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芦屋交響楽団 第66回定期演奏会

ぐうの音も出ません戻る


芦屋交響楽団 第66回定期演奏会
2006年10月8日(日) 16:00  ザ・シンフォニーホール

ブラームス: 悲劇的序曲op81
メンデルスゾーン: 交響曲第5番「宗教改革」op107
バルトーク: 管弦楽のための協奏曲

指揮: 山下一史


いつもながら、ぐうの音も出ない演奏会でした。
バルトークのオケコン、管弦楽のための協奏曲が見事な出来なのは予想の範疇でしたけれど、メンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」、見事なまでに緻密かつ自在に変化させた演奏は予測を遥かに超えていました。 この曲のこと、もっと好きになりましたし、ナマで聴けたこと、素晴らしい経験となりました。
もちろんオケコンも見事な演奏でした。 スピード感もあるキレの良い音楽、各プレーヤの巧さを特筆すべきなのでしょうが、誰一人として刺激的な響きになることなく、オーケストラ全体の響きとして綺麗に角を落とした纏め上げた音楽はまさしく極上品の演奏でした。
指揮者の山下一史さん、これまでにも何度か聴かせて頂ける機会はあったものの、何故か仕事やその他の事情で聴けなくて今回が初めて。 縦振りを基本にしながらも響きの隙間を作らない音楽作りなのですね。 オケコンのドライヴも見事でしたが、宗教改革の演奏などまるでカラヤンとベルリンフィルの演奏じゃないかと錯覚するほどでした。
なお前プロのブラームスの悲劇的序曲。 速いテンポ設定であれよあれよといった感じで始まってアレっと思いましたが、筋肉質の音楽でしたね。 しかし落ち着いた色彩できちんと統一されていて、やはりただただ巧いなぁ・・といった印象しかありません。
いずれの演奏も16型の通常配置ながら、なんとコントラバスが10本。 ヴィオラにいたってはオケコンでは15本もいるのですが、見事なまでに統率されていました。 管楽器そして打楽器までも同じ音色で統一されたオーケストラ。 いつもながらこれがアマオケかと思わずにいられませんね。
繰り返しになりますが、宗教改革。 いずれの箇所も見事でしたけど、強いて言うなら第3楽章から第4楽章。 第3楽章がまるで抒情詩のよう。 第4楽章への橋渡しそして序奏部の繊細かつ自然な移行に参りました。 密かに期待はしていたものの、遥かにそれを超越した演奏に呆然、ぐうの音も出ませんでした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

早朝、ヤボ用で近鉄の平城駅まで行ったので、ついでとばかり、秋篠寺から中山町の秋篠川沿い上流に向かって散策しながら1時間20分歩いて帰宅。 その時はなんともなかったのに、昼過ぎから左足甲の外側が痛み出しました。 ヤバイな、と思いつつも時間になったので家を出ましたけど、歩くと左足に響いてかなり苦痛。 しかもよせばいいのにヨドバシに寄ってプリンタのインクを購入し、歩いてホールに移動。 とにかくふぅふぅ言いつつも30分前にはホールに到着しました。

またも痛い足を引きずりながらホールの最高峰まで登っていかないとたどり着けないいつもの2階席後方、BB-40に着席。 ここ何年もこのホールの1階で聴いたことないんじゃないかしら。 とにかくさっそく靴を脱いでリラックス。 殊に患部が腫れている風もないのですけどね、筋でも伸ばしたのでしょうか、困ったことだ。 大人しくして開演を待ちます。

開演10分程前からコントラバス、そしてホルンの方たちが出てこられて準備開始。 その後、ぞくぞくと自由入場形式でステージにメンバーの方が集まってきます。 座席を数えたりしながらオケの編成を確認しましたが、15-15-13-11-10 だったでしょうか。 コントラバスが10本、チェロが11本というのが目を惹きますね。 開演3分ほど前かしら、アナウンスが放送されてましたが、ヴォリュームが小さいのか、練習の音でほとんど聴こえませんでした。

しばらくするとコンミスが登場。 合図を送ってオーボエによる基準音から管楽器、そして弦楽器メンバをゆっくりと見渡しながら入念なチューニングを実施します。 オケによっては、ささっと終わるところもありますが、ここでの弦のチューニングは「いいですね、これですよ」といった感じで、まるで噛んで含めるようにゆっくりと反時計廻りで全員に確認をして準備を整えます。 準備完了、楽屋から足音高く山下さんが登場して始まります。 黒の詰襟のようなジャケットだったかしら、初めて聴かせていただくので期待が膨らみます。

ブラームスの悲劇的序曲。 速いテンポ設定であれよあれよといった感じで始まってアレっと思いましたが、筋肉質の音楽でしたね。 弦楽器を主体とし、全体を落ち着いた色彩できちんと統一していた充足感のある演奏。 凝縮した響きで、ただただ巧いなぁ・・といった感じでした。

