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オーケストラ千里山 第10回定期演奏会

今後への活躍も期待させる戻る


オーケストラ千里山 第10回定期演奏会
2005年12月25日(日) 14:00  伊丹市立文化会館・いたみホール

チャイコフスキー: バレエ音楽「くるみ割り人形より」(*)
  小序曲、行進曲、パ・ド・ドゥーこんぺい糖の精の踊り、
トレパーク(ロシアの踊り)、チョコレート(スペインの踊り)、
パ・ド・ドゥー序奏、お茶(中国の踊り)、あし笛の踊り、花のワルツ
マーラー: 交響曲第1番ニ長調

アンコール: L.アンダーソン: クリスマス・フェスティヴァル

指揮:船曳圭一郎、北野洋平(*)


溌剌とした「くるみ割り人形」、タイトによく締まった「巨人」、このオケを始めて聴かせていただいたときには、ここまで成長するとは正直思いませんでした。 しかも、このオケの特長である誠実な演奏がそのまま残っていることも感動を大きくする要因でした。
「くるみ割り人形」は、団内指揮者として今回始めて指揮台に立った北野さんの指揮でしたが、とても始めてとは思えない、堂に入った指揮ぶり。 しかもとても気持ちの良い演奏だったのは、仲間との一体感があったからでしょうね。 締めるべきところはしっかりと締め、歌うべきところは歌い、演奏している皆さんも実に楽しそうでした。 これがオケ千らしい演奏といっていいでしょう。 しかも後半、オケもノッてきて、タイトに締まった演奏となって聴き応えも充分。 クリスマスには「くるみ割り人形」、そんな暖かな感じのする演奏を満喫しました。
マーラーの「巨人」、こちらはオケ千として始めて招聘されたプロ指揮者である船曳さんの指揮。 かっちりと纏まった「巨人」でした。 船曳さん、もっと感興に任せた指揮かと思ったのですが、ちょっと遅めのテンポ設定とし、基本的にインテンポでぐぃぐぃと曲を進めてゆきました。 オケもそれによく応えて見事。 抑制がよく効いて締まった演奏なのですが、クライマックスではオケの底から湧き出るような響きを出して聴き応え充分です。 オケの一体感から醸成されてくる響きですね。 そしてまたその演奏から、朴訥さや誠実さが滲み出てくるような感じもします。 数多くこの曲の演奏を聴いてきましたが、オケとしての一体感と、朴訥さや誠実さが両立している演奏って、そんなにあるように思えません。 オケ千ならではの演奏だったのではないでしょうか。 今後の活躍を期待させた素晴らしい演奏でした。
素晴らしい演奏で今年を締めくくることができました。 皆さんお疲れさまでした。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

3連休の最後の日。 色々とやるべきことがあって、家を出るのが遅れました。 伊丹まで1時間半では遅刻やな・・・と思いつつ、奈良市内の最寄駅を13:38発の電車に乗りましたけど、なんと14:38にはJR伊丹駅に降り立ってました。 JR大阪駅で丹波路快速に飛び乗れたことが幸いしたようですね。 どこかで神様が救ってくださったのかもしれません。

開演10分前にホールに到着。 さっそく2階席への階段を駆け上り、中央通路のすぐ後ろ、26-22の席を確保しました。 この通路から前の席は4割程度入っていたでしょうか。 1階席はほとんど見えないのですけど、想像では7割以上は入っている雰囲気ですね。

ステージを見ると、ラッパの方を始め、数名の方がすでに座ってらっしゃいます。 自由入場のようですね、三々五々、各パートの方が出てこられて席を埋めてゆきました。 弦楽器の編成は 16-14-8-9-8 かな、通常配置です。 ステージが狭い、そんな感じを受けました。 オケの方も時おり客席を見上げているようですね。 よく入ったなぁ、なんて思っておられるのでしょうか。

14:00定刻、チャイムが鳴ってホール内が暗転します。 コンサート・ミストレスが登場してチューニング。 準備完了です。 指揮者の北野さんがにこやかな表情で右手を上げて出てこられました。 全員が起立して一礼。 いよいよ始まります。

チャイコフスキーの「くるみ割り人形」、団内指揮者として今回始めて指揮台に立った北野さんの指揮でしたが、とても始めてとは思えない、堂に入った指揮ぶり。 しかもとても気持ちの良い演奏だったのは、仲間との一体感があったからでしょうね。 締めるべきところはしっかりと締め、歌うべきところは歌い、演奏している皆さんも実に楽しそうでした。 これがオケ千らしい演奏といっていいでしょう。 しかも後半、オケもノッてきて、タイトに締まった演奏となって聴き応えも充分。 クリスマスには「くるみ割り人形」、そんな暖かな感じのする演奏を満喫しました。

「小序曲」、左手で拍子をとって入ると艶やかな弦のアンサンブル、そして柔らかなフルートとクラリネットによる上々の滑り出しです。  途中、ちょっと弦のアンサンブルの音程が合ってないのかな、なんて思える場面もありましたけど、活き活きとして愛らしい音楽で始まりました。

