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かぶとやま交響楽団 第32回定期演奏会

眠気など吹っ飛び、梅雨の雨雲さえも追いやった戻る


かぶとやま交響楽団 第32回定期演奏会
2005年7月9日(土) 18:30  伊丹アイフォニックホール

メンデルスゾーン : 序曲「フィンガルの洞窟」
シューベルト : 交響曲第3番ニ長調 D.200
イベール : モーツァルトへのオマージュ
ワーグナー : ジークフリート牧歌
ヘンデル : 組曲「水上の音楽」(ハーティ編)

指揮: 中村晃之


いつもながらの尖がった演奏で、いずれの曲についてもその曲に対するコダワリを感じさせる演奏を堪能しました。
今回は夏のコンサートを意識されたとのこと。 小振りながらも変化に富んだ作品を多く演奏したい、とパンフレットに指揮者の中村さんが書かれていましたように、実に多彩な曲がズラっと並んでいます。 そしてこれらの曲を、中村さんとオケがバッサバッサと切り込んで解体していくような感じもさせた前半。 後半は充実したアンサンブルでたっぷりと感情を込めていたようです。
いずれも弦楽器が、8-5-4-4-2 と小さな編成なのに、迫力のある演奏でしたけど、もちろん弦楽器は洗練されて透明感が高く、木管楽器もチャーミングです。 だからでしょうね、爽やかな瑞々しい響きが満ちていました。 そして最後に演奏されたハーティ版による「水上の音楽」では持ち前のウィンナホルンの魅力が全開となりました。
なお個人的にはシューベルトの交響曲第3番を期待していて、実に溌剌とした演奏として駆け抜けました。 ちょっと元気よすぎたきらいはありましたけれど、シューベルト中期の充実を感じさせて見事でした。
とにかく、いずれも演奏のキレの良さが身上、そんな感じですね。 体調不良だし雨模様でぐったりとしていましたけど、眠気など吹っ飛び、帰りには梅雨の雨雲さえもどこかに追いやったのでは、と思えたほどのかぶ響の気概を感じさせた演奏会でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

前夜うたた寝をして寝不足のところに、ちょっとした家庭内のことがあってゴタゴタとやっていて完全に体調不良です。 

しかも雨も降っているし、あの脱線事故のあったJR宝塚線に乗って現場横を通り過ぎるんだよなぁ〜 なんて思うと、出かけるのをためらっていましたけど、かぶ響による尖がったシューベルトの交響曲第3番や、ハーティ版による「水上の音楽」をどう料理するのか、なんていう興味に惹かれて重い腰をあげました。

開場時間の18:00にJR伊丹駅に到着。 電車が何事も無かったかのように例のマンション横を通過したとき、心の中でそっと手を合わせていました。 なんだか重苦しい気分、雨は落ちてこないもののどんよりとした天気です。 体調もよくないし、ゆっくりと歩いてホールに向いましたけど、ホール前で信号待ちしているとき、また雨がパラパラっと振ってきました。 傘を出すのも億劫だし、青信号まで小雨に打たれつつ、とぼとぼ歩いてホールに入りました。 元気ないなぁ

受付でお金を払い、階段をぐるっと回るよう登って会場に入ります。 独特な円筒形のような造りになっているこのホール、定員は500名ほどでこじんまりしています。 入ったところはステージの袖付近。 座席を見上げて、いつもどおりステージに向かって左ブロックの通路側、J-11に陣取りました。 人の導線を考えると、右ブロックに人が多く集まる傾向にあるので、こちらのほうが人口密度が少ないみたいなんですね。 雨のせいか、到着した頃はお客さんがまだ少なく、中央ブロックでも良かったのですけどね。 馴染んだ席に座ったというわけです。 演奏開始前には7割程度の座席が埋まったいたでしょうか。 

定刻、管楽器メンバよりステージ奥から詰めるような感じの整列入場。 弦楽器は 8-5-4-4-2 の通常配置です。 全員が揃ってチューニングのあと、指揮者の中村さんが白のタキシードジャケットで登場。 パンフレットに書かれていた夏のコンサートを意識されたスタイルですね。 いよいよ始まります。

1曲目の「フィンガルの洞窟」、この曲をストレートに盛り上げたキレの良い演奏でした。 
丁寧に響かせて浮遊するような開始。 透明感の高いヴァイオリン、落ち着いた中低弦と木管楽器がゆったりと音楽を紡いでゆきます。 ゆったりといっても、演奏にはキレのよさがあるのがかぶ響らしいところ。 中村さん、大きく丸ぁるく振っていますが、決してもっさりとしていません。 曲調変わって、気合入れてストレートに盛りあげてゆきます。 おおっ、タイトな音楽。 トランペットとホルンが綺麗に響きます。 前回の演奏会を1回飛ばしたこともあり、中村さんのダイナミックで鋭い指揮姿を見て、実は少々驚いてました。 でもあとはもう曲に引き込まれます。 丁寧な音楽と急激に盛り上がる音楽、これを対比させていたようですが、いずれも気合が入ってますね。 欲を言うならば、もうちょっと潤いが欲しところなんですけど、キレの良さが身上のかぶ響、活気つけてタイトに盛り上がる演奏を堪能しました。

