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奈良フィルハーモニー管弦楽団 第17回定期演奏会

流れの良い音楽を堪能戻る


奈良フィルハーモニー管弦楽団 第17回定期演奏会
2005年9月4日(日) 13:30 奈良県文化会館国際ホール

ベートーヴェン: バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲op.43
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第3番ハ短調op.37

(アンコール):シューマン: 謝肉祭op.9より「ショパン」
(アンコール):ショパン: プレリュード第7番

ベートーヴェン: 交響曲第3番ホ長調op.55「英雄」

(アンコール): 岡野貞一作曲、北川文雄編曲: 故郷

独奏: パトリシア・パニー(p)

指揮: 清水宏之


清水宏之さんの指揮のもと、じつに流れの良い音楽を堪能しました。
ソリストのパトリシア・パニーさんも素敵な演奏でしたし、オケもそれらに見事に応えて素晴らしい演奏を展開。 このところアマオケばかり聴いていますけど、さすがプロオケ、と当たり前ながら納得度の高い演奏会でした。
プロメテウスの創造物序曲。 引き締まった演奏ながら、柔らかな響きが特徴的な素晴らしい演奏でした。 強奏してもまろやかな響き。 ベートーヴェンというよりもモーツァルトに近い感じのする演奏に魅了されました。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。 ソリストのパトリシア・パニーさん、2003年9月15日の第13回定期演奏会以来の再登場ですが、 今回も明快なタッチで時に煌きを感じさせる綺麗な響きが特徴的。 力強いタッチになっても荒く感じさせないのが素敵です。 オケもまた清水さんの指揮のもと、流麗な音楽で一体感を醸し出して見事でした。 両者が見事に会話し、構成感をしっかり保ちつつも爽やかなベートーヴェンを楽しみました。
そしてメインのベートーヴェンの英雄交響曲。 力みのない自然な流れがこれまた見事な演奏でした。 この演奏では何より弦楽アンサンブルの巧さを特筆したいですね。 ここ数年、このオケを聴かせてもらっていますけれど、それぞれの弦楽パートがよく纏まっていて、また主張もしていた演奏はちょっと無かったように思います。 最後の最後まで透明感を失わない見事なアンサンブルでしっかりと曲を構成していました。 ここに定評ある木管楽器群が重なり、覇気のある金管やティムパニが曲を彩った演奏。 ホルンも実に素晴らしい演奏を聴かせてくれました。 充実した演奏を堪能しました。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

早朝は晴れていたのに、天気予報どおり昼前から雨が降ってきました。 あらら・・てな感じ。 でも家を出る頃には小降りになり、傘を差さずにすみました。 しかしちょっと蒸し暑い感じもしますね。 演奏会にはよく無い天気やなぁ〜 なんて思いながらホールに到着。

開場5分後くらいに到着したかしら。 プレ・コンサートがまだ始まっていなくて、女性奏者3名が楽器も持たずに、何やら立ち話をされているのを横目に2階席に向います・・・が、あれっ〜、どこかで見た顔だって思いつつ、2階席の最前列 AA-31 を確保して、パンフレットを確認したらフルートの早瀬さんでした。

これは聞き逃すわけにはいきません。 バルコニーに出て、プレ・コンサート、ベートーヴェンのセレナード・ニ長調op.25 もしっかり楽しませていただきました。  今回はプレ・コンサートまでベートーヴェン一色ですね。 初期ベートーヴェンの爽やかな音楽を2階バルコニーより味あわせていただき、得した気分です。

さて、席に戻り、パンフレットを読みながら開演を待ちます。 次回定期は、顔を真っ赤にして指揮された横島さんによるフランクの交響曲ニ短調ですか、こちらも興味湧きますね。 今から楽しみです。
ところで今回指揮される清水宏之さん、このオケの第1回定期演奏会以来の登場でしょうか。 生憎この時は聴いていませんけれど、清水さんは大阪市民管弦楽団を指揮されていたのを何度か聴かせてもらっています。 それでももう3年くらい経つでしょうか、ほんと楽しみです。

さて開演5分前のチャイム、アナウンスのあと団員の方が整列入場されてチューニング。 暫くすると、指揮者の清水さんがバタバタって感じで飛び出してきて、手をぐるぐると振って皆立つようにとの仕草。 あれっ、今回はスピーチは無しなのですね(と、ここで気付きました)。 清水さんがにこやかな表情で会釈して始まります。

プロメテウスの創造物序曲。 引き締まった演奏ながら、柔らかな響きが特徴的な素晴らしい演奏でした。 強奏してもまろやかな響き。 ベートーヴェンというよりもモーツァルトに近い感じのする演奏に魅了されました。

弾力を持って打ちつけるような締まった響きの開始。 そして、ゆったりと曲を慈しむように進めます。 響きがとても締まっているけれど、肌触りの柔らかい響きに耳を奪われます。 曲調変わって、弦のトレモロなども息づいています。 フルートがとても綺麗でしたね、響きが柔らかいし。 木管楽器、いずれもチャーミングに絡みつつ曲を進めます。 オケが強奏しても、声高にならず、まろやかな響きの質が変わらないのがほんと素適です。 爽やかな弦楽アンサンブルをベースに、要所を決めている金管や打楽器も突出することなどありません。 ベートーヴェンよりもモーツァルトに近い印象を受けました。 最後は弾力を持ってカッコ良く決め、全曲を締めました。

