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紫苑交響楽団 第8回定期演奏会

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紫苑交響楽団 第8回定期演奏会
2006年2月26日(日) 14:00  京都府長岡京記念文化会館

モーツァルト: 歌劇「魔笛」序曲
ドヴォルザーク: チェロ協奏曲ロ短調op.104

(アンコール)J.S.バッハ: 無伴奏チェロ組曲第3番第5曲「ブーレ」

シューマン: 交響曲第4番ニ短調

(アンコール)ドヴォルザーク: スラヴ舞曲集第2集より第2番

独奏: 加藤文枝(vc)

指揮: 川嶋雄介


気鋭の指揮者と気鋭のオケによる素晴らしい演奏会でした。
個人的に大好きなシューマンの交響曲第4番、この素晴らしい演奏に痺れました。
シューマンらしい響きの重ね方、荘重さ、重厚さとはちょっと違う、もやもやっとした感じが終始よく出ていましたね。 決してユルい演奏ではありません。 弦楽アンサンブルは緻密です。 各パートの分奏がとてもしっかりしていて、特に後半楽章ではコントラバスが芯になっていたのが印象的でした。
管楽器では、ホルンの斉奏が常にタイトでカッコ良かった。 またトロンボーンは響きを割りそうな手前まで力強く吹いて迫力ありました。 もちろん木管楽器のチャーミングな呼応も素敵、打楽器は的確でキメ所でのインパクトが見事。 とても集中力の高い演奏で、シューマンらしい清新さ、理知的な響きを持った演奏に大感激しました。
中プロのドヴォルザークのチェロ協奏曲は、端正に纏めた演奏には清涼感がありました。
東京芸大1年在学中の加藤文枝さんによる独奏。 プログラムによると加藤さんにとって今回が記念すべき初演とのこと。 オケもすっきりと纏めた演奏だったこともありましたけど、道理で清々しい感じのした演奏だったわけですね。 個人的には、もっと踏み込んで欲しいとか、歌わせて欲しいなんて思う場面もありましたけれど、技巧的なパッセージも安定したテクニックで難なく弾きこなしたあたり、将来が嘱望される逸材ですね。 ルックスも可愛らしいし、これからが大いに楽しみです。
そして冒頭のモーツァルトの「魔笛」序曲。 小気味よさ、キレ味のよい演奏に惹かれました。 シューマンと同様、この演奏も分奏がしっかりとしていて、そして何より、この演奏会がいい演奏会になることを予感させるのに十分。 わくわく感を漂せて、まさしく序曲としてふさわしい演奏でした。

ところでこのオケ、高音弦奏者の激減による転換期にきているようです。 でもこれらの素晴らしい演奏に、更なる飛躍をして欲しいと、熱い拍手を贈らせてもらいました。 末永く活動を続けて欲しいと願っています。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

前日の天気予報どおり朝は大雨。 しかも降り始めた時間がちょっと遅くなったみたい・・・
こんな日に演奏会をするオケにとっては何とも可哀想な天気です。 自分としては、そんな雨などものともせず、紫苑交響楽団の演奏会に出掛ける気まんまん・・・なのですけど、前夜ちょっと体調不良に陥ってしまったために、家族より「行くのやめたら」な〜んていう雑音も。 まったく心配はないのですけどね、結局奥さんが付いて来ることになりました(長男が逃げたため)。 そんなこともあってちょっと早めに家を出ました。

まず梅田で通勤定期を更新(6ヶ月定期でなんと144,800円。 これがあるからフットワーク良く京都や神戸まで演奏会通いが出来るのですね)。 梅田の地下街はどこも混んでいたので、12:50発の阪急電車の特急で長岡天神に移動、駅前で昼食をとってからホールに向かいます。 面白そうな街やね、と初めて長岡京にやって来た奥さんの弁(なお帰りには、西友で長男の小学校の卒業式に着るジャケット・ズボン・靴など一式購入できて大喜びでした)。

開演15分前にホールに到着。 受付を済ますと、いつも階段を駆け上るのですが、奥さん連れなんで珍しく1階ロビーより入ります。 でも、ぐるっと見渡して、結局ホール中の階段を昇って後ろから5列目を確保しました(いつもと同じあたり)。 チェロ協奏曲なんで、前がいいかな・・・って思いましたけど(奥さんは前に行きたがってましたけど)、バランスを考えて、なんて訳知り顔で言って落ち着きました。

