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枚方フィルハーモニー管弦楽団 第63回定期演奏会

自分たちの音楽を聴く楽しみ戻る


枚方フィルハーモニー管弦楽団 第63回定期演奏会
2006年5月21日(日) 14:00  枚方市民会館大ホール

モーツァルト: 歌劇「魔笛」序曲
ブラームス: ハイドンの主題による変奏曲
シューマン: 交響曲第1番「春」

(アンコール)グリーグ: 過ぎにし春
(アンコール)プッチーニ: 歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬ」

指揮: 生島 靖


アットホームで、自分たちの音楽を一生懸命演奏する枚方フィルの演奏を楽しみました。
なかでもシューマンの交響曲「春」、ほんと月並みな言葉ですけれど、いい演奏を聴かせてもらって幸せになりました。 軽快さと重厚さを取り合わせ、またシューマンらしいリズム感もうまく決めていて、ブラボーがかかったのも納得です。 ミスなど確かにありましたし、オーボエのリードも不調のようでしたけれど、それさえも精一杯の気持ちが勝っていました。 言い方は悪いのですが、ちょっと鳴りにくい楽器を一生懸命に鳴らしている、そんな雰囲気も感じ、自分たちの音楽を演るってこんなことなんだな、と感じいった演奏でした。
冒頭の生誕250年のモーツァルトの「魔笛」序曲も明るく快活。 丁寧に演奏されていましたけれど、いわゆるモーツァルト色がよく出ていました。 聴いていると、これまた嬉しくなってきた演奏に、大きな拍手を贈らせてもらいました。
ただしその丁寧さが裏目に出たのがブラームスのハイドン・ヴァリエーション。 実直そのものなブラームスでした。 各変奏をしっかり演奏していましたけれど、さらにそこにピンと1本筋の通った何かがが欲しい、そんな感じがしました。 それでも一生懸命さのよく伝わってきた演奏には違いありません。
冒頭にも書きましたけど、自分たちの音楽を自分たちなりに一生懸命演奏されている枚方フィル。 気軽に生のオーケストラ音楽を楽しんでもらうために無料公演を基本とした活動は、アマチュア・オーケストラとして大切なことだと思います。 そして今回の演奏会もまた小さなお子さん連れの方が多くおられました。 演奏終了後にはすっかり眠ってしまった子供を抱き疲れたお母さんに、「大変ですね〜」なんて声をかけると、「寝ててくれてよかったです」などという会話も自然と出てきたアットホームな演奏会。 確かに演奏技術は大切だけれども、技術偏重に陥らず、持てる以上のものを出そうとする演奏を心がけていらっしゃる枚方フィルの姿勢に触れることができ、癒された演奏会でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

前回は都合があって伺えず残念でしたが、今回は急きょ奥さんを連れて枚方を訪れることにしました。 そんなことから家を出るのがちょっと遅れましたけど、うまく京阪特急を捕まえることができて15分前に到着。 京阪特急というと、京橋から三条間はノンストップというイメージがまだ強く残っているため、ちょっと不思議な気分です(昔の記憶が抜けないなんて年寄りですね、まったく)。

ホール入口で女性からパンフレットを受け取ると、その脇には指揮者の生島さんが立っておられました。 指揮者がにこやかに入場するお客さんをお出迎えするなんて、いきなり親近感のわく演奏会って感じで嬉しくなりました。

2階席への階段がテーブルで封鎖されていたので、1階席の後ろの壁際にいったん座りましたけど、トイレに行った奥さんが、2階も開放されたみたい、とのこと。 そそくさと2階へ移動し、最前列のA-15を陣取りました。 足元が広くて楽ちんです。 そうそう、2階の中央にはケーブルテレビ局のカメラが設置されまして、そういえば先に座った1階席の前にも大きなカメラが設置されてました。 収録されたテープが後日ご近所に放映されるのでしょうかね。

さて1階席は8割位の入りですが、2階は開放された直後とあってガラガラ状態。 このあと小さなお子さん連れの方が(2階席だと迷惑をかけないだろうと思われているのでしょうね)続々と入ってこられました。 それでもまだまだ余裕のある2階で開演をゆったりと待っていると、定刻を告げるブザーの音。 ブーっていう響き、懐かしいですね。

オケの皆さんが整列入場すると、弦楽器の編成は 10-10-8-9-4 の通常配置。 チェロがちょっと多いのがアマオケらしく面白いところですね。 コントラバスで長身の男前の方は、吹田市交響楽団のHさん、今回も参加されているなぁ・・なんて思っているうちに、コンミスの方によるチューニングも終えて準備完了。 これまた長身の指揮者の生島さんが登場されて始まります。

