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神戸市民交響楽団 第57回定期演奏会

義理と人情のオーケストラらしい誠実な演奏戻る


神戸市民交響楽団 第57回定期演奏会
2006年1月29日(日) 14:00  神戸文化ホール・大ホール

ドビュッシー: 小組曲(管弦楽編曲版:ビュッセル編曲)
ファリャ: バレエ組曲「三角帽子」
ドヴォルザーク: チェロ協奏曲ロ短調op.104

アンコール:失念(チェロ独奏曲)
アンコール:ドヴォルザーク: スラヴ舞曲第1番

独奏:河野文昭(vc)

指揮:大河内雅彦


いつもながら超満員の客席で、誠実な演奏を楽しませていただきました。
個人的には一番最初に演ったドビュッシーが新鮮でよかったですね。 日頃フランス音楽を聴かないこともあるのですけど、人数を絞り込んだオケで明るく軽やかでいて、漂うような演奏に魅了されました。
続く三角帽子、一転して弦楽器が 14-16-11-14-8 となった大編成オケでの演奏でしたけど、派手さを抑えた好演でしたね。 大河内さんの指揮によく付いていったなぁという感想もあります。 真摯なオケに拍手。
そしてメインのドヴォルザークのチェロ協奏曲、こちらも大編成のオケを従えての河野文昭さんの真摯なチェロの演奏。 オケはここでも誠実なバックを勤めていました。 
ただ、2,000名も入る大ホールでの演奏ですから、音量は充分にありましたけど、ちょっと平板な感じに聴こえたようにも感じたりもして、1階席の前の方の席だと印象はもっと変ったでしょうねぇ。 残念なことをしました。 それでもオケとぴったりと息の合った演奏を充分に楽しみました。
いずれにしても、今回は大河内雅彦さんの指揮のもと、どの曲もとてもよく纏まった演奏でしたね。 義理と人情のオーケストラ、KCOらしい誠実な演奏に、会場内は終始暖かい雰囲気に包まれ、とてもいい演奏会でした。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

前夜、前々夜と2日連続でコタツでうたた寝。 幸いにも風邪をひくことはありませんでしたけど、身体の節々が痛くてたまりません。 神戸までちょっとした遠足気分なのですけどね、良いコンディションじゃないのが残念です。 12時前に自宅を出発しました。

JR大阪駅で新快速に乗り換えて神戸駅へ。 先行電車の遅れとかで、電車が5〜6分遅れて運行されていましたけど、13時半に神戸到着です。 ここから湊川神社横の緩やかな坂を登るいつものコース。 文化ホールが見えてきました。 長蛇の列はちょうど無くなった頃でしょうね。 それでもまだムンムンするような熱気が残るホール入り口でした。

ホールに入ると、いつもどおり2階席へ。 中央通路の後ろ側の足元の広い席はほぼ満杯なんで、1列後方の 3列31番 に座りました。 最後方から3列目なんですが、次第にこのあたりにもお客さんが続々と入ってきて、結局、満員。 2,000名のホールを満員にするなんて(前回は入りきらずに帰ってもらったそうですが)すごい動員力あるオケです。 しかも、お客さんは皆さん本当に楽しみにやってこられてて、それがまた素晴らしく、じつにアットホームな雰囲気がホール内に漂っています。 そんな客席でパンフレットを読みながら開演を待ちました。

定刻、いつも解説をしてくださるお兄さんが最初に登場。 メンバーはそれに続いて席に着いてゆきます。 ドビュッシーは、若い頃はとても我侭な奴だったというお話しでしたが、このお兄さんの解説、話す内容が判りやすいのは勿論のこと、堅苦しくない言い回し、発音、しゃべる速度も適切だし、本当に聞き取りやすくていい感じです。 でも結構緊張もされていたのでしょうね、スピーチを終えてご自分のヴァイオリンの席に座ると、汗をぬぐっておられました。 本当にご苦労さまです。

オーケストラは、弦楽器の編成を絞って 10-10-8-6-4 の通常配置。 コンマスによるチューニングを終えたあと、黒い詰襟を着た大河内さんが出て来られて始まります。

ドビュッシーの小組曲(管弦楽編曲版:ビュッセル編曲)、個人的には今回の演奏会の中では、この曲がとても新鮮な感じがし、気に入りました。 日頃フランス音楽を聴かないこともあるのですけれど、人数を絞り込んだオケから明るく軽やかな響きが、まるで漂うように次々に流れ出てきて、汲めども尽きない感じ。 そんな演奏に魅了されました。

第1曲「小舟にて」、指揮棒を持たない大河内さん、左右にゆらゆら揺れるように曲を始めますと、まずフルートの落ち着いた音色に魅了されました。 ハープもしっとりとした響きで寄り添ってきて、素晴らしいですね。 弦楽アンサンブルもチャーミング、明るく爽やかな合奏がとても心地良い演奏でした。 オーボエがそっと囁くように吹いて終わりました。

