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ならチェンバーオーケストラ 第70回定期演奏会

一足早いクリスマス・ファンタジー戻る


ならチェンバーオーケストラ 第70回定期演奏会
2005年12月4日(日) 14:30  なら100年会館・大ホール

D.ハウエル編曲: クリスマス・ファンタジー
プロコフィエフ: こどものための音楽物語「ピーターと狼」op.67
ベートーヴェン: 交響曲第3番「英雄」op.55

(アンコール)ベートーヴェン: トルコ行進曲
(アンコール)L.モーツァルト: おもちゃの交響曲

指揮: 今村 能


創立18年、第70回定期演奏会。 100年会館中ホールから大ホールに場所を移し、いつも以上に充実した演奏を聴かせてくれました。
特にプロコフィエフの「ピーターと狼」、小学3年生〜高校1年生のキッズメンバーを加えての演奏でしたが、そんなことは全く関係なし。 今回演奏に参加された子供達に合わせることなどまるでなく、実に素晴らしい演奏に惹き込まれっぱなしでした。 
とにかくソリストの方々の表現力が実に豊かで巧いのです。 また3人の女性ホルン奏者も息がビタっと合ったタイトな吹奏、打楽器も迫力ある響きで存在感を示していました。 もちろん弦楽アンサンブルはいつものとおり、いやそれ以上にキッズメンバーが加わって層が厚くなし、各パートも有機的に絡んだ素晴らしいアンサンブル。 そしてまたナレーションの方も巧かった。 終始わくわくしどおしで聴いていました。
実は、この曲を生演奏で聴くのはこれが初めて。 ホルンこそ3本使っていますが、その他の管楽器は1本のみ(1管編成)なんですね。 にもかかわらず、実に表現豊かな作品。 もっと大編成の曲かと思い込んでいたことを白状します。 それを素晴らしい生演奏で聴けたことは、本当にいい経験になりました。 今年もあと少しで終わりそうですけれど、この「ピーターと狼」、今年の「勝手に」アカデミー賞ものの演奏となりました。
またこれに先立って演奏された、D.ハウエル編曲のクリスマス・ファンタジー。 こちらもならチェンバーらしい上質な弦楽アンサンブルに魅了されたました。
D.ハウエルさんは、ならチェンバーの常任指揮者をされていたそうで、第60回定期演奏会(2001.12.24)でも今村さんの指揮で演奏されていますね。 今回は大ホールですが 6-5-4-4-3 の編成+チェンバロの構成、1階席でしたので直接音が多かったものの腕の確かな人達ばかりですからね、柔らかくて綺麗なストリングスを堪能しました。 コントラバス・トップの女性、とても表情豊かに弾いていらしたのも印象に残りました。
メインのベートーヴェンの英雄交響曲。 こちらは今村能さんらしく理知的で緻密に構成された演奏でした。 
後半楽章、熱っぽくてメリハリのある演奏となり、壮麗なホルンの斉奏も決まって聴き応えありました。 しかし前半はやや硬直気味だったかもしれません。 ホールの響きが少ないせいもありますけれど、弦楽メンバーの数(6-5-4-4-3の編成)から、やや性急に感じた第1楽章、ちょっと単調な傾向に陥った感のあった第2楽章など、ちょっと落ちこぼれそうになって聴いてしまいました。 しかし後半、本当によく考えれらた指揮にオケも奮闘。 キャパが大きく響きの薄いホールでの懸命な演奏を楽しみました。 
とにかく今年も素晴らしい演奏を聴かせてくれた、ならチェンバー。 これからも変わらず応援してゆきたいと強く思った演奏会でした。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

開場10分ほど経った頃、なら100年会館に到着しましたが、入口には奈良女子大学ギター・マンドリンクラブ定期演奏会が中ホールで開催するとの看板を見て慌てました。 なんと今回は大ホールでの公演だったのですね。

長蛇の列が大ホールに吸い込まれてゆくのを見ながら当日券を購入。 今回は小中学生は無料ですし(事前にホールや市役所または市役所の出張所で入場券の配布を受ける必要があります)、オケに小学3年生〜高校1年生のキッズメンバーを加えて演奏することもあって集客が見込めると考えたのでしょうね。 確かに中ホールだとキャパ的にはキツイよなぁ〜と思いながら入場。 いつもながら、変なホールやな、そんな印象を持ってしまいますけどね。