左右に広げた両手を胸の前にもってゆき、指揮棒持った右手をすっと突き上げて振り下ろすと、強靭な響きが飛び出しました。 重厚なんですが鋼のような硬さをもった響き。 左右の腕を上下に振り、早めのテンポ設定でキレよく進めます。 時に指揮棒を大きく真横になびかせて音を伸ばしたりもしますが、筋肉質の音楽ですね。 あれよあれよと言った感じ。 いつも芦響とは違って音楽が前に前にと走ってゆく感じにアレっと思ったりもしました。
しかし管楽器は控えめであり、弦楽器主体の音楽構成。 全体が同じ音色で統一され、いささかの緩みもありません。 また静寂な部分では、繊細で柔らかな響きになりますし、いつもながらほんと巧いオケだなと感心しました。
主題を戻し、今度は充足感を感じさせる音楽となりました。 冒頭部分はちょっと気合が入りすぎていたのかなと思ってみたりもしましたが、とにかく終始乱れを感じさせないので解釈なのかどうか判りません。 そして機動力を発揮させたフィナーレを熱く決めて終えました。

管楽器メンバーが入れ替わり、弦楽器も一部前プルトで入れ替えを実施していたようです。 弦楽器の編成は変わりなかったと思います。 期待のメンデルスゾーンの宗教改革。 初めて聴いたサヴァリッシュ/ニュー・フィルハーモニアによる演奏以来のお気に入りの曲でもあります。 演奏会でかかることがないのか、初めてのナマ体験かもしれません。 これまた期待が膨らみます。

メンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」、見事なまでに緻密かつ自在に変化させた演奏は予測を遥かに超えていました。 この曲のことをもっと好きになってしまいました。 いずれの箇所も見事でしたけど、強いて言うなら第3楽章から第4楽章でしょうか。 第3楽章はまるで抒情詩のよう。 そして第4楽章への橋渡しから序奏部、ここの繊細かつ自然な移行に参りました。 密かに期待はしていたものの、遥かにそれを超越した演奏に呆然、ぐうの音も出ませんでした。 素晴らしい経験をさせていただきました。

第1楽章、ヴィオラの方を向いて振りはじめ、豊かな響きを導き出します。 木管アンサンブルが爽やかな響き、オケ全体が湧き上がってくるような響きるような感じ。 柔らかな金管ファンファーレ、高音弦もまた柔らかな響きで極上の序奏です。 決然と主部に入り、速度を上げて覇気ある音楽としますが、常に落ち着いた演奏。 余裕すら感じます。 弦楽器の響きに艶が乗っていて、大編成のオケながら綺麗に分奏されていて、それが響き合っているさまは、カラヤンとベルリンフィルの演奏を思いおこさずにいられません。 ティムパニが鋭くも響きを深めにとって抑制され、自然な盛り上がりで速度を上げたフィナーレもまた見事でした。

第2楽章、明るい木管楽器によるメロディで開始。 金管が輝かしく、弦楽器も爽やかに絡んでかなり早めのテンポだったのではないでしょうか。 駆け足でぐんぐんと進んでゆくような感じ。 ぐっとブレーキをかけて緩急をしっかりとつけていますね。 明るく軽やかなオーボエ、弦のピチカートも柔らかく響きます。 中音弦の魅力を満載した音楽はほんと素晴らしい。 最後は自信をもった音楽としてぐいぐいと進めたあと、軽やかにステップを踏むような着地も見事でした。

第3楽章、しっとりとした弦のアンサンブルに、第1ヴァイオリンが切ない表情で入ってきました。 フルートが清楚な音色で語りかけ、清潔な響きの弦楽器が応えます。 弦楽パート、大人数なのにとてもよく纏まっていて、パート毎がそれぞれに波打っているかのよう。 抒情詩を聞いているような感覚を覚えました。 聴き入りました。

引き続き第4楽章に入り、フルートが素適な響きのソロを披露。 心洗われます。 これが他の木管、ヴィオラ、チェロへと廻され、しっとりとしながらも緻密なアンサンブルがこれまた素晴らしい。 厳かな金管、明るいクラリネットの響きから徐々に力を増して高らかに歌う主部。 ここへの移行部分の自然さ、納得度の高い演奏に参りました。 こんな曲でしたっけ、新しい発見をしたような気分でした。 ますますこの曲が好きになりました。 もう後はひたすら音楽に身を任せて聴いているだけといった感じ。 落ち着いた低弦と高音弦のかけあいによるステレオ効果もありましたし、チャーミングな木管と清楚なヴァイオリン、響きをブレンドさせ自在に変化させてフィナーレ。 雄大に響く賛美歌を最後は山下さんが左手をゆっくり大きく廻し、柔らかな響きのまま、ふわっと音を切りました。 この終わり方もまた印象的で、素晴らしい終結でした。 呆然、ぐうの音も出ませんでした。

