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京都フィロムジカ管弦楽団 第20回定期演奏会

ハンブルグ稿、密度の濃い演奏内容戻る


京都フィロムジカ管弦楽団 第20回定期演奏会
2007年1月21日(日) 14:00  京都コンサートホール・大ホール

伊福部昭: 交響譚詩
マーラー: 2部からなる交響曲様式による音詩『巨人』

指揮: 金子健志


マーラー、ブルックナーに造詣の深い音楽学者金子健志さんの指揮によるマーラー、学術的な興味もさることながら、魅力的な演奏に感激して帰ってきました。

まずは伊福部昭の「交響譚詩」、土俗的というよりもスマートな演奏といって良かったと思います。 第1譚詩、きちっとしたパワーで制御された音楽が見事でしたし、第2譚詩ではゆったりと進めていますがキリっとした表情。 とにかくオケが巧いんです。 勢いでわっ〜と演ってしまうような感じではないですものね。 よく考えて練り込んだという印象を持ちました。 ティムパニの女性奏者が、中央最上段で演奏をキリっと引き締めて、カッコ良かったのもまたとても印象的でした。

そしてマーラーの交響曲第1番・・ではなく、「巨人」と呼ばれていた最後の稿、ハンブルク稿による「2部からなる交響曲様式による音詩『巨人』」。 こちらはとても興味深い演奏でした。

冒頭は聴き手としても緊張してしまいました。 クラリネットで演奏される狩りのファンファーレをホルンが吹きますし、バンダのトランペットも舞台上です。 ああっ、と思いながらの演奏。 この後、いろいろとありましたが、目立ったところでは木管のベルアップ、終楽章でのホルンの起立などもなく、金子さんが意図された純音楽的なアプローチから繰り出されてくる音楽をオケが活写していた、そんな感じでしょうか。
終楽章のコーダでのティムパニ(1組しかありません)、ロールを通常より長くやって、最後にはもの凄い力を込めて叩いたのに吃驚しました。
時に事故もありましたけれど、とても見事な演奏だったと思います。

なおオケの編成は、ヴァイオリンを両翼配置としていましたが、通常第2ヴァイオリンの位置とヴィオラが交代。 低弦は向って右側の通常配置でした。 管楽器もトランペットが中央最上段のティムパニの前。 その向って右側にトロンボーン、ヴィオラ後方にはホルンが7名といった感じで通常的な配置でしょうか。

とにかくこの演奏会、とても密度の濃い演奏会でした。 とても良い経験になりました。 このような経験を与えてくださった皆さんに感謝します。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

開演30分前、京都コンサートホールに到着しました。 じつは前夜、このホールで開催された別の演奏会のチケットも貰っていましたが、体調がピリっとしないのでパスさせていただきました。 夜の演奏会、最近ちょっと辛いんですよ、すみません。 だから、この演奏会に賭けた、というと大袈裟なのですけれど、気分的にはそんな感じです。 とにかく魅力的なプログラミングですものね、ちょっと勢い込んで当日券を買い(我ながらオトナ気ない)、ホールに入っても、ロビーコンサート?、あっベートーヴェンの7重奏曲やな〜、と思いつつも急いで2階席への階段を駆け上りました。 でも、あれぇ〜結構空席あります・・・ 2階席はガラガラって感じでした。 1階席は6割くらい埋まっていたかしら。 とにかく、2階最前列は座ってみたものの足元が窮屈なんで、2列目の通路側 C-2列-12 を確保、隣席に荷物を置きました。

定刻までパンフレットを読みながら開演を待ちましたが、このパンフレットがまた読み応えあります。 中でも「<ハンブルグ稿>に関する現場報告」と題された、金子さんによる譜例付きの6ページ。 老眼の進んだ目、老化の進んだ頭には決して優しくはないですが、とにかく興味深々です。 きちんと読み切れないうちに定刻。 整列入場が始まってしまいました。

この時に気づいたのですが、オケの配置はヴァイオリンを両翼配置としていましたが、通常第2ヴァイオリンの位置とヴィオラが交代。 低弦は向って右側の通常配置でした。 管楽器もトランペットが中央最上段のティムパニの前。 その向って右側にトロンボーン、ヴィオラ後方にはホルンが7名といった感じで通常的な配置でしょうか。 なお弦楽器は 11-11-7-6-6 名による構成だったと思います。 コンマスが出てこられてチューニング。 その後、ゆっくりと金子さんが登場され、指揮台の前で一礼をしてから、慌ててオケを立たせてました。 いよいよ始まります。