第2曲「行列」、軽やかに弾んだ開始。 柔らかな管楽器、トランペットも軽やかに吹いて盛り上がって、軽いのだけれど、しっかりとした弾力を感じます。 中低弦の響きも柔らかい肌触りなんですけどね、芯があって聴き応えあります。 最後はトランペットとティムパニで明るいピークを形成したあと、大河内さんが手を左右に広げて響きを拡散させて終了。

第3曲「メヌエット」、オーボエとコールアングレ、それにクラリネットが優しく絡んだメヌエットの開始です。 高音弦がそっと分け入るのが絶妙。 ヴィオラが哀愁を感じさせる音色だなと思っていたら、ファゴットがさらに磨きをかけた響きで語りかけたのにも魅了されました。 そして管と弦がチャーミングに絡み合うお洒落なメヌエットです。 それにしても各ソロ奏者の方々、いずれも気品ある響きで巧い。 もううっとりしっぱなしでした。

第4曲「バレエ」、よく締まった弦の響き、躍動感のある開始。 軽やかなパーカッションがキレ良く響きますけど、オケの響きの質によくマッチしています。 明るく、楽しく、そして伸びやかな演奏を堪能。 最後は、更にオケに勢いをつけてゴールに駆け込んだ、そんな感じの終了でした。

演奏終了後、お兄さんが慌てて出てこられて、ファリャに関するスピーチの間にオケメンバーが増強されます。 弦楽器が 14-16-11-14-8 という大編成になりました。 そして、スピーチの最後。 ファリャの曲は途中でリズムが変わるというオケにとって大変なものなのだけれど、練習を重ねたのでなんとか克服できた、かな? と演奏への期待を持たせて終わりました。

そのファリャの三角帽子、第1組曲より3曲、第2組曲より3曲の合計6曲でしたが、いずれも派手さを抑えた好演でした。 大河内さんの指揮、ぐんぐん引っ張るかと思うと、スナップをぐぃっと効かせるようにアクセントをつけたりして、常に高い集中力が求められていたようです。 オケがそれによく付いていったなぁという感想もあります。 とにかく、真摯なオケの演奏に大きな拍手を贈りました。

第1組曲「序奏」、ティムパニのちょっと重量感を感じさせた響きに、トランペットが朗々と吹き、よく纏まっていながらも威勢のいい開始でした。

「粉屋の女房の踊り」、拡大されたオケの迫力でしょうね厚みのある響きに身を乗り出しました。 大河内さん、フレーズをぐぃっと引っ張り上げるようにしたり、最後ぐるっと回したり。 オケもそれによく付いていました。 抑え気味のオーボエ、パーカッションも落ち着いた響きでした。

「代官」、冒頭のファゴットが素晴らしかった。 ヨタヨタと太った代官を見事に活写してました。 そしてフラメンコは軽快に決めつつも、よく締まった低弦、ぐいぐい進めても力強さがあります。 大河内さん、最後は歌わせながらもぐいぐいとスピードを上げます。 オケが必死に付いてきた・・・と思ったら、スパっと断ち切るように終わりました。

第2組曲「隣人達の踊り」、伸びやかな開始。 チェロが気迫の篭ったアンサンブルですけど、管楽器は軽やかにソロを歌い繋ぎます。 ホルンがタイトに響いたあとは、管と弦が交互にメロディを歌い、伸びやかなクラリネットにフルートが寄り添うように閉じました。 きちっと纏まっているって感じですね。

「粉屋の踊り」、大河内さんが広げた手を身体の中央に引き寄せてタイトな響きによる開始。 ホルン、コールアングレなど、ソロを見事に決めると、今度は弦楽器が力強く入ります。 大河内さんが、手綱を絞るようにしてオケをドライヴ。 だんだんと響きに力を増し、最後は弾けるように終わり。 集中力の高い演奏でした。

「終幕の踊り」、コントラバスの力強い響きが聞こえます。 お馴染みになったメロディを力強く、弓を強く押し当て、大きな音で、引き絞るようにして演奏。 煌びやかな金管楽器の響きがかぶさってカラフルでもあります。 でもトランペットのミュートの付け替えが大変ですよね。 大太鼓が要所をバシッと決めますけど、いずれもとても整った演奏。 じつに整然と曲が進んでゆきます。 ドラが入いると、より力を増し、あとはストレートに盛り上げて全曲を締めました。

実によく整った演奏でした。 かえってもうちょっと演奏に自由度があったらな、な〜んて贅沢なことを思ってしまうほどの見事な演奏でしたね。

15分間の休憩。 1階席の前の方に若干の空席があったようですが、お兄さんのアナウンスによりそこも埋まったようです。 次のドヴォルザークのチェロ協奏曲は、1階席の隅でいいから前のほうがいいかな〜 なんて思っていたのですけどね。