「行進曲」、柔らかくて甘いトランペットの響きが素適な開始。 ここでも活き活きとした合奏です。 コントラバスやチェロの響きが柔らかく絡んでいたのが印象的でした。

「パ・ド・ドゥーこんぺい糖の精の踊り」、しっとりしたピチカート、神秘的なチェレスタのあと湧き上がってくるような音楽を楽しみました。 弦のアンサンブルに芯があっていいですね。

「トレパーク(ロシアの踊り)」、キレの良い弦楽器による開始。 もちろん深みもありますよ。 ゆったりと自信たっぷりな感じです。

「チョコレート(スペインの踊り)」、楽しい音楽を満喫しました。 張りのあるトロンボーンから始まって、オケが力を増しても演奏がよく締まっています。 大きく歌わせて、演奏している皆さんも楽しそう。

「パ・ド・ドゥー序奏」、北野さん、両手を広げて弾力あるピチカートを導き出しました。 美しい響きのハープ(男性奏者です)に続いて、チェロのアンサンブルが深く優しい響きで魅了されました。 北野さん、ここでも音楽を大きく抑揚させ、オケもそれに応えて歌います。 気持ちいい音楽が続いたあと、力強い全奏としたのを潔く切り落としたら、残響がホールに残っていました。

「お茶(中国の踊り)」、朴訥としたファゴットの響き、軽やかなフルートの音色、でも前曲の熱気がまだオケに残っているような感じだったみたい。 鉄琴はしとやかな響きを聴かせていました。

「あし笛の踊り」、中低弦のピチカートが柔らかい開始でした。 フルートのアンサンブルが優しく、楽しい響きを聞かせると音楽が息づきます。 オーボエや高音弦が絡んだあと、柔らかな金管が絡む音楽は躍動的、楽しい気分です。

「花のワルツ」、大きくゆったりと振って始め、柔らかな管楽器とハープが絡んだ静かな開始。 ヴィオラの刻みが印象的に響きます。 このヴィオラ響き、この曲のあちらこちらで聞かれ、朴訥というのかな、誠実な響きで曲を締めています。
北野さん、ここでも音楽を丁寧に纏めていますが、躍動感も決して失うことがありません。 最後は流れを速くした引き締まった演奏のあと、いったんゆったりとさせてから、力強く全曲を締めました。 

オケと指揮者の一体感のある演奏は、聴いていて、とにかく気持ちがよかったですね。 クリスマス・プレゼント。 そんな感じのした、楽しい演奏でした。

およそ15分間の休憩、とのアナウンスがありました。 トイレも行かず、席でパンフレットを読んで開演を待ちます。
ステージ上には既に座って練習されている方もいます。 今回も自由入場。 どんどんと練習される方が増え、最後は弦楽器が 15-15-9-9-8 の編成になったようです。 なおホルンの8名はステージに向かって左側に2列で配置。 反対側の右側にはティムパニが2組並んでいます。 そのティムパニの前方にはトロンボーンとチューバ。 ホルンとティムパニの間にはトランペットが座っていて、大勢の方がいるなぁ・・・そんな感じステージは満杯です。

定刻、今度はコンマスが出てこられてチューニングを開始。 準備が整うと、オケの中を泳ぐようにして船曳さんが登場します。 黒の詰襟の服を着て、にこやかな登場です。 一礼し、いよいよメイン・イヴェントが始まります。

かっちりと纏まった「巨人」でした。 船曳さん、もっと感興に任せた指揮かと思ったのですが、ちょっと遅めのテンポ設定とし、基本的にインテンポでぐぃぐぃと曲を進めてゆきました。 オケもそれによく応えて見事。 抑制がよく効いて締まった演奏なのですが、クライマックスではオケの底から湧き出るような響きを出して聴き応え充分です。 オケの一体感から醸成されてくる響きですね。 そしてまたその演奏から、朴訥さや誠実さが滲み出てくるような感じもします。 数多くこの曲の演奏を聴いてきましたが、オケとしての一体感と、朴訥さや誠実さが両立している演奏って、そんなにあるように思えません。 オケ千ならではの演奏だったのではないでしょうか。 今後の活躍を期待させた素晴らしい演奏でした。

