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枚方フィルハーモニー管弦楽団 第61回定期演奏会

歌い語るモーツァルトが白眉戻る


枚方フィルハーモニー管弦楽団 第61回定期演奏会
2005年5月15日(日) 14:00  枚方市民会館大ホール

J.シュトラウスU: 歌劇「こうもり」序曲
モーツアルト: クラリネット協奏曲
ブラームス: 交響曲第4番

(アンコール)J.シュトラウスU: トリッチ・トラッチ・ポルカ

独奏:越野倫巨(cl)

指揮:寺坂隆夫


モーツァルトのクラリネット協奏曲が白眉でした。
ソリストは、団員の越野倫巨(ともみ)さん。 高校で吹奏楽部に入部したのがクラリネットとの出会いだそうで、音楽大学とも無縁な方とのことですけど、語りかけ歌いかける演奏は素晴らしいの一言。 パンフレットによると、プロ奏者の方についてレッスンされていて、しかもこの日のために1年間レッスンを続けて仕上げてこられたそうです。 安定したテクニックは勿論ですが、歌いかけ語りかけた演奏、そして何よりも音楽を楽しもうという姿勢がモーツァルトの音楽を息づいたものにさせていたと思います。 オケもこれまでとは違った充実した演奏でバックアップ、とても素敵な演奏を聴かせていただきました。
これに先立って演奏された「こうもり」序曲は、ちょっとアンサンブルに緩いところがありましたけど、それがかえってほのぼのとした感じでした。 またメインのブラームスの交響曲第4番、オケの特質をもって誠実に語りかけたような演奏でした。 煽ることなど皆無。 トツトツと晩年のブラームスの世界を描いていました。
いずれも枚方フィルらしい雰囲気の良い心暖まる演奏の数々でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

駅を出てホールに到着するまでの2〜3分の間、雨がパラパラっと降り出してきたので、慌ててホールに飛び込みました。 この後かなり強く降ったみたいですのでラッキーでした。

確か前回は2階席に入ったと思ったのですけど、立ち入り禁止のプレートが出ていました。 仕方なく1階席中央右側の「よ-38」を確保。 途中から2階席も開放したのかな、上のほうから子供の声が聞こえたような気もしましたけど、この席に落ち着いてしまいました。
いつも思うのですけど、このオケのお客さんは気軽に楽しもうといった雰囲気で(お子さん連れも多くて)、とてもほのぼのとした感じですね。 パンフレットを読みながら、ゆったりとした気持ちになって開演を待ちます。 1階席はほぼ9割の入りだったかしら。 

定刻を告げるブザーが鳴りましたけど、誰も出てこない。 5分位たってから再度ブザーが鳴ってオケのメンバーが登場。 1階席なのでよく見えませんが、弦楽器は 10-10-9-6-5 の編成でしょうか。 チューニングを完了し、指揮者の寺坂さんが登場しました。

「こうもり」序曲、ちょっとアンサンブルの緩いところが散見されましたけど、それがかえってほのぼのとした感じになっていたでしょうか。 暖かな演奏でした。

柔らかな響きによる開始からオーボエが雰囲気よく語りかけましたけど、ホルンがちょっと惜しかったみたい。 そしてこれに続く弦楽器のアンサンブルもどことなく緩い感じ。 全体的にテンポはちょっと遅めだったと思います。 朴訥とした雰囲気で曲を進めているようで、暖かな感じのする演奏が続きます。 隣に座っていた小母さん(珍しく一人で来られているようでした)が、楽しそうに身体をゆすって聴いておられたのが印象的でした。 レコードなどで聴くキビキビとした演奏とは確かに違ってて、時には怪しい面もあるのですけれど、とても暖かな演奏が楽しめます。 そして後半、スッキリとした感じで快活に盛り上げたのが気持ちいい。 ここではホルンも名誉挽回、豊かな響きを聞かせてくれました。 トランペットも柔らかくてよかったですね。 最後までキバらず、まあるく曲を纏めました。

