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天理シティーオーケストラ 第5回定期演奏会

運命とロマンティック、丹念に響かせた音楽戻る


天理シティーオーケストラ 第5回定期演奏会
2005年8月7日(日) 14:00  天理市民会館

ベートーヴェン: 交響曲第5番「運命」(ベーレンライター版)
ブルックナー: 交響曲第4番「ロマンティック」(ノヴァーク版第2稿)

(アンコール):ヨハン・シュトラウス2世: ピチカート・ポルカ
(アンコール):ヨハン・シュトラウス: ラデツキー行進曲

ゲスト・コンサートマスター: 金関 環

指揮: 安野英之


チラシに「ドイツ2大交響曲の饗宴」と題されたとおり、ちょっと(かなり)重いプログラムの演奏会でしたが、「運命」と「ロマンティック」とも、いずれも雰囲気に流れることが皆無で丹念に響かせ合い、かつメリハリをつけた躍動的な素晴らしい音楽でした。 演奏会を堪能しました。

まず、ベーレンライター版を使った「運命」。 やや軽快に曲を進めながらも、カチッと響きを絞り込んで端正に纏めていたのが特徴的でした。 何より音楽に推進力があるのが素晴らしいですね。 そしてそれが最後まで途切れることがありません。 ちょっと軽い感じはするものの聴き応えは十分、そんな感じで、最近のベートーヴェン演奏の範といった感じかもしれません。 また会場からの反応もよく、この演奏によって「運命」を最後まで聴かれた方も多かったのではないでしょうか。

続いて、版の違いなど分かっていないのですがノヴァーク版第2稿による「ロマンティック」。 響きを抑え込んだ弦のトレモロに、ホルンのソロが実に素晴らしかった冒頭から惹き込まれました。 よく言われる例えのように、霧のかかった森の中から響いてくるような感じ。 これに続く木管アンサンブルもまた綺麗で、各奏者の頭が同じように縦に揺れてきちんとリズムを合わせた音楽で引き継ぎます。 そして、厳かでかつ底力を感じさせる金管ファンファーレの迫力も見事。 コントロールが行き渡った演奏から耳を離すことが出来ませんでした。 そして最後の最後まで雰囲気で曲を流すことなどなく、金管を咆哮させるときでも、指揮者の安野さんはまるで祈りを捧げるかのようにゆったりと振っていたのも印象的。 壮大な曲なのですが、細心の配慮を持って響かせ、その緻密な響きを丹念に組み合わせ、構築された充実したアンサンブル。 美しいロマンティックの演奏を堪能しました。

ただ、演奏終了後の会場からの拍手の反応がちょっと鈍かったのは、初めて「ロマンティック」を聴かれた方が多かったからでしょうね。 繰り返しが多くあって長大な第1楽章で参ったうえに、第2楽章で沈没された方も多かったようです。 でもオケの集中力は全く途切れることのない見事な演奏でした。 最後の最後まで楽しませていただきました。

そして次回、今度はラヴェルなどオール・フランス・プログラムに挑戦される天理シティオケ。 ますます目(耳)が離せません。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

乗り継ぎの良い電車だと、最寄駅から1回の乗り換えだけ、30分弱で天理に到着できます。 それに乗るため、スカウト活動に行く子供たちを残し、奥さんと二人で一足先に家を出て、13時24分近鉄天理駅着。 
陽射しが照りつける広々とした駅前広場を斜めに抜けてホールへと足を速めます。 既にロビーコンサートは始まっているのですけど、それを聴くことよりも、「運命」と「ロマンティック」の2曲という、ある種すごい演奏会への期待が足を前に進めていました。

ホールに入るや、ロビーコンサートを聴いているお客さんをかき分けるようにしてまず座席を探します。 中央付近にはけっこうお客さんが入っていて、中央より左側ブロックで後ろから7列目だったかな、S-14,15を確保。 いつもなら、ここに座り込んで大人しく開演を待つのですけど、奥さんと一緒なので、飲み物を買うためにロビーに出ます。 そしてコンサートをちょっとだけ拝聴しました。 金関さんがブルーのシャツを着てオシャレに決めておられましたね。