第1楽章、船曳さん、うつむいて精神統一してから満を持したように静かに振り始めました。 集中力と透明感の高い弦の響きがホールに流れます。 ゆったりとした木管楽器の音色がかぶってきて、上々の滑り出し。 オケの皆さん、緊張されているのでしょうね、8名のホルン奏者全員が、じっと木管奏者の方を向いて、音楽の行方を見定めていたのが印象に残りました。
バンダのトランペット、楽屋のドアを開けていないせいか、響きがちょっと遠い感じがしましたけど、見事に合っていました。 ホルンはちょっとビビった感があったものの長閑に纏めて進めます。 音楽が徐々に盛り上がってきて、チェロが「朝の野辺を歩けば」の旋律を明るく演奏、トランペットが艶やかな響きを添えて躍動的になります。 船曳さんも、ここではこれまでのテンポをしっかりと保った指揮から、動きを大きくとってリズムに乗せてゆきます。
でも船曳さん、すぐまた元の丁寧で控えめな指揮としてオケを纏めます。 ティムパニも的確な打音できっちりと仕上げていますね。 オケの緊張は取れたようですが、演奏は慎重。 ちょっとゆっくとしたテンポで進んでゆきます。 ピークでのシンバルも控えめな響き。 ホルンがタイトな斉奏で音圧を感じさせ、トランペットも伸びやか、力を溜め込んだ盛り上がりも決して派手ではありませんがパワーを感じます。 誠実な音楽、そんな印象です。 エンディング、船曳さんがよく動きました。 前に出した左足を爪先立ちにする得意(特異?)なポーズでぐいぐいと進めて盛り上げたあと、スパっと切り落としました。

第2楽章、コントラバスの方を向いて降り始めてると、締まった響きが流れ出ました。 高音弦もハリのある響きで呼応します。 管楽器が躍動感を感じさせ、いい感じですね。 木管のベルアップ、ホルンのベルアップも綺麗に決まっているのを見ると、なんだか知らないけど感動します(けっこう単純なんですね)。 船曳さん、ここでもテンポをしっかりと保って曲を進めてゆきました。 そうすることによってオケの集中力を高めているような感じ。 一見、淡々と進めているようなのですけど、歌わせる部分では大きく振ってしっかりと歌わせます。 そうやってぐいぐいと乗せてはすっと退くのを繰り返しますが、いずれも低弦が柔らかく響きを重ね、芯になっているので落ち着いています。 また船曳さん、高音弦が乗り切れないと思われる場面では、ちょっとテンポを落としていたのではないでしょうか。 とにかく慎重に曲を進めてゆきます。 しかしここでも最後は躍動的にオケを動かし、破裂するような強奏でこの楽章を閉じた迫力も見事でした。

第3楽章の前にチューニングを実施。 船曳さん、この楽章では指揮棒を置いて振り始めます。 静かなティムパニの打音に続くコントラバスのソロ。 ちょっとたどたどしい感じがしましたけど、葬送行進曲ですものね、萎びた響きに雰囲気がありました。 このあとのファゴット、チェロのアンサンブルもまたしみじみとさせて続きましたけど、オーボエがハッキリと聞こえたのはバランスがイマイチ。 きっと気合が入ってしまったのでしょうね。 しかしここでもゆったりと進みます。 船曳さん、胸の前で手をゆらゆらさせて、ほとんど振っていないような感じでした。 高音弦がゆるやかに歌います。 ハープが入って、また柔らかな弦楽アンサンブル、しっとりと歌う木管もまた素適です。 ドラ、大太鼓、ティムパニもそっと打ち、管楽器がしっとりと絡み、しみじみとさせた葬送行進曲。 よかったですね。 ピチカートが静かに弾かれ、そっと着地しました。

第4楽章、船曳さん、指揮棒を降ろさず、静かに譜面をめくって呼吸を合わせて入ります。 ぎゅっと締まった響きによる開始です。 各楽器の響きがよくブレンドされた充実した響き。 それが地に足を着けたように、ゆったりと進んでゆきました。 ティムパニの強打がアクセントとなっています。 ここでもテンポをやや遅めにとった堂々とした音楽です。
嵐が去ると、ヴァイオリンのアンサンブルがしっとりと歌います。 ここも遅いテンポでしみじみとさせたまま、大きく抑揚をつけて盛り上がります。 緊張感も高め、タイトにピークを形成しますけど、勢い込むことのない丁寧な音楽ですね。 暴走なんてしません。 打楽器、金管楽器、いずれも響きを絞り込んでよく揃っています。 しっかりと地に足が着いた落ち着きを感じます。 朴訥さや誠実さが滲み出てくるような感じもしました。 
ヴィオラのアンサンブルが、張りのある響きを聴かせると、それが弦アンサンブル全体、オケ全体に広がってゆきます。 ホルンの斉奏がタイト、いよいよクライマックス。 オケの集中力が一層高まります。 華々しいファンファーレによく締まったティムパニ。 力を蓄えたオケの響きが聴き応えあります。 もちろんここでも疾走することなく、じっくりと音楽を進めてゆく感じ。 ホルンが起立して吹奏。 音楽を肥大させることなく力を込めた演奏が心地いいですね。 ぐいぐいと終結までこれを持続し、最後、船曳さんが両手をぐいっと下に降ろして全曲を締めました。 絶妙のタイミングでブラボー、大きな拍手に包まれました。

繰り返しになりますが、オケとしての一体感と、朴訥さや誠実さが両立している演奏って、そんなにあるように思えません。 素晴らしい演奏で今年を締めくくることができました。 皆さんお疲れさまでした。 良いお年をお迎えください。