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アンサンブル・フリー 第7回演奏会

若々しく曖昧さのない熱い演奏の数々戻る


アンサンブル・フリー 第7回演奏会
2006年8月6日(日) 14:00  灘区民ホール

リスト: メフィスト・ワルツ第1番
バルトーク: ヴァイオリン協奏曲第2番
 (アンコール)モンティ: チャルダーシュ
ブラームス: 交響曲第4番
 (アンコール)J.シュトラウス:ハンガリー万歳

独奏:馬渕清香(vn)

指揮:浅野亮介


気鋭の演奏の数々、外の暑さに負けず劣らずとても熱い演奏会でした。 若々しく曖昧さのない演奏を楽しみました。
冒頭のリストのメフィスト・ワルツから全開。 指揮者の浅野さんの軽いハナ息とともに切れ味鋭い演奏が飛び出しました。 機動力のあるオケをドライヴしたわくわくする演奏。 実演で聴くのはたぶん初めてだと思いますが、いきなりの素晴らしい演奏にゾクゾクっときて汗もひきました。
つづく馬渕清香さんの独奏によるバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番。 馬渕さんのヴァイオリンは深い響きにコクが感じられました。 長くこの曲を聴いてませんので、こんな曲だったかな、なんて思いながら聴いていたせいでしょうか、少々単調に感じられた場面もあったようですが、きりっとして纏まり感のある演奏でした。 そう、ここでもオケが見事に統率されていたのが印象的でした。
そして圧巻はブラームスの交響曲第4番。 擬古典ともいえるこの曲を、ストイックかつダイナミックに演奏して感動的でもありました。 若々しく曖昧さのない音楽なんですが、中低弦の響きがよくブレンドされて安定感抜群。 堂々とした第1楽章、ゆったりと構えた第2楽章に、そして第3楽章は快速。 いやぁ〜速い速い、吃驚しました。 そして終楽章は力強く熱く感動的に歌い上げた終結。
若さの漲ったブラームスってのもいいもんですね。 音楽が息咳きって進むのではなく、安定感もありましたし、練習でかなり練り込まれたのでしょうね、充実感のある演奏でした。
強いて言うならば、どの演奏もそうなのですけれど、弱音で表現する部分がほとんど無かったようです。 しかしこれも、若さ、なんです。 熱い演奏を楽しませていただきました。 若いっていいことだな、と感じた演奏会でもありました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

この日も午前中は会社。 しっかり仕事をしてから演奏会場の灘区民ホールに近い阪急の六甲駅へ。 初めて行くホールなんで、いつもならここからアセって早足になるところですが、厳しい暑さの中、目の前が真っ白になりそうになりながら(ちょっとオーバー)、ゆっくり歩いてゆきました。 途中の都賀川では川開きだったようで、子供たちが川遊びをしているのを眺めながら(子供はいいなぁ)、ホールには開場10分後くらいに到着。 とにかく、暑かった。

エレベータでホール入り口に上がると、受付の人がプログラムとチラシを1枚づつ取って束ねて、はいどうぞ、と渡してくださいます。 無料の演奏会ですものね、手作りという感じ。 軽く会釈をしてそれを受け取ってホール内に入り、ぐるっと見渡して後ろ寄りの中央付近、Q−12に着席。 到着したころはこの周りには誰もいなくて閑散としていたのですけれど、最終的には9割近く入ったでしょうか。 よく入ってました。

開演前のアナウンスのあと、メンバーの方がパラパラとステージに集まってきました。 基本的にパート毎みたいなんですけど、自由入場に近いですね。 弦楽器の編成は通常配置で 11-9-10-9-5 だったかしら。 コンミスが出てこられてチューニングして準備完了。 開襟シャツ姿の浅野さんが出てこられました。
このアンサンブル・フリー、神戸大学大学院の博士課程で音楽学を研究しておられる浅野さんが、やりたい時にやりたい音楽をするため、浅野さんが声をかけて集められたメンバーです。 そんなメンバーを前に指揮台の上で集中力を高めて、いよいよ始まります。

リストのメフィストワルツ、指揮者の浅野さんの軽いハナ息とともに切れ味鋭い演奏が飛び出しました。 機動力のあるオケをドライヴしたわくわくする演奏。 ライナー/シカゴ響の演奏で馴染んでましたけど、実演で聴くのはたぶん初めて。 とても素晴らしい演奏にゾクゾクっときて汗もひきました。

