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宝塚市交響楽団 第41回定期演奏会

オーケストラの勝利、交響曲第10番戻る


宝塚市交響楽団 第41回定期演奏会
2006年12月17日(日) 14:00  いたみホール

チャイコフスキー: ピアノ協奏曲第1番変ロ短調
   (アンコール)不明

ショスタコーヴィチ: 交響曲第10番ホ短調
   (アンコール)不明

独奏:山畑 誠(p)

指揮:船曳圭一郎


力の入ったショスタコーヴィッチ、交響曲第10番はオーケストラの勝利でした。

ショスタコーヴィッチの代表曲とも言われる交響曲第10番ですが、パンフレットにも書いてあるように、理想と現実、スターリンの死による呪縛からの解放とその混乱による戸惑い、難曲です。 しかし、このとても難しい曲を一丸となって見事に演奏したオーケストラが最後には勝ったのだと確信した素晴らしい演奏でした。

弦楽器も管楽器も打楽器も、皆さんとても上手かったですね。 味わいを感じさせた素晴らしいソロの数々、ここには書ききれません。 というのも実はこの曲のこと(CDはもちろん持っていますが)あまり好きではなかったし、よく覚えていなかったこともあるのですね。 だけれども、この演奏を聴かせてもらい、なんだかこの曲のことをより近くに感じさせてもらったように思います。 復習してみるかな・・・なんて思ってみたりもしています。 とにかく曲はよく知らなくても、素晴らしい演奏は耳にすると分かりますからね。

なおこれに先立って演奏されたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番、華やかさよりも落ちついたスケールの大きな演奏でした。 歯切れもよく上手かったと思いますが、ちょっと意味不明なのですが、この曲のことを実はあまり好きではないこともあって、この演奏でもそのことを再認識した演奏でした。 とてもきっちりとした演奏だったと思いますし、一般的にはとても上手い演奏だと思うのですが・・・だけどあまり印象に残りませんでした。 すみません。

しかしながら、やはりこの日の演奏はメインのショスタコーヴィッチの交響曲第10番。 個人的にもこの演奏に全ての焦点があたっていましたし、また復習してみたくなるような演奏に出会えたこと、幸せでした。 ありがとうございました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

今日もまた休日出勤、お昼になってオフィスを出て駅まで急いだ甲斐もあって開場前にホールに到着。 しばし列に並んで開場を待って入場しました。

2階席最前列の 21-29 に陣取ってステージを見るとピアノの調律、そして何人かが椅子の並び替えをやっています。 間際までショスタコーヴィッチの練習をされていたみたいですね。 前プロの曲を最後のリハーサルにもってくると、座席の並び替えをせずに楽なんですけど、直前まで入念な仕上げをされていたのでしょう。 期待が膨らみます。

そして更に期待を膨らませたのが演奏者。 チラシにショスタコーヴィッチの書籍を書かれたかぶとやま交響楽団の工藤さんのが挟み込まれていたので、もしやと思いパンフレットを確認すると、やはり演奏者としても参加されていますね。 そんなこんな、前売りも好調だったのでしょうね、通路には補助椅子も置かれていましたが、続々とお客さんが入って2階席も満員です。

開演14時、ようやくアナウンスがあって開演5分前を告げます。 予告どおり5分後に暗転となり、拍手とともにオーケストラのメンバーが着席。 13-14-10-9-7 の通常配置です。 コンマスによるチューニング実施前、ヴァイオリンの後方で打楽器か何かが落ちたのでしょうか、何かが落ちて転がるような音がしましたが、何事もなかったかのようにチューニングを続行。 準備が整いました。 拍手に包まれて、独奏者の山畑誠さんと指揮者の船曳圭一郎さんが登場し、さぁ始まります。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番、華やかさよりも落ちついたスケールの大きな演奏でした。 歯切れもよく上手かったと思いますが、ちょっと意味不明なのですが、この曲のことを実はあまり好きではないこともあって、この演奏でもそのことを再認識した演奏でした。 とてもきっちりとした演奏だったと思いますし、一般的にはとても上手い演奏だと思うのですが・・・だけどあまり印象に残りませんでした。 すみません。

