BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
第13回 天理の第九演奏会

熱い音楽に心が満たされた演奏会戻る


第13回 天理の第九演奏会
2006年12月23日(祝・日) 16:00  天理市民会館・やまのべホール

<第1部>
モーツァルト: 歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲K.527(*)
J.シュトラウス: 喜歌劇「こうもり」序曲367(*)

<第2部>
ベートーヴェン: 交響曲第9番「合唱つき」op.125

(アンコール):「ふるさと」「蛍の光」

独唱: 老田裕子(S)、西村薫(MS)、松本薫平(T)、晴雅彦(Br)
合唱: 天理第九合唱団、合唱指導:千葉宗次

管弦楽: <第1部>天理シティーオーケストラ
     <第2部>天理第九管弦楽団

指揮: 津田雄二郎、安野英之(*)


気持のよく乗った素晴らしい合唱でした。 タイトでよく締まった声が、壁のようにそびえ立った合唱団の席からビンビンと響き渡ってきて、一昨年と同様の感動がまた甦ってきました。

とにかく曖昧さを感じさせない合唱です。 各声部がきちんと聴こえ、かつ響きあっていました。 そして津田雄二郎さんの指揮にも巧く応えたコントロール。 一昨年、第九は「合唱付き」と呼ばれるけれど天理の第九は「合唱」そのもの、と書いた記憶がありますが、今年もまた同じ感想を持ちました。

オーケストラの演奏としては、前3楽章まではどことなく即物的で淡々と進めているような感じではかなったでしょうか。 個人的には、もうちょっとオーケストラを歌わせて欲しいようにも思って聴いていたのですけれど、第4楽章になるとそのようなことはどうでも良くなった、というとオケの方には失礼ですが、そう思ってしまいました。  すみません。
オーケストラのしっかりとした中低弦の響きを芯にして力強い男声合唱が乗り、しゃきっとした女声合唱もまたアルトとソプラノがしっかりと分離してのステレオ効果。 金管楽器が上質な響きで華やぎを加えたクラマックスでは、コントラバスの弓使いのなんと物凄い速さなんでしょう。 熱気が更に高まり、合唱がオーケストラをも包み込んで心が満たされました。

今年は中学1年の長男も同行しての鑑賞となりましたが、その長男もまた、凄かった、と漏らしていましたので、勘違いではないと思います。 熱い感動を覚えました。

なおこれに先立って演奏された安野英之さんの指揮によるモーツァルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲とヨハン・シュトラウス2世による喜歌劇「こうもり」序曲。 どちらも落着いてよく纏まった上質な演奏でした。 弾力に富んだ「ドン・ジョバンニ」、しなやかに歌った「こうもり」、いずれも上品で丁寧に纏めていましたね。 ここでも響きの柔らかなコントラバス、とても印象に残りました。

演奏会のあと、長男と二人で駅前のイルミネーションを見ながらの帰路、振る舞いぜんざいも頂き、温かな気持ちを持って帰路につくことができました。 とても気持ちのいい演奏会でした。 ありがとうございました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

何故か今年は中学1年の長男が第九を聴きたいとのこと。 長男を連れて家を出ましたが、ちょっと出遅れてしまったみたい。 電車の接続が悪く、開演30分前にホールに到着。 いつもよりも早い到着なんですけれど、天理の第九はいつも満員と聞いています。 もうちょっと早く着きたかったのですね。 さっそく座席引換をして後ろから3列目くらいしかいい席がありませんので、メ-24,25。 もとより後方の席を希望していたのでこれで良かったのかも。 ガラス越しにロビーコンサートの準備もされているのが分かりましたが、混雑するホールに入るのをためらって、駅前に戻って100円ショップで買い物をしてからホールに入りました。 やっぱり満員ですね。 補助椅子も出ていたようです。

開演5分前ころより天理シティオーケストラのメンバーが自由入場で着席します。 弦楽器の編成は 10-8-9-7-6 の通常配置。 定刻となって天理市長さんの挨拶は、この第九演奏会が1994年から続いていること、また天理市は奈良で一番の街を目指していることなどを述べられて開演です。 チューニングを実施し、指揮者の安野さんがにこやかに登場されていよいよ始まります。 まずは序曲を2曲。

モーツァルトの歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲。 弾力ある和音を2つ、ゆったりと深い呼吸で進めてゆきました。 コントラバスの響きが心地良く響いてきますね。 フルートもまた深い響きで落着いています。 ヴァイオリンのチャーミングな響き、快活になっても落着いた音楽造りはそのままです。 端正なオーボエなど、締まった響きで弾力があるのが特徴かな。 とても丁寧に上品に纏めた演奏だったと思います。

