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天理シティーオーケストラ 第6回定期演奏会

溌剌とした演奏戻る


天理シティーオーケストラ 第6回定期演奏会
2006年4月2日(日) 14:00  やまと郡山城ホール・大ホール

サン=サーンス: 歌劇「サムソンとデリラ」より「バッカナール」
ビゼー: 交響曲ハ長調
ビゼー: 「カルメン」組曲より
      「闘牛士」「アルカラの竜騎兵」「間奏曲」「アラゴネーズ」
ラヴェル: 「ダフニスとクロエ」第2組曲
ラヴェル: ボレロ

(アンコール)オッフェンバック: 喜歌劇「天国と地獄」序曲
(アンコール)ヨハン・シュトラウス: ラデツキー行進曲

指揮: 安野英之


今回はフランス音楽プログラム。 しかも副題が「フランス音楽の情熱と愛」。 そのとおり冷静な演奏ながらもとても熱い演奏会でした。
外は生憎の雨でしたけど、そんな湿っぽさなどどこ吹く風、そんな感じの生き生きとした演奏の数々を楽しみました。
まずは冒頭の「バッカナール」からエキゾティックな響きが全開。 しかも落ち着いた音色で統一されたオケの響きが素晴らしいですね。 しかも最後はぐいぐいと盛り上げていったのをスパっと止め、残響がホールに残った見事な演奏でした。
続くビゼーの交響曲、これも軽やかさと明るさを前面に出しながらも、決して勢い込まず、丁寧な曲の運びが印象的な演奏でした。 低弦の響きが常に心地よく響いてきたのが何よりよかったですね。 第1楽章のホルンのソロも見事でした(某オケでは派手にコケて、しかも2回、ハラハラしてましたけど難なくクリアしました)
休憩を挟んでの「カルメン」組曲、お馴染みの曲ですが、機動力のある締まったオケの響きに各ソロの妙技もあって、わくわくさせられました。 軽く考えがちな曲ですけど、しっかりとした演奏は聴き応え充分。 大いに楽しめました。
ラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲、これまでとは一転して漂うような表現による演奏で開始。 冒頭のクールな響きは現代音楽のようでもありました。 フルートのソロが凛としていて素敵でしたし、栄嶋さんのソロもしっとりとしていたのが印象的。 そして最後は急速に盛り上げ、タイトな響きを交錯させてのクライマックスは迫力ありました。
最後のボレロは、各ソロ奏者の方の思いが伝わってくるような素晴らしい演奏でした。 確かに微妙な感じで、おやっと思う場面もありましたけど、奏者の演奏にかける思いが勝っているのでしょうね、曲がまったく動じないところが素晴らしいですね。 そして良く纏まったアンサンブルが徐々に熱くなりますけれど、決して勢いに任せたりせず、堂々としたフィナーレを形成。 聴いているこちらの方が熱くなりました。 素晴らしい演奏に大きな拍手を贈りました。
とにかく巧いオケですね。 満たされた気持ちで会場を後にしたのですが、そのとき雨がまだ降っていることに気付くほど、雨のことなどすっかり忘れてしまうほどの熱い演奏会でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

朝から生憎の雨模様。 出かける頃にはちょっと小降りになっていたので、お城まつりが開催されいる大和郡山城もちょっとだけ探索しました。 ホールには何度も足を運んでいますけど、お城は初めてです。 雨で人が少なかったのですが、かえって落ち着いた雰囲気が楽しめたように思います。 大和郡山を称える演歌もスピーカより流れてきましたが、それさえも微笑ましく感じることができるような感じのところでした。 開演時間が迫ってきたのでお城を後にしましたけれど、今度またゆっくりと探索してみたいと思いました。

さて開演20分くらい前にホールに到着。 さっそく2階席への階段を昇り、ぐるっと見回して最前列AA-14を確保しました。 1階席はほぼ満席ですけど、2階席はまだ余裕がありました。 プログラムを読みつつ開演を待っていると、15分位前よりオケの方が自由入場。 練習を始めます。 そして開演を告げるアナウンスが放送される頃には練習の音がかなり大きくなっていて、放送の声もかすみがちでした。 なおオケの弦楽器は 9-8-6-6-5 で通常配置となっていました。 

定刻、にこやかな笑顔とともにコンマスの栄島さんがヴァイオリンを右で掲げながら登場します。 いつもながら気持ちの良くなる笑顔ですね。 そういえば栄島さん、先日の奈良フィルの演奏会にも4プルト目あたりにいらっしゃいました。 それはさておき、入念なチューニングのあと、落ち着いた笑みをたたえながら安野さんが登場し、いよいよ始まります。

サン=サーンスの「バッカナール」、冒頭からエキゾティックな響きが全開でした。 しかも落ち着いた音色で統一されたオケの響き。 素晴らしいですね。 しかも最後はぐいぐいと盛り上げていったのをスパっと止め、残響がホールに残った見事な演奏でした。