演奏終了後、コントラバス奏者の方が、ふぅ〜と大きな息をついておられたのも印象的でした。

管楽器奏者の方が一部入れ替わりますが、クラリネット奏者の方がそわそわしながら楽屋を見ています。 チューニングが始まると、慌てて楽屋に引っ込んで相棒を連れて出てきました。 間違って下がってしまったようですね。 今回、曲目が多いし、ゲネプロと本番では演奏順序も違うでしょうから混乱してしまったのでしょうね。 さぁこちらも気分を入れ替え、また聞くことにしましょう。

2曲目のシューベルトの交響曲第3番。 シューベルトの最初の3つの交響曲、いずれも大好きなのです。 そして今回の演奏会の最大の楽しみでもありましたけど、尖がった演奏はとても精力的。 実に溌剌とした演奏として駆け抜けました。 ちょっと元気よすぎたきらいはありましたけれど、パンフレットに書かれたようにシューベルト中期の充実を感じさせ、とても見事な演奏でした。 満足しました。

第1楽章、中村さんのハナ息とともに弾ける音で開始。 チャーミングな木管と弦楽器が奏でて力を増します。 これをすっと退いてじっくりと歌う。 軽快な旋律は多少カクカクっとして、力の入った尖がった音楽。 覇気を感じますね。 要所をバシバシと決めて進めてゆきます。 そして主題再現部の入口かしら、音楽を大きく波打たせてから主題を戻しました。 自分達はこう演るんだ、という自信も感じますね。 迷いなどありません。 そしてクラリネットの響きも素適でした。 最後もハナ息とともに力をぐっと入れて楽章を閉じました。

第2楽章、一転して柔らかな弦とフルートによる開始。 唯一この楽章は尖がりが影を潜め、明るく軽快で爽やかな音楽が流れます。 コントラバスの響きにしっかりと乗せたクラリネットのソロのなんと柔らかいこと。 フルートも明るかったし、どの木管楽器も素適な響きでした。 最後はふわっと着地しました。

第3楽章、またもやハナ息とともに弾け出る快活な音楽。 気合入ってますね。 決め所を強調したかのようで、トランペットがタイトに吹き、ウィンナホルンも大きく丸ぁるく吹いて決めます。 中間部になると中村さんは一転優雅に振り、木管楽器の綺麗さを引き立たせるかのよう。 オーボエとファゴットがそれに応えてチャーミングでした。 そしてまたタイトな音楽に戻してバシバシと決めながら進めたあと、すっと楽章を閉じます。

第4楽章、キリッと引き締まった弦楽器、これに管楽器も加わってタイトな音楽がズンズン進みます。 管と弦の呼応も見事。 ここでも中村さん、各パートに気合を入れて回り、演奏を盛り上げます。 そしてそれをスパッと切り落としたかのように止め、主題を繰り返し。 そしてまたぐんぐん盛り上げてゆく、精力的なシューベルト。 とてもよく纏まっていて、全く弛緩するような箇所はありません。 コーダも華やかな音楽として盛り上げ、何度もすくい上げるような所作を繰り返し、力をこめて全曲を閉じました。 こちらも熱演でした。

15分間の休憩。 このとき周りを見渡すと、お客さんが更に増えているようですね。 8割位入っていたでしょうか。 じっと席についたままパンフレットを読んで開演を待ちます。 新卒さんが2名入団されたとのこと、どの方なのでしょうかねぇ。 なんて思っているうちに定刻になりました。

イベールの「モーツァルトへのオマージュ」。 昨秋、井村誠貴さん指揮による待兼交響楽団でも聞きましたが、かぶ響らしい瑞々しい合奏、タイトでパワーを感じさせた盛り上げ方で快活な音楽として纏めました。
軽快な音楽がスタート。 艶やかな弦楽器に伸びやかなフルートにも艶を感じさせて素適です。 タイトでパワーのある盛り上がり。 ここでは金管楽器が柔らかく吹き、輝くようなトランペット、まろやかなホルン、そしてこれにチャーミングな木管楽器が絡みます。 正直どれがモーツァルトなのかよく分かってませんけど、瑞々しい合奏が続き、最後はスピードを上げ、大きくすくいあげておしまい。 集中力の高い演奏でした。

