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奈良フィルハーモニー管弦楽団 第20回定期演奏会

引き締まったロマンティック戻る


奈良フィルハーモニー管弦楽団 第20回定期演奏会
2007年3月4日(日) 14:00  奈良県文化会館国際ホール

ピアソラ: バンドネオン協奏曲
(アンコール)ピアソラ編曲: ロカ ポエミヤ フリオ デ カロ

ブルックナー: 交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(ハース版)

独奏: 北村 聡

指揮: 齊藤一郎


今回が奈良フィルの第20回定期演奏会。
1999年9月15日の第5回定期演奏会より1回も欠かさずに春と秋の定期演奏会に通ってきましたが、これほどまでに引き締まった演奏を聴かなかったように思います。
齊藤一郎さんの指揮のもと、素晴らしいブルックナーのロマンティックを堪能しました。

いつもの12型のオケですから、すっきりと見通しの良いブルックナーになってしまうのですが、ところがどっこい、照りがのって迫力のある金管、凛として芯のある木管、そしてキリっとしてよく歌う弦楽器、そして田中さんらしい冷静で勘所を巧く捉えたティムパニ。 奈良フィルがこれほど鳴るとは・・・きちっと統制かけて鳴らした齊藤さんの手腕を称えるべきでしょう。

齊藤さん、大柄で、けっこう大振りでなんですが、シャープで均整の取れた振りですね。 抑えるべきところは小さく振っていますが、楽器には細々と指示しません。 既に練習でやっているからでしょうが、決して無防備に吼えたりせず、オケが見事に反応していたのに、両者のポテンシャルの高さを垣間見ました。

前半プログラムには、北村聡さんという奈良出身の若い(1979年生)バンドネオン奏者との共演でピアソラのバンドネオン協奏曲。 冒頭こそオケの響きのなかでレロレロ鳴ってて??でしたけど次第に耳も馴染んできたようです。 第2楽章など、コンミス林泉さんの泣くようなソロ、チェロトップの野村朋亨さんの思い入れたっぷりのソロとの絡みには哀愁が漂っていて、とても綺麗な響きを楽しみました。

アンコールではピアソラ編曲の「ロカ ポエミヤ フリオ デ カロ」という小品を演奏されましたが、その響きのなんと多彩なこと。 このナイーブな響きをオケと対抗させるのは、ちょっと、と直感しました。 単に音量的な問題ではなく、楽器の持っている表現スタイルというのかな、ま、これは曲そのものの問題ですけどね。 演奏は素晴らしかったですよ。

ということで奈良フィル定期。 足掛け9年聞いてきたことになりますが、いったんここでお休みしようと思ってこの演奏会に出かけましたが、これほどまでに素晴らしい演奏を聞かせてもらって・・・とても嬉しかったな。 いい経験になりました。
奈良フィル、これからも頑張って今回のような素晴らしい演奏を続けていってください。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

木曜日に38.5度の熱を出し、週末は寝込んでいましたが、日曜日は回復。 でも寝てばかりいたので、ちょっと足元がおぼつかなく、また時に咳き込んだりして、体調万全とはいきませんが、開場10分後くらいにホールに到着。

ロビーコンサートをやっているのを横目で見ながら2階席の階段を登ります。 AA-42を確保。 前回の奈良アマオケフェスとは左右逆ながら最前列です。 今回もTVカメラが入ってますね。 座席に落ち着いてプログラムを読みながら開演を待ちます。

定刻、原祐子さんが出てこられてのスピーチ。 いつもながら自己紹介をされませんね。 ちょっと勿体無い感じ。 それはともかく、楽曲紹介をし、指揮者の齋藤さんも呼び出しました。 20歳代のころには理解できなかったが、ブルックナーが大好きだとか。 楽しみです。 スピーチが終わると整列入場。 弦楽器は、10-8-6-5-4 の通常配置です。 北村さんを先頭に、齋藤さんとともに出てこられて始まります。

ピアソラによるバンドネオン協奏曲。 冒頭こそオケの響きのなかでレロレロ鳴ってて??でしたけれど、次第に耳も馴染んできたようです。 第2楽章など、コンミス林泉さんの泣くようなソロ、チェロトップの野村朋亨さんの思い入れたっぷりのソロとの絡みには哀愁が漂っていて、とても綺麗な響きを楽しみました。