飲み物で喉を潤し、トイレにも行って準備万端。 ロビーコンサートが終わってしばらくしてから席に戻ります。
ステージではオケの団員の方が出てこられて既に練習も始めていらっしゃいます。 自由入場ってやつで、団員の方が続々と出てこられ、思い思いに練習を初めるので期待も高まります。 なおオケは対抗配置で、弦楽器は 8-8-7-6-5 の編成のようでした。
定刻のブザーが鳴り、コンマスの金関さんが出てこられ(白のシャツに着替えられたようです)、入念なチューニングを実施。 指揮者の安野さんがにこやかに登場されていよいよ始まります。

ベーレンライター版を使った「運命」。 やや軽快に曲を進めながらも、カチッと響きを絞り込んで端正に纏めていたのが特徴的でした。 何より音楽に推進力があるのが素晴らしいですね。 そしてそれが最後まで途切れることがありません。 ちょっと軽い感じはするものの聴き応えは十分、そんな感じで、最近のベートーヴェン演奏の範といった感じかもしれません。
金関さんをゲスト・コンサートマスターとして迎えて充実した弦楽器群。 その金関さんの動きはかなり目立っていて、終楽章などかなり燃えているようでしたけど、ヴィオラ・チェロといった中音域の充実振りがとても素晴らしかったのが印象的でした。 そして木管楽器の瑞々しいアンサンブルもまたとても見事でした。 清新なベートーヴェン、運命といった感じで最後まで駆け抜けました。

第1楽章、芯のある硬いめの響きで運命の主題、フェルマータの部分も響きを短く刈り込みます。 ホルンの響きもタイトでちょっと軽い感じがしますけどよく締まっています。 クリスタルのように透明で硬いといった感じでしょうか。 リズム感よく軽快に音楽を進め、オケを音楽に乗せてゆく安野さん。 コントラバスが実によく揃っていて1本の楽器のように聴こえるみたい。 これが芯になっているから、軽快といっても軽い音楽ではありません。 メリハリつけて進みます。 オーボエのソロがまた巧かった。 心に沁みます。 ファゴット、フルートなども実に巧く絡み、弦楽器もよく締まった音色でつかんだ心を離しません。 最後、弾力を持たせた響きでやっと開放されました。

第2楽章、ヴィオラとチェロの奥深い豊かな響きによる開始。 木管楽器も綺麗でした。 よく締まったアンサンブルで、コントラバスのズンという響きもまた沁みます。 ゆったりと歌い上げ、厳かな感じのする金管ファンファーレ。 ティムパニが弾力ある響きで支えていました。 中音弦がとても充実した音楽は、ほんと聴き応えがありますし、クラリネットのソロも巧くて、とてもしっかりとしたアンサンブル。 ゆったりと音を紡ぐのを堪能しました。 素晴らしい楽章でした。

第3楽章、低弦をやや抑え加減にした開始。 ホルンがタイトに吹いたあと、弦のアンサンブルが緻密に追いかける充実した音楽が繰り返されます。 そしてコントラバスから力強い響きで始まる旋律、これがオケに行き渡りますけど、ヴァイオリンの響きの透明感の高さは変わらず、瑞々しい運命といった感じですね。 ティムパニが密やかにうち、弦のアンサンブルがこれに響きを緻密に重ねてゆきます。

アタッカで入った第4楽章、抑制のよくかかったファンファーレが厳かな感じもします。 金関さん、燃えているような弾きっぷりに目が行きますが、ホルンの響きなども充分に抑えが効いていて、見た目は熱っぽい音楽なのですけど、クールさも漂うコンパクトに纏まった音楽。 安野さん、落着いて振り分けています。 決して煽ったりせず、丁寧に響きを重ねてゆくような感じ。 その響きの凝縮度を高めるような感じとして、端正で熱い音楽へと変身させてゆきます。 弾力のある響きでコーダを歌い、金管を綺麗に響かせ、木管も緻密に響かせ、それぞれの響きが一つの音楽に纏まって最高潮を迎えて全曲を閉じました。