さて、ホールに入った頃は2階席は立入禁止。 仕方なく1階席左側のM-ト-7の席を確保しました。 けっこう人が入ってますので、その後2階席も解放されたようです。 2階席への移動もちょっと考えましたけど、この大ホール、音響的によくないし、オケの編成も小さいのでそのまま1階席に残ることにしました(子供たちは空いている席がいいと言って移動し、なんでも最上階まで登ったとのこと。 後で聞いたら、さすがに音量が乏しかったようです)。

ところで1階席も、ステージが客席にはみ出すようにして設置されていました。 客席を凹型にして、へこんだ部分にステージがありました。 ステージの両サイドの席は、オケを真横から見るように席を90度回転してあって、ちょっと不思議な感じ。 なお本来のステージ部分には、4〜5メートルはあろうかという背の高い反響板を立てて仕切ってました。 その上部はやや下に向けて傾斜をつけ、響きが下側に反射するよう考えられているようです。 何でも、前日のリハーサルで、指揮者の今村さんも加わって設置を工夫されたとのことでした。 

続々とお客さんが入ってきているせいか、なかなか始まりません。 10分近く経ってようやくホール内が暗転、メンバーが反響板の左右より分かれて入場。 弦楽器の編成は 6-5-4-4-3 の通常配置、ビオラの後方にはチェンバロ奏者を配して準備完了。 
いつもとは違って司会者の方が出てこられました。 創立18年、第70回定期演奏会であり、毎回満員で帰っていただくこともあり、今回は大ホールでの公演となったとのこと。 音響的には良くないが、反響板の設置のことなどを話されてから、1曲目が始まります。 今村さんが小走りで登場されました。

D.ハウエル編曲のクリスマス・ファンタジー。 冒頭から、ならチェンバーらしい上質な弦楽アンサンブルに魅了された演奏でした。 なお D.ハウエルさんは、ならチェンバーの常任指揮者をされていたそうで、第60回定期演奏会(2001.12.24)でも今村さんの指揮で演奏されていますね。 今回は大ホールですが 6-5-4-4-3 の編成+チェンバロ(河野まり子)ながら、1階席ということもあって直接音は多いものの腕の確かな人達ばかりですからね、柔らかくて綺麗なストリングスを堪能しました。 なおコントラバス・トップの女性が(川田ゆかりさんでしょうか)、とても表情豊かに弾いてらして、リラックスしながらもしっかりとした演奏に華を添えていた感もありました。

「もろびとこぞりて」、何より弦楽器の分奏がしっかりしていて、柔らかな低音弦、ふくよかな中音弦、透き通るような高音弦が絡む至福のひととき。 カノン風の旋律が各楽器を渡っていくのを楽しみました。
「ジングルベル」、チェンバロとヴィオラが鐘の音を模してのメロディが始まりますが、アダージョでしょう、とても落ち着いた雰囲気です。 引き続いて「クリスマス・ソング」でしょうか、やわらかな響きながら集中力高く、ヴァイオリン(五十嵐由紀子)とチェロ(斎藤建寛)のソロが絡み合うのもならチェンバーの聴かせ所でしょうね。
「サンタが街にやってきた」、コントラバスのピチカートに、ヴィオラと2ndヴァイオリンが乗り、1stヴァイオリンが柔らかな響きで曲を進めます。 コントラバス・トップの女性(川田ゆかりさんでしょうか)、とても表情豊かに弾いてらして、ちょっと見とれてしまいました。
「ホワイト・クリスマス」、ゆったりとしたメロディとハーモニーで奏でられ、リラックスしながらもしっかりとした演奏を存分に楽しませていただき、幕となりました。

司会者が出て来て、今回キッズメンバーと演奏する旨の話をしている間に管打楽器メンバーが配置します。 キッズメンバーはオーディションで選ばれたとのこと。 小学3年生〜高校1年生の10名で、メンバー表によると8名が第1ヴァイオリン、1名が第2ヴァイオリン、1名がチェロ。 ステージに登場すると、いずれもアウト側に座って開始を待ちます。 ナレーション(大槻温子)の方が登場して準備完了。 今村さんが小走りで出てきて始まりました。

