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京都府立医科大学交響楽団 第81回定期演奏会

ドラマティックで熱い演奏会戻る


京都府立医科大学交響楽団 第81回定期演奏会
2005年10月29日(土) 19:00  京都コンサートホール・大ホール

J.シュトラウス2世: 喜歌劇「こうもり」序曲
チャイコフスキー: 幻想序曲「ロメオとジュリエット」
ドヴォルザーク: 交響曲第8番ト長調

(アンコール)ドヴォルザーク: 歌劇「ルサルカ」より"月に寄せる歌"(編曲:井村誠貴)
(アンコール)ドヴォルザーク: 交響曲第8番第4楽章フィナーレ

指揮: 井村誠貴


ドラマティックな演奏の数々、じつに熱い演奏会でした。
コントラバスをステージ後方に一直線に並べたムジークフェライン流の弦楽配置もよく機能していたと思います。 熱い演奏でしたけれど、低弦がしっかりと響き、演奏の核になって充実した演奏を聞かせてくれました。
また弦楽器が3プルト目より、順次ひな壇に乗って高くなり、いわばスリ鉢状に並んだオケから、響きが湧き上がってくるような感じも受けました。
そしてそのスリ鉢の焦点にあたる部分で、大きな動作の井村さんを見ていると、なんだかストコフスキーみたいな感じさえしましたね。 見ていてもちょっと面白い演奏会でした。
なお演奏については冒頭に述べたとおりですけれど、付け加えるならば・・・
抑揚をうまく効かせてとても手馴れた「こうもり」序曲。 響きの角が綺麗に取れて、豊穣さを感じました。
幻想序曲「ロミオとジュリエット」は凝縮したオケ全体の響きに低弦が芯になって重厚な感じ。 愛の主題など、もう少しうねるような感じも欲しかったけれど、終始若々しくケレン味のない演奏は熱く充分にドラマティック。 熱い想いを込めたエンディングも見事でした。
そして圧巻だったのがドヴォルザークの交響曲第8番。 緩急を付け、また押して引いてと、井村さんが自在にオケを操って、こちらも大熱演。 しかし、第2楽章では歌が随所に感じられたのも特筆しておきたいですね。 そして終楽章ではオケが一体となり、実によくコントロールされた響きで全曲を締めあげました。 オケも見事な演奏で指揮に応え、集中力の高い素晴らしい演奏に感激しました。
風邪で、行くかどうしようかと迷いましたけれど行って正解でした。 途中、咳き込みそうになって苦しかったのには困りましたけれど・・・ とても充実した熱い演奏会を楽しみました。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

京都三大学合同交響楽団としての演奏会でもあります。 三大学とは、京都府立医科大学、京都府立大学、京都工芸繊維大学の三つの大学、これに他の大学生も加わっている合同の交響楽団ですね。
さて当日は、前日までの2泊3日の出張時に抑え込んでいた風邪がぶりぶりっとぶり返しつつあり、ちょっと咳き込んだりして体調不良気味。 どうしようか、とちょっと迷いましたけれど、よしっ、と気合を入れて(でも体力温存モードで)京都北山に向かいました。

開演10分ほど前にホール到着。 けっこう人が歩いています。 井村さんからのメールによると何人でもご招待、といった感じだったので閑古鳥が鳴いているかなと思ったのですけど、最終的にはホール1階席などほぼ満杯。 僕はいつもどおり(バカのひとつ覚えみたいに)2階正面に直行して左側の通路際 C4-13 を確保しましたけど、最終的にはここも8割方埋まってしまいました。

さて、腰を落着けてステージを見ると、弦楽器は通常配置ですが、コントラバスのみステージ正面真後ろに一直線に配置させています。 これってウィーンフィルがムジークフェラインでとっている配置ですね。 なお、コントラバスの後ろにはティムパニなど打楽器軍団、金管楽器はコンロラバスの左右に振り分けて、向って右にトランペット、トロンボーン、左にホルンを配していました。

定刻、ステージが明るくなってメンバーが4方向より整列入場。 メンバー表を見ると弦楽器の編成は 10-12-8-8-6 。 3プルト目より順次ひな壇に乗って高くなり、いわばスリ鉢状に並んだ配置にもなっています。
チューニング中も続々とお客さんが入ってきていて、チューニングを終えてもまだ会場内はザワつき気味。 会場内がようやく静まった頃合をみて、井村さんが堂々と登場します。 ゆっくりと礼をはじめると、オケのメンバーが楽器を構え、礼を終えて振り返ると同時に「こうもり」序曲がスタートします。