冒頭の弾けるピチカートから落ち着いた響き、オーボエのエキゾティックな響きに魅了されました。 これに続くホルン、フルートなども落ち着いた音色で見事に統一されています。 安野さん、落ち着いて曲を丁寧に進めてゆき、カスタネットが入ってからは徐々に盛り上げてゆきますけれど、良く纏まった演奏で勢い込んだりしません。 弦の数は少ないのですが、低弦がしっかりしているからでしょうね、躍動感を失わず、落ち着いた響きで満たされています。 月並みな表現ながら巧い演奏です。 そして最後はぐいぐいと盛り上げ、良く締まった筋肉質の響きが機動力を持って頂点を形成。 これをスパっと切り落としました。 残響がホールに残ったキレの良い見事な演奏でした。

パーカッションや管楽器のメンバーの何人かが抜け、オーケストラが絞り込まれた感じになってビゼーの交響曲。 こちらも軽やかさと明るさを前面に出しながらも勢い込まず、丁寧な曲の運びが印象的な演奏でした。 低弦の響きが常に心地よく響いてきたのが何よりよかったですね。 第1楽章のホルンのソロも見事でした(プロの奈良フィルの定期では派手にコケてしまい、しかも2回も、もうハラハラしてましたけどここでは難なくクリアしました)。 

第1楽章、集中力が高く、ちょっと深みのある響きで始まりました。 低弦が心地よく響いてきます。 明るい管楽器の響きに、チャーミングなヴァイオリン。 楽しい感じがよく出ていますね。 オーボエのソロ、軽やかに響きますが顔を真っ赤にしての熱演、フルートも綺麗に絡んでよかったですねぇ。 そして心地よく盛り上がってゆきます。 ホルンのソロも明るい響きで見事に決まりました。 快活でホント心地よい音楽を味わいました。 最後は弾むようにして纏めました。

第2楽章、静かな管楽器の旋律で幕をあけ、オーボエが艶のあるソロを聴かせます。 ピチカートも密やかですし、他の木管もしっとり裏で支えて素適。 この旋律がヴァイオリンに移り、息の長い旋律となって、しみじみとした感じもよかったですよ。 低弦の響きが締まっているにしっとりとしていますものね。 聴き応えありました。 オーボエに響きが戻ってまた魅了されたあと、最後は静かに跳ねるようにして幕。

第3楽章、軽快な響きで始まり、盛り上がってゆきます。 リズム感のよい低弦がここでも芯になっていましたね。 爽やかな高音弦が歌うのが、低弦に乗って生きています。 そうそう、ここではヴィオラの響きも活き活きとしてました。 ビゼーらしい牧歌的な感じを覚えました。 軽やかな木管を挟みながら徐々に力を増し、最後はスパっと切り落としておしまい。

第4楽章、フォルテの和音の一撃ととも快走。 何度も書きますが、低弦の響きが芯になっていていいですね。 ピチカートも纏まって聞こえます。 ヴァイオリンが軽やかに旋律を歌わせますけど、誠実な感じ。 金管も軽やかで、オケがとにかくよく纏まっています。 安野さん、各奏者に指示を出しながら楽しそうですねぇ。 ここも丁寧に曲を進めていったあと、指揮棒を軽く挙げて、軽やかに弾むようしたエンディングとして全曲を閉じました。
もうちょっとハジケてもいいかなぁ、なんて生意気にも思ったりもしましたけど、誠実で楽しい演奏でした。

15分間の休憩。 席でじっと開演を待ちます。 やはり定刻前よりオケの方が自由入場して練習を始めていました。 定刻、照明が落ちると、既に席についていた栄島さんが立ち上がってチューニングを開始。 準備が整って安野さんが出てこられますが、パーカッションのメンバーが立ち上がりました。 安野さんが客席にむかって礼を終わるやいなや曲が始まります。

「カルメン」組曲、お馴染みの曲ですが、機動力のある締まったオケの響きに各ソロの妙技もあって、わくわくさせられました。 軽く考えがちな曲ですけど、しっかりとした演奏は聴き応え充分。 大いに楽しめました。

「闘牛士」(第1幕への前奏曲)、威勢の良い開始は迫力も満点。 輝かしいトランペットの響き、トロンボーンもブカブカやってうきうきしてきます。 ぐいぐいと引っ張っていったあと、弦楽アンサンブルもまた良く纏まって曲を進めます。 ここはちょっとテンポを落としていたかしら。 そしてまた威勢良くテンポをあげて駆け込みました。

「アルカラの竜騎兵」(第2幕への前奏曲)、ファゴットの太い響きとタイコの重い響きで開始。 これに爽やかな弦アンサンブル、美しい響きのフルートと続きます。 そしてクラリネットの後ろでファゴットがきちんと付けて柔らかな響き。 すっと力を抜いたような終わりかたといい、見事ですねぇ。

「間奏曲」(第3幕への前奏曲)、ハープの深い響きにフルートのソロが凛として綺麗です。 クラリネットの柔らかな響きも入ってしっとりと。 コールアングレの落ち着いた響き(各ソロの方、巧いですねぇ)、弦のアンサンブルも静かに進めていったあと、やわらかなピチカートので幕。