清水さん、にこやかに、まるで弾むようにスタスタっと駆けるようにして退場。 今までのエレガントな音楽と対象的なひょうきんさも感じるこの仕草に会場内の雰囲気も明るくなったかん時ですね。

1stヴァイオリンのみいったん退場、ピアノを中央に持ってきます。
準備が完了し、ソリストのパトリシア・パニーさんが登場。 2003年9月15日の第13回定期演奏会でモーツァルトのピアノ協奏曲第21番を弾いて以来の定演登場に期待が膨らみます。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。 期待どおり、今回も明快なタッチで時に煌きを感じさせる綺麗な響きに魅了されました。 力強いタッチになっても荒く感じさせないのが素敵です。 オケもまた清水さんの指揮のもと、先ほどと同じく流麗な音楽で一体感を醸し出し、両者が見事に会話した音楽。 構成感をしっかり保ちつつも爽やかなベートーヴェンでした。

第1楽章、ゆったりとし、やや濡れたような響きによる開始から、徐々に音量を上げてゆきました。 パニーさん、オケを見ています。 音楽が力強くなっても強引さを感じません。 ティムパニなどタイトに決めているのですけどね。 ここでパニーさんが明快な響きで入ってきました。 ひと息ついて、煌くようなクリアな響きを混ぜながら進みます。 まるで語りかけるようでもあり、時に響きの中にキラっとした輝きが入ってハッとさせられます。 オケも好サポート、柔らかさを基調にしていて、ピアノと響きの質がよく合っています。 
パニーさんのピアノ、構成感をしっかりと持ちつつ、力が入っても荒っぽく響かせるようなところなく進めてゆきます。 時に燦燦と光の帯のようにピアノの響きを重ねたり、時に優しく語りかけるようでもあったり、とにかく見事、素晴らしい。 細かなことを考えるのではなく、柔らかくつけたオケとともにしばし両者の演奏を楽しみました。 最後は徐々に高みを築いて力強く終えました。

第2楽章、和音をゆったりと弾いて始まります。 間合いをちょっと長めにとっているかしら、まるで語りかけているよう。 このあたり上手く言葉にできませんね。 素敵です。 オケもそっと併せ、響きを拾い集めるような感じのサポート。 パニーさん、オケだけの部分ではオケを見て、その流れにそってピアノで語りかけてきます。 ここも細かなことは考えず、ひたすら音楽に浸りたい気分。 とにかく、ピアノとオケ、互いを意識しあいつつ音楽を作りあげてゆき、実にゆったりとした時間がホールに流れました。 素晴らしい音楽ですね。

第3楽章、軽やかですけど、深みも感じさせるピアノの響きでゆったりと始まります。 オケもそっと併せて、ピアノに戻ったあと、力が漲ります。 ここも薄いヴェールをまとったようで刺激的な感じがありません。 じっくりと醸成された音楽のよう。 決して弾き飛ばしたりしませんし、時に高音がキラっキラっと煌くような感じはそのまま。 気持ちのこもったオケのピチカート、オーボエも柔らかな響きですねぇ。 パニーさん、ゆったりと弾いているのですが、ここにくるとフレーズの終わりに力を入れて締めくくり、音楽の印象を強くします。 オケも丹念な響きを重ね演奏で応えています。 ちょっと思索的な感じもさせるピアノの響きのあとオケがタイトに盛り上げたのをスパっと切り落としてカデンツァ。 気持ちのスカっとするピアノを聞かせ、清水さんがタインミングをうまく図って引継ぎ、粘り気のある響きで全曲を綴じました。

存分に楽しませてもらったような、しかし細かなところは覚えていないような、ただただ気持ちのよい音楽。 それに身を任せていたみたいです。 いい時間を過ごしました。

鳴り止まない拍手に、仕方ないわね、ってな感じで弾き始めたアンコール。 やさしく語りかけるようなシューマン。 そしてもう1曲、お馴染みの大田胃散のCMで使われている旋律をしみじみとした感じで弾き、その最後、ふわっと弾き終えた右手を客席に向け、知ってるでしょ、てな感じの茶目っ気も見せました。 会場内の雰囲気が明るくなりました。 いい演奏会ですねぇ。

20分間の休憩。 いつもは座席でじっとしてますけど、2階のロビーに出てちょっと休憩。 1階席は見える範囲で8割くらい入っているでしょうか、2階席は2割に満たないかも。 ロビーもトイレも空いています。 1階ロビーでは奈良の特産品の販売もやってまして、今回の目玉はいちじく(無花果)かな。 混みあっていることでしょう。 座席に戻って開演を待ち、時間となりました。 清水さんがやはり駆け足のように出てきて始まります。

