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千里フィルハーモニア・大阪 第33回定期演奏会

とにかく熱い、いずれも大熱演戻る


千里フィルハーモニア・大阪 第33回定期演奏会
2005年4月10日(日) 14:00 いずみホール

松下 功:二重協奏曲「祈りの時へ」(2005) 【世界初演】(*)
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調op.47
シベリウス:交響曲第2番ニ長調op.43

独奏:長原幸太(vn)、澤 和樹(vn)

指揮:澤 和樹、松下 功(*)


とにかく熱い、いずれも大熱演の演奏会でした。
ヴァイオリン協奏曲、ソリストの長原幸太さんが身体を左右に振りながらの熱演。 時には熱い想いが身体中を駆け抜けるのか、一本足奏法になる程に気合が入っていました。 見ているこちら側までその熱い想いがビンビンと伝わってきた熱い演奏でした。
また交響曲第2番もまた終始熱気のこもった演奏でした。 澤和樹さんの指揮による音楽はザッハリッヒカイト。 安定した低弦の上に乗せた音楽が十分に締まっていて曖昧なところなどなく、ぐぃぐぃと進めていたのが特徴的でした。 また金管楽器の響きには重量感があり、要所をタイトに決めて強靭な音楽。 オケ全体の音色には統一感があり、素晴らしい演奏でした。 こんな力強いシベリウスの交響曲第2番、とても大好きです。 
ただし、こんなにも熱い音楽が2曲続いたせいでしょうか、交響曲の後半には聴いているこちら側に少々聴き疲れを感じてきましたけど、オケの皆さんは最後まで全く集中力を切らすことなく脱帽。 熱く迸るようなシベリウスに参りました、本当にそんな感じでした。
なおこれに先立って演奏された世界初演作、松下功さん作曲・指揮による二重協奏曲「祈りの時へ」(2005)。 けっして明るい音楽ではなく、最近流行りのヒーリング・ミュージック的な要素を持たない音楽で、常に真摯な響きが特徴的。 不安を掻き立てられる8分の11拍子の繰返しによる開始、沈痛な叫びのようなヴァイオリンの掛け合いなど、響きの真摯さがまた静かに熱い演奏でした。 現代音楽を聴く機会は少ないのですけれど、1970年代からクラシック音楽に目覚めたこともあって、現代音楽というとミニマル・ミュージックや前衛的な音楽を想像してしまいます。 実はヒーリング・ミュージック的な現代音楽って軽すぎて違和感を持っていたりしますので、この演奏も集中して聴けました。 とてもいい経験になりました。
とにかく皆さん、熱い演奏の数々、おつかれさまでした。


簡単に演奏会をふり返ってみたいと思います。

自宅を出る頃、にわかに曇ってきて霧雨のようなのが降っていましたけど、森之宮の駅を出るととてもいい天気。 ポカポカ陽気の中、一駅歩いていずみホールに到着したら、ホールの中はクーラーが入ってました。 Q−30の席に落ち着いて開演を待ちます。 1階席は9割、2階席も8割程度入って定刻になりました。

パラパラとお客さんが入ってくるせいでしょうか、定刻を3〜4分過ぎてステージが明るくなり、オケが整列入場。 拍手が起こります。 オケが位置についたあと、指揮者の澤さんがステージの袖に立ち、演奏に先立ってのスピーチをされました。
初代常任指揮者だった東儀祐二さんの没後20年をふりかえること、The Music for Peace Project 2005 に参加していること、本日世界初演される二重協奏曲「祈りの時へ」が昨年の大晦日より書かれ始め、その時が偶然にも The Music for Peace Project に加わることを決めたe-mailのやり取りをした時であったことなどが説明されました。

照明が落ち、オケがチューニングし、指揮者とソリストが登場。 グレーの髪をされた作曲者で指揮をされる松下さんの両脇に1stヴァイオリンとして長原幸太さん、2ndヴァイオリンの澤和樹さんが立ちます。 なおソリストの前には譜面台がありました。 いよいよ始まります。

松下功さん作曲の二重協奏曲「祈りの時へ」。 戦後60年にあたって作曲されたもので、パンフレットのプログムラノートには次のように書かれていました。
「湧き上がってきた音を探しもとめた作品」「2つのヴァイオリンは、常に同じ世界に存在し、常に寄り添いながら進んでいく」「全体は、8分の11拍子という不規則な小節が、規則的に繰り返される冒頭部分、淡い光の粒子に包み込まれる中間部、そして、力強い祈りの世界へと導かれる後半部分から成り立っている」

