BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
大阪大学交響楽団 第85回定期演奏会

丹念に磨きあげられた演奏戻る


大阪大学交響楽団 第85回定期演奏会
2005年7月16日(土) 13:30  尼崎アルカイックホール

ベートーヴェン: 劇音楽「エグモント」序曲
グリーグ: 組曲「ペール・ギュント」第1・2組曲
ベートーヴェン: 交響曲第5番ハ短調「運命」

指揮: 金洪才


アンサンブルの響きの角が綺麗に取れて、薄いヴェールを1枚かけたみたいにも思えた上質な響きを堪能した演奏会でした。 そして今回、金洪才さんの指揮ということもあったからでしょうか、前回の演奏会よりも丹念に磨きあげられた演奏、そんな印象を持ちました。
最初の「エグモント」序曲より、肌触りの良い響きを丹念に重ねたような演奏でした。 オケも見事にそれに応えて、堂々というよりも、スタイリッシュな音楽として纏めていました。
続く「ペール・ギュント」組曲は端正に纏めた演奏でした。 煽るようなことなど皆無。 緻密に曲を演じ分けていました。 いずれも見事な演奏だったのですが、最後の「ソルヴェイグの歌」のラスト、静かに眠りにつくさまを音楽で表現した金さんの手腕の確かさが光っていました。 すぅ〜と曲に惹きこまれてゆくような錯覚さえ覚えました。 ただ全体として考えると、やや形式的に綺麗にまとまりすぎていたようにも思いましたけど(偉そうにすみません)、このラストにはハッとしました。
そしてメインの「運命」、正々堂々と正面から立ち向かった演奏でした。 しかし、ここでも刺激的な響きを極力廃し、上質な響きで演奏しつつ要所をバシッと決め、的確に曲を進めてゆくような感じ。 カルロス・クライバーのように、流れを重視して推進力を持って進めてゆくのではなく、かといって重量級の響きで聳え立つような感じでもありません。 あえて言うならば、ヨーゼフ・クリップスのような正攻法。 きちんと作品に立ち向い、音楽を咀嚼して、流れる旋律を柔らかな響きで覆う、一種エレガントながら芯のはっきりした演奏でした。 
いずれも金洪才さんらしい誠実な演奏だったように思います。 
なお上質で素晴らしい運命を味あわせていただいたあと、アンコールが無かったもの良かったのではないでしょうか。 静かな感動を胸に会場をあとにすることができました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

梅雨はどこに行ったのだろう・・・午前11時、そんなことを話ながら、炎天下の中、子供2人を連れて家を出ました。 ちょっと時間が早いのは梅田で腹ごしらえをするためです。 というか子供たちのお目当てはこちらなのですけどね。
無事、梅田で腹ごしらえをし、しかも長女の欲しかったアジアン・カンフー・ジェネレーションのCDも捕獲できてアルカイックに到着。 13時5分頃かな。 長蛇の列がまだ続いているのでその末尾に並び、ゾロゾロ歩いてホールに入ります。 
入るや否や2階席に向かいましたけど、階段のところで「本日は2階席はご使用いただけません」とお姉さんに言われてしまいました。 ショック! せっかく今日はここでのびのびと聴きたかったんですけどねぇ・・・仕方ありません。

1階席、ざっと見渡し、中央右側のブロックで2階席の庇がかかるあたり23列−40番を確保しました。 せめても、1階席でも後ろのほうでゆっくりと聴きたいのです。 しかし、2階席が閉鎖されているので、9割位の席が埋まったでしょうか。 盛況なのは良いことなんですけど、やっぱりのびのびと聴きたいんですよね。
ところで途中の休憩時間。 ロビーをうろうろしていたら2階席に上がる人がいたので、覗きに行ったら結構入っていますよ。
これは引越しやな・・・、そう思った矢先、放送で「2階席はご使用いただけません」とのアナウンスが流れます。 いいじゃない、これだけ入っているんだから・・・って思いますけどねぇ。
まぁ、一度決めたら変えません、そんな律儀さ、融通の効かなさもまた学生時代にはありがちですし、自分を振り返ってみてもそんな感じもしますんで、あまり深く追求しないことにしましょう。

開演5分前のアナウンスのとき、ステージを見るとコントラバスとティムパニの方はもうステージにいらしたみたい。 アナウンスが終わるやラッパやホルンの方も出てこられて練習開始。 あとは三々五々の自由入場で全員が揃います。 弦楽器は 12-13-8-9-6 の通常配置。 定刻になってチューニング。 それが終わったらいったん照明が落ち、再度ステージが明るくなって指揮者の金洪才さんが登場します。 2年ぶり、もっとになるでしょうか、久々に金洪才さんの指揮に期待が高まります。

