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奈良フィルハーモニー管弦楽団 第16回定期演奏会

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奈良フィルハーモニー管弦楽団 第16回定期演奏会
2005年3月13日(日) 13:30 奈良県文化会館・国際ホール

モーツァルト: 交響曲第32番ト長調K.318
ウェーバー: クラリネット協奏曲第2番変ホ長調op.74
ブラームス: 交響曲第4番ホ短調op.98

(アンコール)ブラームス: ハンガリー舞曲第1番

独奏: 山本浩資(cl)

指揮: 横島勝人


素晴らしく熱い演奏会に圧倒され、満足して帰ってきました。
冒頭のモーツァルトの交響曲第32番から魅了されました。  軽快な響きなのですが、決して軽くない音楽。 オケの響きにキレがありますし、弦楽器には艶があって素敵です。 そこに管楽器の抑えた響きが絶妙にバランスされた素晴らしい演奏でした。
続くウェーバーのクラリネット協奏曲。 こちらは団員でもある山本浩資さんのクラリネット・ソロが見事の一言。 難しい跳躍や速いフレーズの連続も飄々と演奏され、しかも高音域での煌くような響きの明るさが特徴的でした。 そしてここでも伴奏のオケが素晴らしかった。 ピタっと丁寧に付けているだけでなく、横島さんの指揮のもと、息づいた充実した音楽を展開。 そしてフィナーレに至って、両者が熱く絡み合う感動的なエンディングでした。 演奏終了後、仲間のオケ団員はもちろん指揮者の横島さんもまた嬉しそうな表情がこぼれていたのが印象的でした。
そして何より今回の演奏会のメインのブラームスの交響曲第4番での熱い演奏に圧倒されました。
失礼ながら奈良フィルからこのような熱い音楽がほとばしり出てくるとは予想だにしていませんでした。 また横島さんの常に全力投球の熱い指揮も素晴らしかった。 熱気が漲っているのですけど、抑えるべきところもまたぐっと熱く抑え込みます。 常に走りっぱなしではありません。 歌わせる部分は熱く歌わせ、クライマックスもまた熱く迫力のこもった音楽を構築。 構成感がきちんとあったうえでの熱さが特徴的です。 しかもその動きたるやエネルギーの塊のような感じにも見えます。 見ていても熱くなりますけど、オケもそのような熱い指揮に見事に応えて見事でした。 このオケらしい上品さを少しも失うことなく、非常に感動的な音楽を届けてくれました。 贅沢を言わせてもらうならば、もう少しヴァイオリンの数が欲しかったところですけれど、これだけの熱い演奏であってもどの局面においてもバランスを欠くことがなく、非常によく纏まった響きだったのに感動しました。 これは横島さんのバランス感覚の良さやオーケストラ・コントロールの賜物もあるでしょうけれど、美しい響きを損なわない奈良フィルの今後の成長がますます楽しみです。


簡単に演奏会をふり返ってみたいと思います。

今年初めての奈良県文化会館には開演時間を5分過ぎた頃に到着。 さっそく2階席へと直行して中央右側の最前列AA-38を確保して落ち着きます。  なお奈良フィルは奈良県を代表するプロ・オーケストラ。 今回も奈良テレビの収録が入っていました。

さてロビー・コンサートはトロンボーン3重奏でしたが(最後のほうをちょっと聴かせていただきましたけど)、ステージ上でフルートの原さんが練習されているのを聴きながら、席でまずパンフレットの確認。 最初に次回演奏会は・・・ パトリシア・パニーさんによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番ですか、ちょっとワクワクしますね。

続いてメンバー表を見ていて、えっ! と驚きました。 チェロの主席に野村朋亨さんがいらっしゃいます。 大阪シンフォニカーの会員だったころ、特別首席として何度も拝見拝聴させていただいた熱血チェリストの野村さん。 このオケでの活躍も大いに期待したいところです。
あとコンサートマスターが八軒さんから、コンサートミストレスの林泉さんになっています。 この林さんも1990年頃、まだ知名度の低かった頃の大阪シンフォニカーでコンサートミストレスをされていました。 期待が高まります。