その不安をかきたてるようなオケのジャンジャジャジャーンの響きによる開始。 この繰り返しの上に泣くようなヴァイオリンのソロが重なります。 2本のソロは1stのあとと2ndが追いかけるように弾いて進み、音楽は次第に音量を増しますけど、同じ音型のまま。 号泣しているような音量に達したあと、すっと退きます。 でも不安感は残ったまま。
ヴァイオリンのソロが掛け合いを始めますと、深く沈痛な叫びでしょうか。 ここでオケは休みとなりました(カデンツァ?)。 オケが加わってトランペットのソロ、これは鎮魂歌かな。 音楽がしだいに大きく強くなったあと、すっとまた退いてヴァイオリンの2重ソロ。 これにオケも加わってフーガのような音楽になりました。 締まったブラス、ティムパニが打ちつけるようにして音楽はいったん途切れます。
ヴァイオリンの2重ソロが始まりました。 またオケはお休み。 人間の声に一番近い楽器とも言われるヴァイオリンの響きで、泣き、叫び、鎮魂を唱えているような感じに思えます。
木管楽器が入り、コントラバスも力強く弾くなか、ヴァイオリンソロが熱く絡んできました。 長原さん、常に熱っぽい弾き方なのですけど、ここに至っては左足1本立ちになるほどの熱演。 更にオケの低弦のピチカートでより熱っぽくなってくると、長原さんもまた更に力が入り、弓の毛が切れていました。 澤さんもここでは大きな身体を前後に動かして熱い演奏。 指揮者の松下さんが左手をさっと横に伸ばし、音楽をいったん止めました。
ヴァイオリンソロのバック、オケのヴァイオリンのトレモロが風の音? それとも水が流れる音かな? と思っているうちに管楽器が加わって音楽がぐっと高揚。 ここに鉄琴が響き渡りますと、それが鐘の音にも聴こえ、その響きがこれまでの様々な想いを浄化させるような気持ちになって全曲を閉じました。

けっして明るい音楽ではなく、最近流行りのヒーリング・ミュージック的な要素を持たない音楽でした。 常に真摯な響きが特徴的で、その響きの真摯さがまた静かに熱い演奏でした。
現代音楽を聴く機会は少ないのですけれど、1970年代からクラシック音楽に目覚めたこともあって、現代音楽というとミニマル・ミュージックや前衛的な音楽を想像してしまいます。 実はヒーリング・ミュージック的な現代音楽って軽すぎて違和感を持っていたりしますので、この演奏は集中して聴けました。 とてもいい経験になりました。

照明が落ち、譜面台を片付けてチェロの席を前に移動して準備完了。 先ほどの熱演を聴かせてくれた長原幸太さんと、指揮者として澤さんが登場しました。

この長原さん、1981年生、東京芸大在学中に全額スカラシップでジュリアード音楽院に留学され、サイトウ・キネン・オケにも最年少で参加しているそうです。 2004年より大阪フィル首席客演コンサートマスターにも就任されており、先日の朝日新聞の夕刊にも採りあげられていました。 そこにも、オーケストラ好きの永遠の音楽小僧、常に熱い演奏が身上であると書かれていましたね。

その長原さんによるシベリウスのヴァイオリン協奏曲、切れ味鋭く、深い響きもあって、熱い想いのこもった演奏でした。 ここでの演奏も身体を左右に大きく振りながらの熱演。 しかもまた左右に振った身体の勢いで一本足奏法になる場面もありました。 気合の入った演奏を見ているこちら側にまで、熱い想いがビンビンと伝わってきていました。

第1楽章、冷んやりとしたトレモロの上に艶やかなソロによる開始。 深々とした音色ながら、透明感を感じました。 オケの伴奏は中低弦をベースにした豊かな響きながら、ぎゅっと引き締まっていて充実した感じ。 長原さんのソロもそれに乗って冴え渡りました。 妙技も全く危なげないどころか、魅了されるものを感じます。 カデンツァも切れ味鋭く、深みもあって会場内を惹きつけていました。 オケもまた熱演、トロンボーンがタイトに鳴り、木管楽器が柔らかく吹くのですけど、オケの音色が統一されていて見事です。 なんかこんな充実した音楽を聴いているとお腹がいっぱいになってくるみたい。 スピードのあがったフィナーレでは、長原さんが中腰になるほどに力をいれて弾き、スパッと切り落としたエンディングも見事でした。

第2楽章の前、長原さんがチューニングを実施。 ちょっと野太い感じのする木管の熱い音楽による開始、ここにじっくりとして想いを乗せたヴァイオリンソロへと繋ぎます。 オケの低弦のピチカートがよく響いてきます。 ソロは押し引きともに自在。 そっと囁きかけるような場面もありましたし、身体を左右にゆすって深く感情を込めて歌いあげる場面もありましたけど、常に音が濁らないのが素晴らしいですね。 聴き惚れました。

第3楽章にはアタッカで入るとオケの重量感のある響き。 コントラバス女性奏者が一人で弾いていますけどよく響いてきます。 そこで気付いたのですけど、ソロの場面ではオケのヴィオラ、チェロも1プルトのみで演奏しているのですね。 コントラバスなど、全奏では2人がアルコ、2人がピチカートだったりもして勉強になりました。 それはともかく、長原さんもより気合が入ってきて、鋼のようなしなやかで強靭なソロを展開。 独特の艶というか照りのようなものを感じます。 そんな響きに魅了されつつもぐぃぐぃと進む音楽を追いかけ、耳なじみのフレーズがどんどんと過ぎてゆき、最後はスパっと切り落として全曲を締めました。
演奏終了後、澤さんと握手した長原さんがペロっと舌を出したのは何だったのでしょうか。 ちょっと飛ばし過ぎたかな・・・ってことかしら。 

