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アンサンブル・フリー 第5回演奏会

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アンサンブル・フリー 第5回定期演奏会
2005年2月11日(祝・金) 15:00  高槻現代劇場大ホール

J.S.バッハ(シェーンベルク編曲):プレリュードとフーガ「聖アン」変ホ短調 BWV552
マーラー:交響曲第4番ト長調

(アンコール)J.S.バッハ:狩のカンタータ BWV208より「羊は安らかに草を食み」

独唱:佐伯仁美(S)

指揮:浅野亮介


良い意味で自己主張のはっきりした音楽、でも裏返すとちょっと恣意的な感じもした演奏でした。
この団体、指揮者のワンマンオーケストラだそうで、演奏したいものをしたい時にメンバーをその都度集めて演奏するとのことです。 このようなスタイルで5回も続いているのですから、このことはとても凄いことだと思います。
さて、そのようにして集まったオーケストラの水準は高く、腕に自信のある学生や学生オケOBを集めてきているのでしょう。 各パートともによく揃っていて、指揮にも見事に反応していました。
ただし演奏については、1曲目のバッハのプレリュードとフーガはその悪い面が出たように感じました。 各パートは揃っているけれど、全体としての纏まり感がありません。 響きが重層するポリフォニーがバッハの最大の特徴ですけれど、指揮者の浅野さんは響きの重なり合いにはほとんど注意が払われていないみたい。 急激な音の立ち上がりばかりが耳について、せかされているようで(すみません)正直疲れてしまいました。 
それに反してマーラー、良い意味での自己主張がはっきりしていた演奏で聴き応えがありました。 第1楽章の冒頭からかなり速い。 個人的にはこの楽章はゆっくり演奏して欲しいのだけれど、展開部でのクライマックスなど息もつかせぬほどの盛り上がり方には有無を言わせない感じ。 色々と研究されたのでしょう、その詳細を指摘するような知識を残念ながら持ち合わせていませんけれど、どの部分をとってもしっかりとした演奏に感じ入りました。 オケもまた巧かった。 特にホルンの女性奏者が印象的。 ソロをバリバリと吹いて勢いがありましたし、裏で吹いていても彼女の自己主張のはっきりした音が際立っています。 スカっとする気持ちいい響きがとてもよかった。
さてソプラノの佐伯仁美さん。 最初ちょっと声が届きにくく埋もれ加減でしたけど(風邪ひいているいるのかなと思ったほど)、しかし後半はこなれてきたようで清澄な声質、柔らかくかつのびやかな声が美しくとても魅力的でした。 アンコールで歌ったバッハのカンタータが素晴らしく、彼女にはマーラーよりもこのほうが似合っていたかもしれません。 
最後にとにかくお客さんが少なくて残念でした。 1階席は2〜3割ほどでしょうか。 2階席にいたっては20名弱。 始まる頃は10名いないよな・・・なんて見渡してしまいました。 しかし人数は少なくても、これからも研究された成果を披露し続けていただきたいと思いつつ会場を後にしました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

慌てるのはよくないので(このところの反省にたって)今回もちょっと早めに家を出ました。 なお今回は長女と二人での鑑賞となりました。
早めに家を出たといっても開場前に着いて長時間待つのは億劫です。 時間を見て、阪急を使わず、わざとJRを利用。 JR高槻駅から商店街を散策しながらブラブラと高槻現代劇場を目指したのが功を奏し、高槻現代劇場に到着すると同時に開場。 グッド・タイミング。 気持ちいいですね。

さて、高槻現代劇場大ホール。 ここに来たのは初めてです。 1階席をちょっと覗いたら2階席があるようなんで、慌てて階段を駆け上がりました。
ん? 名前はカッコ良いけど、なんか古い市民会館みたい・・・そんな予感は的中。 2階席は昭和の時代の市民会館のまましょうね。 1階席は座席と壁面に手を入れているようなのですけど、2階は座席も古く懐かしい感じがします。 でもゆったりと聴けるから文句はいいません。 中央最前列の「い-25」〜「い-28」を陣取ります。 
椅子も思いのほかヘタっていなくて座りごこちも悪くありません。 暖房の熱がこもっているのかな、暖かくてセーターを脱ぎ(マーラーの終わり頃はちょっと冷えてきましたけど)準備完了。 学校で配られるプリントのようなパンフレットを読みながら開演を待ちます。