第1楽章、棒を持たずに振り始めた船曳さん、タイトなホルンの咆哮に続いて重厚なピアノで始まりました。 熱い弦楽器も見事。 山畑さん、輝かしい響きでバリバリと弾き進んでゆき、オーケストラもまた力強い弦楽アンサンブルで応えていました。
船曳さん、ほとんど立ち位置を変えず、ヴァイオリンと目の前の管楽器を見て淡々と指揮しているような感じですね。 山畑さんのピアノもまた響きは輝かしく明晰な演奏なのですけれど、落着いているのかなぁ、やはり淡々と弾いているような感じを覚えました。
クライマックは迫力ある締まった響きでしたし、このあともきちんと纏まって聴こえるし、テクニックも申し分ないと思うのですけれど、どうもインパクトに欠けているように思えてなりません。 終結部で力をこめて大きくまとめると、会場から拍手が起りました。

第2楽章、やわらかなピチカート、フルートの落着いた音色でしみじみと吹きます。 そこにピアノが端正な感じで入ってきて、木管アンサンブルもまた端正に絡みました。 チャイコフスキーらしい艶やかさよりも落着いた感じを出しているのかしら。 軽やかにオケが走り始めると、ピアノもまた軽快に弾き進めます。 ドラマティックで華麗な感じではなく、ここもまた淡々とした感じで越え、静かなピチカートで終了。

第3楽章、ちょっと早めのテンポでピアノとオケが走り始めました。 タイトによく締まった管楽器が速射砲のように畳み掛けてたのが印象的。 静かになり落着いて曲を進めてゆくのですが、ずっと気になっていたのですが中低弦の響きがあまりしないみたい。 どこか表層的な感じにも思えます。 そしてまた畳み掛けてから、落着いて丁寧に曲を進めてゆきます。 オケは巧いのだけれど、正確に曲を流しているような感じも。 そして終結部に向けて曲は盛り上がり、ぐっと力を込めた響きでクライマックスを築いて迫力ありました。 でもね、どこか深みに欠けるような感じもしつつ曲を閉じました。

なんだかな〜、オーケストラは巧いしピアノも輝かしいタッチでパワーも感じるのですが・・・ぐっとくるものを感じなかったのは、やはりこの曲のことあまり好きではないからでしょうね、きっと。 なおアンコールは、ブリリアントな小品で落ちついた優しさも感じましたが、何の曲だったのでしょう。

20分間の休憩。 ちょっと気分転換に1階席のロビーまで降りましたが、人が多いですねぇ。 誰を待つでもないのでちょっとだけロビーに居てまた席に戻りました。
定刻、管楽器の方より整列入場。 14-13-9-9-7 の編成のようですね。 コンマスがチューニングをして準備完了。 船曳さんが登場、コンマスと握手をして始まります。

ショスタコーヴィッチの交響曲第10番、オーケストラの勝利でした。
弦楽器も管楽器も打楽器も、皆さんとても上手かったですね。 味わいを感じさせた素晴らしいソロの数々、ここには書ききれません。 というのも実はこの曲のこと(CDはもちろん持っていますが)あまり好きではなかったし、よく覚えていなかったこともあるのですね。 だけれども、この演奏を聴かせてもらい、なんだかこの曲のことをより近くに感じさせてもらったように思います。 復習してみるかな・・・なんて思ってみたりもしています。 とにかく曲はよく知らなくても、素晴らしい演奏は耳にすると分かりますからね。

