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豊中市民管弦楽団 第32回定期演奏会

密度の濃さで聴かせる丹念に仕上げられた演奏戻る


豊中市民管弦楽団 第32回定期演奏会
2005年6月26日(日) 14:00  吹田市文化会館メイシアター・大ホール

サン=サーンス: 歌劇「サムソンとデリラ」より「バッカナール」
チャイコフスキー: 幻想序曲「ロメオとジュリエット」
ラフマニノフ: 交響曲第2番ホ短調

指揮: 谷野里香


いずれの曲も響きの角をとった上質で、決して勢いにまかせることのない丹念に仕上げられた演奏に感じ入りました。 もちろん迫力もあります。 しかもそれが音の強さではなく、響きの密度の濃さで聴かせるような演奏が見事でした。
ところで、曲目がサン=サーンスの「サムソンとデリラ」から「バッカナール」、チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」、そして遅れてきたロマン派・ラフマニノフの大作である交響曲第2番。 ロマンティックな情感を前面に出し、コテコテに演奏してもおかしくない曲が並べられています。 でも谷野さんと豊中市民管の演奏って、端正で誠実な演奏という印象が強くあります。 これらコテコテな曲をどのように料理するのだろうか・・・ 正直今回の演奏会の個人的な注目点はこれだったのですけど、やはりこれらの演奏、流行の言葉で言うなら想定の範囲内、色気というものをあまり感じることはありませんでした。 
しかし特にラフマニノフなど完全版。 たっぷりとした音楽をじっくりと進め、しかも気合を込めた見事な演奏でした。 そして、この演奏の特徴は、何と言ってもオケの響きが明るかったことではないでしょうか。 ロシアっぽい憂色の響きで綿々と歌うことなどなく、実に端正な表現で全体を纏めていました。 もちろん響きの角を取って刺激物を除去、そしてクライマックではオケの響きをぎゅっと纏めた密度の濃い演奏としていました。 泣かせるようなクサい演出は微塵もないのは分かっています。 とても上品な演奏として見事に纏めあげたのも予想どおりですが、いやそれ以上にとても気合の篭った演奏に感じ入りました。
演奏終了後、鳴り止まない拍手に引っ張り出された谷野さん、「もうダメよ」、そんな感じで軽く首を振りながら出てこられたあと深々と会釈。 アンコールなしでの散会となりましたが、それもよく理解できる充実した演奏内容でした。
とにかくこのオケもどんどん巧くなってゆくようですね。 これからがますます楽しみです。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

昨日と同じ吹田のメイシアターです。 いつもこのオケは曽根の豊中市民会館を使っているのですけど、どうしたのでしょうかね。 昨日同様、いったん梅田に出てから阪急に乗り換えて吹田に向いました。 この方が、ちょっと時間はかかるけど交通費の節約になります。

昨日と同じく15分前にホールに到着。 そしてこれまた同じく2階への階段を上ります。
お目当ての中央通路の後ろ側の足もとの広い席、昨日はカメラマンが陣取っていたのと同じところに座りました(そ-28)。 昨日を同じ席にはすでにおじさんが座ってらしたのと、ちょっと座席の具合が悪くて、ギィギィ鳴る席だったので、今日はこの席と最初から決めていたのですね。 2階席は1〜2割くらいの入りだったかな、1階席も6〜7割かしら、ちょっと空席が目立っていたのが残念ですけどね。 でも余裕を持って狙った席に座れるのは嬉しいもんです。

時間までパンフレットやチラシを見て時間を過ごします。 ちなみにこのオケの次回定期は12月4日、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とカリンニコフの交響曲第1番というプログラムだそうです。 手帳にメモしようと開いたら、ちょうどこの日、別の演奏会とバッティングしていることが判明。 半年も先なのに、困ってしまいますね。 当分悩まないといけません・・・

ところで、今回の演奏会プログラム、サン=サーンスの「サムソンとデリラ」から「バッカナール」、チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」、そして遅れてきたロマン派のラフマニノフの大作・交響曲第2番。 いずれもロマンティックな情感を前面に出し、コテコテに演奏してもおかしくない曲が並べられていますけど、次回のプログラムもまたロマンティックな曲目ですよね。 ロマンティク路線を敷いてらっしゃるのでしょうか。

でも谷野さんと豊中市民管の演奏って、端正で誠実な演奏という印象が強くあります。 今回も、これらコテコテな曲をどのように料理するのだろうか・・・ 正直、今回の演奏会の個人的な注目点はこれなんですよね。 次回も同じ路線の継続とは、ちょっと意外に思えました。

そんなことを考えているうちに定刻。 ステージに向かって左から弦楽奏者、右から管・打楽器奏者が出てきて、きちんと奥から詰めるように座ってゆきます。 最近老眼が進んだのか、よく見えなくなってきましたけど、弦楽器が 14-11-9-10-8 の編成みたいで通常配置です。
全員が腰掛けるとチューニング。 オーボエの基準音、最初の一吹きがひっくり返ったような音になったので吹きなおしていたようです。 後ろのファゴット奏者の女性だったかな、思わず吹き出しているように見えました。 おっとっと・・・いう感じかな。 こんなこともあるんですねぇ。 これでリラックスできたかもしれません。

