (*1)

シベリウス: 組曲「カレリア」 (*1)
サン=サーンス: ヴァイオリン協奏曲第3番 (*2)
ドヴォルザーク: 交響曲第9番「新世界より」(*3)

(アンコール)ドヴォルザーク: スラヴ舞曲第8番 (*3)

独奏:納庄麻里子(vn)-(*2)

指揮:新谷 武(*1)、米山 信(*2,*3)


ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」、耳慣れた曲ですし、米山さんの指揮も淡々としていて見得を切ったりしないのですけど、充実した演奏内容に惹き込まれました。 
またサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番では、まだお若い納庄さんの艶っぽく濡れたようなヴァイオリンの響きがとても魅力的でした。 またオケもしかっりとした伴奏で、この難曲を盛り上げていたように思います。
ところで指揮者の米山さんは大阪音楽大学のピアノ科教授だそうですが、オケの団員でもあると聞いています(いわゆる団内指揮者の位置付けらしいです)。 そのようなこともあってかオケとの息も見事に合っていますし、勿論オケの能力もよくご存知のようです。
そしてその米山さんの振りを見ていていつも思うのですが、縦振りが基本。 しっかりしたテンポを確保したうえで、ある程度オケの自主性に任せ、存分に鳴らしているような印象を持ちます。 もちろん抑えるべきところはしっかりと抑えています。 見ていてとても分かり易いし、演奏している人たちも安心して演奏できるのではないでしょうか。
今回の新世界交響曲は、まさしくそのようなしっかりとしたリズムに乗っていました。 いつも以上にリズムが強調されていたようにも思います。 そしてその安定したリズムに乗って、オケのメンバーの気持ちもとてもよく出たイキの良い演奏であったように思います。 実にオーソドックスなんだけれども、聴き応えのある演奏に仕上がっていて、全く退屈しませんでした。
なお、これに先立って演奏された「カレリア」組曲。 こちらは新谷さんの情熱のこもった指揮ぶりが印象的でした。 こちらはオケの問題もあってハラハラした面もありましたけれど、耳馴染みのしやすい曲を情熱的に演奏し、魅力は客席までよく伝わってきていました。
次回の定期はバルトークの「管弦楽のための協奏曲」という難曲がかかります。 今から楽しみです。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

出掛けに郵便局に寄ったのと、電車賃を安くするためにわざわざ梅田経由にしたこともあり(西中島経由のほうが良かったかな)今回もまた5分前にホールに到着。 いつもながら困ったもんです。

ホールに入るとさっそく2階席に。 中央通路の後ろの席(ここ足もとが広いので好き)が、しかもド真中が空いていたのでそこに収まります。 よく見えませんが、1階席は8割位入っているんじゃないかな、2階席も5割程度かなと思っていたら、どんどんとお客さんが入ってきて7割近く入ったように思います。 けっこうお客さん入りましたね。

落ち着く間もなく開演を告げるアナウンス。 オケの皆さんが整列入場して席につきます。 弦楽器は、13-12-10-8-7 の編成でしょうか(数え間違いあるかも)。
指揮者の新谷さんが出てこられ、丁寧に客席にお辞儀されたあとスピーチがありました。 このところ続いている災害のために亡くなられた方や被害を受けられた方へ、自分達として何ができるかを考え、ロビーへの募金箱の設置(慌てて入ったので気付きませんでした、すみません)と追悼演奏としてバッハの「G線上のアリア」を演奏するとのことでした。

今年最初の京大オケの演奏会でも「G線上のアリア」が演奏されましたが、こちらの演奏もまたしみじみと心に染み入ってきました。 新谷さんは指揮台に登らず、ヴァイオリン奏者の前あたりで感情を込めた指揮。 何度聞いても、生きて音楽を味わえる幸せ、を感じます。

さて演奏を終え、しばしの黙祷のあといったん新谷さんが引き上げますとオケのチューニング。 準備が整ってから新谷さんの指揮による「カレリア」組曲の演奏が始まりました。

「カレリア」組曲。 新谷さんの情熱のこもった指揮ぶりが印象的でした。 こちらはオケの問題もあってハラハラした面もありましたけれど、耳馴染みのしやすい曲を情熱的に演奏し、魅力は客席までよく伝わってきていました。

「間奏曲、弦のトレモロをバックにホルンが柔らかく吹きます。 徐々に音楽が大きくなってツヤのあるホルンの響き。 ここまでは調子良かったけれど、ちょっと苦しい場面もありました。 トランペットが軽く吹いて、オケ全体が弾むように徐々に盛り上がってゆきますと、ノリのいい演奏。 コントラバスの方などノリノリって感じで弾いてらっしゃる方もいました。