開演のちょっと前より自由入場でメンバーの方が逐次着席し始めます。 オケの弦楽器は対抗配置、11-10-9-8-5 の編成だったかな。 コンマスが登場し、チューニングを実施して準備完了。 背筋をピンと伸ばした川嶋さんが颯爽と登場しました。 まだ若い指揮者ですね。 いよいよ始まります。

モーツァルトの「魔笛」序曲。 小気味よさ、キレ味のよい演奏に惹かれました。 オケの分奏がしっかりとしてて、気持ちがスッキリするような感じ。 途中のファンファーレも響きがうまくブレンドされて心地良かったですよ。 この演奏会がいい演奏会になることを予感させるのに十分。 わくわく感を漂せて、まさしく序曲としてふさわしい演奏でした。

柔らかいけどよく締まった響きによる開始。 丁寧に曲を進めてゆきます。 弦アンサンブルの分奏がよく、快活で、キザミが小気味良いですね。 フルートが柔らかく、オーボエもチャーミングに吹いて素敵でした。 モーツァルトにしてはちょっと気合が入り気味かなと思いましたけど、スッキリとさせる演奏ですね。
ファンファーレ、明るく荘重に響かせて素晴らしい演奏。 ただこのあと弦に少々不安定な感じに思えた場面もあったかもしれませんが、しだいに熱気を増して、ワクワクしてきました。 そして堂々とした終結。 聴いたあと、とても気持ちがよくなる演奏に拍手を贈りました。

いったん全員が退場。 舞台を暗転させて、独奏者用のヒナ壇とイスを設置します。 全員が揃うと、淡いピンクのドレスを着た加藤文枝さんと指揮者の川嶋雄介さんが登場。 東京芸大1年在学中の加藤文枝さん、少々緊張の面持ちで入念にエンドピンを調整して準備完了です。

ドヴォルザークのチェロ協奏曲、端正に纏めた演奏には清涼感がありました。 プログラムによると加藤さんにとって今回が記念すべき初演とのこと。 オケもすっきりと纏めた演奏だったこともありましたけど、道理で清々しい感じのした演奏だったわけですね。 個人的には、もっと踏み込んで欲しいとか、歌わせて欲しいなんて思う場面もありましたけれど、技巧的なパッセージも安定したテクニックで難なく弾きこなしたあたり、将来が嘱望される逸材ですね。 ルックスも可愛らしいし、これからが大いに楽しみです。

第1楽章、情熱的に始まりました。 フルートや弦の艶やかな響きは前曲と同じ。 堂々と盛り上がり、トロンボーンの響きもよく聞こえた気迫のこもった演奏です。 これを静めてホルン・ソロ、柔らかく甘い響きで慎重に乗り切ると、クラリネット、オーボエも素敵に響かせ、そして次第に盛り上げて期待を膨らませます。
独奏、柔らかで叙情的な響きで入ってきました。 まだ若いのにぐいぐいと押すって感じではなく、しっとりと表現しようという感じかな。 オケも丁寧に伴奏を付けてソロにあわせながら、端正に曲を進めてゆきます。
オケだけになると、川島さんのキレの良い指揮でぐっと盛り上げて場面を繋ぎ、加藤さんのソロへ。 しっとりと優しく歌わせたチェロに、オケのフルートがもの悲しい響きで付けてしみじみとさせられます。 次第に音量を増し、チェロの技巧的なパッセージを難なくこなしてクライマックス。 トランペットが輝かしく響きます。 これをチェロが優しく受けて歌います。 このあたり、もうちょっと踏み込んで、少々演歌っぽくクサくなるほど歌わせて欲しかったのですけどねぇ、まだまだ若いので無理な注文でしょう(無視してください)。 そして最後はオケが勇壮に纏め上げました。 気合入ってました(思わず拍手したくなるほど)。