実に集中力の高い演奏でした。 会場からの反応もとてもよく、大きな拍手は鳴り止みませんでした。 何度も金関さんに促されるように安野さんが引っ張り出されていました。
この演奏によって「運命」を最後まで聴かれた方も多かったのではないでしょうか。 我が奥さんもその一人でしょう。 この演奏会に伺う前はベートーヴェンなんて堅苦しい感じがして・・・と言っていたのですけれど、最後まで身を乗り出すようにして聴き、最後には盛んな拍手を贈っていました。 

20分間でしょうか、アナウンスがありませんでしたけど、しばし休憩時間に入ります。
やはりいつもなら座席で大人しく開演を待つのですけど、奥さんと一緒なので、トイレに付き合うためにロビーに出て、ついでにまた飲み物で喉を潤して後半プログラムへの準備を整えます。
定刻、昔ながらのブーっていう音のブザーが鳴りますと、こんな音が鳴るのはちょっと興ざめやね、なんて奥さんが言ってました。 先の「運命」の演奏が相当気に入っていたようですね。

さて、ステージ上は弦楽器が 8-8-7-6-5 と「運命」と同じ編成みたいですけど、管楽器は大幅に増員。 なかでも横一線に6本並んだホルンが壮観です。 そのホルンに向って右隣にトランペット4本が一列に並びます。 トランペットの後ろの列にトロンボーン4本とチューバ。 ここが最後列で、この列の左端(ステージ中央奥)にティムパニが並んでいます。
金関さんが、この金管楽器からチューニングを始め、木管楽器、弦楽器と音を合わせていって準備完了。

版の違いなど分かっていないのですがノヴァーク版第2稿による「ロマンティック」。 響きを抑え込んだ弦のトレモロに、ホルンのソロが実に素晴らしかった冒頭から惹き込まれました。 よく言われる例えのように、霧のかかった森の中から響いてくるような感じ。 これに続く木管アンサンブルもまた綺麗で、各奏者の頭が同じように縦に揺れてきちんとリズムを合わせた音楽で引き継ぎます。 そして、厳かでかつ底力を感じさせる金管ファンファーレの迫力も見事。 コントロールが行き渡った演奏から耳を離すことが出来ませんでした。 そして最後の最後まで雰囲気で曲を流すことなどなく、金管を咆哮させるときでも、指揮者の安野さんはまるで祈りを捧げるかのようにゆったりと振っていたのも印象的。 壮大な曲なのですが、細心の配慮を持って響かせ、その緻密な響きを丹念に組み合わせ、構築された充実したアンサンブル。 美しいロマンティックの演奏を堪能しました。

第1楽章、弦のトレモロが小さく響くなかからのホルン・ソロ、神秘的で素晴らしい演奏でした。 そして弦のボリュームを少し上げると、ホルンの音量を下げた見事なコントロール。 木管群に引き継がれる音楽がまた綺麗。 各奏者の方の頭が同じように縦に揺れ、リズムをきちんと合わせています。 ホルンもこだまのように響きを重ね、徐々に弦楽器のボリュームを上げて金管ファンファーレへと結びついて、雄大さもありますけれど、まるで祈るような厳かな音楽となっていました。
これを越えると軽やかな高音弦による旋律、ここでのヴィオラによる旋律もまた素晴らしかった。 コントラバスがよく締まった響きの上に乗った弦のアンサンブルの上質さ、縦の線をきちんと揃えて綺麗に歌い込んでゆきます。 とてもいい感じ。 それに随所に聴こえる木管楽器も美しく響きます。 全体として小振りで端正に纏めた音楽なんだけれども、各パートがそれぞれに雰囲気に合わせて響きを凝縮させているような感じ。 安心して音楽に身をゆだね、響きの綾を楽しみました。