定刻。 ステージが明るくなり、客席の照明がちょっと落ちました。 1階席は8割(見える範囲で)程度埋まっていたでしょうか。 2階席は3割程度かな、もうちょっと人が入ってもいいのに、という感じです。
今回のプレ・トークは、チェロの荻野さん。 前回までのホルンの東谷さんでしたけど、今回はメンバー表に名前がありませんでした。 さて、荻野さんのトーク。 モーツァルトとウェーバーが遠い親戚関係にあったことや、クラリネットのソロを担当する山本さん、指揮者の横島さんのことなど、好感の持てる口調でのお喋り。 これから演奏する音楽に興味を持たせて下がれらると、すぐにオケメンバーが入場。 通常配置で、弦楽器が 8-6-5-3-2 の小さな編成でした。 チューニングを完了し、指揮者の横島さんが落ち着いた感じでにこやかに登場。

モーツァルト交響曲第32番。 軽快な響きなのですが、決して軽くない音楽に魅了されました。 オケの響きにキレがあります。 そして弦楽器には艶があって素敵。 そこに管楽器の抑えた響きが絶妙にバランスされた素晴らしい演奏でした。

第1楽章、キレがよく弾力を感じさせた音楽が飛び出てきました。 しかも弦楽器に艶があります。 トランペットやホルンも柔らかく絡んで素敵。 耳ざわりはとても軽やかな音楽なのですけど、内容のとても詰まった音楽です。 モーツァルトをこのように演奏するなんて、難しいのではないでしょうか。 最後はスパっと音楽を解き放つようにしてこの楽章を終えたのも見事でした。

切れ目なく入る第2楽章も豊かな響きのアンダンテ。 けっして緩いのではない響きの柔らかさにタメを感じます。 裏で吹くフルートは柔らかく綺麗いだし、コントラバスやホルンもよかったなぁ。 横島さん、先の楽章でも思ったのですけど、左手を巧みに使って微妙なニュアンスをうまく紡ぎ出しているようです。 細かな事を言えば、ホルンが微妙に外れたりした面もあったようですけど、チャーミングなアンサンブルでした。

切れ目なく入る第3楽章は快活な音楽で始まりました。 柔らかく緻密な弦楽器が次第に熱を帯びてきますけど、響きそのものは軽快なまま。 オケの巧さを感じます。 トランペットがここだけ突き抜けるように吹いて響きのピークを形成。 活発な音楽がより充実しエンディングをタイトに決めて閉じました。 

第1ヴァイオリンがいったん退場、弦のメンバーを 10-9-7-6-5 に増強して再登場。 チューニング完了後、団員でもあるソリストの山本さんが登場し、コンミスとにこやかに握手していよいよ始まります。

ウェーバーのクラリネット協奏曲。 山本浩資さんのクラリネット・ソロが見事の一言。 難しい跳躍や速いフレーズの連続も飄々と演奏され、しかも高音域での煌くような響きの明るさが特徴的でした。 そしてここでも伴奏のオケが素晴らしかった。 ピタっと丁寧に付けているだけでなく、横島さんの指揮のもと、息づいた充実した音楽を展開。 フィナーレに至って、両者が熱く絡み合う感動的なエンディングでした。

第1楽章、豊かな弦の響き、弾力もあって角の取れたまろやかな全奏が綺麗。 そして大きくたっぷりとして艶やかな弦楽器による第2主題も素敵でした。 クラリネットのソロが登場、跳躍を見事に決めます。 山本さんのソロは、明るい響きで高音域に独特な照りのようなものを感じます。 技巧的なパッセージも楽々とこなしてゆきます。 オケもピタっと付けて弾力ある響きで音楽が息づいています。 クラリネットが第2主題を吹きますと、明るくて楽しい気分になります。 弾力を感じさせるオケと、煌くようなクラリネットが呼応しあいながら力強いコーダを形成して締めくくると、思わず客席から拍手が沸き起こりましたが、この拍手、よく理解できました。