メンバーが一部抜けて、弦楽器の編成が 10-10-8-6-3 になったかな(よく見えませんでしたけど)。 小振りの編成として準備を整えると、白のドレスに身を包んだ越野さんと指揮者の寺坂さんが登場。 入念なチューニングを行う際も笑顔を絶やさず、時には微笑みながら客席を見渡していた越野さん。 余裕も感じました(余裕を持たせるよう微笑んでいらしたのかもしれませんが)

その越野さん、このオケの団員の方で、パンフレットによると、高校で吹奏楽部に入部したのがクラリネットとの出会いだそうです。 音楽大学とは無縁な方なんだそうですが、1999年から京都市交響楽団の石橋先生の指導を受けておられるとか。 今回の演奏も1年前よりレッスンを受けてこられたそうです。 モーツァルトのことを呼び捨てに出来ず、必ず「モーツァルトさん」と言われているそうで、このことからも音楽に対する姿勢が感じられると思うのは単純でしょうか。

モーツァルトさんのクラリネット協奏曲、とにかくこの演奏会の白眉でした。 安定したテクニックは勿論ですが、歌いかけ語りかけた演奏、そして何よりも音楽を楽しもうという姿勢がモーツァルトの音楽を息づいたものにさせていたと思います。 オケもこれまでとは違った充実した演奏でバックアップ、とても素敵な演奏でした。

第1楽章、先ほどまでとは打って変わって音程の合ったスッキリした響きによる優美な第1主題の呈示。 オケのパートがチャーミングに掛け合い、響きを合わせるのもとても自然で肩の力が抜けた上々の滑り出し。 すでにここからこの演奏に対する期待がぐっと高まります。
越野さんのソロが登場、音質が柔らかく、そして何より語りかけるような歌いまわしに耳を奪われました。 可憐なのにとても雄弁でもあります。 身体全体を巧く使いながら、高音と低音の掛け合いをまるで楽しむように吹いておられます。 聴いているこちらも夢見心地。 ソロが終わったあとの笑顔もまた素敵に輝いていました。
オケもそんな演奏に併せるかのように、快活で軽やかな演奏でモーツァルトらしさを上品に演出。 
 オケも相当に練習を重ねてこられたのでしょうね、けど、それを超えて音楽を楽しむ気持ちがよく出ていたと思います。 素晴らしい演奏です。
主題が戻って、越野さんのソロはますます冴え渡り、大好きなモーツァルトを楽しみ、そしてモーツァルトと会話しているかのような演奏に耳を奪われっぱなし。 そんな類稀な演奏のまま幕を閉じました。

第2楽章の前、楽器に布を通して楽器を整備してからスタート。 抑制をかけつつ、旋律をしっとり歌いだしました。 素朴で端正な感じ。 オケもゆったりと息をあわせて進めます。 ロマティックさを前面に出すよりも、清楚に語りかけた感じですね。 やわらかな時間がホールの中を流れてゆきました。 至福のひととき。 枚方フィルらしい、気持ちのすっきりした演奏、そのような印象を持った楽章でした。

第3楽章、軽やかで転がるようなクラリネットによる主題の呈示。 リズミカルなんですけど、やや抑制気味にも聞こえたのはちょっと疲れが見えてきたのでしょうか。 それでも身体をよく使い、想いを乗せて歌い込み、語り合いあうような演奏はとても見事。 特に低い音、実に落着いて響いてきました。
後半、残った力を振り絞ったのでしょうか、調子をまた乗せてきて音の伸びがよくなってきました。 それにともなって笑顔もまた多く見えるようになった越野さん。 技巧的なパッセージの連続も見事。 よく転がる艶やかな響きで華麗にこなして歌心満載の演奏として吹き終え、オケもそれをきちんと引き継いで全曲を締めくくりました。

とても素晴らしい演奏に大満足しました。 
モーツァルトの実演は、プロ・アマ問わず、内心批判的に受け取ることも多いのですけれど、これは掛け値無しに楽しめたモーツァルトの演奏でした。 見事な演奏に会場からも拍手が鳴り止みまわせんでした。