「バラード」、朴訥とした感じの木管、抑揚を持たせた弦楽アンサンブルなんですけど、ちょっと纏まり感に乏しかったかな。 新谷さん、大きく動いてあちこちに気合をこめていました。 後半になって持ち直したようです。 くぐもった感じもよく出ていました。 コールアングレの響きがよかったですね。 あとコントラバスとチェロ。 これらのピチカートが情感あって、最後はしみじみと終わりました。

「行進曲風に」、爽快な感じで、うきうきしてきます。 新谷さん、弦楽パートに指示してまわって、盛り上げてゆきます。 トランペットが軽やかに吹いて、ティムパニも響きを深くとった渋い打音です。 大きくもりあがると、コントラバスがまたノリノリ。 新谷さん、ちょっとかなり気合入って動きまわってます。 最後は輝かしい金管の響きを基調に元気よく纏めていました。

管楽器のメンバーが一部入れ替わります。 またコントラバスも7名から2名に減ってオケも多少縮小したようです(12-10-8-6-2 かな、数え間違いあるかも)。

ヴァイオリンの独奏は納庄麻里子さん。 初めて聴く方ですけど、まだ20才代半ばでしょうね。 写真と同様にとても綺麗な方で(なかなか一致しないことが多いのですけど)、藍色なのでしょうか、光線のかげんで蝶の羽の光沢のようにも感じられたドレスもまた素適でした。 2階席の後ろなんでちょっと(かなり)損した気分。

サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番。 この若い納庄さんの艶っぽく濡れたようなヴァイオリンの響きが魅力的でした。 そしてオケもまたしかっりとした伴奏で、この難曲を盛り上げていたように思います。
ただ個人的には、昨年オリヴィエ・シャルリエ氏による演奏を聴いていることや、アーロン・ロザンドさんのレコードを愛聴していることもあって、もうちょっと歌が欲しいような感じがしましたけど、これは欲張りというものでしょう。
第2楽章終盤のフラジオレットの連続もまったくブレることなくこなして見事だったし、第3楽章がとても素晴らしく、これからが楽しみなヴァイオリニストではないでしょうか。 なお譜面台を立てての演奏でした。

第1楽章、弦と抑えられたティムパニのトレモロをバックに出てきた納庄さんの第1主題の呈示。 気合が入っていたのでしょうか、かなり大きな音が飛び出してきたのにちょっと驚きました。 しかし地味な感じもする深い響きだったのですけど、徐々に音量をさげたみたい。 オケは良く纏まったしっかりしたサポートで支えています。 落ち着いてきたのかしら、納庄さんのソロに艶やかさが増してきました。 と同時にしなやかさとのびやかさを感じ、しっとりと歌いあげます。 いい感じになってきました。 再現部かしら、納庄さんのソロが情熱的になりますと、オケもまたうねり感を感じさせ、よく絡み合っていました。

第2楽章、宙を彷徨うようなヴィオラとチェロの前奏から、しっとりと濡れたような納庄さんのソロが歌います。 ゆったりとした呼吸感もなかなかのものです。 フルートとクラリネットの響きも素敵でした。 オケともども綿々と歌ってゆきますが、欲を言えばもうちょっと伸びやかさというか、踏み込んで歌いあげてゆくような感じも欲しかったところ(欲張りですみません、シャルリエ氏の亡霊が頭によぎりました)。 ちょっと淡々とした感じだったかな。 終盤の見せ場、フラジオレットの連続はまったくブレることなくこなして見事でした。

第3楽章にアタッカで入ると、決然とした感じの納庄さんのソロ。 オケもそれを受けて力を増します。 ここから活発でノリの良いソロになりました。 これまで聴いたなかでこの楽章が一番よかったのではないでしょうか。 響きに艶をより多く感じましたし、何よりも思い入れのようなものを強く感じました。 そして中間部かしら、ヴァイオリンのソロが柔らかく濡れたような響きで、まとわりついてくるみたいな感じなのも素晴らしかった。 主題が堂々と力強く戻ってきて音楽が快活になったかと思うと、またもや艶やかな響きでねっとりと歌う。 いいですね。 コーダでは金管ファンファーレがよく締まっていて、オケともども華々しく全曲を締めくくりました。

15分の休憩かしら(何分か言わなかったような)。 いよいよメインの新世界交響曲。 オケの弦楽器の編成は 13-12-10-8-7 だったように数えました(間違っているかもしれません)。 指揮者の米山さんが登場して始まります。