第2楽章、しっとりとした木管アンサンブルによる開始。 柔らかく優しい表情をもった独奏チェロと木管が絡みます。 木管の響きがちょっと大きく聴こえたのは、雨で楽器の鳴りがイマイチだったからかな。 川島さん、丁寧な指揮でオケを大きく動かして盛り上げます。 加藤さんのソロがそれに端正に絡みます。 若い指揮者・オケと若いソリストが、曲に立ち向かっている、そんな感じかな。 
しかし後半、ホルンの荘重な響きが素敵に響くと、低弦のピチカートを伴って加藤さんのソロがしみじみとホールに流れました。 フルートもそっと絡み、やわらかな音楽。 木管楽器とともにしっとりと。 いいですねぇ。 ソロ、オケともに丁寧に響かせてこの楽章をそっと閉じて次楽章に繋ぎます。

第3楽章、張りのある響きによるアタッカで気迫を感じさせた始まり。 チェロが柔らかく入ってきました。 オケが力を漲らせると、独奏は端正な感じで力を増します(身体を大きくゆすったりしません)。 速い技巧的なパッセージも難なくこなして曲を進めると、オケが更に力を増して畳みけるよう。 でも独奏は端正に弾きこなしてゆく感じですね。
オケがファンファーレをタイトに響かせてクライマックスを築き、それをさっと翻してトランペットが柔らかく吹きました。 コンサートマスターの清潔な響きと、柔らかなチェロの響きが柔らかく絡んでから、しっとりとした独奏へと結びつきます。 亡くなったヨセフィーナの死を悼む静かな祈りの音楽ですね。 しだいに響きに力を増し、オケも力強くコーダを形成。 ストレートに盛り上げて全曲を閉じました。

やっぱり初演で緊張されていたのでしょうね、演奏終了後には少女の笑顔が覗けました。 
アンコールは、何の曲でしょう(後述、バッハの「無伴奏チェロ組曲第3番 第5曲ブーレ」だったそうです)。 伸びやかさと深い響きが素敵でした。 とにかくこの協奏曲をこの若さでこれだけの演奏ができるなんて、これからが楽しみな逸材ですね。
なお第2楽章の冒頭より突然耳鳴りが大きくなって(最近いつも鳴ってますけど)少々慌てました。 結果的にそれで聞き漏らしている部分も多いかもしれません(すみません)。

20分間の休憩。 いつもは席でじっとしていることが大半ですけれど、奥さん連れなんでロビーに出てコーヒーをいただき、小休止。 外の雨はあがったようですけど、あいかわらずどんよりした天気ですね。 楽器の鳴りにも影響するよなぁ〜 なんて思ってみたりもしました。

定刻前より自由入場でメンバーが登場。 コンマスが交代し、入念なチューニングをして準備完了です。 いよいよお待ちかね。 好きなんですよね、この曲。 まったく話題にはなりませんが、今年はシューマン没後150年。 期待が膨らみます。

シューマンの交響曲第4番、じつに素晴らしい演奏に痺れました。 シューマンらしい響きの重ね方、荘重さ、重厚さとはちょっと違う、もやもやっとした感じが終始よく出ていましたね。 決してユルい演奏ではありません。 弦楽アンサンブルは緻密です。 各パートの分奏がとてもしっかりしていて、特に後半楽章ではコントラバスが芯になっていたのが印象的でした。
管楽器では、ホルンの斉奏が常にタイトでカッコ良かった。 またトロンボーンは響きを割りそうな手前まで力強く吹いて迫力ありました。 もちろん木管楽器のチャーミングな呼応も素敵、打楽器は的確でキメ所でのインパクトが見事。 とても集中力の高い演奏で、シューマンらしい清新さ、理知的な響きを持った演奏に大感激しました。

第1楽章、重厚な、でも引きずることのない序奏の開始。 ゆったりと進み、たっぷりとしていながらも洗練された響きが素晴らしい。 いい感じです。 徐々に明るさが射し込んで主部になると力が漲りました。 ティムパニ、インパクトある打音に惹きつけられました。 流れを絶やさずにオケが響きを重ねながら曲を進めて進めます。 弦と管の各パートともに、とてもしっかりとした響きです。 それらが渾然一体となって曲を形成している感じ。 そして何よりこれらがまたリズミカル、そして伸び縮みしながら進んでゆくのに感激。
スパッと止め、ホルンの充実した響きによる斉奏。 これもよかったですね。 メリハリをつけ、執拗に主題を繰り返します(この執拗さがまたシューマンらしいところ)。 重厚な響きの上で第1ヴァイオリンが軽やかに歌い、ホルンの締まった響きを挟みながらクライマックスへ。 ここではトロンボーンが力強く吹いてカッコ良かったですねぇ。 小気味良いリズムで決め、この楽章を閉じて第2楽章へ。

