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アンサンブル・コスモリバティ 第16回定期演奏会

心に沁みるアンサンブル戻る


アンサンブル・コスモリバティ 第16回定期演奏会
2006年5月28日(日) 14:00  吹田市文化会館メイシアター中ホール

ブリテン: シンプル・シンフォニー op.4
ヘンデル: 合奏協奏曲第6番ト短調 op.6-6
早川正昭: バロック風日本の四季より「春」
モーツァルト: 交響曲第40番ト短調 K.550

(アンコール)モーツァルト: ドイツ舞曲 K.605-3

指揮: 木村俊明


理詰めで音楽を聴いたり演奏するのとは違う、音楽の楽しみを感じた演奏会でした。
団員の方はロマンスグレーの方がほとんどで、さすがに速いパッセージには身体がついてゆかないような場面もありましたけれど、ゆったりとして叙情的な部分になると、人生の年輪を感じさせて心に沁みるアンサンブルに酔いました。
またヘンデルの合奏協奏曲などのソロでは、齢を重ねていても瑞々しく艶やかな響き。 そして何より控えめなのがよかったですね。 我ここに在り、のような主張は皆無。 演奏後に指名されて立たされても、はにかんでいらっしゃるのを拝見すると、いくつになっても音楽を楽しめていいなぁ〜 と思えた演奏会でもありました。
中でも素晴らしかったのは、早川正昭作曲の「バロック風日本の四季より『春』」。
第1楽章に滝廉太郎の「春」、第2楽章には日本古謡の「さくらさくら」、そして第3楽章には岡野貞一の「春が来た」を主題に合奏協奏曲形式で纏めた作品ですが、演奏者の共感も大きいためでしょうね、春のやわらかな陽光を感じさせて、聴いていると伸びやかな気持ちになりました。
そしてメインのモーツァルトの交響曲第40番もまた、モーツァルトを愛する心が伝わってくるような演奏。 気持ちを乗せて丁寧に響きを重ねたモーツァルトですが、熱っぽくもありました。 ここでは木管アンサンブルが美しかったことも特筆しておきたいですね。
なおコスモリバティとは、COSMOS(宇宙)とLIBERTY(自由)の合体造語だそうで「自由な時間に気宇壮大な夢を見て人生を楽しむ」という意味でネーミングされたそうです。
このような人生の諸先輩方を見習わなくては・・・


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

仕事の疲れが抜けない今日この頃、招待状をいただける演奏会もありましたが、大きな編成のオケはしんどい感じ。 ちょっと前、メールで教えていただいた室内オーケストラの演奏会が気になっていたので伺うことにしました。

ホームページを見ると、平日の午後に練習することができる定年退職された方や、主婦の方が主体というアンサンブルとのこと。 ちょっと珍しいタイプの室内オーケストラですものね。

さて当方は喉の調子がイマイチで、翌日の月〜火曜と宿泊出張があるため体力温存モードです。 電車の中でも仮眠をとりつつ、梅田に出てから阪急千里線で吹田まで。 いつもは早足で歩く大阪の街もゆっくりと歩いて移動。 開演15分前にホールに到着しました。

もう10回ではきかないくらい来ているメイシアターも、中ホールには初めて入りました。 ベージュとブラウンが基調になっていて、大ホールと同じ感じなんだけれども、こじんまりとして落着いた感じがいいですね。 お客さんの多くも年配の方で、ロマンスグレーとこのホールの雰囲気がよくマッチしているようです。 最終的には7割くらいのお客さんが入ったでしょうか。

中央付近の左サイドですが、通路沿いの「し-10」の席を確保。 パンフレットを読んで開演を待ちましたが、メンバー表に先週の枚方フィルでの演奏会でクラリネットを吹いてらしたKさんのお名前を拝見。 身体全体で音楽を表現されるKさんが吹かれるモーツァルトを聴けるとは(昨年のクラリネット協奏曲も素適でしたし)期待が膨らみます。 定刻を告げるブザーが鳴り、アンサンブルのメンバーが整列入場。 通常配置で編成は 9-11-7-7-2 でしょうか。 チューニングを終え、にこやかな木村さんが登場されて、いよいよ始まります。

ブリテンのシンプル・シンフォニー、後半楽章の叙情的でかつ情熱的な表現は見事でした。 ただ前半の速いパッセージは、挑戦といった感じもしましたけれども、真摯な演奏でした。

第1楽章、威勢の良い開始。 柔らかなチェロやコントラバスの響きに支えられ、高音弦が歌うように・・と言いたいところですが、少々ささくれだったような響き。 ちょっと纏まり感が乏しく感じました。 直接音が多く聴こえたこともありますけれど、後半になるとようやく全体がノッてきたみたい。 でもコントラバスの方は終始首を振り、楽しそうに弾いておられたのが印象的でした。