新世界交響曲、耳慣れた曲ですし、米山さんの指揮も淡々としていて見得を切ったりしないのですけど、充実した演奏内容に惹き込まれました。 
米山さんの振りを見ていていつも思うのですが、縦振りが基本。 しっかりしたテンポを確保したうえで、ある程度オケの自主性に任せ、存分に鳴らしているような印象を持ちます。 もちろん抑えるべきところはしっかりと抑えています。 見ていてとても分かり易いし、演奏している人たちも安心して演奏できるのではないでしょうか。
今回の新世界交響曲は、まさしくそのようなしっかりとしたリズムに乗っていました。 いつも以上にリズムが強調されていたようにも思います。 そしてその安定したリズムに乗って、オケのメンバーの気持ちもとてもよく出たイキの良い演奏であったように思います。 実にオーソドックスなんだけれども、聴き応えのある演奏に仕上がっていて、全く退屈しませんでした。

第1楽章、艶やかなチェロの序奏にはっとしました。 ホルンの斉奏が見事に決まり、木管アンサンブルがしみじみと演奏した後、鋼のように強靭な響きで主部に突入。 要所をきちんと決めて、力強くグィグィと進みます。 金管が締まった響き、オーボエやフルートなどが柔らかく、寄せては返すような充実感が漲った音楽に身を任せて聴いていました。 これといって変わったことをやっているようには見えないのですけど充実した音楽です。 再現部もよく纏まっていました。 トロンボーンが力強く吹きますが、弦楽器ともよく合っていて、ヴィオラが奮闘しているのがよく見えました。 あとチェロとコントラバス。 音楽が安定しているのはこのパートがしっかりしているからでしょうね。 ホルンの斉奏がタイトでカッコ良かった。 金管楽器が輝かしく、ティムパニもタイトで締まった響きで纏めました。 

第2楽章、おごそかだけれども生気を感じさせる開始から、コールアングレがお馴染みのメロディを吹きます。 ややフレーズを短めにして淡々とした感じかな。 いつもこの裏で吹くファゴットが気になるのですけど、これも見事に絡んでいました。 よく締まって落ち着いた金管、じわじわっとくる感じの弦楽器と、滋味に纏めていた感じでしょう。 中間部のオーボエ、フルートが明るく吹き、トランペットもいい感じに入ってきてぐっと盛り上がります。 最後にまたコールアングレが吹き、柔らかく暖かさを感じさせる見事な弦楽ソロののち、コントラバスの低い響きで充実した楽章を締めますと、息をのむように聴いていた会場から咳払いが続きました。

第3楽章、集中力を高めて突入。 音楽に弾力を感じます。 うねるような感じもよく出ていました。 木管楽器のアンサンブル、ソロともにリズム感を感じました。 音楽が明るくなってもオケ全体が縦ノリのようなリズム感を持っていて、音楽がそのリズムにのって脈々と続いてゆく感じ。 けっしてハメを外したりせず、これといって変わったことはしていなくて、きちんと演奏しているのですけど、とても聴き応えがありました。 なんでかな、と思って米山さんの指揮を見ていたら、米山さんの縦振りの棒にしっかりとのっているんですね。 ほとんど両手でリズムを刻んでいて、音量は腕の高さで表現、左手の表情付けはあまりなくて、パートに出の指示を与えている程度かな。 あとはオケの自主性に任せている、信頼しているのでしょうね、そんな感じを受けました。 オケのパートもそれによく応えてしっかりとした演奏で応えていて、終盤のホルンはタイトに吹き、朗々としたトランペットもよかったです。

終楽章、間髪を入れないアタッカで入って欲しかったところですけど、スコアをめくって一呼吸おいての開始。 コントラバスの響きに芯を感じます。 金管楽器の響きにパワーだけなくコクのようなものを感じさせる上々の滑り出し。 米山さんはここでもリズムをきちんと刻み、慌てず騒がず、端正に曲を進めてゆきます。 オケはその流れにのって、各パートともに前向きで溌剌とした感じの充実した音楽で応え、それが積み重なって曲を構成している感じかな。 非常によく纏まった音楽は、プロオケで技はあるけどゲネプロ即本番で合わせた音楽とは質が違いますね(と偉そうなこと言ってますね)。 コーダはじわじわっと盛り上がったあと、輝かしい色彩感も感じさせた力強い音楽。 それが潔く切れて残響が響くなか、トランペットがストレートで染み込むようなちょっと長めのフェルマータで全曲を締めました。