第2楽章、ふわっと抜いたような和音、柔らかく始まります。 これもいいですねぇ。 オーボエの物悲しい旋律、素敵に響きます。 そして他の木管もしっとりとサポート。 川島さん、第1ヴァイオリンの方を向いて歌わせます。 哀しくも美しい旋律ですね。 独奏ヴァイオリンが軽やかに歌い、オケに光が射しこむあたりも素敵でした。 後ろでホルンがまろやかに吹いているので厚みも感じます。 そしてまた冒頭のオーボエによる物悲しい旋律。 ここではしっとりとしたピチカートもよかったですね。 そっと曲を締めて、第3楽章へ。

第3楽章、弾力のある良く締まった響きでリズミカルに進めます。 コントラバスがちょっと遅れたように響きを残すのですけど、これがよく揃っててカッコ良かったなぁ。 重々しくならないけど力を感じます。 高音弦も爽やかなんですけどね、コントラバスの響きに魅せられました。 中間部のトリオ、柔らかな旋律になっても、やはりコントラバスが響きの芯になって素晴らしい。 オケ全体としても、柔らかく肌触りの良い響きで歌ったあと、また旋律が戻り弾力のある音楽になります。 リズミカルです。 思わず頭でリズムをとりながら聴いてました。 そしてまたトリオが再現され、肌触りのよい音楽。 ここでの川島さん、柔らかく振っても常にリズミカルな感じを失わずに曲を積極的に進めながら第4楽章へ。

第4楽章、徐々に響きを増します。 透明感あるヴァイオリン、荘重なトロンボーン、ホルンなど、オケの響きが集まってきて、壮麗さも感じる大きな音楽とした素晴らしい序奏部でした。 その溜まった力を集約し、リズミカルな主部に突入します。 素晴らしい。 聞き惚れてしまいました。
ここでもコントラバスが芯になって曲を支えてます。 そして、あまり目立ちませんけど、第2ヴァイオリンやヴィオラも響きをきちんと重ね、集中力の高く、オケ全体が盛り上がってゆきます。 ほんと何度も書きますが、素晴らしい演奏ですね。
スピードを徐々に上げてゆき、主題を戻すあたりもカッコ良かったなぁ。 緻密なんですけどね、覇気があります。 リズム感が良いからでしょうか、またフーガってこともありますけど、聴いているとわくわくしてくるのです。 ホルン、ここでもまたカッコ良い響きで決めてました。 ティムパニもここぞというところでインパクトを感じさせる打音。 いいですね。 演奏されている皆さんにも気合入ってきて、ノリノリって感じかな。 川島さん、でもこれをスパっと止め、最後の力を振り絞って(でも軽やかさを失わないで)また全員一丸。 フィナーレは物凄いスピードで進めてから最後の4つの和音を力強く締めくくり、全曲を閉じました。

気鋭の新進指揮者と気鋭のオケによる素晴らしい演奏に感激しっぱなしでした。
聴く前には、好きな曲だけに少々ハードルも高くなりがちだけどな・・・なんて思っていたのですが、全く関係ありませんでした。 今年はまだ始まったばかりですけど、今年度の記憶に残る演奏になることは間違いないと思います。 ほんと良かった。

なおこのオケ、高音弦奏者の激減による転換期にきているようです。 でもこれらいずれも素晴らしい演奏に、更なる飛躍をして欲しいと願いつつ、熱い拍手を贈らせてもらいました。
末永く活動を続けて欲しいと願います。

最後に、この素晴らしいシューマンの交響曲第4番に接したことにより、めったにアンケートに聴きたい曲などは書かないのですけど、同じコンビで交響曲第2番を、と書きました。
気迫のこもったシューマンの交響曲第2番。 この曲も大好きなんです。 没後150年、どこかで採り上げてくれないかな〜