20分の休憩。 ロビーに出てちょっと興奮気味な気持ちを鎮めました。

メインの交響曲第2番、こちらもまた終始熱気のこもった演奏でした。 澤和樹さんの指揮による音楽はザッハリッヒカイト。 安定した低弦の上に乗せた音楽が十分に締まっていて曖昧なところなどなく、ぐぃぐぃと進めていたのが特徴的でした。 また金管楽器の響きには重量感があり、要所をタイトに決めて強靭な音楽。 ここでもオケ全体の音色には統一感があり、素晴らしい演奏でした。 こんな力強いシベリウスの交響曲第2番、とても大好きです。 
ただし、こんなにも熱い音楽が2曲続いたせいでしょうか、交響曲の後半には聴いているこちら側に少々聴き疲れを感じてきましたけど、オケの皆さんは最後まで全く集中力を切らすことなく脱帽。 熱く迸るようなシベリウスに参りました、本当にそんな感じでした。
なお第1ヴァイオリンの末席に、先ほどのソリストの長原さんが加わっておられました。

第1楽章、豊かな弦の脈動する響き、中低弦が芯となって安定感のあるサウンドに柔らかなホルンが重なった充実した開始でした。 第2主題、木管楽器の響きもまろやかで素適なのですけれど、弦楽器の響きの一つ一つが重なりあって雄弁なのに耳を奪われます。 展開部の高揚感も熱く演じて、オケが実によく纏まっていました。 曖昧さがなく、音色の統一感があり、タイトな盛り上がり。 若干トランペットに惜しい面はありましたけど、問題ではありません。 熱い音楽のまま主題を戻し、最後はそっと着地しました。

第2楽章、ティムパニの重量感のある響き、コントラバスの深い音色によるピチカートも息づいておりチェロに受け渡されます。 ファゴットもまた深い響きで主題を呈示し、これが他の木管楽器に受け渡されて実に厳かな雰囲気。 しかし弦楽器が入ってくると徐々に熱気が漲ってきます。 見ていても弓の動きがよく揃い、熱い想いのようなものを込めて弾いているみたい。 金管楽器も見事に揃って粘り気のある響きによるクライマックスを構築。 そこをすっと退き、ほんの少しの間隙を空けて第2主題の弦楽アンサンブルに繋ぎます。 澤さん、ちょっと濃い味付けなのですけど、基本インテンポでしょうか、ぐぃぐぃと曲を進めます。 ザッハリッヒカイトという言葉が浮かびます。 とにかく聴き応えのある音楽を展開し、オケも熱い演奏で応え、最後は熱い想いが迸るような終結でした。

第3楽章、タイトに締まったヴァイオリンとコントラバスが呼応するかのような開始。 ここでもぐぃぐぃと曲を進めてゆき、迫力ある熱い音楽を展開しました。 ティムパニの静かな打音に導かれ、エキゾチックな感じもするオーボエのソロが清涼感もあり素晴らしかった。 ここに弦楽器や他の木管楽器が熱く絡んできて音楽が高揚してゆきます。 一丸となって熱く感動的な音楽も、冒頭の嵐のような音楽が割り込みます。 機動力があるのですけど、決して冷たくありません、熱い想いが脈動して押し寄せるといった感じかな。 オーボエの旋律が戻ってまた清涼感を漂わせたあと、また想いが脈動しながら押し寄せてきます。

第4楽章にアタッカでなだれ込みますと、トロンボーンとティムパニの熱いリズムに乗せて熱い弦楽合奏。 十二分な熱気が篭っていますけど、余計な歌わせ方をせず、ストレートに熱い音楽が流れ出てきます。 後ろで弾いている長原さんを見ていると、その動きに歌い込みが入っているのでしょうね、若干動き(弓の上下は同じですけど)がオケのメンバーと違うのが印象的です。 それはともかく、ヴィオラとチェロのトレモロが熱い下敷きとなって木管楽器が憂いを帯びた柔らかな響きを聴かせたあと、金管楽器がそれを遮ると展開部でしょうか。 じっくりとした音楽として展開。 チェロがリードしながら高揚感のあるフィナーレへと登りつめてゆきます。 輝かしくかつ広大な感じのする主題を戻し、ここでも熱いけれどストレートな音楽を形成してぐぃぐぃと進めます。 澤さんは大きく振り、オケの集中力を少しも切らすことのない充実した響きで全体を締めました。

とにかく全編とても熱い音楽の連続、とくに熱く迸るようなシベリウスに参りました。 
あまりの熱演が続いたこともありアンコールはなし。 これだけの演奏に中途半端なアンコールは不要でしょう。 納得できます。
またもやちょっとロビーで一息つき、興奮気味な気持ちを鎮めてからホールをあとにしました。
皆さん、熱い演奏の数々、本当におつかれさまでした。