1曲目はサン=サーンスの「バッカナール」、エキゾッチックな音楽がてんこ盛のこの曲をどう料理するのかな、と思っていましたけど、予想どおりといって良いのかな、端正で抑制を効かせながらも躍動感を持って誠実に纏めた好演でした。 

ふわっとした弦楽器による導入のあと、オーボエがエキゾチックなソロを展開します。 ホルンも綺麗に響かせての上々のスタート。 カスタネットやトライアングルが抑制をかけた端正な演奏でこの曲をしっかりとサポートすれば、全体としても躍動感を保ちつつもきちっと纏まった演奏にして進んでゆきます。 弦楽アンサンブルには力が入ってきましたけど、刺激的にならずまろやかな響きが特徴的。 谷野さん、そんな響きの一つ一つを丁寧に紡ぎ出しているようですね。 端正に盛り上げてゆきます。 シャツを腕まくりにして、いかにも汗っかきという感じのティムパニのお兄さん、重い響きをリズミカルに打ってます。 ホルンやトロンボーンも重層的な響きでパワーを感じさせますが絶対に突出しません。 谷野さん、左手でリズムをとってオケを乗せてクライマックスを形成しますけど、必要以上に煽ることなどなく、きちっと要所を締めて全曲を閉じました。 

暗転、管打楽器奏者の一部が入れ替わり・・・と思っていたら、新たに入ってきた人も含め、皆さんいったん退場。 でもティムパニ奏者の方のみチューニングに精を出しておられて、結局この方のみ舞台袖に引き下がることなく、全奏者の方が再び登場して全員着席します。 今度も 14-11-9-10-8 の編成だったでしょうか。

2曲目、チャイコフスキーの 幻想序曲「ロメオとジュリエット」を前半はしみじみとした落ち着いた響きによる演奏、後半は集中力を高くして響きの密度の濃い演奏としていました。 勢いで乗り切るのではなく、またストレートに突き抜けるような響きで惹き付けるのでもなく、丁寧な曲の運びに成熟した響きのまろやかさを被せたような感じ。 熟成させた音楽、そんな印象を持った演奏を楽しみました。

しっとりとしたクラリネットとファゴットの重奏による響きによって、しみじみと感じさせた曲の始まり。 中低弦、そして高音弦ともに落ち着いた響きを丁寧に纏めています。 低弦のピチカートがまろやかに絡んで心地良いですね。 管楽器も響きの角が綺麗に取れて、刺激的な部分は皆無。 じっくりと曲を聞かせてくれます。 ティムパニのロールがそっと流れ、弦楽器に力が漲ってきて、じっくりと曲を盛り上げたかと思ったら、すっと退きます。 底力を感じさせる響きが充実しています。 直接音で前にドーンと出てくるのではなく、じわぁっと拡がってくる密度の濃さが実に特徴的です。 さすがですね。
コールアングレが密やかに流れ、たゆたうような音楽になりました。 ゆったり、じんわりとした感じで曲を進めてゆく谷野さん。 メリハリが乏しい? いえいえ成熟された音楽の魅力が勝っています。
じんわりとした音楽が流れる中、弦楽奏者の方が慌ててスコアをパラッとめくる音、そして曲調が変わります。 緊張感が漲った対決の音楽。 ここでも丁寧な曲の運びで、音楽をじっくりと纏め上げてゆきます。 底力を感じさせる打楽器、トランペットも抑制を効かせた集中力の高い演奏。 谷野さん、このような要所はしっかり振って強調しないんですね。 さっと流してしまう。 もちろん練習でバッチリ決めているから、本番では煽らなくても大丈夫、そんな感じなのでしょう。 音楽はゆったりとしてきて、各楽器の響きをミックスして頂点を迎えます。 そしてコーダ、ティムパニが重い葬送のリズムをそっと打ち、しっとりとしたオケの響きに木管楽器を宙を舞うように絡めます。 綺麗ですね。 最後は清楚なヴァイオリンの響きでそっと曲を閉じました。 充実した演奏でした。

15分間の休憩。 やっぱり席でじっとして体力温存モードで後半プログラムを待ちます。 休憩時間が20分だと、ちょっと手持ち無沙汰になることもありますけど、15分なら、なんとなくあっという間って感じもします。 
オケのメンバーの方が出てこられて準備完了。 今度は、16-11-10-10-8 の編成でしょうか。 これまでのよりもちょっと大きな編成のようです。 大曲ですものね。