ベートーヴェンの英雄交響曲。 力みのない自然な流れがこれまた見事な演奏でした。 この演奏では何より弦楽アンサンブルの巧さを特筆したいですね。 ここ数年、このオケを聴かせてもらっていますけれど、それぞれの弦楽パートがよく纏まっていて、また主張もしていた演奏はちょっと無かったように思います。 最後の最後まで透明感を失わない見事なアンサンブルでしっかりと曲を構成していました。 ここに定評ある木管楽器群が重なり、覇気のある金管やティムパニが曲を彩った演奏。 ホルンも実に素晴らしい演奏を聴かせてくれました。 充実した演奏を堪能しました。

第1楽章、清水さん、指揮台の上で一礼のあとさっと身を翻してすぐ大きく振りかぶって冒頭の和音2つをタイトに導き出します。 その後は流れるような演奏。 音楽がなだらかに盛り上がる自然な感じ、力を込めても余計な力みというものを感じません。 とうとうと流れる音楽が素敵です。 木管アンサンブル、綺麗に響きを合わせます。 でも響きの中心は弦、弦楽アンサンブルの分奏がすっきりと決まり、響き合い、淀みなく流れていい感じ。 ティムパニの連打をスパっと決め、ピークを造るのも自然。 トランペットの響きが全体によくマッチしてはみ出しません。 でもやっぱり弦ですね、コントラバスが芯になり、2ndヴァイオリンもしっかりと付けています。 的確に叩くティムパニ、一段とヴォリュームをあげ、力を込めた着地で締めました。

第2楽章、指揮棒を持たずに振り始めると、コントラバスの重厚な響きがゆったりと流れ、そこに乗ってヴァイオリンの主題。 コントラバスがしみじみと聴かせていい感じです。 裏で吹いているホルンもまた素敵でした。 オーボエに引き継がれた旋律もまた素敵に響いていましたけど、やはり裏で吹くファゴットも素敵。 いいですね、一心になっている感じのアンサンブル。 中間部ではさらに木管が綺麗に絡んで自然な盛り上がりが魅力的でした。 大きく強く決めて冒頭の旋律に。 フーガを端正に決め、トランペットとホルンもタイトに吹きます。 ホルンの音色に艶がのっていて主張を感じますね。 緻密に音楽を重ねながら最後はふわっと着地しました。

第3楽章、指揮棒を持って振り始めます。 底力のある響き、弦楽器が充実しています。 木管も軽快で、次第にオケ全体に力が漲ってきますけど、音楽が淀みなく流れてゆく感じ。 主題を繰り返してもう一度楽しみます。 そして中間部のホルンによるトリオ、ここが実に素晴らしかった。 張りのある響きに艶がのり、主張をしっかりと感じます。 これで音楽に明るさが出たようだし、活気も増したような気がします。 木管アンサンブルも刺激されたかな、ほんと各部が好調ですね。 冒頭部分に戻り、さらに充実した弦楽アンサンブルを主体にクレッシェンドしてゆき、ホルンの強奏のあとスパッと切り落としました。

第4楽章、高揚感を維持したままアタッカで入って欲しかったのですけど、しばしのインターヴァルのあと、爽やかな弦楽アンサンブルによる導入。 そして力強いホルンとティムパニを伴った音楽をピタっと止めたあと、ピチカートも暖かく、響きに張りがあります。 主題が変奏されますけど、ここでの弦の響きが織なす綾が素敵です。 ヴィオラの深い響き、チェロでは野村さんがよく動いてますね(いつもそうですけど)。 上から見ているので、弦楽パートが充実しているのが手にとるように分かりますね。 もちろん管楽器もよく見えますので、一体感のある高まりも感じとれます。 オーボエとファゴットによる第2主題の旋律もしっとりした響きで素敵でした。 ゆったりと音を紡いだあと、清水さんが大きく振ってクライマックスを構築。 ここでのホルンも高らかに吹いて立派、まろやかな響きのままの強奏ですね。 オケは音量増してもギスギスした感じは皆無。 ワルツ風の旋律を透明感ある弦楽アンサンブルで演奏しあと、急激にまた盛り上がり。 それを静めたあとテンポを上げてのクライマックスへと、一糸乱れぬ上質なアンサンブル。 突き抜けるトランペットも響き良く、タイトでカッコ良いティムパニ、そして常に安定して下支えしているコントラバスを土台に、充実した強奏で全曲を締めました。

素晴らしい演奏に沸き起こる拍手。 その拍手の中、指揮台を滑るようにオケ側に降り、指揮台とコンマスの間をちょっと斜めになってスリ抜けるように小走りに駆ける姿、どことなく欽ちゃん走りを想像させるのも微笑ましい感じ。 とても見事な演奏なのに、崇高で近寄りがたいものではなく、身近なものに感じさせるのは清水さんの特質かもしれませんね。

アンコールは、ここ暫く演奏されてなかった「故郷」。 じ〜んときますね、これを聴かないと奈良フィルの演奏会という感じがしないんです。 今回は、野村さんのソロも入って、ちょっと感情移入も大きくなったかな。 
とにかくいい演奏会でした。 やっぱプロの演奏はこうでないとね、なんて偉そうに思いつつ、雨のなか帰路につきました。