開演5分前を告げるブザー(この音も懐かしい)とアナウンス。 お客さんがあまり入ってません。 2階席は10名ほどですけど、1階席も2割ほどかしら。 最後は2階席20名弱、1階席は3割弱になったようですけれど・・・
定刻前、ティムパニ奏者の方が一人出てきてメータ片手に調音して引き下がると同時に整列入場開始。 なんかバタバタしている感じもします。 最初から自由入場でもいいのではないかな、揃って入場するのに何か意味があるのか・・・なんて考えてしまいました。

そんなことはともかくオケは対抗配置。 弦楽器は 11-9-8-8-8 の編成で、コントラバスの左にホルン部隊、第2ヴァイオリンの後方奥にトランペット、トロンボーン、チューバの部隊が別れて配置されています。 弦楽器のみ対抗させ、管楽器は通常配置のことが多いのですけれど、この金管楽器の配置に指揮者のこだわりを感じました。
その指揮者、浅野亮介さんは神戸大学大学院で音楽学を専攻されているとのこと。 黒のズボンに白のセーター、首にマフラーを巻いた華奢な青年が登場してちょっと吃驚。 オケを主宰しているのでもっとイカツイ兄ちゃんかと思っていたのだけど・・・

さて1曲目は、J.S.バッハ作曲、シェーンベルク編曲でプレリュードとフーガ「聖アン」。 原曲は「クラヴィーア練習曲第3巻」の最後に収められているとのことですが、原曲も聴いた記憶はありません。 で、聴いたことないのにこんなこと書くのは申し訳ありませんが、正直楽しめませんでした。

響きが重層するポリフォニーがJ.S.バッハの最大の特徴だと思っているのですけれど、指揮者の浅野さんは響きの重なり合いにはほとんど注意が払われていないようでした。 ぶらぶらした手を下から大きくすくい上げるような指示の出し方で、急激な音の立ち上がりばかり耳につきました。 またフレーズの息も短く、矢継ぎ早に音が出てくる感じ。 何だかせかされているみたいで疲れてしまいました。 
オケは巧かったと思います。 各パートともによく揃っているし、ハッと思う響きの良さを感じる場面もあるのですけど、それが次に受け渡されたり響き合っていかない。 また後半、各楽器がオルガンのような響きを醸し出していたのですけど、力の入ったフーガはどことなくまとまり感がなくて騒々しくも感じました。
これらはシェーンベルクの編曲のせいかもしれませんけど、指揮者の範疇ではないかと思ったしだいです。 まちがっていたらごめんなさい。

15分間の休憩。 5分前にブザーとアナウンスがあってちょっと短めのインターヴァルですね。 定刻の前、コンマスが上手から出てきて自分の座席前のピアノ用ストゥールに一音上げたヴァイオリンを置き、下手に下がりますと整列入場開始。 (すべて自分たちでやらないとダメなんでしょうけど)やはりちょっとバタバタとした感じですね。
ところで指揮者の浅野さん、今度は黒のジャケット姿で登場しました。 でもジャケットの下にはニットでしょうか、襟のない黒のシャツ姿でした。

マーラーの交響曲第4番。 こちらは、先ほどの演奏とは違って聴き応えがありました。 第1楽章の冒頭からかなり速い。 個人的にはこの楽章はゆっくり演奏して欲しいのですけれど、展開部でのクライマックスなんか息もつかせぬほどの盛り上がり方。 もう有無を言わせない感じでした。 色々と研究されたのでしょう、その詳細を指摘するような知識は残念ながら持ち合わせていませんけれど、とてもしっかりとした演奏に感じ入りました。 
そしてオケもまた巧かった。 特にホルンの女性奏者が印象的。 ソロをバリバリと吹いて勢いがありましたし、裏で吹いていても彼女の自己主張のはっきりした音が際立っていて、とにかく聴いていてスカっし、気持ちよかったですね。
ソプラノの佐伯仁美さん。 最初ちょっと声が届きにくく埋もれ加減でしたけど(風邪ひいているいるのかなと思ったほど)、しかし後半はこなれてきたようで清澄な声質、柔らかくかつのびやかな声が美しくとても魅力的でした。 アンコールで歌ったバッハのカンタータが素晴らしく、彼女にはマーラーよりもこのほうが似合っていたかもしれません。
いずれにしても自己主張のはっきりした音楽で、こちらは存分に楽しみました。