「エグモント」序曲、肌触りの良い響きを丹念に重ねたような演奏でした。 オケも見事にそれに応えて、堂々というよりも、スタイリッシュな音楽として纏めていました。

引き締まっているけど、響きの角をとって柔らかな和音による開始。 木管が密やかに語りかけたあと、また強靭な和音となります。 しかしここも響きそのものは柔らかでです。 この上質な響きを丹念に重ねるようにして曲を進めます。 すっーとスピードを上げ、軽快な音楽としますが、肌触りのよさが光っていますね。 スマートで丁寧な曲の運び、音楽は弛緩することなくよく締まっていますけど、堅さなどなく、質感の良さを感じます。 フィナーレでは音量と響きの幅を少し広げました。 ホルンのタイトな響きのあと、すっと退き、そしてたっぷりとした音楽。 きちんと計算されていますね。 スタイリッシュに決めて全曲を閉じました。

ステージは暗転。 メンバーが全員下がって、座席などの調整をしたあと、今度はステージの奥の方のメンバーが整列入場をして準備を整えます。 今度は 11-12-9-9-7 の弦楽器編成になりました。

「ペール・ギュント」組曲は端正に纏めた演奏でした。 煽るようなことなど皆無。 緻密に曲を演じ分けていました。 いずれも見事な演奏だったのですが、最後の「ソルヴェイグの歌」のラスト、静かに眠りにつくさまを音楽で表現した金さんの手腕の確かさが光っていました。 すぅ〜と曲に惹きこまれてゆくような錯覚さえ覚えました。 ただ全体として考えると、やや形式的に綺麗にまとまりすぎていたようにも思いましたけど(偉そうにすみません)、このラストにはハッとしました。 巧かったですね。

第1組曲第1曲「朝」、やさしいフルートの響き、艶やかなオーボエ、柔らかく丁寧な音楽が始まりました。 ちょっと早めのテンポ設定でしょうか、丁寧に音楽を紡いでゆく爽やかな音楽。 響きの角をとった綺麗な音楽を最後はしっとりと纏めました。

第2曲「オーゼの死」、穏やかな弦のサンサンブルが上質な響きです。 じんわりと押し寄せてくるような感じ。 じっくりと音楽を進めていますけど、決して感情過多にならず、芯を感じさせるスマートさでした。

第3曲「アニトラの踊り」、密やかになるトライアングルが上品でした。 穏やかな弦のアンサンブルによる開始。 やわらかくまろやかな音楽にトラインアグルがそっと絡みます。 コントラバスのピチカートを絡ませた弦楽器を中心に、とても丁寧に組み立てられた音楽を楽しみました。

第4曲「山の魔王の宮殿にて」、ゆったりと落ち着いた音楽の始まり。 ここでも丁寧に響きを重ね、次第に盛り上げてゆきます。 タイトな頂点を築きますけど、煽るようなことなど皆無。 上質な響きですね。 ティムパニには力が入っていますけど、騒々しさなどありません。 最後はリズミカルに盛り上げて、ぎゅっと引き締まったエンディングも見事でした。

第2組曲第1曲「花嫁略奪〜イングリッドの嘆き」、スピード感のある開始。 これをスパッと止めます。 オケの機動力を感じます。 曲調変わって哀願する音楽をじっくりと歌わせますが、ベタベタしません。 透徹した感じさえする端正な音楽でした。

第2曲「アラビアの踊り」、パーカッションとピッコロの軽やかな音楽。 繰返しになりますが、ここも引き締まっていて雰囲気で演奏している風ではありません。 弦楽器など実に柔らかな響きなのですけど、句読点をしっかりともった音楽となっています。 曲調が変わると、すべるような弦楽アンサンブル。 高弦と中低弦が呼応し、実に丁寧に曲を進め、主題を戻して、すっと退きます。

第3曲「ペール・ギュントの帰郷」、張りつめたようなタイトな音楽の開始。 緻密に組み立てた演奏です。 ここでは要所をバシッバシッと決めながら、引締まった迫力を感じさせます。統制のとれた音楽が進んでゆきました。 

第4曲「ソルヴェイグの歌」、アタッカで突入。 柔らかな木管アンサンブルと清潔感のある弦楽アンサンブルが魅力的でした。 ハープが静かに鳴り、オケとともにしっとりとした嘆きを歌います。 心のこめられた音楽がゆったりと流れてゆきます。 そしてラスト、導入部が実に自然な感じで繰返されると、その響きの中にすぅ〜と惹きこまれてゆくような錯覚を覚えました。 一瞬何が起きたのかちょっと分からない感じのまま全曲を閉じました。 曲の中に吸い込まれたのでしょうか、不思議な感覚でした。