じつに手馴れた「こうもり」序曲でしたね。 豊かなニュアンスをつけ、また響きの角を綺麗に取って豊穣さも感じさせた演奏には自信も感じます。 オーボエが凛とした響きにしっとり感もあって好演。 オケ全体がたっぷりとした響きですけど、ちゃんとキレの良さもありますね。 金管はやや抑え気味としていましたが、フィナーレ近くで、ぶわぁ〜んとトロンボーンとトランペットを大きくまろやかに響かせたあと、井村さんが軽くジャンプして軽快に進めた後、バシっと決めました。 コンサートの開始にふさわしい、華やかさも感じさせた演奏でした。

ステージが暗転、全員が一度退場。 しばらくしてから再登場し、今度は 12-14-10-9-9 の編成。 この間にもまた続々とお客さんが入ってきました。 チューニングを終えたあと井村さんが登場。 礼をしたあとオケに向って長く俯いてから始まりました。

幻想序曲「ロミオとジュリエット」はドラマティックな演奏でした。 凝縮したオケ全体の響きに低弦が芯になり、前半は重厚な響きが特徴的。 愛の主題など、もう少しうねるような感じも欲しかったのですどね、でも終始若々しくケレン味のない演奏。 両家の軋轢をタイトでカッコよく演奏したあと、熱くたぎるような想いを込めたエンディングもまた見事でした。 熱演でした。

クラリネットとファゴットによるしっとりとした導入部。 ゆっくりと進みます。 横一列に並んだ低弦に底力を感じました。 スリ鉢の配置だからでしょうか、全体的にオケの響きが凝縮したような感じで届きます(ちょっと左右の拡がりには乏しいような感じもしましたけど)。
ティムパニが静かにロール、ちょっと抑揚をつけるようにして緊張感を高めつつ進めてゆきます。 ゆったりと力を込め、響きを凝縮させた主題の呈示。 低弦の響きが芯になり、井村さんも大きなアクションで湧き上げるような感じで盛り上げます。 オケの響きが実によく締まっていて重厚な感じがしました。
ヴィオラが「愛の主題」をたっぷりと弾きます。 これをヴァイオリンが引き取りますが、このあたりもうちょっと粘って欲しいというのは欲張りかしら。 学生オケらしくあっさりとケレン味なく進めてゆく清潔感のある演奏ですね。
音楽はまた緊張感を帯び、主題を回帰させると、右からトロンボーン、左からホルンが聴こえ、そして中央から絶え間なくコントラバスが響きます。 でも金管を抑制気味にして凝縮した響きを変えずに進めますと、トランペットがよく透る響き、じつに円やかでいい響きでしたね。 井村さん、大きなアクションでぐいぐいとオケを引っ張ってゆきます。 オケもそれによく応えてタイトにクライマックスを登り詰めました。
これをすっと収め、このコントールも見事でしたね。 今度は井村さんがらたっぷりと振って雄大さも感じさせたあと送葬行進曲。 ここを実に熱っぽく進め、熱くたぎるような想いをたっぷりと込めたエンディングを形成して終結しました。 とにかく熱い演奏でした。

15分間の休憩。 先の演奏では、音量が大きくなる部分で迷惑がかからないように軽く咳き込んだりしてて、やはり体調不良気味。 大人しく飴など舐めながら席で開演を待ちました。
定刻となってメンバーが登場、今度は 12-18-12-10-8 の編成です。 ここでも第2ヴァイオリンが大目の編成になっていますね。 コンミス(前2曲はコンマス)が登場して入念なチューニングを実施。 続いて井村さんが登場、四方に礼をしてからオケに向って始まります。

ドヴォルザークの交響曲第8番。 緩急を付け、また押して引いてと、井村さんが自在にオケを操って、こちらも大熱演。 しかし、第2楽章では歌が随所に感じられたのも特筆しておきたいですね。 そして終楽章ではオケが一体となり、実によくコントロールされた響きで全曲を締めあげました。 オケも見事な演奏で指揮に応え、集中力の高い素晴らしい演奏に感激しました。

