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天理シティオーケストラ ファミリーコンサート

底力も感じさせた素晴らしい演奏の数々戻る


天理シティオーケストラ ファミリーコンサート
2006年9月17日(日) 13:00  天理市民会館・やまのべホール

グリーグ: ペールギュント組曲より「朝」
 楽器紹介コーナー
J.シュトラウス: 雷鳴と電光
ヴィヴァルディ(安野英之編曲): チェロソナタ第5番より第2楽章 -*1
 指揮者体験コーナー
サウンド・オブ・ミュージック・メドレー
ベートーヴェン: 交響曲第6番「田園」より第1楽章
ボロディン: 交響詩「中央アジアの草原にて」
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲より第1楽章 -*2
ホルスト: 組曲「惑星」より「火星」「木星」

(アンコール)チャイコフスキー: 「眠りの森の美女」より「ワルツ」

独奏: 孫工恵嗣(vc)-*1、奥谷睦代(vn)-*2

指揮: 安野英之


天理シティオーケストラらしく隅々にまで統一された音色、前半はやや抑え気味でしたけど、後半は底力も感じさせた素晴らしい演奏の数々を楽しみました。
また天理在住の高校生による演奏もお世辞抜きで立派でした。
特にメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲第1楽章を弾いた奥谷睦代さんの演奏は、初めてのソロとは思えないほど堂々としたもの。
度胸良く踏み込んで楽器を鳴らし、また、ふっと溜息をつくようなニュアンスもとても見事。
そして何より演奏全体に華がありましたねぇ。 とても素晴らしい演奏に感動しました。
孫工恵嗣さんによるヴィヴァルディのチェロソナタ第5番第2楽章(安野英之編曲)も落着いた音色ながら覇気を感じさせた素適な演奏。
演奏前と終了後こそ緊張した面持ちでしたけど、演奏中は堅さなど感じさせず伸びやかで端正に纏めた誠実さが見事でした。
オケもそれに奮起した(事は無いと思いますが)、ホルストの惑星から「火星」「木星」の2曲はオケの底力を見せつけるかのような機動力にあふれた演奏。
しかも全奏で畳み掛けるようにしても刺激的な響きに全くならないのが凄いですね。 統率のよく取れたオーケストラ・サウンドに、来ていた子ども達も驚いたのではないでしょうか。
オーケストラによる音楽の醍醐味をたっぷりと味あわせていただきました。
最近、しかめっ面して○○の交響曲を聴くよりもファミリーコンサートが最近のお気に入りなんですが、今回もまたそんな思いをより強くした演奏会でした。 皆さんお疲れさまでした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

台風がやってくると天気が心配でしたけど、雨と風はなんとか持ちました。 けど、長女が風邪をもらってきたようで、なんとなく倦怠感。 一所に行く予定にしていた奥さんは長女の体調が悪いこともあり、一人で家を出て天理に向かいました。

天理の駅前、天理なお祭りでしたっけ、あと天理大学のオープンキャンパスもやってて、結構な人出。 それに負けず天理市民会館も7割位入っていたでしょうか。 小さな子供さん連れが多く、その他にも障害を持たれた方もいらしていたようですね。 ふだん生のオーケストラ音楽を楽しむことが難しい人たちにオープンな演奏会。 いいですね。 中央より後ろのR-23に着席して開演を待ちました。

頂いたチラシを見ていると、この演奏会は環境市民ネットワーク天理との共同企画だそうです。 天理の水源を守るために棚田の保存などもされている団体とか。 また発芽玄米の作り方のチラシも参考になりました(我が家も玄米を購入しています)。 だから音楽も自然を題材にしたものとして「ふるさと天理」の素晴らしさ、美しさの再発見につなげたいとのこと。 ちょっと元気も沸いてきました。 定刻の10分前、薄暗いステージにメンバーの方が出てこられて練習開始。 ワクワクしてきて期待も膨んできました。