第1楽章、棒を持たずコントラバスの方を向いて柔らかく小さく振り、奥深い響きを導き出しました。 ヴァイオリンが入ってもコントラバスの響きがしっかりと聴こえます。 集中力満点の深い音楽の開始です。 クラリネットもまた深い音色、よく揃った綺麗なヴァイオリンのアンサンブル。 ホルンが入り、ティムパニが打って力を増してゆきます。 先ほどとは全く違うオケといった感じですね。 中低弦が常に締まって聴こえてきます。 ヴィオラの深い音色もまた見事でしたよ。 先ほどと同じく管楽器のソロがとても巧いのですけれど、ここは一歩進んでいずれも深い音色で統一しているのが特徴的。 ドラが入って緊張感が更に高まり、船曳さん、オーケストラの響きをぐいっとすくい揚げるようにします。 音楽が波打つよう。 見事なオーケストラの響きを堪能しました。 静かにこの楽章を終えると、ホール内のあちこちから咳払いが飛び出しました。

第2楽章、引き締まった音楽を鷲掴みのようにして始まります。 集中力の高い音楽、スネアが打ち、ブラスが渋い音でしたね。 とてもいい感じです。 太鼓の一撃も見事。 船曳さん、ここでは小さく振って音楽を進めます。 ただもうちょっと中低弦の響きが欲しかったかな。 トロンボーンのソロがまたとてもいい感じで吹き、そしてまたオケが熱くなります。 ブラスが全開、そして打楽器、盛り上がっても音楽が崩れない巧さを感じます。 トランペット奏者の男性、顔が真っ赤でした。 タイトなトロンボーンとホルン、カッコ良くこの楽章を閉じました。

第3楽章の始まる前にチューニングを実施し、仕切りなおして音楽が始まります。 左右に振り分けられたコントラバスとヴァイオリンの響きで進み、中央の木管楽器がたっぷりとしています。 ファゴットが雄弁ですね。 中低弦の響きがよく聴こえているのもまた嬉しいな。
艶のあるホルン・ソロ、落着いていて、弦とホルンの響きが繰り返されます。 ドラが静かに鳴り、深いピチカート、エキゾティックなコールアングレと耳を奪われました。
伸びやかな音楽になりましたが、ヴァイオリンの揚げ弓でどこか緊張感も感じさせます。 締まった音楽で盛り上がったかと思うとすっと引いて自在なオケ。 ほんと巧い。 最後は少々甲高いピッコロ、弦のトレモロでそっと終わりました。

第4楽章にはアタッカで入ります。 深い低弦の響き、オーボエが哀愁を感じさせ、しめやかな感じのさせる開始。 丁寧に曲をそっと進めてゆきますが、音楽が走り始めるとチャーミングな木管、リズム感よく盛り上がってゆきます。 コントラファゴット、コントラバスの低音がまた素適。 更にリズムにのって盛り上がりますが、整った音楽は一糸乱れませんね。 ドラ、大太鼓の一撃のあと、ヴィオラの柔らかな響きもまた魅力ありました。 うねるように曲が進み、そしてまたタイトに盛り上がるとチャーミングな木管、そしてまた打楽器と、ぐいぐいと惹きこまれてゆきました。 もうすっかり音楽に巻き込まれた感じ。 聞き惚れていました。
そして最後は船曳さんが左手をぐるっと回したあと、腰を屈めながら両手を力強く振り下ろして全曲を閉じました。

パンフレットにも書いてあるように、理想と現実、スターリンの死による呪縛からの解放とその混乱による戸惑い、難曲でした。 しかし、このとても難しい曲を一丸となって見事に演奏したオーケストラが最後には勝ったのだと確信した素晴らしい演奏でした。

アンコールは何の曲だったのでしょう、あまり印象に残っていません。

蛇足でかつ生意気なのですが、ちょっと感じたこと。 船曳さんの指揮、いつも思うのですが旋律線を追いかけているような感じじゃないでしょうか。 だからかな、内声部がちょっと弱くなりがちに聴こえ、チャイコフスキーではいまいち迫り来るような感じがしなかったのかもしれません。 ですがこのショスタコーヴィッチ、曲の造りが複雑なのとオーケストラの卓越した技術でそんな脆弱性が払拭されたのじゃないかな。 とにかくショスタコーヴィッチはオーケストラ勝利だと強く思った演奏でした。 皆さん、おつかれさまでした。