15分の休憩。 パンフレットを読んで時間をすごします。 最近、席から離れてウロウロすることが少なくなりました。 で、パンフレットを読んで驚いたのが、指揮者の湯浅卓雄さんがこのオケでクラリネット吹いてらしたとのこと。 創立50周年、歴史のあるオケのいったんを垣間見た感じです。 でもパンフレットにも書かれているとおり、多くのエキストラで支えられることなく、地域に根付いた地道な活動を基盤としておられることに頭が下がります。 今回も無料の演奏会ですしね。

ブザーが鳴って休憩終了。 オケは、10-10-9-8-5 の編成になったようです。 コンサートマスターが、これまでの女性から男性に交代。 指揮者の寺坂さんが出てこられて準備完了です。 なお寺坂さんは中学校の音楽の先生が本職だそうです。 そうそう、さっきソロを取られた越野さんもクラリネット奏者の末席に座っておられます。

ブラームスの交響曲第4番、オケの特質をもって誠実に語りかけたような演奏でした。 煽ることなど皆無。 トツトツと晩年のブラームスの世界を描いていました。 枚方フィルらしい雰囲気の良い心暖まる演奏でした。 個人的にはもうちょっと燃えて欲しかった面はありましたけれど。

第1楽章、ヴァイオリンが哀愁に満ちた旋律をゆったりと弾き始めました。 ん、さっきまのモーツァルトと違ってちょっと音程に怪しい面も。 木管が落ちた?などミスもあったりはしましたけど、淡々と曲を進めてゆくうちに徐々にこなれてきたみたいです。 ピークも淡々と進めて乗り越えました。 低弦はしっかりと鳴っていますけど、ゴウゴウと押し寄せてくるような雰囲気はありません。 トツトツとした晩年のブラームスといった感じですね。 後半、音量が上がって力も入ってきたようです。 でもやはり淡々と曲を描き、恰幅よくこの楽章を閉めました。

第2楽章、ホルンが朴訥とした響き、木管も可憐に応えて開始。 ピチカートに乗せ、クラリネットやファゴットがしめやかな感じで曲を進めます。 ちょっとホルンがズレてるっぽい感じがしましたけど。 弦楽器がアルコになって、爽やかなヴァイオリンの響き、アンサンブルも熱気を孕んできました。 しかし音量が上がっても、駈け込むようなことなく、自分達の音楽を誠実に演っている印象です。 ゆったりと噛んで含めるような感じかな。 惜しむらくは、管と弦がどことなく噛み合っていないようなもどかしさを感じた点でしょうか。 フィナーレは少しうねるように盛り上げて、すっと退いて終わりました。

第3楽章、これまでのもどかしさを晴らすような瑞々しい音楽が始まりました。 抑制がよく効いてて、トライアングルも可憐に響いてよかったな。 端正で、きちんとした盛り上がりですけど、ここでは力強さを持って音楽が流れてゆきます。 コントラバスのパートが下支えをした音楽、誠実さをもって盛り上げて歯切れよく終わりました。 ここのトランペットも抑制のよく効いた明るい響きがよかったですね。

第4楽章、ちょっとだけ間をおいてすぐに開始。 重厚な音楽が歩み始めました。 ここでも端正な音楽。 弦楽器が歌い始めますが、コトンラバスの響きに安定感があります。 木管楽器、悲しみを湛えたようなソロがいずれも素敵。 そして絡み合って雰囲気の良さも漂ってきます。 トロンボーンが厳かで張りのある響き、ホルンも艶を感じさせる響きで割って入りますけど、しみじみとした雰囲気はそのままですね。 あくまでも端正、トツトツと曲を進めてゆくようです。 決して激することのない音楽でフィナーレも形成し、最後は潔く纏め上げました。

もうちょっとエネルギッシュに、と感じないこともないわけではありませんが、あくまでも自分達の音楽を誠実に描きあげたような演奏には拍手を惜しみませんでした。