20分間の休憩。 いつもは席を立たないのですが、咽喉も渇いたので水筒を持ってロビーに出ます。 うろうろして戻ってきましたが、OBの方や、親御さんでしょうね、けっこう人が多いですね。 演奏会として盛況なのは喜ばしいことなのですけど、あまり人が多いのは苦手なので早々に席に戻ってじっと席で開演を待ちます。 
オケの方が出てこられて準備完了。 メインの運命の編成は、11-11-8-8-7 とってなっていました。

メインの「運命」、正々堂々と正面から立ち向かった演奏でした。 しかし、ここでも刺激的な響きを極力廃し、上質な響きで演奏しつつ要所をバシッと決め、的確に曲を進めてゆくような感じ。 カルロス・クライバーのように、流れを重視して推進力を持って進めてゆくのではなく、かといって重量級の響きで聳え立つような感じでもありません。 あえて言うならば、ヨーゼフ・クリップスのような正攻法。 きちんと作品に立ち向い、音楽を咀嚼して、流れる旋律を柔らかな響きで覆う、一種エレガントながら芯のはっきりした演奏でした。 

第1楽章、運命の主題を豊かなに響きでさっそうと演奏しました。 フェルマータは短く切っていますけど、先鋭的な感じではなく、響きが豊かなせいもあるでしょうね、じつにオーソドックスな感じです。 テンポはやや速めでしょうか、淡々と進めてゆきました。 主題を繰返し。 2回聴くと、響きにちょっとヴェールがかかっているような感じに聴こえることにも気付きました。 ほんと、響きの柔らかな運命です。 かといって芯が無いわけではありません。 構成感のあるしっかりとした演奏で、洗練された、と言っても良いと思います。 コーダではティムパニに力が漲り、音量がちょっと大きいのですけど、全体としてタイトでスマートな音楽。 弾力を持ってこの楽章を纏めました。 切れがよく、残響がホールに残っていました。

第2楽章、ヴィオラ、チェロの中音弦の豊かな響きよる開始、これが舞台の右側から流れたあと、左側より高音弦の響きが加わり豊穣な弦アンサンブルです。 ここに中央からフルートの柔らかな響きが分け入ります。 アンサンブルがしだいに力を増し、たっぷりとした音楽になっても中音弦が曲を引っ張っています。 いい感じですねぇ。 じっくりとした音楽を味わいます。 もちろん木管楽器も柔らかく絡んきて素適ですよ。 金管楽器が入り、ゆっくりと盛り上がります。 ティムパニがケジメをつけるような感じに打って曲を進め、最後は大きく歌わせてから、丁寧に締めくくりました。 

第3楽章、コントラバスがおごそかに弾きはじめ、柔らかな響きの弦楽アンサンブルとなったあと、ホルンが押し出すような響きで斉奏。 ここをもうちょっと劇的に吹かせるのかな、と思っていましたけど響きのまろやかさが勝ってました。 堂々とした感じで音楽が進みます。 コントラバスから中音弦、高音弦と旋律を回して力を感じますけどいずれも洗練された響き。 指示はアレグロですけど、アレグレットのような感じさえ覚えました。 オーソドックスな解釈でしょうね。 実に丁寧に音楽を紡ぎなががら曲を進め、じっくりと腰を据えたティムパニの打音で集中力をぐぃぐぃと高めて第4楽章に突入します。

第4楽章、覇気のある金管ファンファーレ、やはりここでも勢いに任せたりしません。 しかも響きの角をとって刺激的な響きもありません。 ですが、金さん縦の線を強調しながら音楽を推進させます。 決して飛ばさないのですけど、要所をバシッと決めながら正々堂々と進めて小細工無し。 オケも学生オケらしい律儀さで見事に要求に応えています。 弦楽器メンバーの弓の動かし方が実に小刻みでよく揃っているのが特徴的でしょう。 よく統制された、そんな感じ。 そして音楽は終結部に向ってやや開放されたかのように伸びやかさが増しました。 でもカチッとした音楽のまま、金管がやや強奏しますが、それとて縦の線を乱すことなく一糸乱れぬ演奏として歌いあげ、最後はティムパニがクレッシェンドして全曲を閉じました。 

いずれも金洪才さんらしい誠実な演奏だったように思います。 
なお上質で素晴らしい運命を味あわせていただいたあと、アンコールが無かったもの良かったのではないでしょうか。 静かな感動を胸に会場をあとにすることができました。