リズミックでよく締まったヴィオラとチェロの締まった響きから急速なワルツ。 機動力のあるオケですね。 タイトに響くホルン、ティムパニも迫力ある打音で一気に惹きこまれました。 そして曲が静かになると今度は妖艶なワルツ。 ここでも中音弦がしっかりと曲を支えているのが素晴らしいですね。 ピンと張りつめたヴァイオリンのソロ、木管や弦楽アンサンブルも瑞々しく、すべてに渡って気鋭という言葉がぴったりとくる演奏。 そしてメフィストの魔術で駆り立てられての乱痴気騒ぎも見事。 一転してフルートとハープが静まり返ったホールに響かせ、そして最後はまたフルオーケストラでぎゅっと締めてお仕舞い。

この最後、浅野さんの腕がダラっと下がってどこか投げやりな感じに見えましたけど、オケは充分に引き締まった響きで着地を決めてました。 練習で造り込んでいるのでしょうね、実演での指揮姿は適当に見えたりもするので、あまり見ないほうがいいかも・・・なんてことはともかく、充実した演奏を楽しみました。 またライナーの演奏も聴きたくなりました。

管楽器のメンバーが入れ替わり、弦楽メンバーもシフトする間にソリスト用の譜面台を設置。 今度の編成は 10-11-9-8-4 のようで、コンマスが交代しました。 チューニングを実施して準備が整うと、ワインレッドのドレスに身を包んだ馬渕さんが登場。 始まります。

バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番。 馬渕清香さんの独奏には深い響きとコクが感じられました。 しかし長くこの曲を聴いてなかったこともあり(手元のCDはメニューインがドラティ/ミネアポリス交響楽団と組んだ1957年録音のMercury Living Presenceのものなので8年ぶり位かな)、こんな曲だったかな、なんて思いながら聴いていたせいでしょうか、少々単調に感じられた場面もあったようですが、全体的にきりっとして纏まり感のある演奏だったと思います。 そう、ここでもオケが見事に統率されていたのが印象的でした。

第1楽章、暖かなハープの響き、中音弦のピチカートに続いて、馬渕さんの深く張りのあるヴァイオリンのソロが流れ出しました。 想いを込めて弾いておられる姿が印象的です。 ソロが終わると、ティムパニの一撃のあとオケが全奏で盛り上がります。 オケの機動力、ここでも健在。 今度は不安感を醸し出すようなソロ、そしてまたオケが全奏でピークを形成しますけど、それもまた切り落として懐かしい気持ちにさせます。 キレ味の良い演奏ですね。 また纏まり感ももたせて曲を展開、深い響きのカデンツァには伸びも感じました。 そして気迫の篭もった演奏でぐっと盛り上げ、この楽章を閉じました。

第2楽章、ハープそして第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが漣を打つなか、優しくヴァイオリン・ソロが旋律を歌いだします。 どこか不安げな音楽。 チェレスタでしょうか、不思議な音空間が演出されて曲が進みますが、その流れを断ち切るかのようにティムパニが強打。 コントラバスもアクセントになってますね。 スネアとトライアングルが入り、ソロも駆け始めると、オケとの掛け合いがいい感じ。 そして最後、伸びやかに歌っているのをすっと止めておしまい。

第3楽章、オケの強靭な響きの上でソロが歌います。 切れ味の鋭いオケの響きが素晴らしいですね。 ソロも力強く歌います。 しかし対抗するといった感じというよりも、ちょっと言い方は悪いですけど、精一杯こなしているといった感じだったかな。 思索的なんでしょうが、もうちょっとソリストとしての華やかさが欲しいところですね。 でもオケはドライヴされてて、タイトに打つティムパニが目だってます。 でも中低弦が曲を支えていますので、全体はとてもしっかりしてます。 そこに金管が入ってカラフルな響きになりました。 この金管楽器、煌びやかなんですけどね、落ちついた響きがカッコ良かったなぁ。 打楽器も入ってまた馬力を増したオケを、浅野さんが踊るように大きく手を振り上げて演奏を止めて全曲を締めました。

馬渕さん、アンコールでは伸びやかで歌心溢れたチャールダッシュを披露。 深さのある響きがジプシー風に馴染んだ熱演。 楽しませていただきました。 バルトークの終楽章は、さすがに疲れていたのかもしれませんね。 このような伸びやかさがもうちょっと欲しい気がしました。