プロコフィエフの「ピーターと狼」、キッズメンバーを加えての演奏でしたが、そんなことは全く関係なし。 今回演奏に参加された子供達に合わせることなどまるでなく、実に素晴らしい演奏に惹き込まれっぱなしでした。 とにかくソリストの方々(fl:待永望、ob:浅川和弘、cl:鈴木豊人、fg:佐々木威裕、tp:竹森健一、tb:呉伸一)の表現力が実に豊かで巧いのです。 また3人の女性ホルン奏者(木山明子、堺温子、永武靖子)も息がビタっと合ったタイトな吹奏、打楽器(timp:堀内吉昌、perc:久保田善則)も迫力ある響きで存在感を示していました。 もちろん弦楽アンサンブルはいつものとおり、いやそれ以上に各パートが有機的に絡んだ素晴らしいアンサンブル。 それにナレーションの方も巧かったですしね、もうわくわくしどおしで聴いてしまいました。

ナレーションから始まります。 レコードと同じくまずは楽器と役割分担の紹介。 古武士のような風貌でちょっと無骨な待永さんのフルートから始まって、頬を膨らませて温和な響きのする浅川さんのオーボエ、飄々とした感じの鈴木さんのクラリネットなどなど、わくわくしてきます。 ここから既に今日はいい演奏になるなぁという感じ。

物語りが始まると、まず軽やかで艶やかな弦楽アンサンブル、中低弦が柔らかく絡んでます。 響きの少ないホールですが、キッズメンバーが加わっていつもよりも数が多いのが幸いしているようです。 しかもしっかりとした合奏にまず聞き惚れますね。 それにナレーションも巧いし、小鳥(フルート)や、アヒル(オーボエ)が見事に絡む音楽が息づいてます。 どんどんと物語の世界に惹き込まれてゆきます。 猫(クラリネット)の鈴木さん、いつもながら身体を前後に大きく動かして表情をつけ、見ていてもホント楽しいですね。

狼(ホルン)が登場、張りのある響きを最初抑え気味で始めるのですが、クレッシェンドして圧倒するよう。 女性3人とは思えない迫力、巧い。 そして、その狼に飲み込まれるアヒルの場面、オケのすごい集中力で息を飲みました。 このあとも小鳥を追いかける狼の場面での迫力、狩人(打楽器)の登場による場面転換のキレの良さなど、実にタイトな演奏が展開。
そして動物園に連れていくパレードなど、爽やかな弦のアンサンブルに表情豊かな管楽器が雄弁に絡んで、管弦楽の面白さを満喫しました。

子供向けの音楽なんでしょうけど、演奏自体は全く子供向けではありませんね。 集中力と豊かな表現力が見事に絡みあっていて、聴いていたら、あっという間に終わってしまった、そんな感じ。 時間も忘れるような素晴らしい演奏でした。

15分の休憩。 最上階に行っていた長男に話を聞いたら、やっぱり音がちょっと小さかったみたいですね。 そりゃそうでしょう。 編成が小さいですから。

定刻かな、ステージの上ではフルートとファゴットの方が練習されていましたが、小走りで指揮者の今村さんが登場、スピーチが始まりました。 何でも23歳のときにベルリンフィルを指揮し、その時の曲がベートーヴェンの英雄交響曲だったそうで、思い出深い曲であること。 またこの曲は2つの音で出来ている独創的な音楽であること。 そして今回、このホールの響きを始めてレコード録音されたスタジオ(名前は失念)の響きに併せるように反響板を設置したのだと、いつもよりも気合のこもったお話しぶりでした。

いったん今村さんが下がると、オケのメンバーが出てきて( 6-5-4-4-3 の通常配置)チューニングを行って準備が完了。 ふたたび小走りで今村さんが出てくると、一礼をするといきなり英雄交響曲の2つの音が始まりました。

理知的で緻密に構成された英雄交響曲でした。 後半楽章、熱っぽくメリハリのある演奏で、壮麗なホルンの斉奏も決まって聴き応えありましたけど、前半はオケはやや硬直気味だったかもしれません。 ホールの響きが少ないせいもありますけれど、弦楽メンバーの数の少なさもあって、やや性急に感じた第1楽章、ちょっと単調な傾向に陥った感のあった第2楽章など、ちょっと落ちこぼれそうになって聴いてました。 しかし後半楽章、弦に艶も戻って、本当によく考えれられた熱い指揮にオケも奮闘。 キャパが大きく響きの薄いホールでの懸命な演奏を楽しむことができました。