定刻、照明が落ちて舞台が明るくなるとステージいっぱいのオーケストラメンバー。 通常配置で弦楽器は 10-9-7-5-4 の構成のようです。 コンマスの栄嶋さんがいつものように物腰柔らかくにこやかに登場、チューニングをされて準備完了。 安野さんがこれまたにこやかに登場して始まります。

グリーグのペールギュントより「朝」、柔らかくて美しい演奏でした。 冒頭のフルートの響きが美しく、オーボエも柔らかな響き、そっと、柔らかく、そして丁寧に曲を進めてゆきます。 チェロの響きも控えめながらしっかりとしてました。 全体的に抑えた演奏でしたが、端正で丁寧、清々しい演奏で纏めてそっと閉じました。

司会の方(尾上由香さん)が出てこられ、テンポよくオーケストラの楽器紹介。 これがなかなか面白かったですね。 ともすると型どおりになりがちなのですが、メンバーの方の選曲でしょうか、ヴィオラの赤トンボの深い響き、クラリネットのマツケンサンバ、トロンボーンによるぞうさん等々、司会の方も巧く盛り上げて進めて楽しい時間でした。 最後にパーカッションをステージ前方に移動して紹介、そのままの状態で「雷鳴と電光」を演奏。

「雷鳴と電光」はシンバルを強調した演奏でしたが、全体として柔らかな響きが特徴的。 安野さんが右手を挙げたり、前に突き出したりしてますが、整った演奏が必要以上に強調されることなく上質な音楽は落ち着いてますね。 とても肌触りの良い音楽でした。

オーケストラの編成を 6-6-4-4-2 (ヴィオラ以降は座ったまま)にして、天理高校1年生の孫工恵嗣さんが登場。 緊張した面持ちでチューニングをして準備完了。
ヴィヴァルディのチェロソナタ第5番第2楽章(安野英之編曲)、落着いた音色ながら覇気を感じさせた素適な演奏でした。 オケもそんなソロにぴったりと合わせた音色で寄り添っていたのもまた印象的。 演奏中は堅さなど感じさせず、伸びやかで端正に纏めた誠実さがよく現れていました。

オーケストラの編成を元にもどして指揮者コーナー。 オッフェンバックの「天国と地獄」なんですが、まず模範演奏のあと、客席の全員が立って指揮の練習。 カタカナの「レ」を書いて演奏に併せますが、いやこれがなかなか難しい。 でも楽しかったですね、この方法。 そんなこともあって大勢の子供達が指揮者志願をしてました。 4名に絞って、それぞれの演奏を楽しませていただきました。 後ろに座っていた子供たちが、ああだこうだ、と批評してたのも面白かったですね。 会場が一体になった感じ。

前半最後は「サウンド・オブ・ミュージック」のメドレー、安野さん軽やかに振って柔らかで暖かみのあるサウンドをオーケストラから引き出してました。 金管楽器も響きがとても柔らかく響かせていたのもよかったし、「ドレミの歌」ではマリンバが入ってホール内を楽しい雰囲気にさせたのをさっと翻して「エーデルワイス」のゆったりとした美しさ、場面転換も見事で飽きさせません。 演奏中に子供の声はするけれども、音楽に惹きつける魅力ある演奏でした。

10分間の休憩。 盛り沢山な内容なので10分はちょっと短かったのではないかしら。 ロビーの展示もゆっくり見る時間が欲しかったですものね。

後半はベートーヴェンの田園交響曲・第1楽章でスタート。 安野さんが軽快に振ると、これまた柔らかな弦の響きが出てきました。 低弦がこれまでよりもしっかりと響いてきますね。 木管楽器、ホルンもまた優しい響きで、オケ全体が同じ音色で包まれています。 これがこのオケの最大の特徴ではないかしら。 どこかが突出したり、強調されたりすることがなく、全体が同じ響きで統一されて刺激的な響きが皆無なんですね。 次第に熱気を込めていったのをすっと解放して爽やかにするなど、いやぁ〜巧いですね。 オーソドックスなんですけど、さりげない巧さを感じました。 気持ちの安らぐ演奏でした。