第1楽章、かなり速いテンポで始まりました。 ちょっと目を回すほど速いのですけど、音がこなれているようで、騒々しさは感じません。 ひたすら目的に向かってぐいぐいと音楽を引っ張ってゆく感じ。 緩急つけて、というか、緩の部分は通常のテンポくらいかな、それでもゆったりと大きくまぁるく振って歌わせてから、また速くなります。 浅野さんにしっかりついてくるオケがまた巧い。 特に木管楽器、重い響きを出してパワー的にも負けていません。 ホルンが力強く渋く張りのある響きで吹きハイライトを演出。 見事です。
展開部のクライマックスへも息もつかせぬ盛り上がり方。 ここも実に速い速い。 有無を言わせない感じで進みます。 銅鑼の一撃もまたカッコ良かった。 弦パートもまたよく纏まり、すっと退いたかと思ったら、重量感を持って迫ってくる。 最後はホルンがゆっくりと渋く吹いたあと、弦のピチカートもゆっくりと弾いて溜め込んだあと急速に盛り上げて強靭に締めました。

第2楽章、ここでもホルンの巧さが光っていました。 ヴァイオリンが濡れたような響きでソロを歌ったあと、粘り気を含んだ音楽になります。 ここでもホルンが目立っていましたね。 あとクラリネットも太く艶のある響きもよかったな。 要所をスパッと決めて明快。 でもそのあとの響きに弾力を感じます。 音量は大と中くらいで、弱音はほとんどなかったかな。 ぐいぐいとここも進めたみたいです。 最後は響きを解き放つかのようにふわっと終わりました。

チューニングをし、独唱者の佐伯さんが登場。 純白のドレスでオケの中を掻き分けて、チェロとヴィオラの間に用意された席につきます。

第3楽章、温かみのあるコントラバスのピチカートにのせ、チェロそしてヴィオラがゆったりと歌い進め、それは第2ヴァイオリンそして第1ヴァイオリンが清澄な響きで受け継ぎます。 これまでになくゆったりと、でも決して引きずることなしに歌い進めます。 オーボエ、ファゴットもしみじみとさせて、大きく呼吸するよう。 徐々に速くなってきたかな、と思ってもまたすっと退いてゆく。 クライマックスではホルンがベルアップしてタイトですけど、これもすっと退き、ソロ・ヴァイオリンがうっとりとさせるように弾いて素晴らしい。
この後、曲調が変わり明るくなります。 ノリよくテンポを上げて進めます。 各パートが絡み合い、重厚な感じでの盛り上がり。 ティムパニがタイトに叩いてハイライト。 このあとも潔い感じどんどん曲を進めてゆきます。 そしてエンディング。 ここもまたクライマックスをビシッと決めたあと、すうっと下げて丁寧に進め、消え入るようにこの楽章を閉じました。

第4楽章、木管楽器のしっかりとした響き、明晰な感じのする出だしでした。 佐伯さんのソロ、柔らかい声の響きなんですけどややオケの隠れてしまいそう。 ちょっと風邪でもひかれたのかしら、やや枯れた感じにも聴こえました。 オケはしっかりした音楽で独唱をサポート。 オケだけの部分になるとメリハリをつけ速度もやや上げていましたが極端に差があったわけではありません。 独唱にもエンジンがかかってきたのでしょうか、中盤以降は明るめの声が柔らかい響きに乗って聴こえてくるようになりました。 オケは要所を決めながらちょっとギラギラとした感じもします。 そしてハープも太い響きでした。 コールアングレが入りオケがゆったりと歌いはじめます。 フルートや弦楽器も柔らかい響き。 これに合わせたのか、ソプラノも清澄な声で、柔らかく伸びやかに最後の節を歌いました。 このあたりが実によかったな。 独唱の裏の弦楽器やハープなども多層的響きをつくっていました。 最後はコントラバスとハープが爪弾く音が静かに消え入りました。 

しばしの静寂のあと、パラパラと拍手が沸き起こり、最後はオケのメンバーも佐伯さんに拍手を贈っていました。 カーテンコールでは、指揮者自らが花束を持って登場。 佐伯さんと3月に就職で東京に行かれることになったコンマスに花束を渡していました。
アンコールはJ.S.バッハの狩のカンタータ BWV208より「羊は安らかに草を食み」。 
佐伯さんにはマーラーよりもこちらのほうが似合っていたかもしれません。 清澄な歌で会場を魅了していました。
色々と生意気なことを書きましたけど、これからも研究された成果を披露し続けていただきたいと思いつつ会場を後にしました。