第1楽章、齋藤さん、潔くさっと振りはじめると軽やかなダンス音楽でしょうか。 バンドネオンも弾いているのは見えますが、レロレロといった響きがオケの響きに混じっているみたい。 ピアノとバンドネオンとの掛け合いや、ソロを弾く場面もあるのですが、どうもバンドネオンの低音が届かないな、なんて思って聴いていたらカデンツァでしょうか。 ようやく欲求不満を解消。 こんな音がしているのね、なんて確認しました。 オケは弦楽5部とティムパニ、ピアノだけの編成で、抑制かけているのでしょうがね。 中間部かしら、憂愁の旋律あたりよりようやく耳も馴染んできたみたいでした。

第2楽章、バンドネオンのソロがゆるやかな旋律を弾きます。 哀歓漂う音楽。 これはいいですね。 林泉さんによるヴァイオリンソロ、ハープも入ってとても綺麗な音楽に魅了されました。 そして野村さんのチェロソロも加わってきて、この曲の白眉といってもいい感じ。 バンドネオンとオケの響き、同じ旋律を繰り返しながら静かに盛り上がります。 齋藤さんも大きく振って表情をつけています。 雨だれのような響きはピアノかしら、バンドネオンとともに感情が高まったのをそっと鎮めてこの楽章を閉じました。

第3楽章、アタッカでオケが走り始めます。 バンドネオンもここでは力強く駆けていますね。 柔らかで弾力を感じさせる中低弦、艶ののった高音弦も魅力的にバンドネオンの響きに絡みつつ進みます。 キレの良さとしなやかさ、これが同居した気持ちのよい音楽。 明るく陽気なソロは地中海風でしょうか。 音量が上がって、弦楽器も弓を大きくつかって歌ってます。 バンドネオンが加わって盛り上がったのを齋藤さんが右手で力強く止めで全曲を纏めました。

アンコールは、ピアソラ編曲の「ロカ ポエミヤ フリオ デ カロ」という小品。 これで分かったのですが、バンドネオンの響きのなんと多彩なこと。 このナイーブな響きをオケと対抗させるのは、ちょっと、と直感しました。 単に音量的な問題ではなく、楽器の持っている表現スタイルというのかな、ま、これは曲そのものの問題ですけどね。 素晴らしい演奏を楽しみました。

20分間の休憩。 ティムパニをステージ最上段に移動し、コントラバスも2本を前、3本を後方の雛壇に載せます。 ピアノとハープを片付けて準備完了。 楽屋からは盛んに金管楽器の練習音が漏れてきます。 やはりブルックナーは金管の人々にとっては遣り甲斐のある曲なんでしょうね。
そんなことを考えたり、プログラムを眺めていたら、なんだかちょっと寒気がしてきたみたい。 大事をとって、セータを着て、ジャケットを羽織ってこちらも準備します。 一応病み上がりですから。
定刻、整列入場をして 12-10-8-7-5 の通常配置でメンバーが揃いました。 齋藤さんがゆっくりと歩いて出てきて、全員を立たせてから一礼。 登壇し、いよいよ始まります。

素晴らしいブルックナーのロマンティックを堪能しました。 いつもの12型ですから、すっきりと見通しの良いブルックナーになってしまうのですが、ところがどっこい、響きに照りがのって迫力のある金管、凛として芯のある木管、そしてキリっとしてよく歌う弦楽器、そして田中さんらしい冷静で勘所を巧く捉えたティムパニ。 奈良フィルがこれほど鳴るとは・・・いえ、きちっと統制かけて鳴らした齊藤さんの手腕を称えるべきでしょう。
この齊藤さん、大柄で、けっこう大振りでなんですが、シャープで均整の取れた振りですね。 抑えるべきところは小さく振っていますが、楽器には細々と指示しません。 既に練習でやっているからでしょうが、決して無防備に吼えたりせず、オケが見事に反応していたのに、両者のポテンシャルの高さを垣間見ました。