ラフマニノフの交響曲第2番、完全版による演奏はたっぷりとした音楽。 じっくりと進め、しかも気合を込めた見事な演奏でした。 この演奏の特徴は、何よりオケの響きが明るかったことではないでしょうか。 ロシアっぽい憂色の響きで綿々と歌うことなどなく、実に端正な表現で全体を纏めていました。 もちろんここでも響きの角を取って刺激物を除去、そしてクライマックではオケの響きをぎゅっと纏めた密度の濃い演奏としていました。 泣かせるようなクサい演出は微塵もありませんでしたね。 とても上品な演奏は予想どおり、いやそれ以上にとても気合の篭った演奏に感じ入りました。 

第1楽章、低弦を向いてしっとりとした響きを導き出します。 木管が優しく絡み、ヴァイオリンの濡れた響き、これらをくりかえし、響きを重ねて熟成した音楽。 弦楽器の弾き始めなど、きれいに角が取れていますし、中低弦が絶妙にブレンドされて力を持っています。
コールアングレが素適なソロを聴かせてくれると、音楽が次第に活気づきます。 低弦のピチカートに乗せてヴァイオリンがよく歌い、管楽器もしっかり絡んできてホルンなど見事。 ヴァイオリンのソロが濡れた響きで絞った音量で優しく奏でたあとのクラリネットは艶やかな響きでしたけど、ちょっと大きめの音だったかな。 このあとじっくりと曲を進め、力を漲らせて、低音金管楽器の咆哮もしっかりと抑えを効かせた響き。 叫ばずに圧力を感じさせる響きですね。 じっくりと歌ってまたぐっと盛り上げたあと、太く丸い響きのコントラバスによる、ズン、という響きでこの楽章を終えました。

第2楽章、谷野さんのハナ息とともに軽快な音楽が流れ出てきました。 ホルンがまろやかに吹きます。 谷野さんはここでも端正に曲を纏め、オケもそれに見事に応えて金管が呼応しあいます。 弦楽器も軽快に走ってとてもスタイリッシュなカッコ良い音楽でしたねぇ。
シンバルの一撃、これもカッコ良く決めて、瑞々しい弦楽アンサンブル。 ここからじっくりと曲を進めます。 スネアもタイトにカッコ良く決めました。 金管ファンファーレ、直接音が飛んでくるのではなく、浮遊するような見事なアンサンブルが巧いですね。 弦楽器に力が漲ってきて、力強く朗々と歌い上げます。 ホルンの斉奏もまたカッコ良く決めて・・・ってカッコ良いだらけですけどね、でもほんとよかったですよ。 このあとまた端正な音楽に戻して、じっくりとした感じとし、谷野さんが手を前にもってきて音楽をそっと止めました。

第3楽章、谷野さんが大きく丸ぁるくふって弦を歌わせます。 クラリネットの旋律、おじさんの奏者がゆったりと身体を揺らしながら歌わせ、実にいい雰囲気を演出。 素晴らしい。 軽くスイングしていたかもしれません。 そうそう弦のトレモロもまた雰囲気ありました。 ここでも全体的に響きが明るいのが特徴的ですね。 泣きを強要するようなメロディも、実に明るく健康的に響かせているみたい。 そう思って聴いたせいかもしれませんけど、コールアングレ、オーボエも明るい響きでさらっとしているようでした。 谷野さん、きっちりと振って響きを重ねてゆきます。 やはり丸ぁるくふって、その重なった音を歌わせてゆく密度の濃いアンサンブル。 響きが明るいのでまったくもたれません。 ゆったりを大きなピークを形成し、それをすっと退いて、さっと止める。 そんな爽やかな合奏で締めくくりました。

第4楽章、谷野さんがやや中腰になってハナ息とともにゆったりとしているけど密度の濃いアンサンブルを開始しました。 ホルンもよく鳴っていますけど、ここでは弦楽器が勝っていますね。 たっぷりとした音楽です。 木管楽器が入って行進曲調となっても、弦と管が一体となり、じっくりと腰を据えた音楽には変わりなし。 響きの角を落とし、決して勢いに任せない上質さ、ここでも響きが憂色ではなく明るいのが特徴的でした。 
爽やかなヴァイオリンの旋律となり、谷野さん丹念に響きを重ねて曲を進めます。 次第に緊張感を高めるようにしてクライマックスへ。 低音金管楽器のファンファーレも圧力は感じますけど端正に響きを重ねています。 クライマックのピークに達すると、やはり谷野さんの棒の振りがまた小さくなります。 これで集中力を高め、響きの密度を濃くした盛り上がりを形成。 丹精こめた音楽造りといった感じが素敵ですね。 丹念響きをまた重ね、堂々とした音楽としてオケのノリも見事。 充実した響きでフィナーレを形成し、全曲をスパッと止めました。 残響が少しホールに残るような熱演でした。

会場から熱い拍手が沸き起こります。 何度かのカーテンコールが続き、花束が贈られて下がったあともそれは鳴り止むことがありません。 でも指揮者のいないオケに拍手が贈り続られたため、仕方なくといった感じで谷野さんが再登場。 「もうダメよ」と、そんな感じで軽く首を振りながら出てこられたあと深々と会釈。 アンコールなしでの散会となりましたが、それもよく理解できる充実した演奏内容でした。