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オーケストラ・アンサンブル・フォルツァ 第9回定期演奏会

今回もドラマを感じさせた素晴らしいマーラー戻る


オーケストラ・アンサンブル・フォルツァ 第9回定期演奏会
2005年2月13日(日) 14:00 八尾プリズムホール・大ホール

ワーグナー:「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲(*)
マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調

指揮:今西正和、池田俊明(*)- 団内指揮者


今回もまたドラマを感じさせたマーラーの第5番に感激しました。
今西さんの指揮は、緩急をつけた演奏で歌心に溢れていました。 緩の部分では遅めにして十分に歌わせ、また急の部分でも左右の足に交互に体重を乗せ、身体を横に揺らしてリズムを取っていたのが印象的です。 特に今回、左手で手刀を切るようにしてオケの出をバシっと合わせたあと、上記のような横揺れのリズムで盛り上げてゆくのを聴いていると、若いオケにありがちな縦ノリ系のリズムでガンガンと進めるのではない熟成された音楽を味あわせてもらっているようにも感じました。 上手く言えませんが、耳に届いてくる音楽に勢いだけでないドラマのようなものを感じるのです。
オーケストラは、終楽章に至ってほんの少し残念な場面もありましたけれど、常に前向きな演奏で指揮者に応えていたことを称えたいと思います。 金管や木管楽器のパワー、弦楽器の統制の取れたアンサンブル、いずれも気持ちのよくこもった素晴らしい演奏でした。
またこれに先立って演奏されたニュルンベルグのマイスタージンガーの第1幕への前奏曲もまた気持ちのいい演奏でした。 
こちらは団内指揮者の池田さんの指揮のもと、輝かしい金管のパワーもさることながら、弦楽器のケレン味のない演奏ともあいまって透明感の高さを感じました。 古いタイプの音楽ファンの方ならもっと重量感や粘着質のある音楽を好まれたかもしれませんけど、スッキリとしていても鋼のような芯を感じさせた今回の演奏。 とても見事だったと思います。 拍手が途中で途切れたのが不思議な感じもしました。
いずれの演奏も響きの中に若い息吹のようなものも感じさせて立派でした。 今を生きる若者が精魂込めて演奏した音楽ドラマ、そのようなことを強く感じた演奏会でした。


簡単に演奏会をふり返ってみたいと思います。

八尾プリズムホール、初めて行くホールなので今回もちょっとドキドキしながら近鉄八尾駅に降り立ちました。 改札を抜け、駅舎を出ると遠くにホールが見えます。 別に遅刻はしないのだけれど、せっかちなんで早足になって人を追い越しながらホールに到着。 開演20分前だったかな。 綺麗なホールでした。

ホール入口でパンフレットを受け取るとき、受付の後ろの階段にロープが張ってあったのに気付きました。 2階席は立入禁止やな・・・そう思って1階席に入ります。
前が通路で足もとの広い席を確保したのですけど、2階席の屋根を見上げ、未練がましく反対側にも階段があるはず・・・と覗きに行ってみると、なんとそこのロープが片側に寄せられています。 しかもアベックが登っていくじゃぁあ〜りませんか。 それに続いて2階席に登り、中を覗いてみたら先着が数名いらっしゃいました。
ということで、セーターを脱いで最前列の座席(A−19)を確保。 1階席から荷物を持ってきて落ち着きました。

1階席は最終的には6割程度入っていたでしょうか。 2階席は乳飲み子や3〜4歳児(男の子)を含め20名弱。 ガラガラでした。 オケの関係者の方には申し訳ありませんけど、空いているほうが楽でいいですよね(すみません)。 
なお若いオケということもあって、全体的に若い客層です。 でも演奏前に哺乳瓶で赤ちゃんにミルク与えているのは初めて見たような気がします。 ベビーカーが並んでいるのは見たことありますけど・・・ とにかく家族そろっての演奏会といった感じでいいと思います。 
もっとも赤ちゃんは第2楽章の始めの大音量に吃驚したようで退場。 抱えていったのはお祖母ちゃんだったかなぁ、ご苦労さまでした。