15分間の休憩。 座席でじっとして開演を待ちました。 やはり予告アナウンスのあとからメンバーが三々五々ステージに集まってきて今度は 10-11-10-9-5 の編成のようです。 コンマスがチューニングをしたあと、スーツにネクタイ姿の浅野さんが登場。 場内に軽いどよめきが起きました。

ブラームスの交響曲第4番。 圧巻でした。 擬古典ともいえるこの曲を、ストイックかつダイナミックに演奏。 若々しく曖昧さのない音楽なんですが、中低弦の響きがよくブレンドされて安定感抜群でした。 堂々とした第1楽章、ゆったりと構えた第2楽章に、そして第3楽章は快速。 いやぁ〜速い速い、吃驚しました。 そして終楽章は力強く熱く歌い上げて終結。 感動的でもありました。

第1楽章、指揮棒を持たない両手でゆっくりと踊るように動くと、豊かな響きがあふれ出てきました。 テンポをちょっと遅めにとり、中低弦の響きがうまくブレンドされた旋律がとても素晴らしい。 もっと先鋭的な響きが飛び出すのかな、と思っていたのですけど、軽く裏切られた気分です。 でも覇気のある音楽で、若々しく輝いている感じ。 浅野さんの動きを見ていると、微妙に動きと曲の構成が違ってみえたりもするんですけど(指揮法は独学とのこともありますが)、練習でオケに意図がよく練り込められているのでしょう。 オーソドックスさの中に、雄大さや伸びやかさもある見事な演奏でした。 ここでも指揮者の動きを見ていると違って聴こえそうになるので、あまり見ないことにしました。 終結部も断固とした響きで強烈に決め、感動的な着地。 残響がホールにこだましました。

第2楽章、ホルンと木管による序奏から集中力抜群。 ピチカートがやや大きく響き、古めかしいフリギア旋法もここでは若々しい音楽に聴こえます。 チェロによる第2主題も明るく響き、ヴァイオリンもまた明快な感じで展開。 音量も全般的に大きく、弱音で聞かせる部分が皆無で、やや一本調子かなと思っていたら、ぐいぐいと盛り上がってきて有無を言わせない感じです。 主張のハッキリとした音楽で、曖昧さは微塵もなく、かえって気持ちがすっきりとしますね。

第3楽章、強烈な響きで勢い良く開始。 いやぁ、速い速い。 浅野さん、右手の拳を振ってリズムをとってますね。 オケもそのリズムに乗ってキレの良い音楽を続々と迸り出てきます。 少々やり過ぎ感もありますけど、許せるのは、オケの響きが豊穣だからでしょう。 息咳きってません。 なんとポテンシャルの高いオケですねぇ。 急に速度を落としてホルンの斉奏。 そしてまたスピードを上げて駆けてゆきます。 トランペットの響きが突き抜け、ティムパニの轟音とともにこの楽章を閉じました。 言葉は悪いですけど恣意的な感じのした楽章でもありました。

第4楽章、軽い鼻息とともに開始、伸ばした響きをバッサリと絶ち切るかのようにして曲を進めます。 徐々に力を増し、熱く旋律を歌い出します。 コントラバスの響きがよく絡んでていいですね。 ヴィオラやチェロもまた豊かに鳴ってます。 静かになり、フルートが艶やかな旋律を吹いて、それを木管が歌いまわします。 ここも巧いですね。 厳かなトロンボーンも落着いた音色が素適。 このあたりはゆったりとして、流れを止めるかのような感じではあるんですが、熱気を内包した音楽。 そして熱さをまた前面に出して盛り上がってゆきました。 弦の旋律をやや鋭角的に響かせ、キレよく曲を進めます。 ティムパニが熱い音楽を叩きつけるかのよう。 金管が咆哮し、力強く歩みを進めながら、音圧を増してエネルギッシュに幕。 浅野さん、両手で小さくガッツポーズをするようにして止まってました。

若さの漲ったブラームスでした。 でも音楽が息咳きって進むのではなく、安定感もありましたしね、充実感のある演奏でした。 強いて言うならば、どの演奏もそうなのですけれど、弱音で表現する部分がほとんどありませんでしたが、しかしこれも、若さ、なんでしょう。 20や30歳台で老け込まれてもねぇ。 納得度の高い演奏に大きな拍手を贈りました。

とても熱い演奏の数々を楽しませていただきました。 若いっていいことだな、と年寄りじみてますけど、そんなことを感じた演奏会でした。 皆さんお疲れさまでした。