第1楽章、絞った響きで2つの音を叩きつけるようにして開始。 快速に曲を進めてゆきます。 ややデッドな響きもあいまって、ヴァイオリンの響きに潤いが少ない感じです。 今村さん、棒を小刻みに振り、しかも棒を持つ手が終始震えているようです。 決して分かり易い振り方ではないですね、オケも集中していないと出が併せ難いって感じ。 オケも集中力を高めて、緻密に響きを重ねてゆきます。 ホルンがここでもタイトに吹き、いい感じでした。 ただし、全体として捕らえるならば、やや性急な感じだったことは否めませんね。 それでも中低弦がベースになって、安定した音楽だったと感じました。 最後は響きを纏めるようにしてこの楽章を閉じました。

第2楽章、ここでも集中力高く、響きを内向きにするような感じで開始。 オーボエが凛とした響き、しみじみと曲を進め、時折左手を小刻みに震わせて、ヴァイオリンに表情をつけます。 全体としてよく纏まった音楽なんですけど、とても慎重な感じがしました。 今村さん、ここではじっくりと曲と対面しながら進めているようです。 ティムパニのロール、全奏となって集中力高い盛り上がり。 ただし響きが少ないせいでしょうか、空間に消えてゆくような感じもして、どこか単調な感じも。 正直、ちょっと眠気が襲ってきたりもしました。 熱い想いのこもった演奏なのは見ていてもよく分かるのですけれど・・・ 最後は響きを併せて、ふわっと丁寧に纏めました。

第3楽章、これまでの楽章とは違った潤いを感じる合奏で始まりました。 最後なので、オケの方も力を振り絞ったのかもしれません。 ティムパニが先の細いマレットで打って、オケもタイトで息づいた音楽として進行。 響きが一回り大きくなった感じがします。 ホルンのトリオが壮麗な響き。 すごい。 弦楽アンサンブルも負けじと勢いつけて、ますます響きが豊かになりましたね。 このあともホルンが見事、オケも皆さんノッてきたのかな、ぎゅっと引絞った音楽なんですけど、要所で気合を入れて息づかせています。 覇気を感じました。

第4楽章、やや大きな響きのピチカート。 うねるように進めてゆきます。 今村さん、ここでは踊るように丸く振ってますけど、要所では音楽を投げ飛ばすような感じ。 硬軟のメリハリつけてますね。 艶やかなヴァイオリンの響きが次第に熱っぽくなってきました。 コントラバスも速い動きでパッセージを弾いてます。 力を絞り込んだ熱い音楽と流れるような音楽を緻密に組み合わせた理知的な英雄といった感じかな。 最後は雄大な感じをさせたホルンが素晴らしく、リズム感をつけてうねってから、ストレートに畳み掛けたフィナーレはやや軽量級でしたけど、タイトに決めました。

ホールのキャパとオケの編成を考えると、演奏者は大変だったと思いますが、1階席で直接音がよく届く場所で聞いていたこともあり、気合の入った演奏を楽しみました。 

このあとのアンコールではベートーヴェンのトルコ行進曲。 これまでと違って今村さん、ノリノリな指揮でした。 両足揃えて、30センチ以上もジャンプすること2回。 よく飛んだなぁ〜という印象。
またキッズメンバーが玩具を担当して、おもちゃのシンフォニー。 さすが、おもちゃを見事に楽器として扱って巧かったですね。 ちゃんとした演奏で楽しめました。 

とにかく今回、初めての大ホールで、キッズメンバーを加えての演奏でしたが、「ピーターと狼」の素晴らしい演奏に感激しました。  この曲を生演奏で聴くのはこれが初めて。 ホルンこそ3本使っていますが、その他の管楽器は1本のみ(1管編成)なんですね。 にもかかわらず、実に表現豊かな作品。 もっと大編成の曲かと思い込んでいたことを白状します。 それを素晴らしい生演奏で聴けたことは、本当にいい経験になりました。 今年もあと少しで終わりそうですけれど、この「ピーターと狼」、今年の「勝手に」アカデミー賞ものの演奏となりました。

そんな素晴らしい演奏を今年も聴かせてくれた、ならチェンバー。 これからも変わらず応援してゆきたいと強く思った演奏会でした。