20分間の休憩。 足が痛いのでパンフレットを読んだりしながら席でじっとして開演を待ちます。 ふっとステージを見たら、ヴィオラ席(ステージ上手側前列)のイスが2つ増えているようです。 数えたら15。 念のためにチェロ席(ヴィオラの後方)を数えたら変わりなく11のようです。 ヴァイオリンも数えましたが、老眼のかかった目ではあまりに多くて正確には判りませんが、変わりない模様。 そうこうするうちにメンバーの方が出てこられました。 結局のところ 15-15-15-11-10 の編成のようですね。 全員が揃い、またもや入念なチューニングを実施して準備完了。 指揮棒を持ってにこやかに山下さんが登場され、いよいよメインのオケコンが始まります。

バルトークのオケコン、管弦楽のための協奏曲。 スピード感があってキレの良い音楽、もちろん各プレーヤの巧さを特筆すべきなのですが、誰一人として刺激的な響きになることなく、オーケストラ全体の響きの角を綺麗に落とした音楽に参りました。 チームワークの勝利といった感じ。 ともすると個人プレーに目(耳)がいきがちなところですが、しっかりとしたオーケストラサウンドに酔いました。 これもまたまさしく極上品の演奏でした。

第1楽章「序奏」、コントラバスの方を向き、厳かで神秘的な響きを醸し出します。 フルートの柔らかな響きが印象的。 中音弦のアンサンブルがとても落ち着いています。 第1主題の引き締まった高音弦をも包むかのように刺激臭を感じさせません。 ホルンの斉奏も張りがあるのに当たりが柔らかいのが特徴的(けっして緩いのではありません)。 トロンボーンもまたしかり。 オーボエが哀愁を漂わせたソロを奏でてこれもまた素晴らしいものでした。
音楽が緊張感を増し、張りのあるトランペットなども聞こえますが、全体の響きにとてもよくマッチしていて、機動力をもった盛り上がりにも落着きや余裕すら感じます。 これまた耳に当たりの良い柔らかさとパワフルさを持ったホルン斉奏でこの楽章をスパッと切り落としました。

第2楽章「対の遊び」、タイコの張りのある打音、これをことさら強調する風ではなくしっとりと落ち着いています。 弦楽器の弾力あるピチカートにのせ、味わい深いファゴット、軽やかなオーボエ、クラリネット、フルートなど管と弦が絶妙のバランスを持って進みます。 山下さん、両手を上下に小さく振りつつ膝でリズムをとっていますね。 管と弦が絡み合い響きあい、そこにタイコが朴訥とした感じで割って入る、とてもよく纏まった音楽ですね。 自然な感じでフェードアウトしてこの楽章はお仕舞い。

第3楽章「悲歌」、低弦を向いて柔らかな響きを出し、ティムパニは重い打音を鳴らします。 木管楽器が不安げな表情をもったアンサンブルで、瞑想的というのかしら。 ピッコロの響きがとても柔らかなだったのが印象的でした。 オケは強靭さをもった音楽となり、トランペットはちゃんとアクセントをつけていますが、これまた全体の音色にとてもよくマッチしているので突出感がありません。 更に弦楽器に力をこめる山下さん。 中音弦が深く端正な響きで応え、タメを効かせつつ要所を決めて更に進めてゆきますが、いずれも落ち着き払っていて、ここでも刺激的にはなりません。 低弦の厳かな響きに落ち着いた音色のピッコロ、静かにこの楽章を終えました。

第4楽章「中断された間奏曲」、さっと振ってキレのよい音楽。 ちゃんと厚みも感じさせています。 チャーミングな木管の響き、これまた落ち着いた音色ですね。 ヴィオラが深いながらも清楚な感じのするアンサンブル、第1ヴァイオリンも落ちつた音色です。 そしてクラリネットが明るい音色でおどけ始め、リズムに乗って進めたあとのトロンボーンのグリッサンドも鮮やかに決めます。 チューバが軽やかに絡んでいて素適。 充実感ありました。 そして美しい旋律を弦楽アンサンブルがまた落ち着いて進めてゆき。 この楽章を切り落としました。

第5楽章「終曲」、芦響らしい機動力ある演奏を展開。 しかし誰一人として刺激的な響きになることなく、オーケストラ全体の響きの角を綺麗に落とした音楽に参りました。 冒頭のホルンの斉奏から芯のある耳当たりのよい響き。 中低弦のピチカートは指で弦をなでるようにして流れるよう。 リズミカルに曲を進めるのを、ただただ聴いているといった感じ。 トランペットが軽やかな走句を奏でます。 気持ちいい音色でした。 そしてオケの音量を上げてゆきますが、もちろん絶叫なんてしません、緊密に絡み合いつつ音楽を整然と進めてゆきます。 各ソロの巧さを特筆すべきなのでしょうが、オケ全体としての響きがまろやかなのがとても印象的でした。 オーケストラが1個の生命体のような感じさえしました。 そして音量を更にあげ、最後は山下さんが左手を突き上げるようにして終了。

同時に右サイドのギャラリあたりから盛大な拍手。 待ち切れない、といった感じですね。 確かにそれも判りますが、ほんの少しだけ余韻を楽しみたかったなぁ。 でも負けずに大きな拍手を贈らせてもらいましたよ。
いつもながら、これがアマオケかと思わずにいられませんね。 足は痛かったけれど、やっぱり来てよかった演奏会でした。