第2楽章、ここでの低音弦のピチカートが瑞々しくてよかったですね。 木村さんもリズミカルに上下に指揮棒を振って音楽を整えながら曲を進めます。 親しみ易いとは言え現代音楽だからでしょうか、客席も耳馴染みがないせいか、お客さんも少々落着きがないような感じも受けました。 後半のピチカート、チェロ・トップの方の元気の良い動作が印象に残りました。 まさしく弾けるようにして終了。

第3楽章に入る前にチューニングを実施。 これの効果があったのでしょうね、大きく伸びやかな旋律がとても美しい。 これまでとは全然違いますね。 想いも篭もっているような感じ。 そしてその響きの中には諦観にも似た感じがし、しみじみと演奏を味あわせて頂きました。 情熱的に盛り上げたあと、またしみじみとさせてそっと着地。

第4楽章、木村さんの軽いハナ息で、力の篭もったアンサンブルが響きます。 リズミカルに旋律を美しく歌い廻し、ピチカートを各パートを巡らせて見事。 熱気のこもった演奏です。 これをスパッと止めてから、また熱く歌い廻し、更に大きくうねらせて全曲を閉じました。

最初はちょっとどうなるのかな、なんて生意気にも思いましたけど、終わってみると熱演でした。 熱い拍手を贈らせていただきました。

チェンバロは電子ピアノ(オルガン?)でしょうか、長尾美紀子さんが出てこられて、ビオラの後方に着席。 準備完了して2曲目が始まります。

ヘンデルの合奏協奏曲第6番ト短調、安定感のある演奏はブリテンの比ではありませんでした。 しかもソロでは、齢を重ねていても瑞々しく艶やかな響き。 それがまた控えめなのがよかったですね。 我ここに在り、のような主張は皆無。 演奏後に指名されて立たされても、はにかんでいらっしゃるのを拝見すると、いくつになっても音楽を楽しめていいなぁ〜 と感じた演奏でした。

第1楽章、大きく響かせた開始から伸びやかに進めたラルゲット。 ブリテンと違って安定感抜群です。 しかも憂いを秘めた響きになっていて、しっとりとして素適。 ただし、チェンバロが電子ピアノのせいか、ややハッキリと聴こえてくるが現代的な感じになるのですけれど、これが本物だったらもっと印象は清楚な感じになっていたかもしれません。

第2楽章、艶やかなヴァイオリンの合奏、そこにビオラとチェロが入ってきたアレグロ。 ややテンポを遅めにとっているでしょうか。 木村さんの指揮にあわせて、響きを丁寧に重ねた演奏でした。

第3楽章、ゆったりとしたヴァイオリンの響き、柔らかくて素適な開始です。 ヴァイオリンやチェロのソロも柔らかな響き。 全体の合奏にぴったりと合った愛らしい独奏ですね。 失礼ながら、いくつになっても音楽が出来る、そんな楽しみがあっていいなぁ・・と思いながら聴いていました。 テンポが上がってもリズミカルさを失わず、曲に負けないような纏まり感のある合奏で丁寧に締めました。

第4楽章、覇気を感じさせるリズミカルなアレグロ。 瑞々しいヴァオリンのソロが素適でした。 中低弦の響きもよく聴こえ、全体のバランスも良いアンサンブル。 誠実な感じなのですけれど、流れがとても良く、先に書いたように覇気があって気持ちの良い演奏でした。 ついついリズムを取りながら、楽しく聴かせていただきました。

第5楽章、木村さんの軽いハナ息で端正に纏まった響きによる開始。 淡々とした味わいながらも、活き活きとしたアンサンブルでどんどんと進めます。 演奏者の皆さんの熱意のようなものが伝わってきたる熱い演奏として全曲を閉じました。

演奏後、指名されて立たされたソリストの方々、いずれもは謙虚にはにかんでいらして素適でした。 本当に、いくつになっても音楽を演奏できていいなぁ〜と思えた演奏に暖かい拍手を贈らせていただきました。

第2ヴァイオリンのトップの方がささっと入れ替わりました。 続いて早川正昭作曲の「バロック風日本の四季より『春』」。 耳なじみのあるメロディを合奏協奏曲形式にしたもので、聴き手および演奏者の共感も大きいためでしょうね、春のやわらかな陽光を感じさせて、聴いていると伸びやかな気持ちになった素晴らしい演奏でした。 心に沁みるアンサンブルに酔いました。

第1楽章、大きくうねるようなたっぷりとした響きによる開始。 序奏でしょうか。 ここから小刻みなヴァイオリンの旋律が各パートに廻り、ヴァイオリンにまた戻ってきたら滝廉太郎の「春」の旋律が見えてきました。 バロック風に見事にマッチした音楽がとても心地よいですね。 この旋律を華やかに歌わせるヴァイオリンとチェロ。 伸びやかな気持ちにさせる音楽を楽しみました。

第2楽章、弦楽器の響きの中からしっとりしたチェンバロが聴こえます。 桜の花びらが舞うような感じのチェンバロの響き。 しみじみとさせるアダージョで、ヴァイオリンがそっと日本古謡の「さくらさくら」の旋律を歌います。 柔らかなヴィオラ、チェロ、コントラバスの響きが曲を支え、それがふっと止まり。 チェンバロの独奏。 そして弦楽アンサンブルが戻って閉じました。