管楽メンバーが一部入れ替わり、トロンボーンとホルンのメンバーも加わって、ヨハン・シュトラウス2世による喜歌劇「こうもり」序曲。 こちらも弾力ある響きが飛び出しました。 チャーミングに響くオーボエ、瑞々しいピチカートのチェロが印象的でしたが、全体的には落着いた色彩のこうもりだったと思います。 ゆったりと歌わせて、ルバートもかけていたかしら、コンマスの栄島さんのつややかなヴァイオリンを楽しみました。 軽快ですけれど、こちらも落着いた上品な美しさでしっとりと演奏しているようです。 力も入っているけれど響きの優しいコントラバスで盛り上がり、スピードを上げて駆け込んだ終結で潔く終わりました。

いずれも上品で丁寧に纏めた演奏で、柔らかなコントラバスが特に印象に残りました。

さてアナウンスはありませんが15分間の休憩だったでしょうか。 オーケストラのメンバーが自由入場で集まってきます。 ここから天理シティオーケストラのメンバーを主体にした天理第九管弦楽団の名称になります。 編成は 10-8-9-8-8 で、先ほどまで指揮されていた安野さんもチェロ・トップで参加されていますね。 その他、他団で活躍されている方のお顔もお見受けしました。

指揮は津田雄二郎さん。 昨年に続いて2度目の客演指揮とのことですが、あいにく昨年はおじゃましていなので今回始めて聴かせていただきます。 東京芸大を1980年に卒業され、ドイツでヘルムート・リリングやクルト・レーデルのもとで研鑚を積まれたとのこと。 吹奏楽や合唱の分野でも活動されている方のようですね。 その津田さんが登場して一礼、さらにコンマスの栄島さんと握手して第九がいよいよ始まります。

そのベートーヴェンの第九、気持の乗った素晴らしい合唱でした。 タイトでよく締まった声が、壁のようにそびえ立った合唱団の席からビンビンと響き渡ってきて、一昨年と同様の感動がまた甦ってきました。
オーケストラの演奏としては、前3楽章まではどことなく即物的で淡々と進めているような感じではかなったでしょうか。 個人的には、もうちょっとオーケストラを歌わせて欲しいようにも思って聴いていたのですけれど、第4楽章になるとそのようなことはどうでも良くなった、というとオケの方には失礼ですが、そう思ってしまいました。
オーケストラのしっかりとした中低弦の響きを芯にして力強い男声合唱が乗り、しゃきっとした女声合唱もまたアルトとソプラノがしっかりと分離してのステレオ効果。 金管楽器が上質な響きで華やぎを加えたクラマックスでは、コントラバスの弓使いのなんと物凄い速さなんでしょう。 熱気が更に高まり、合唱がオーケストラをも包み込んで心が満たされました。 熱い感動を覚えました。

第1楽章、ふわっと振って慎重な開始。 引き締まった音楽です。 栄島さん、いつもように上体を大きく動かしてオーケストラをリードしていますね。 重厚な響きながら、やや即物的とも思える淡々とした曲の運び。 中低弦の響きがハッキリと聴こえ、オケの高音弦との左右の音の分離も見事です。 ティムパニのロールが入ってタイトな盛り上がりですが、金管の抑制効いていて突出しません。 端正にまとめた盛り上がり。 木管楽器も質実として落着いた感じ、オケ全体がきちんと一つに纏まっていますね。 ホルンのソロが柔らかく響き、木管が落着いた色彩です。 うごめくような低弦で力を徐々に増した端正な盛り上がり。 オーソドックスに纏め、念を押すようにしてこの楽章を止めました。

第2楽章、津田さんの軽いハナ息とともに気合の入った始まり。 艶やかな響きが飛び出しました。 この楽章も端正な感じで進んでゆきます。 やはりコントラバスがキリっと締まって聴こえるのがいいですね。 あとホルンが柔らかでかつ張りのある響きもよかったなぁ。 ティムパニは先の細い赤いマレットでタイトに決めて、要所では力を込めた展開とするのですが、全体として緻密で正確に進めているような感じ。 決して冷たくは感じないのですが、余計な彩りを排し、端正な演奏として、最後はやや型どおりのような感じで力を込めて終わりました。