第2楽章、ゆったりとした開始、チェロが艶やかな響きながら愁いを帯びて演奏します。 木管楽器がやや力を持って吹いていました。 ホルンの動機だったかな、ちょっと惜しかった場面もありましたけど体制にはまったく影響なく、ヴィオラの旋律や厳かなピチカートがまったく弛緩せずに歌い込まれてゆきます。 弦のアンサンブル、中音弦が豊かで本当に素晴らしい響きですね。 明るさを見せながら主題が複雑に変化し、美しい響きが進むのを楽しみます。 でも周りの方々はこのあたりで沈没された方も多かったようですね。 それだけ美しい演奏だったいうことでしょう。 もっとも個人的にはもっともっと歌い込んでもよかったのになぁ〜などと思っていましたけれど(この楽章にはちょっと思い入れも有りますので)。 最後は柔らかなティムパニの打音に伴われてホルンと木管が回想、情感のこもった弦の響きで静かに終えました。

第3楽章、ホルンの柔らかな斉奏、トランペットが軽やかに吹き、徐々に音量増した輝かしい開始。 これをスパッと止め、統制のよくとれた音楽でまたフル・オーケストラになります。 弦楽器も金管に負けじとがっぷりと組んで曲を進め、ホルンとトランペットが呼応しあうと響きの奔流。 ここも勢いで演奏するのではなく、緻密に計算されているようです。 スパッと止めては、クラリネットの旋律が暖かさを伝え、そしてまた金管の咆哮。 迫力もあります。 ただ、縦の線を綺麗に揃えて計算された演奏だからかな、やや単調な感じがしないでもありませんけど、それでもオケ全員が一心になって頑張っているのが伝わってきたスケルツォでした。

アタッカで第4楽章に突入、コントラバスのズン・ズン・ズン・・・という響きがまるで鼓動のように響きます。 徐々に音量を上げ、ぐっと盛り上がります。 そして退いてじっくりと響きを溜め込んでいって、迫力のある雄大なファンファーレとして最初のクライマックスを形成。 輝かしく充実した開始でした。 弦楽アンサンブルでは金関さんの大きな動きがより一層激しくなっていて、愁いのこもったヴァイオリンの響きがまるでソロのように聴こえてくることも。 とにかく熱い音楽ではあるのですけれど、指揮者の安野さんは常に冷静。 きちんと振り分けて曲を煽ることはせず、響きを整えてゆきます。 叙情的な雰囲気と劇的な場面が交互に展開、オケもそれに見事に応えて全員で響きの砦を構築しているみたいな感じかな。 最後はコラール風の音楽をゆっくりと凝縮させるように演奏、柔らかく重いティムパニの響きに乗せ、祈りの音楽として高潮させたあと、ふわっと全曲を締めました。

各楽器が緻密に響き合った素晴らしいブルックナーの音楽でした。 
ただ、演奏終了後の会場からの拍手の反応がちょっと鈍かったのは、初めて「ロマンティック」を聴かれた方が多かったからでしょうね。 繰り返しが多くあって長大な第1楽章で参ったうえに、第2楽章で沈没された方も多かったようです。 我が奥さんも必死に眠気と戦っていました。 でもオケの集中力は全く途切れることはなく見事な演奏。 最後の最後まで楽しませていただきました。

アンコールは、メンイディッシュが2皿続いたのでデザートをと、シュトラウスのピチカート・ポルカ。 これで会場の空気が和んだあと、お馴染みのラデツキー行進曲で明るく元気に散会となりました。 とてもいい演奏会でした。

そして次回、今度はラヴェルなどオール・フランス・プログラムに挑戦される天理シティオケ。 ますます目(耳)が離せません。 次回も楽しみです。