伊福部昭の「交響譚詩」、ちょうど1年前に六甲フィルでも聴いた曲なのです。 土俗的というよりもスマートな演奏といって良かったと思います。 第1譚詩、きちっとしたパワーで制御された音楽が見事でしたし、第2譚詩ではゆったりと進めていますがキリっとした表情。 とにかくオケが巧いんです。 勢いでわっ〜と演ってしまうような感じではないですものね。 よく考えて練り込んだという印象を持ちました。 ティムパニの女性奏者が、中央最上段で演奏をキリっと引き締めて、カッコ良かったのもまたとても印象的でした。

第1譚詩、金子さんのハナ息がホール後方まで届く勢いを持った開始。 艶やかな弦楽器、明るい金管楽器で、キレのよい音楽が飛び出し、走ります。 土俗的というよりもスマートな印象。 テンポを落とすと、金子さん、大きくなでるように振って曲を進めます。 木管アンサンブル、落着いた感じながらも鮮やかな色彩が透けて見えるような感じ。 弦が入ってまた音楽が走り始めると、ティムパニが響きの多い打音ですね、これは土俗的・原始的な感じかな。 でも金管のソリッドな響き、弦楽器のキレの良さなど、全体としてとてもスマートで都会的な感じがします。 金子さん、ステップを踏みながら盛り上げます。 ティムパニの強打がとてもカッコよく、ぐんぐんと進めていったのを、金子さんがすっと伸ばした左手をぐるっと大きく廻してオケを止めました。

第2譚詩、オーボエのピンと張りつめたような響きによる開始。 クラリネットの深い響きでゆったりと進みます。 フルートのソロも懐かしさを感じさせるものですが、いずれも音楽が全く弛緩せず、ピンと張りつめた表情を持ってます。 そしてコールアングレの懐かしさを感じさせるソロ。 ゆったりと深く、でも若いオケらしく湿り気を感じさせません。 このどこか懐かしい旋律、そしてリズムが繰り返されつつ音量がアップ。 ここでもまたティムパニが中央でカッコよかったですね。 文字通り核になってます。 金管ファンファーレ、トランペットの方もまた切れ味良くって巧いなぁ。 そしてまたコールアングレによる懐かしい旋律が戻ってきたあと、ティムパニとハープの響きが静かに消えていって終了。 ホール内にしばし静寂の時がながれてから、拍手が沸き起こりました。

20分間の休憩。 2階席では中央最前列こそ埋まってますが、2列目は反対側の通路側の一組だけで中央がガランとしているのはなんとも淋しいですね。 まして金子さんによる「現場報告」を読んでいたら、この演奏会のために相当な努力をされていることも分かりました。 音詩「巨人」のナマ演奏を聴けるのなんて、多分一生にこの1度じゃないか、と思えてきました。 とにかくこの「現場報告」、読みでがあって、最初からまた読んでいたので、やっぱり最後まで読みきらないうちに定刻となってしまいました。 オケの方々が整列入場されます。 今度は 12-11-7-6-6 の編成のようです。 最後に金子さんが登場され、ホールの3方向にお辞儀をされました。 「ハンブルグ稿」演奏に立ち会う人々への気持ちの表われかな、なんて勝手に想像しましたが、聴き手のこちらも緊張感が増してきました。

第1楽章、金子さん、両手を使ってゆっくりと振り始め、弦楽器による「A(ラ)」の音が流れます。 オケも緊張感が漂ってるのでしょうか、どこかピリピリした雰囲気。 これは聴き手の自分が緊張しながら聴いているからかもしれません。 狩のテーマはクラリネットではなくホルンが吹き、トランペットがバンダじゃなくステージ上で吹くというのはパンフレットに書かれていたのを確認。 ちょっと表現悪いけれど、萎びたような感じかな、ゆったりと進んでゆきます。 ティムパニもさっきと違って重い響きで打ってますね。 ようやく第1主題となって音楽の流れが速くなると安心してきました。 なんでかな。 とにかく金子さん、軽くジャンプ、ステップを踏みながら進めます。 音楽の流れに乗って聴き進めますが、熱い演奏ながらも、とても美しい音楽としていますね。 ロマンの香りが漂っている、そんな感じもしました。 とにかくエキセントリックじゃないのですよ。 それでも、ちゃんと気持ちの乗った音楽がとても心地良く、更に畳み掛けるようにしての終結。 ここでは、ティムパニが若干早く終わってズレたのかな、と思ったんですけど、ズレて聴こえるように、との指示が書いてあるようなこともHayesさんの感想に書かれてました。 どうなんでしょう。 とにかくハッとした瞬間でした。