左右の袖より合唱団が入場します。 ステージ後方の合唱団席は急勾配で、まるでそびえ立つようですが、この上段にまずは男声団員。 下段の3分の2くらいのスペースに女声団員が、向って左にソプラノ、右にアルトと並んでゆきます。 この間、指揮者の津田さんは独唱者の椅子に座ってしばし休憩。 全員が並び終えると、指揮者が立ち、今度は独唱者の登場となります。 ソプラノの老田裕子さん、一度聴いてみたかったのですね。 あとバリトンの晴雅彦さんは吹田市交響楽団の今夏のサマーコンサートで軽妙な演技と素晴らしい歌唱を楽しませていただきました。 楽しみです。 全員が揃って着席して準備完了。 いよいよ再開です。

第3楽章、指揮棒を置いて津田さんが振り始めます。 柔らかな木管楽器、そして弦楽器がゆったりと奏でてゆきます。 豊かな中音弦、凛とした木管、透明感ある高音弦が静かに呼吸するように進むのがいい感じ。 これはいいな、と聴き始めたのですが、個人的にはもうちょっとヴァイオリンを歌わせて欲しいようにも感じたりもして・・で、いったんそう思ったからでしょうね、なんだか単調な感じにも思えてきました。 ホルンのソロが丁寧に音楽を紡ぎます。 ちょっと遅めのテンポかしら、ゆったりとしたリズムのピチカートにのせて進みます。 力を増し、覇気を感じるトランペットがアクセントかしら。 でもやはり全体的にはやはり単調な感じを覚えつつ、そっと着地をして終わりです。
横を見たら長男が舟をこいでましたので、つっついて起こしました。

第4楽章、やはり指揮棒を持たずに振って、今度は引き締まった金管とティムパニよるきりりっとした開始。 津田さんのハナ息とともに底力のある低弦が響き渡りました。 でもまだ余裕も感じさせる素晴らしい響き。 津田さんも気合入っているのでしょうね、ハナ息がホールの後ろまでよく聴こえます。 弦楽器と管楽器がよく呼応しあい、丁寧に響きあって力を込めているような感じです。 コントラバスによる歓喜のテーマがゆったりとホールに流れます。 なんと津田さん、この旋律の間に眼鏡をとって曇りを拭き取って指揮を中断。 でもこの間もまったく滞ることなくしっかりとした演奏が進みます。 見事。 ファゴットの柔らかな響きも素適でした。
きちっとしたこの楽章の演奏はゴシック様式かしら、ぐっと盛り上がると合唱団が起立。 バリトンの晴さんのよく締まった歌声がホールに満ちました。 明るく艶のある余裕の歌唱ですね、さすが、と唸りました。 合唱団がこれまた良く引き締まった声で呼応し、タイトな男声もまた見事。 津田さん、両手を使って合唱団を指揮しています。 津田さんが両手をすぼめると、合唱団もまたボリュームコントロールがよく効いて、すっと音量が下がりますね。 よく訓練された合唱は聴いていてホント気持ちよくなってきます。
行進曲、コントラファゴットがようやくの出番。 いい音でした。 抑制のかかったトライアングル、トランペットと落着いた音色のオケ。 オケが落着いて走り始めて合唱団がパワフルに語りかけます。 オーケストラの華やかなトランペット、遥かな響きのホルンとも熱い歌声が絡んでまさしく歓喜の歌といった印象。
一転して荘厳な Millionen! 、合唱の各声部がステレオ効果抜群で響いてきます。 男声合唱と低弦やトロンボーンの響きがよく溶け合ってますし、女声合唱の柔らかでチャーミングな声、聞き惚れました。 そして津田さんが手のひらを使って合唱団をコントロール、どうぞどうぞと手のひらで盛り上げて今度は高らかに Millionen! の合唱。 ソリストも立ち、全員一丸となって熱く、とても熱く盛りがあります。 老田さんのソプラノ、よく響く素適な声が後方まで届いてきて、期待度No.1も頷けました。 コーダとなり、コントラバス奏者の方の弓が物凄い速さで弾いてらっしゃいます。 最後の最後まで熱い合唱が全く崩れることなく磐石な歌声を響かせ、熱気を受けたオーケストラも弾力をもって確信したように全曲を閉じました。

一昨年、第九は「合唱付き」と呼ばれるけれど天理の第九は「合唱」そのもの、と書いた記憶がありますが、今年もまた同じ感想を持ちました。 熱い感動を覚えました。
アンコールに「ふるさと」をホールの全員で合唱し、光る棒を振って「蛍の光」も歌って演奏会がお開き。 胸が熱い気持ちでいっぱいになりました。
外は出るともう暗くなってましたが、駅前のイルミネーションがとても綺麗。 ここで振る舞いぜんざいも頂き、お腹も満たされ、ほっとするような温かな気持ちを持って帰路につくことができました。 とても気持ちのいい演奏会でした。 今年もありがとうございました。