定刻になりメンバーが整列入場。 通常配置で、弦楽器の人数を数えたら 11-12-8-10-8 の編成のようです。 第2ヴァイオリンの後ろに雛壇があり8つの席が用意されていますけどそこは空席。 マーラーの時のホルン席でしょう。 ホルンは管楽器の並びで舞台に向かって左端に陣取っていました。 指揮者の池田さんが登場し、いよいよ始まります。

ニュルンベルグのマイスタージンガーの第1幕への前奏曲。 気持ちのいい演奏でした。
輝かしい金管のパワーもさることながら、弦楽器のケレン味のない演奏ともあいまって透明感の高さを感じました。 古いタイプの音楽ファンの方なら、もっと重量感や粘着質のある音楽を好まれたかもしれませんけど、スッキリとしていても鋼のような芯を感じさせた演奏でした。 トロンボーン、チューバ、コントラバスの重低音に支えられた音楽はしっかりとしていて、また弦楽器では第2ヴァイオリンが奮闘していたのも印象に残りました。 演奏終了後の拍手が途中で途切れたのが不思議な感じもした見事な演奏でした。


冒頭、指揮者の鼻息とともに音楽が一気に迸り出ました。 硬質な響きでよく締まっています。 でもトロンボーン、チューバ、コントラバスの重低音に支えられた音楽はしっかりとしていて浮いた感じなど微塵もありません。 木管アンサンブルが透明感高く交わったあと、また鋼のような芯を感じさせる響きで盛り上がります。 明晰な響きというのかな、見通しがよくてスッキリしています。 古いタイプの音楽ファンの方なら、もっと重量感や粘着質のある音楽を好まれたかもしれませんけど、聴いていて気持ちが良くなってくるような演奏です。
後半も管楽アンサンブルが緻密によく纏まり、弦楽器もケレン味なく演奏しつつもちょっとフレーズを長めにとって唄わせていたかしら。 第2ヴァイオリンが第1ヴァイオリンと対抗するかのように主張したりして聴き応えあります。 これら管弦が一体となり、見事に混ざり合い、歌い合ってフィナーレへと雪崩れ込みます。
金管楽器の輝かしいけど軽くない響き、打楽器も要所を決めるけれど渋い響きで抑制をかけながら弦楽器と響き合った充実した演奏で幕となりました。

充実した演奏だったと思ったのですけど・・・意外に拍手が少なく、指揮者が引き下がると拍手も止んでしまいました。 慌てて楽屋から拍手が起こり、はにかんだ池田さんが再登場。 花束を受けとる表情には人柄の良さが滲み出ていました。 確かに人柄のいいワーグナーだったと思いました。

15分間の休憩。 予鈴のブザーが鳴って暫くしても誰も出てきません。 客席の話し声ばかりが耳につくのですけど、その話し声も気のせいかちょっと大きく感じるようになった頃、ようやくメンバーの整列入場が始まりました。 ざっと数えて弦楽器が 12-11-8-10-8 の編成だったように思います。 ホルンも8名が第2ヴァイオリン後ろの雛壇に揃いました。 チューニングのあと、堂々とした感じでオケの中をかきわけるように指揮者の今西さんが登場。 いよいよ始まります。