モーツァルトの歌劇「魔笛」序曲。 明るく快活な演奏で、とても丁寧に演奏されていたようです。 几帳面に演奏するとかえって面白くないのがモーツァルトなんですが、ここではチャーミングで陽気、いわゆるモーツァルト色みたいのがよく出ていました。 気持ちよく聴き進んでゆき、そして聴き進むうちに、嬉しく楽しい気分になってしまう演奏でした。 気持ちの良くなる演奏に大きな拍手を贈りました。

冒頭の和音、軽やかで滑るような出だし。 丁寧にゆっくりと音を紡ぐように進みます。 アレグロになると、第2ヴァイオリンが軽快に弾き始めます。 そして生島さんは、オケの各パートの響きを丹念に組み合わせるようにしていますが、響きの基調が明るいせいでしょうか、聴いているととても楽しい気分になってきます。 フルートが奏でオーボエによる副主題にとクラリネットも加わりますが、当たりの柔らかな響きが特徴的でした。 金管楽器も抑制された響きで曲をサポート。 クライマックスを丁寧に決めていったん休止。
この後のファンファーレも明るい響きですが、前に響くのではなく、横に拡がるような感じなのがいいですね。 ここからも弦楽器の丁寧な合奏が続き、終結部ではティムパニが弾むように打ち、明るく楽しい気分を充足させたまま曲を閉じました。 聴いていて気持ちがスカッとした演奏でした。

若干の管楽器メンバーの入れ替えをしてブラームスのハイドン・ヴァイリエーション。 実直そのものなブラームス、といった感じの演奏でした。 各変奏をとてもしっかりと演奏していましたけれど、さらにそこにピンと1本筋の通った何かがが欲しい、そんな感じのした演奏でもありました。 でも演奏者の皆さんの一生懸命さのよく伝わってきた演奏には違いありません。

主題と第1変奏、やわらかな響きによる開始。 丁寧に曲を進めてゆきますが、少々ミスったりもしたせいか、ちょっと慎重になったのでしょうかね。 なんとなく単調な感じに思える曲の進行でした。 第1変奏でのホルンの響きが柔らかくてよかったですね。

第2変奏、活気づいてきました。 でもここでも丁寧に演奏しているものの、どことなく統一感が欠けるような印象も覚えました。 まだエンジンは本調子でない、って感じかな。

第3楽章、やわらかな低弦のピチカートがよかったですね。 牧歌的で、ゆったりと盛り上げてゆき、徐々にのってきたような感じ。 音楽が大きくなってきました。 ただし各パート、皆さん一生懸命なんですけど、すっと曲が流れてゆくようにも思え、芯になるものが欲しいような気もしました。

第4変奏、落ち着いた音色のヴァイオリン、弦楽アンサンブルがしっとりとした雰囲気を漂わせて進みました。

第5変奏、活気づいた弦楽器の細かなパッセージに乗せ、木管楽器が軽快に吹いて曲を進めます。 ここも丁寧に曲を形づくっていたような感じでした。

第6変奏、ホルンの斉奏が柔らかくかつタイト。 オケ全体が活気づいてきました。 いい感じで曲を進めますが、でも決して冒険したり、大きく踏み外すことはない、といった感じも受けた演奏でした。

第7変奏、ここまで丁寧で几帳面な感じの演奏が続いたなか、大きく揺らすような開始に惹かれました。 やさしく、そしてゆったりと大きく進めてゆきました。

第8変奏、ヴィオラの深い音色が印象的な開始。 落ち着いて、じっくりと曲と向き合って進めているといった感じかな。

終曲、生島さんが低弦の方を向き、振りはじめたら雄大な響きが出てきました。 ゆったりと棒を上下に振って曲を進めてゆきます。 でもちょっと淡々とした感じかな。 徐々に力を込めて盛り上げてゆきます。 柔らかなフルートを始めとした木管の響きが彩られて、聖アントニーの主題が完全な形で戻ってオケの響きが明るくなりました。 トラインアグルは清楚な響き。 オケの響きを丁寧に集めたフィナーレもケレン味なく纏めて全曲を閉じました。 

実直なブラームスが全篇を支配していたみたいでした。 全体を通じたストーリー性というのかな、そこまで求めるのは酷なのかもしれませんけど、個々にはそれぞれ頑張っているけど、全体を通すと、なにか物足りない、そんな気分になって聴いてしまいました(偉そうにすみません)。

15分間の休憩。 席でアンケートを書いて開演を待ちますが、周りを見ると、さすがに無料とあって、小さなお子さん連れのお客さんが多いですね。 よちよち歩きの小さなお子さんが通路を行ったりきたりしています。 演奏中は抱っこされているのでしょうね、前半の演奏では鳴き声や奇声もなく、お行儀の良い子どもたちでした。