管楽器のメンバの一部が抜けた「ジークフリート牧歌」。 やわらかな響きが特徴的で、ゆったりとした優しい時間の流れを感じさせた演奏でした。 最後までまろやかなアンサンブルは乱れることなく、爽やかで瑞々しい響きが満ちていました。 中村さんもたっぷりと感情を込めておられたようでした。 

冒頭からやわらかく、まろやかな弦の響きが流れ出てきます。 中村さん、大きく丸く振り、時折ハナ息も聞こえますが、ゆったりとした音楽を演出。 弦楽器の透明感が高いせいでしょうね、爽やかな響きを醸し出しています。 豊かなチェロの旋律でまろやかさを増し、ウィンナホルンも加わる静かな盛り上がり。 たゆたうように音楽を進めてゆきます。 丁寧に紡ぎだされた旋律で、ゆったりとした時間が流れてゆくようでした。 その流れに身を任せます。
音楽が活気づいてくると力を感じさせます。 でも割って入るオーボエのソロが可憐な響き、弦楽器も瑞々しく、金管楽器も抑制を巧く効かせています。 中村さん最後まで大きくゆったりとした指揮。 たっぷりと感情を込めておられるようですね。 最後は高々と挙げた右手をそっと胸の前に降ろしてきて曲を止めました。 感情こもってました。

一部の管楽器メンバが入れ替わり、ようやくウィンナホルンが4本揃いました。 ハーティ版による「水上の音楽」。 ジョージ・セルもこの版で録音を残していますね(実際にはセル自身もかなり手を入れているようですが)。 かぶ響はどのような演奏として料理してくれるのか、とても興味深いところです。 これまでよりも入念なチューニングが実施されたでしょうか。 期待がますます高まりました。

その「水上の音楽」、ロマンティックなアプローチに徹したとパンフレットに書かれていましたけど、まろやかでもしゅっとした爽やかさを感じさせた演奏。 終曲では決然としたウィンナホルンの斉奏による開始から壮麗なアンサンブルとしてロマンティック? いえいえ、その言葉から想像されるベタベタした甘さをパワーで押さえ込んだみたい。 かぶ響らしいポテンシャルの高い充実した音楽として全曲を締めました。 

1曲目アレグロは、まろやかなウィンナホルン、弦楽器もやわらかく響かせた開始でした。 パンフレットにはロマンティックなアプローチに徹したと書かれていて、ああなるほどね、って思うのですけど、全体としてしゅっとしていて演奏に芯を感じます。 ヴァイオリンの響きの透明感が高いからでしょうか、ティムパニが重い響きながらタイトに打っていることもあるでしょうか。 ウィンナホルンが耳に心地よい響きで大きく歌っていたのも印象的でした。

2曲目アンダンテ、ゆったりとした弦アンサンブルで始まります。 感情のこもった暖かな響きなのは、中低弦がうまくブレンドされているからでしょう。 ゆったりと曲を進めてゆきます。 短調になると、オーボエを主にした木管楽器が素適。 雰囲気ありました。 ウィンナホルンもまた素適に響いて弦アンサンブルが戻ってきました。 ホルンを交えたアンサンブルでそっと着地。

3曲目ブーレー、爽やかな弦楽アンサンブルによる開始。 綺麗な響きが流れてゆきますね。 そんな音楽に身を任せていたら・・・
そのまま4曲目ホーンパイプに突入しました。 ここでは爽やかな木管アンサンブル楽しみました。 いずれも素適な響きを織り成した音楽でした。

5曲目アンダンテ、深みのあるフルート、しっとりとしたヴァイオリンがいいですね。 低弦ピチカートが豊かに響いて下支えをしています。 オーボエの響きもまたしんみりと聞かせます。 やはり透明感の高い弦楽器、清涼感を感じさせるぐっと引き締まったアンサンブルでした。

6曲目アレグロ、中村さんのハナ息とともに決然と始まります。 パワーを感じさせるウィンナホルンの斉奏、トランペットも輝きがあって突き抜けてきた壮麗なアンサンブル。 力が入っても、アンサンブルがぐっと引き締まっていてクリアです。 ロマンティック? いえいえ、その言葉から想像されるベタベタした甘さをパワーで押さえ込んだみたい。 最後は大きくはずませ、力強く幕としました。 かぶ響らしいポテンシャルの高い充実した音楽の数々を楽しみました。

いずれの曲の演奏もキレの良さが身上、そんな感じでしたね。 体調不良だったし雨模様でぐったりとしていましたけど、眠気など吹っ飛びました。 足取りも軽くなってホールを後にすると、梅雨の雨雲さえもどこかに追いやってしまったようでした。