第3楽章、快活に岡野貞一の「春が来た」の旋律を歌います。 上品な響きですね。 ヴァイオリンのソロがしとやかな感じで大和撫子かしら。 対するチェロのソロは端正な日本男児といったところ。 アンサンブル全体の響きも対比されていて、とてもいい感じです。 日本の長閑な田園風景を思わせて、柔らかな陽光が降りそそぐようなのびやかな演奏として全体を纏めて終わりました。

人生の年輪に含まれた様々な風景も感じさせて、心に沁みるアンサンブルに酔いました。 素晴らしい演奏でした。

15分間の休憩。 アンケートを記入しながら開演を待ちましたが、来たときにはお疲れモードでしたけど、音楽を聴かせていただいて元気が出てきたみたいです。 定刻、管楽器メンバーを加えて全員が登場しチューニングを終えて準備完了。 にこやかに木村さんが登場されて始まります。

モーツァルトの交響曲第40番、この演奏もまたモーツァルトを愛する心が伝わってきた演奏でした。 気持ちをうまく乗せて丁寧に響きを重ねたモーツァルト。 ただ丁寧にやってもモーツァルトらしくならないのが難しいところなのですけれど、演奏者の方の想いが本当にうまく乗っていて、熱っぽく感じた演奏はまさしくモーツァルトでした。 ここでは木管アンサンブルが美しかったことも特筆しておきたいですね。 そして演奏後の皆さんの晴れやかな笑顔が一番輝いていた演奏でもありました。

第1楽章、ヴィオラ、ヴァイオリンと繋いで、チェロの下支えもしっかりとした上々の滑り出し。 木管もいい感じで入ってきました。 少々速いパッセージでは身体が気持ちに追いつかないような場面もありましたけれど。 まろやかなクラリネット、清楚なフルートなど木管アンサンブルも堪能しました。 哀しみのシンフォニー。 シルヴィ・バルタンのレコードを買ったのは中学生の頃だから、その頃からのお気に入りの曲を楽しみました。 最後は、畳み掛けるように走ってから、大きく纏めました。

第2楽章、中音弦のしっとりした響きによる開始。 静かな旋律を廻しますが、なんとなくぎこちなくも感じました。 でもここでも愛らしいフルートの響き、これに弦楽器の掛け合いを端正に決め、徐々にエンジンがかかってきたみたい。 ファゴットやクラリネットの響きもまろやかでよかったですね。 熱っぽくなってきました。 響きが薄くなる部分では、まだちょっと気持ちに身体がついてこない感じかな。 でも綺麗に纏めてこの楽章を止めました。

第3楽章、気持ちのよく篭った熱い開始。 とてもいい感じです。 リズム感もあり、各パートの分離もよくて、管楽器との呼吸もバッチリ。 推進力を感じます。 木村さん、これまでよりも大きく振っているようで、大きく抑揚つけながら進めてゆきました。 オケも見事にそれに応えて見事。 ここでも木管楽器の柔らかなアンサンブルが素適でしたし、ホルンも長閑な感じでよかったですよ。 主題を戻し、暖かな響きがホールに充満。 モーツァルトを愛してらっしゃるのがよく分かる熱い演奏で纏めました。

第4楽章、すっと入って直ぐに力を込め、丁寧に盛り上げた木村さん。 リズミカルに曲を進めてゆきます。 勢いづけてますが、響きを丁寧に重ねた演奏。 これまでもそうですが、決して弾き飛ばさないんですね、このアンサンブルは。 ここでもクラリネットとファゴットが美しく響きあって素適、甘い響きを堪能しました。 主題を繰返し、また丁寧に響きを重ねて盛り上げてゆきます。 皆さんの表情を伺うととても真剣な眼差し、一所懸命に演奏されていて、音楽にもそんな前向きな気持ちがよく乗っていて惹き込まれてゆきました。 モーツァルトを愛している、コーダではそんな気持ちを更に強く乗せて、大きくまとめて全曲を閉じました。

演奏終了後の皆さんの笑顔、素適でした。 木村さんも晴れやかな笑顔で嬉しそうでしたね。 誠実で暖かなお人柄を感じさせた木村さんやアンサンブルのメンバーの方々。 理詰めで音楽を聴いたり演奏するのとは違う、音楽の楽しみを感じさせていただきました。 気持ちがすっきりとした演奏でした。

なおコスモリバティとは、COSMOS(宇宙)とLIBERTY(自由)の合体造語だそうです。 「自由な時間に気宇壮大な夢を見て人生を楽しむ」という意味でのネーミングとのこと。 お疲れモードで、休みの日だから家でゴロゴロもしていたかったけれど、来て本当によかった演奏会でした。 人生の諸先輩方をもっと見習って、もっと人生を楽しまないと。 ありがとうございました。