定刻、オケのメンバーが整列入場で揃いました。 後半はコンマスに交代してチューニングを実施。 準備完了で、生島さんが出てこられていよいよ始まります。

シューマンの交響曲第1番「春」、ほんと月並みな言葉ですけれど、いい演奏を聴かせてもらって幸せになりました。 軽快さと重厚さを取り合わせ、またシューマンらしいリズム感もうまく決めていて、ブラボーがかかったのも納得です。 ミスなど確かにありましたし、オーボエのリードも不調のようでしたけれど、それさえも精一杯の気持ちが勝っていました。 言い方は悪いのですが、ちょっと鳴りにくい楽器を一生懸命に鳴らしている、そんな雰囲気も感じ、自分たちの音楽を演るってこんなことなだな、と感じいった演奏でした。

第1楽章、明るい響きによるファンファーレが決まりました。 弦楽器も豊かな響きで応え、集中力もある上々の滑り出し。 このあとの導入部こそ、もやもやっとした感じはシューマンらしいところですが、やや纏まりの無さを感じたものの、主部に入ってとすぐに持ち直しました。 弦の響きに厚みがあり、オケ全体が活気ある音楽として走り出して嬉しくなりました。 ホルンがタイトでよく締まってますし、クラリネットも甘い響きが素適に響いてきます。 潔いティムパニ、金管には抑えが効いていて、重厚なオケの響きながらも、軽快で曲が前に前にと進む感じ。 そしてオケ全体の響きが(言葉は悪いのですが)どこか洗練されていないところもまたシューマンらしく感じられる部分ですね。 あっという間に終わってしまった、という印象。

第2楽章の始まる前に指揮台から降りてしばし休息された生島さん。 登壇して振り始めると、しっとりと濡れたような弦の響きが流れ出てきました。 想いがこもった弦のアンサンブルに、しみじみと感じ入らせる木管の響き。 そしてチェロの旋律、響きこそ朴訥としているのですけれど、気持ちがたっぷりと染み渡った響きが伝わってきました。 これは自分たちの音楽ですね。 自分たちの音楽を一所懸命演っていらしゃる。 ゆったりと大きく呼吸し、しかも誠実で心をこめた演奏は、時にオケ全体の響きとしては緩く感じる部分もあったりもするのですけど、聴かせる力を十二分に持った見事な演奏です。 そして最後のトロンボーンの響き、これがとても綺麗な響きで決めて巧かったですね。

第3楽章にはアタッカで突入、ゆったりと大きく、たっぷりとした響きによる開始。 甘い響きの木管を挟んで繰返し。 しっかりと地に足の着いた音楽には自信も感じます。 テンポを上げてゆきますが、ティムパニが的確に打って曲を締めています。 管楽器と弦楽器の呼応も巧く決め、チャーミングな木管には息づいた音楽を、堂々とした弦楽器には充実した音楽を感じます。 最初のトリオの部分を柔らかく回想してあと、そっと音楽を止めました。

第4楽章もアタッカで、張りのある序奏で飛び込みました。 快活な弦楽器の響き、活気が漲ってくる主部は、軽快さと重厚さを巧く絡め、また独特のテンポ感もうまく表現していて、楽しいシューマンの世界。 幸せな気分になりました。 パンフレットにも「感謝と喜悦の混合」といわれる主題なんだそうです。 文字どおりの誠実な音楽ですね。 フルートのカデンツァのまた美しいこと。 このあとはリズム感を持って曲をどんどんと進め、集中力を高めつつコーダに突入。 トロンボーンとホルンの掛け合いも見事でしたが、あくまでも誠実さを失わない演奏ながら、聴き手をも巻き込むような power を感じさせる熱い演奏に、更にアッチェランドをかけて締めくくりました。

演奏終了後、ブラボーがかかり、客席を向いた生島さんも少々興奮気味のご様子。 確かにブラボーは掛け値なしですね。 いい演奏を聴かせてもらい、これまで以上の大きな拍手を贈りました。 確かにミスもありましたし、不調な楽器もあったようですけれど、自分たちの音楽を演っていることがびんびんと伝わってくる演奏は、アマオケならではの醍醐味でしょう。 確かに演奏技術は大切だけれども、技術偏重に陥らず、持てる以上のものを出そうとする演奏を心がけていらっしゃる枚方フィルの姿勢に接することができて嬉しくなりました。

また演奏終了後にはすっかり眠ってしまった子供を抱き疲れたお母さんに、「大変ですね〜」と声をかけると、「寝ててくれてよかったです」などという会話も自然と出てくるアットホームな演奏会に癒されました。 一緒に行った奥さんも、「気持ち良くなった」「まるで温泉に浸かったみたい」などと言って、気に入ってくれたことも幸いでした。 いい演奏会をありがとうございました。