マーラーの第5番、前回は同じ組合せで第1番「巨人」を聴かせていただきましたが、今回もまたドラマを感じさせた演奏に感激しました。
とにかく今西さんの指揮は、緩急をつけた演奏で歌心に溢れていました。 緩の部分では遅めにして十分に歌わせ、また急の部分でも左右の足に交互に体重を乗せ、身体を横に揺らしてリズムを取っていたのが印象的です。 特に今回、左手で手刀を切るようにしてオケの出をバシっと合わせたあと、上記のような横揺れのリズムで盛り上げてゆくのを聴いていると、若いオケにありがちな縦ノリ系のリズムでガンガンと進めるのではなく、熟成された音楽を味あわせてもらっているようにも感じます。 上手く言えませんが、耳に届いてくる音楽に勢いだけではないドラマのようなものを感じるのですね。
オーケストラは、終楽章に至ってほんの少し残念な場面もありましたけれど、常に前向きな演奏で指揮者に応えていたことを称えたいと思います。 金管や木管楽器のパワー、弦楽器の統制の取れたアンサンブル、いずれも気持ちのよくこもった素晴らしい演奏でした。

第1楽章、今西さんが指揮台の上でうつむいて微動だにしないのに(目で合図を送ったのでしょうでしょうか)冒頭のトランペットが吹き始めます。 柔らかさに深みも感じさせた響きによる素晴らしい開始。 とてもいい音色を味わったあと、今西さんが動いて一撃を加え一気に盛り上がります。 ホルンの斉奏もタイトに揃っていて迫力あります。 そして一転、しっとりとした弦楽アンサンブルとなって歌いだしますけど、また盛り上がることを繰り返す。 するともうマーラーの世界にどっぷりと浸かっていました。 とにかく集中力の高い演奏でした。 緩徐部分では今西さんがゆっくりとオケを呼吸させているようです。 オケも見事に反応しています。
また音楽が活気ついて急激に盛り上がってゆきます。 ヴァイオリンの数がちょっと少ないのかな。 若干高音弦が薄いようにも感じるのですけど、懸命な演奏を目の当たりにしていると聴いているこちらの気持ちもまた高ぶってきました。 ワクワクしながら音楽を聴き進めてゆきました。
ティムパニが主題をゆっくりと叩いたあと、ヴァイオリンが物悲しく歌い始めます。 ホルンのソロに情感こもって素適でした。 ぐっと盛り上がったあと、エンディングは抑えた表現のトランペットのソロ(ここも巧いなぁ)、そしてトランペット、フルートが断片を吹いてから一呼吸・二呼吸くらいちょっと長めの間を空けてから、コントラバスとチェロによる力一杯の弾力あるピチカートで幕。 すごい集中力でした。

第2楽章、ほとんど間髪を入れずに低弦が唸りをあげます。 金管が入って緊張感抜群の開始。 今西さんがヴァイオリンに煽りを入れます。 もう少し数が欲しいところですけど気合は十二分に入っています。 嵐が収まるとチェロのしみじみとした合奏。 ですがまた畳掛けるような嵐へと戻るのですけど、このあたりの迫力ある音楽に赤ちゃんも驚いたみたい。 あえなく退場となりました。
ヴァイオリンがうねるように入ってきて、曲が行進曲調へと変わります。 クラリネットがいい響きで歌っていました。 しかしこれもまた嵐になってゆき、トロンボーンとチューバ、そして大太鼓の重い響き。 音楽全体が大きなうねりをもって進みます。 ストレートに盛り上がるのではありません。 音の立ち上がりは鋭いんのですが、機械的な感じではなく、厳しい曲想なんですけど音楽全体が呼吸しているような感じです。 
ここまで来たら、こんな細かなことを考えてながら聴くのがしんどくなってきました。 素晴らしい音楽に身を任せることにしました。 
ラスト、銅鑼の一撃のあとも集中力を保ったままふわっと着地しました。