第2楽章、金子さんが身体を大きく動かして始めます。 トランペットの朗々とした旋律がホールに流れました。 憧れを含んだようなロマンティックな感じです。 第2ヴァイオリン、ヴィオラ、そして木管アンサンブル、いずれもしっかりとしてて巧いですねぇ。 そして各パートが有機的に絡んでます。 金子さん、大きく振っていたのをすっと引き締め、再度トランペットのソロになります。 ここも朗々と歌います。 そして最後はゆったりと柔らかく演奏し、ハープを伴ったオケの響きが途切れるようにして終わりました。

第3楽章、金子さんが右手を大きくすくうようにして、低弦とティムパニのリズムに乗せて始めます。 あとはお馴染みのスケルツォなんですが、ホルンの旋律や木管の音型が違うような感じに思えたのですけれど、ん?、と思っている間に、音楽はおかまいなく先に進んでゆきます。 そして、ぐいぐいと盛り上げたのを柔らかく切ります。
ホルンの響きが茫洋とした感じで響き、今度はやわらかな弦のアンサンブル。 コントラバスの響きが心地よく伝わってきます。 ふわっふわっと進むワルツかな。 そしてまたホルンが入って冒頭の旋律を戻し、今度はホルンがまろやかながらもバリバリっと吹いて、シンバル、トライアングルもまた柔らかく響きかせます。 とても落ち着いた感じの盛り上がり。 パンフレットにはここはインテンポで演奏するとのこと。 だからでしょう。 音楽を美しく活気つかせたのを、最後、ふわっと着地させました。

第4楽章、張りのあるティムパニの響き、コントラバスとチェロが旋律を歌います。 しかし最後方の席ではチェロの音がよく分かりませんね。 やっぱり。 とにかくゆったりと進みます。 オーボエの凛とした響き、木管アンサンブルがとても綺麗です。 そして徐々に音量があげますと、金子さん、ヴァイオリンに歌うようにと指示したりもするんですが、テンポはゆったりとしたままです。 オーボエの女性奏者の方、真っ赤な顔をされての熱演でした。
さてハープが入り、柔らかな音楽。 このあたりちょっと雰囲気違うような気もしましたけど、この稿を聴くのは始めなんでよく分かりません。 そしてまた葬送行進曲に戻り、オーボエ、ヴァイオリンのソロがしとやか。 トランペットも艶やかに絡みますけど、ゆったりとしたテンポのままティムパニの打音をともなって静かに終えました。

第5楽章、もちろんアタッカで突入、金子さんが小さくジャンプをして幕を開けます。 オケ全体がひとつに纏まった演奏です。 刺激的ではなく響きを深めにとっているような感じかな。 リズムに乗せて着実に進めているといった印象を持ちました。 金管もよく揃っていて、落ち着いた感じです。 そして嵐が去っても丁寧に響きを集め組み合わせて演奏しているような感じ。 そしてまた嵐の前触れがやってきます。 ぐっと盛り上がります。 ここでもちょっと違う音型があったかな。 それはともかく、ホルンの斉奏は朴訥として拡がるような響きなのに対し、トランペットは少々硬い響きですね。 対象的な感じ。 金子さん、要所でぐっと力を込めてゆきますけど、パンフレットにも書いてあるとおり、インテンポで曲を進めています。 ヴィオラの深みのある締まった響きがよかったなぁ。 そして、シンバルの一撃、金管ファンファーレと力が篭ります。 銅鑼の場面では金子さんがジャンプしてましたね。 でもじっくりと曲を進めてゆきます。 そして、ホルンの起立はなく、ポリフォニックに響くコーダをじっくりと楽ませてもらいましたが、最後のティムパニ(1組しかありません)、ロールを通常より長くやって、しかも最後にはもの凄い力を込めて叩いて全曲を閉じたのに吃驚しました。 確かにちょっとクサイけど、曲はともかく演奏として感動しました。

珍しい稿による演奏といった面だけでなく、非常に密度の濃い演奏内容に満足しました。 とても良い経験になりました。 このような経験を与えてくださった皆さんに感謝します。