第1楽章、大きく振って豊かなチェロとコントラバスの響きを導き出しました。 フルートが清涼な響きで入ってきて、徐々に活気つけて最初のクライマックスを形成。 実によく纏まって雄大さを感じさせます。 これを越えると今度はロマンティックに曲を進める井村さん。 緩急つけて、押して引いてと、整えるよりも流れに乗せて進めるがお手の物ってな感じにも思えますね。 音楽を活気つけ、緩急つけてと、ドラマ仕立てのようなオーケストラ音楽を仕立てます。 これを存分に楽しみました。 あまり細かなことはよく覚えていません。 最後は覇気のある演奏で一気に盛り上げて終了。 残響がホールにこだましていました。

アセをぬぐって、しばしのインターヴァルをとってから第2楽章、ヴァイオリンの方を向いて、ふわりとした開始。 ゆったりと丁寧に進めます。 ここでも弦楽器と木管楽器が響き合うのを巧く纏めてドラマ仕立て。 オケの精度が高いので、井村さんも存分にオケを動かしているようです。 ティムパニがクレッシェンドしてきました。 張りと艶のある弦楽器の響き、この後のしっとりしたオーボエも素適。 低音弦とホルン、ヴァイオリンのトレモロ、木管楽器、あげるとキリがないですが、歌心のある響きが次から次へと繰り出してきます。 それも媚びない響きでかつ情感あります。 独奏ヴァイオリン、こちらも清楚な響きが魅力的でした。 
そして今度はたっぷりと響きかせたクライマックス。 雄大な音楽とします。 トランペットがまろやかでいい響きでした(なんと3名とも女性奏者ですね、だから柔らかい響きなのかしら)。 井村さん、これをまたすっと止め、今度はテンポをぐっと落としてじっくりと進めます。 聞かせ上手ですね。 やりすぎるとクサくなりそうな感じなんですけどね、オケの響きが真摯だからでしょうか、こちらも上手く乗せられていい気分です。 緩急つけた演奏に耳を奪われつつ最後まで。 ここでのトランペットも柔らかくて素適でした。

第3楽章に入る前、井村さんがコンミスに何やら話し掛けている様子。 しかし特に何事もなく、井村さんの大きな身体が左右に揺れてワルツが始まりました。 ここもまたよく歌う音楽です。 いつもながら井村さんの動きは大きく、まるでダンスをするように曲を進めてゆきます。 しかしここでは決め所は柔らかく纏めて、流れを大切にしているような感じでした。 木管と弦楽器が交互に朗らかな旋律を奏で、うっとりしますね。 コンミスも大きな動きで弦楽パートを見事にリード、情感が篭もっていました。 流れるように歌うように進めてフル・オーケストラによる舞曲。 コントラバスが中央から響いて芯になって曲を支えているので落着きがあります。 最後は井村さんが両手を左右に広げ、更にそれを大きく広げて楽章を閉じました。

アタッカで第4楽章に突入。 トランペットのファンファーレがこれまた気持ち良かったですね。 ぞくぞくっときました。 そして、ゆったりと歩みを進めるようにしてチェロが旋律を奏でます。 後方よりコントラバスがそれを支えているのがいいですね。 ヴァイオリンが入ると力を増しました。 響きを重ねるように、じっくりと曲を進めてゆきますが、井村さんのハナ息とともに急速な盛り上がり。 ここはタイトな舞曲。 すっと退いて、フルートが爽やかに吹いたあと、また畳み掛けるように舞曲。 リズミカルに進めますと、オケもよく纏まった響きで応えて見事。 踊る井村さんが中央でストコフスキーにも見えてきましたね。 トロンボーンがいい響きを聴かせてくれました。 ここもまたすっと響きを纏めて、たゆたうように変奏。 クラリネットが柔らかな響きでした。 しんみりとさせますが、牧歌的なんですが都会的な洗練された感じがしました。 これを井村さんの足踏みで断ち切り、コーダに突入。 ぐいぐいと盛り上げて、急速に進めてゆきます。 そして最後はホルンがベルアップ。 更に盛り上げたのち、井村さんが右手を高く上げて全曲を閉じました。 とても熱いクライマックスにこちらも熱くなりました。

カーテンコールでは、客席からの拍手が大きな手拍子となるほどの盛り上がり。 アンコールのあとも大きな拍手は続き、このフィナーレを再演すると更に大きな拍手に包まれました。 とても充実した熱い演奏会を楽しませていただき、ホールをあとにしました。
4回生、また医大の6回生の方にとっては卒団の演奏会だったのでしょうか。 皆さん素晴らしい演奏をありがとうございました。