第2楽章、ヴィオラの響き、チェロのピチカートと瞑想的な開始。 ヴァイオリンとともにクラリネットが憂いを持った響きで登場し、でも暗く沈み込むようなことはなく、どこかに明るい表情を感じるのは山本さんの資質かもしれませんね。 オケが音量を上げます。 ここのフルート2本が柔らかくて綺麗でした。 クラリネットが凛とした響きで吹き始め、オケの伴奏と絡みながら曲を進めます。 ここでもクラリネットの高い音域が印象的に響いていました。 集中力の高い演奏で、慎重に音を紡いでいるのですけど、神経質にならないんですね。 飄々とやってらっしゃる感じ。 聞き惚れているうちにそっとこの楽章を閉じました。

第3楽章、軽やかなクラリネットが伸びやかでもあります。 オケもまた軽快でかつ丁寧につけています。 艶を感じさせるオケをバックに、クラリネットの響きが煌くよう。 軽くスウィングするような悦びを感じさせます。 ティムパニの的確な打音、オケの演奏も徐々に熱気が感じられるようになってきました。 躍動的な部分と緩やかな部分が交互にやってきたあと、フィナーレは転がるようなクラリネットのソロとオケの熱い演奏が見事に絡みあい、最後はクラリネットのトリルと跳躍音の連続によって感動が最高潮に達して華やかに曲を締めくくりました。 
演奏終了後、仲間のオケ団員はもちろん指揮者の横島さんもまた嬉しそうな表情がこぼれていたのが印象的でした。

20分の休憩。 この間を利用して会員の更新をしました。 正直、つまらない演奏なら更新を見合わせようかとも考えていましたけれど、これだけ素晴らしい演奏を耳にしたら更新するしかありませんものね。

予鈴のあとオケメンバーが揃うと、弦楽器は 10-9-7-6-5 の編成。 指揮者の横島さんがオケに立つようにと手を挙げながら登場し、始まります。

ブラームスの交響曲第4番。 とにかく熱い演奏に圧倒されました。 失礼ながら奈良フィルからこのような熱い音楽がほとばしり出てくるとは予想だにしていませんでした。 また横島さんの常に全力投球の熱い指揮も素晴らしかった。 熱気が漲っているのですけど、抑えるべきところもまたぐっと熱く抑え込みます。 常に走りっぱなしではありません。 歌わせる部分は熱く歌わせ、クライマックスもまた熱く迫力のこもった音楽を構築。 構成感がきちんとあったうえでの熱さが特徴的です。 しかもその動きたるやエネルギーの塊のような感じにも見えます。 見ていても熱くなりますけど、オケもそのような熱い指揮に見事に応えて見事でした。 このオケらしい上品さを少しも失うことなく、非常に感動的な音楽を届けてくれました。 贅沢を言わせてもらうならば、もう少しヴァイオリンの数が欲しかったところですけれど、これだけの熱い演奏であってもどの局面においてもバランスを欠くことがなく、非常によく纏まった響きだったのに感動しました。

第1楽章、優雅に腕をまわしヴァイオリンの柔らかな旋律を引き出します。 ほんの少しテンポが遅いのかな。 中低弦もゆったりと、管楽器もまた柔らかく絡み、丁寧にゆったりと曲を進めてゆきます。  第2主題のチェロの旋律、野村さんが思い入れたっぷりに弾いていました。 ホルンが割って入ってきますけど、ここの響きも当たりの柔らかなもので音楽が一回り大きくなる、そんな感じ。 全体が見事にブレンドされています。 クライマックスでは熱くタイトに盛り上がったあと、すっと減衰して音楽が自然に呼吸するような感じ。 ホルンが不揃いだった箇所もあったようですが、大きな問題ではありません。 このあとオケの響きの全体が呼応しあいながら徐々に音楽に熱気がこもってきました。 ホルン・ソロ、渋い響きでした。 いい感じですね。 横島さんは大きな動きでふりかぶって情熱的に音楽に没入してゆきますと、オケもそれにきちっと応えた情熱的な響きで応えます。 熱い熱い音楽の渦になりました。 もう少しヴァイオリンが欲しいような気がしましたけど、渋いホルン、小気味良いティムパニと力が常に内側に漲るような感動的なフィナーレを形成してこの楽章を閉じました。 凄かった。 こんなに熱い響きが奈良フィルから導き出されてきたのに驚きました。