「アラゴネーズ」(第4幕への前奏曲)、よく締まった響きによる開始。 情熱的なチェロのピチカート、そしてオーボエのソロがエキゾティックに響きます。 活き活きとしたリズムですが、抑制を効かせたパーカッション。 耳に馴染みの音楽ですけど、改めて聞き入ってしまいました。 ふわっとした着地で曲を締めましたけれど、ホール内の皆さんも聞き入っていたのでしょうね、しばし静寂の時間が流れてから盛大な拍手となりました。 素晴らしい演奏でした。

管楽器のメンバーが大勢出てきて準備完了。 ラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲なのですけど、実をいえばちょっと苦手な曲でもあります(基本的にフランス音楽は苦手なんですね)。
この演奏、これまでとは一転して漂うような表現による演奏で開始。 冒頭のクールな響きは現代音楽のようでもありました。 フルートのソロが凛としていて素敵でしたし、栄嶋さんのソロもしっとりとしていたのが印象的。 そして最後は急速に盛り上げ、タイトな響きを交錯させてのクライマックスは迫力ありました。

「夜明け」、安野さんがふわっと振ると、どこか現代音楽のような茫洋とした響きがホールに流れます。 しだいに旋律の形が見えてきたかと思うと、また漂うような感じに。 しっとりとしたヴァイオリンの響きが徐々に力を増し、管楽器やハープがキラキラした感じで盛り上げてあたりは情熱的な響きで盛り上げました。 フルートやクラリネットが鳥の声を模し、弦のアンサンブルがふわふわっとした感じで進めて見事でした。

「無言劇」、落ち着いた低弦のピチカート、高音弦のトレモロを背景にしてフルートが牧神の葦笛のように軽やかに吹きます。 この凛とした響きがとても素適。 そして栄島さんのソロもしっとりして、ゆったりとした時間が過ぎてゆきました。

「全員の踊り」、軽快に進みます、スネアが5拍子を刻んでいるのですね。 タイトに盛り上がってゆき、演奏のキレの良さがここでは印象的。 オケの響きがうねるように盛り上がります。 低弦の響きを芯によく締まったオケ。 大太鼓やシンバルも入って、最後はタイトな掛け合いを行って、バシッと締めると、残響がホールに残った迫力ある熱い演奏で纏めました。

管楽器のメンバーがシフトし、パーカッションのメンバーも追加されました。 ボレロの主役であるスネアはステージ中央。 奏者の方(女性)はやや緊張の面持ちながら落ち着いていらっしゃるようでした。 そのボレロは、各ソロ奏者の方の思いが伝わってくるような素晴らしい演奏でした。 確かに微妙な感じで、おやっと思う場面もありましたけど、奏者の演奏にかける思いが勝っているのでしょうね、曲がまったく動じないところが素晴らしいですね。 そして良く纏まったアンサンブルが徐々に熱くなりますけれど、決して勢いに任せたりせず、堂々としたフィナーレを形成。 聴いているこちらの方が熱くなりました。 素晴らしい演奏に大きな拍手を贈りました。

安野さん、胸の前においた手を小さく振って合図するとスネアの人がスティックを短くもってリズムを刻んで始まります。 聴いている側も緊張しますけど、上々の滑り出し。 フルートの深い音色が響きます。 ピチカートは弦に触るだけみたい。 クラリネットが甘く落ち着いた響きですね、フルートもしっとりとかぶさってきます。 ファゴット、ちょっと明るめの響き。 少し間が空いたのは音が出なかったのかな、なんてやっぱり聴いている側も緊張してしまいますね。
とても集中力の高い演奏で、オケの皆さんのやる気がびんびんと伝わってきて、曲が進んでゆきます。 ピッコロとフルート、難しいところですけどクリア。 このあたりのハーモニーから独特のオルガンに似た響きになってきます。 トロンボーンのグリッサンド、甘い響きに力強さも備わってます。 次第に熱気が見え始めました。 ここまでくると、聴いている側の高揚感が、演奏者の方より上回ってくるみたい。 でも栄島さん、これまでのどの曲よりも気合入れて弾いてらっしゃいましたね。 腰を浮かさんばかりの様子。
安野さんは常に落ち着いてリードをしていますが、ここまでくると振りも大きくなりました。 ヴィオラに力を込めるように指示したり、ヴァイオリンの方を向いたりと曲を整えています。 明るいオケの響き。 勢いに任せることなく、着実に曲を進めます。 そしてフレーズの終わりだけ、力を込めるようにしていたのではないでしょうか。
ドラの人が立ち上がるとクライマックス。 完全に聴き手は高揚してて、いつ打つのかとステージに目が釘付け。 響きには力入ってますけどオケ全体の響きに綺麗に収まってます。 そして力のこもったオケ全体の響きでホールが満たされ、力強く念を押すような終結。 最後まで堂々とした素晴らしい演奏でした。

ソロ奏者の巧さはもちろんのこと、アマらしい前向きでやる気を感じる巧いオケですね。
アンコールも溌剌とした演奏を堪能。 満たされた気持ちで会場を後にしたのですが、そのとき雨がまだ降っていることに気付くほど、雨のことなどすっかり忘れてしまうほどの熱い演奏会でした。 皆さんお疲れさまでした。