第3楽章、さすがに第1・2楽章と続いたのでちょっと長めのインターヴァル。 今西さんも深呼吸してから、ホルンを見据えて振りはじめますと、張りのある響きがホール内にこだましました。 明るく爽やかなヴァイオリンが左、締まった重い響きのチェロとコントラバスが右、安定感のあるヴィオラが中央で奏でるスケルツォ。 まさしく踊りの音楽ですね。 今西さんが巧みにリードしてゆきます。 ただ弦楽アンサンブルの数が少なくなった場面ではちょっと手探りな感じに思えた部分もありましたけど、今西さんは終始遅いテンポで纏めて乗り切りました。
音楽が活気づいてきてホルンがタイトに決めますと徐々に音楽に緊張感が高まります。 ピチカートが弦楽器全体に広まってひっそりとしなやかに曲を進めますけど、それがまた盛り上がったかと思ったらスパっと止まる。 うん、レコードなどで何度も耳にしていますけど、実際にこうやって見て聴いていると実に多彩な楽章ですね。 改めて感じ入りました。
オケの皆さんも演奏を楽しんでいるのでしょうか(必死かもしれませんけどね)木管のベルアップなど楽器を振りながら歌わせて楽しそうにも見えました。
とにかく踊るようなスケルツォ。 歌わせるところではタメも感じます。 最後、集中力を高めて凄い勢いで走ったあと強靭なホルンの斉奏をスパッと切り落として、残響がホールにこだましていました。

第4楽章、ヴィオラ、ハープの響きに続いてヴァイオリンがしっとりと歌い始めます。 まどろむようなチェロ、深い響きのヴィオラ、ハープも太めの響きで彩り、ヴァイオリンの感情を深めます。 でもどちらかと言うとあっさりした感じ、清潔な感じで歌ってゆきます。 若さがあるからでしょうか、病的な感じのしないアダージョ。 今西さんは、じつにゆったり、じっくりと曲を進めてゆき、綿々と歌い込んでゆきます。 あっさりしすぎ、いえそんなことはありません。 とても美しい演奏に心奪われました。 低弦が加わっても重々しく引きずることなく、ごくごく自然に盛り上げて、すっーと退いてゆきました。

第5楽章、アタッカで入ります。 ホルンの響きがタイトに駆け上るのですけどちょっと惜しかった。 でも木管がチャーミングに歌ったあとのホルンでバッチリ決めて持ち直しました。
さて弦が入って音楽が活気づくのですけど、このあたりは割合淡々と進めたようです。 先が長いから抑えているのかな、と思っていたらトランペットが入ってオケがうねり始めます。 チェロとコントラバスがタイトに弾き、左側のホルンと呼応。 そして高音弦が歌いだして、音楽にドラマを感じます。 このようなドラマを感じさせる音楽を味わえる感覚はCDやレコードなどではちょっと難しいでしょう。 生の音楽の醍醐味です。
今西さんは、左手で手刀を切るようにしてオケの出をバシっと合わせたあと、左右の足に交互に体重を乗せ、身体を横に揺らしてリズムを取ります。 こうやって横揺れのリズムで盛り上げてゆくのを聴いていると、若いオケにありがちな縦ノリ系のリズムでガンガンと進めるのとは違った熟成された音楽のようなものを感じます。 上手く言えませんが、耳に届いてくる音楽に勢いだけでないドラマのようなものを感じるのですね。
ぐぃぐぃっと盛り上がっては、すっと退いて歌う。 緩徐部分はちょっとゆっくり目だったのではなかったかな。 今西さん無茶しないですね、オケの様子を見ながらしっかりと抑えているようにも見えました。 
そしてフィナーレ、ホルンの強奏、全奏となって盛り上がってヴァイオリンが駆け出します。 一瞬止めてからホルン斉奏そして弦楽器もまた駆け出して全員一丸となり、最後は今西さんがすくい上げるようにして曲を纏めました。
途中、ちょっとオヤって思ったところもありましたけど、充実したエンディング。 大きな拍手に包まれていました。 生で聴く醍醐味を存分に味あわせてもらったドラマティックなマーラーの交響曲第5番、堪能しました。

ニュルンベルグのマイスタージンガーの第1幕への前奏曲の演奏も含め、響きの中に若い息吹のようなものも感じさせて立派でした。 今を生きる若者が精魂込めて演奏した音楽ドラマ、そのようなことを強く感じた演奏会でした。