第2楽章、第3・4番ホルンによる序奏をタイトに決め、おごそかな感じのするピチカート。 クラリネットの山本さんも熱っぽく吹いていますけど、アンサンブルの枠組みがきちっとしているのが特徴的です。 ただし枠から溢れ出んばかりの情熱を感じます。 弦楽器と管楽器がよくブレンドされています。 ゆったりと歌わせた弦楽器の集中力の高さもまた素晴らしいものでした。 常に全力投球といった感じかな。 クライマックスでは低弦に力を注入し、ヴァイオリンにも左手を使って気合を入れ、直情的にぐぃっと盛り上げたあとすっと退く。 そしてまたティムパニの重い響きのロールで熱い音楽へ、オケも見事に反応しています。 最後はゆったりと熱い想いの渦巻くような音楽としたあと、柔らかくそっと置くように締めました。

第3楽章、タイトな出だしからぐぃぐぃと進めます。 トランペットが煌くよう。 ヴァイオリンの旋律は大きく歌わせるようにしてから全奏で力一杯左手を振り下ろして感動的な音楽。 十二分に熱い音楽なのですが、決して絶叫調にならず、艶を失わないところが奈良フィルの見事なところでしょう。 横島さん、そんなオケを駆使し、左手を大きくすくいあげるようにしたり、すばやく振り下ろしたりして迫力満点。 音楽の山と谷を見事に振り分けていて、指揮姿を見ていても熱くなってきます。 トランペットがスポットライトを浴びたように目立ちますけど、ホルンはちょっと滋味な感じで全体の響きの中に入り込んでいる感じ。 フィナーレは歯切れのよい音楽で、振り下ろした手が止まったあと残響がホールに残っていました。

第4楽章、トロンボーンに合図を送り、振り始めるとコラールのような響きで感動的に始まりました。 ティムパニが重い響きでぐっと盛り上げたあと、木管楽器が綺麗な響きで清涼剤のよう。 しかしまた熱く鋭く盛り上がってゆきますと、管楽器が限界ギリギリのような感じで指揮に必死で喰らいついていました。 その熱い音楽が弦楽器に引き継がれますと、熱いのにしっとりと濡れたような響きで、これにも魅了されました。 しかも横島さん、押してばかりではありません。 すっと退いて、丁寧に歌わせようとします。 それも気合を込めて歌わせるような感じですが、オケがまたそれにしっかりと応えました。 原さんのフルート・ソロ、深みを感じさせて本当に素晴らしいものでしたし、このあとの山本さんのクラリネット、前橋さんのオーボエも優しく絡んでいました。 弦楽器でもチェロパートの呼吸などもハッとさせられるような素敵さがありました。 
そしてコーダ。 また熱い音楽が迸り出てきます。 タイトなホルン、重厚なトロンボーンももちろん見事なのですけれど、熱くあってもどこか冷静で緻密に響き合わせている管楽器群の巧さ。 もちろん弦楽器もしっかりと曲を支えつつ熱く応えているからより感動的になります。 最後は、これでもか、これでもか、といった感じで熱気を更に注ぎ込んだ音楽として全曲を閉じました。
なおこのエンディング、左手を2回大きく振り下ろした横島さん。 最後の手を降ろしきったあと、ちょっとヨロけてしまうほどの力の入れようで、大丈夫か、と思わずハラっとしたほどの力の入れようでした。 とにかく素晴らしい演奏でした。

このあとのアンコールのハンガリー舞曲第1番も熱い演奏。 
練習量の関係でしょうか、基本スタンスは同じでもより自由度が高くなった感じでより感情移入の大きな演奏で、テンポも揺れてロマンティックさも増していました。 こちらも聴いていて楽しくなってきた演奏で、いつまでも拍手が鳴り止みませんでした。

横島さんのバランス感覚の良さやオーケストラ・コントロールの賜物もあったのでしょうけど、このような指揮に見事についてゆき、しかも美しい響きを損なわない奈良フィルの今後の成長がますます楽しみです。