続くボロディンの「中央アジアの草原にて」も柔らかな響きを基調にしたもので、落ち着いた秋色を感じさせた演奏でした。 弦楽器の透明感の高さ、管楽器の優しい音色、ピチカートも柔らかく弾いて曲を進めます。 中低弦の響きがよく聴こえて、落ち着いた雰囲気。 最後のフルートも端正に響かせ、静かにそっと幕。 しみじみと聞かせた演奏でした。

ソリスト用の場所を作り、今度は高円高校2年生の奥谷睦代さんによる独奏でメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲第1楽章。 これがとても素晴らしかった。 初めてのソロだなんて全く」思えないほどの堂々とした演奏に感動しました。 度胸良く踏み込んで楽器を鳴らし、また、ふっと溜息をつくようなニュアンスなどもとても見事。 表現に幅があってカデンツァも説得力ありましたしね。 そして何より演奏全体に華を感じさせた見事なソリストでした。 これまでで一番大きな拍手を受けていたのも納得です。 素晴らしい演奏に僕も大きな拍手を贈らせてもらいました。

さて演奏会も最後、管打楽器メンバーを増強してホルストの「惑星」、これまで上質で整った演奏を聴かせてくれていましたが、オケの底力を見せつけるかのような機動力にあふれた演奏。
しかも全奏で畳み掛けるようにしても刺激的な響きに全くならないのがまた凄いですね。 統率のよく取れたオーケストラ・サウンドに、来ていた子ども達も驚いたのではないでしょうか。
オーケストラの醍醐味をたっぷりと味あわせていただきました。

「火星」、安野さんがさっと小さく振ると引き締まった弦の響きが飛び出します。 ブラスもキリッとタイトに引き締まってます。 これまでの演奏とはヴォリュームが違いますね。 栄嶋さん、腰を浮かして前かがみになって弦楽器をリード。 弦の数が少ないですものね。
それが収まると、オケ全体が大きく呼吸しているよう。 中低弦の響きもよく聴こえてきました。 そしてまたタイトに盛り上がり、トロンボーンが堂々としてます。 大きくうねりながら最後は急速に纏め、集中力高くオケを止めました。 

「木星」、つややかな弦楽器の響き、ホルンの斉奏も響きの当たりが柔らかなのが特徴的な開始。 明るいタッチでキレよくオーケストラをドライヴして曲を進めます。 中低弦がしっかりしているので落ち着いてますし、パーカッションも端正に纏めて上品。 ブラスが入るとぐっと盛り上がりますけど、すっと退いて緻密な感じもします。 ゆったりとした弦楽器による民謡風の旋律も心に沁みます。 ホルンもまた柔らかかった。 しだいに息づまるように曲を展開、機動力をもった強烈なコーダ。 ここでも刺激な響きはなく、艶やかさを失わないトランペットなど全員が一丸となり、最後は木管楽器のスペクタクルなアンサンブルで思いを宇宙に馳せさせて曲を閉じました。 巧かった。

とにかく全奏で畳み掛けるようにしても刺激的な響きに全くならないのが凄いですね。 統率のよく取れたオーケストラ・サウンドに、来ていた子ども達も驚いたのではないでしょうか。 オーケストラによる音楽の醍醐味をたっぷりと味あわせていただきました。

アンコールの「眠りの森の美女」そして最後に全員で「ふるさと」を歌って約2時間。 前半はやや抑え気味でしたけど隅々にまで統一された音色、後半は底力も感じさせた素晴らしい演奏の数々を楽しみました。 しかめっ面して○○の交響曲を聴くよりもファミリーコンサートが最近のお気に入りなんですが、今回もまたそんな思いをより強くした演奏会でした。 皆さんお疲れさまでした。