定刻、お兄さんが出てこられて、チェロ協奏曲はハイドンのを演奏して以来15年ぶりだとか。 また河野さんにとってこの曲は? と問われたところ、昔は乗り越えるべき壁のような存在だったが、今は(ヨセフィーナへの)思い出と優しさを考えながら弾いておられるとのこと。 そのような話をされているうちにメンバーが揃いました。 14-16-11-14-8 の編成。 先ほどまでのコンマスから代ってコンサートミストレスがチューニングをし終えると、指揮者の大河内さんと同じく黒い詰襟姿で河野さんが登場です。 いよいよ始まります。

大編成のオケを従えての河野文昭さんの真摯なチェロの演奏。 オケはここでも誠実なバックを勤めていました。 ただし 2,000名も入る大ホールでの演奏ですから、音量は充分にありましたけど、ちょっと平板な感じに聴こえたようにも感じたりもして、1階席の前の方の席だと印象はもっと変ったでしょうねぇ。 残念なことをしました。 それでもオケとぴったりと息の合った演奏を充分に楽しみました。

第1楽章、クラリネットと中低弦のしっとりとする開始。 徐々に盛り上がってゆき大きな音楽に。 大編成のオケのまろやかな響きで包まれます。 ゆったりと進め、ホルンが柔らかく吹いて、しみじみと木管が引き継いだあと、河野さんの独奏がくすんだ音色で登場。 朗々と演奏してぐいぐいと発展させてゆきます。 そして第2主題、懐かしさを称えた独奏に聞き惚れました。 やや端正に響きを纏めて展開部へとなだれこんでゆきますが、ホールが大きいのに音量もたっぷりでオケに負けていません。 このあとオケはトランペットをハイライトにしてストレートに盛り上がりました。 やや平板な感じにも思えるのは大きなホールで、大編成のオケですものね。 仕方ないところです。
このあとオケの渋い管楽器のソロが絡み、ゆったりと音楽を楽しみます。 しかしオケは本当にきちっと演奏していますねぇ。 エンディングは堂々としたもので、気合も入ってましたので、締めくくられたあと客席より拍手がパラパラっと起きたのも頷けました。

第2楽章、始まる前に河野さんが楽器の調整をして準備OK。 木管のしみじみとした響きが柔らかく溶けてゆくよう。 素晴らしいなぁと思っていると、河野さんの独奏が入ってきますと、ゆったりとした演奏に、もう耽溺するような感じで聞き惚れました。 河野さん、終始大河内さんを見ながら、オケと寄り添っています。 オケが押すとそっとソロが退き、ソロが押すとオケが退いて、実によく纏まった演奏。 ただ、ちょっとこの楽章は表現を大切にされたのでしょうね、少々ソロの音量が2階席後方ではちょっと小さく感じたのは仕方ないところでしょう(前に行けばよかったなぁ、と少々反省)。 カデンツァ風の主題変奏など、ここは音量も充分でしたし、しみじみとした感じだったのですけど、目の前で聴いていたらまったく印象が異なっていたかもしれませんね。 でも、ここでもフルートがとても素晴らしく絡んできました。 しっとりしたフルートに、艶やかなチェロ、うっとりとさせられながら、柔らかく、そっとそっとそっ〜と終わりました。 深いチェロの音色が素敵でした。

第3楽章、アタッカで中低弦がズンズンと規則正しいリズムを奏でた開始。 オケのタイトな強奏でぐっと会場内を惹きつけ、独奏も力強く入ってきました。 ただこの最後のフレーズ、ちょっとつっかえ気味に聴こえましたけど、オケが力を増している間にチューニングをして修正完了。 伸びやかで艶やかな響きになりました。 河野さん、身体を左右に揺すって技巧的なパッセージを存分に歌わせながら進めてゆきます。 
オケもまた奮闘、タイトに盛り上げたかと思うと、しっとりさせた木管のソロが絡んできます。 そして独奏ヴァイオリンが濡れたような響きで二重奏。 そして、ぐっと引き締まった端正な音楽でぐぃぐぃっと進めてピークを形成したあと、静かにヨセフィーナの死を悼む静かな祈りの音楽。 こちらは濡れた響きの独奏で魅了されました。 そしてそのチェロの響きが伸びやかになるとともにオケも力強いコーダを形成。 ぐっと盛り上った最後の音は、すっと潮が退くような感じでふわっと着地し、全曲を閉じました。

大河内雅彦さんの指揮のもと、どの曲もとてもよく纏まった演奏でした。 義理と人情のオーケストラ、KCOらしい誠実な演奏に、会場内は終始暖かい雰囲気に包まれていました。 とてもよく纏まっていたし、いい演奏会でした。 次回はマーラーの交響曲第5番ですか。 きっとまた超満員でしょうね。 楽しみです。