第1楽章、柔らかく締まったコントラバスのトレモロにホルンのソロが良い音色で上々の出だし。 ホルントップ、第3奏者ともに女性奏者です。 もちろんパワーもありますが、柔らかく響かせていて、全曲に渡って素晴らしい演奏を展開してくれました。 さて透明感の高い弦楽器が入って気分が高まって、タイトな金管の咆哮。 低弦の響きもくっきりと浮いて聴こえて、スッキリとしながらも熱い音楽です。 齋藤さん、金管をすっと伸ばし、弦楽器も歌わせてます。 木管楽器が凛としてホルンと掛け合いながら盛り上がってゆき、そしてまた金管の咆哮。 長身を活かして、時に一本足でケンケンをしながら盛り上げてゆく齋藤さん。 じつに見通しのよい音楽です。 抑制もしっかりとかかっているし、弦楽器のしなやかさが心地良い。 ホルンの斉奏は先も書いたように迫力があって強靭。 この楽章を高らかに閉じました。

かなりタイトに鳴ったのでチューニングするかなぁ、と思いましたが、インターヴァルのあとのすぐに第2楽章。 宙に浮くような柔らかな木管そして弦楽器による開始です。 ホルン、ここでも柔らかな響きが素適。 木管がキリっとした表情、ヴィオラの深い響き、重奏感のある弦楽アンサンブルに酔います。 齋藤さん、流れをスパっと切り、また歌わせ、音楽を緻密に組み立ててゆく納得度の高い演奏を展開します。
やや鋭角的に弦の全奏とし、管楽器はさみこんで大きな音楽の流れにしました。 チェロやヴィオラがしっかりと鳴ってますね。 気持ちいい。 そして音楽がまた走りはじめ、金管の咆哮。 雄大で壮麗です。 すっと退いて緻密な弦のアンサンブル。 最後はゆっくりと歩みをすすめて、やわらかなピチカートで終了。

第3楽章の前にチューニングを実施。 弦のトレモロにホルンによるファンファーレ、クレッシェンドしてきて壮快です。 そしてまたここでも柔らかな弦が絡んで惹きつけられました。 音切れ良のよい場面転換。 木管の絡み、集中力の高いスケルツォですね。 ぐいぐいと盛り上がり、ティムパニがドロドロと鳴ってまたスパっと止める。 クラリネットが暖かな響きながらもキリっとした表情が崩れません。 まろやかに響く弦アンサンブル、管楽器もまた同じ音色で歌っています。 勇壮なホルンによる狩りのファンファーレ。 統率のよく取れたタイトな響き。 これをまたすっと止め、繰り返し。 ぐいっと盛り上げたのを、齋藤さんが左手を強く振り下ろして切って落としました。 齋藤さんちょっとヨロっとしたのでは。 とにかく、かなり気合入ってました。

第4楽章、低弦に乗せてホルンの響きがゆったりとした開始。 高音弦で緊張感を高めつつ、木管そして金管が入ってきて、いずれの響きの質に統一感のある最初のクライマックス。 ティムパニの打音が要所をしっかりと決め、金管も抑揚つけて迫力満点。
哀切な弦アンサンブルがまた抑揚つけて奏で、ピチカートが心地よく響いてきます。 木管楽器の明るい表情、そしてまた咆哮となりますが、これらをまたすっと退かせて柔らかで優しい表情も見せた華麗・壮麗な演奏。 奈良フィルがこれほどまでの迫力と抒情性を合わせ持った演奏を展開するなんて。 コラージュのように旋律が現れては消え、ただただ音楽に身を委ねました。 フィナーレ、弦のトレモロを背景に第1楽章の音型が現れ、力強いコラールとしてうねったのをすっとすぼめます。 厳かに進め、壮大で堂々とした演奏としたのを齋藤さんが左手ですくいとって全曲を締めました。 潔い終結でした。

奈良フィルはプロですから、巧いのは当たり前なのですが、これほどまでの素晴らしい演奏を展開するとは、ちょっと予想外でした。
さてこの奈良フィル定期。 足掛け9年聞いてきたことになりますが、いったんここでお休みしようと思っています。 そう思って出かけてきただけに、このような迫力を併せ持った壮麗な演奏、この9年間の定期演奏会の中では初めてでしょう。 いい経験になりました。 奈良フィル、これからも頑張って今回のような素晴らしい演奏を続けていって、いつの日にか全国デビューすることを願っています。