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芦屋交響楽団 第67回定期演奏会

さすが芦響、これで充分戻る


芦屋交響楽団 第67回定期演奏会
2007年5月13日(日) 16:00  兵庫県立芸術文化センター・大ホール

ベートーヴェン: 交響曲第1番ハ長調op21
マーラー: 交響曲第7番「夜の歌」

指揮: 黒岩英臣


マーラーの交響曲第7番終楽章終結部、それまで冷静に指揮していた黒岩さんがアッチェランドをかけて駆け込んだエンディングは圧倒的。 会場は興奮の坩堝(るつぼ)と化していました。

2000年2月20日の第52回定期、黒岩さん指揮によるマーラーの第9番も感動的でしたが、今回もまたしっかりとした造型を保ち、大きく抑揚をつけて歌わせる演奏が素晴らしかった。
そして第1楽章のテナーホルン、第3楽章のマンドリンとギターだけではなく、前プルトだけやチェロのアウト側奏者だけの演奏、ホルンや木管のベルアップもありましたし、CDでは聞き落としていたような響きも飛び込んできたりして(特に低弦)、見て、聴いて、感動しました。

なお前プロとして演奏されたベートーヴェンの交響曲第1番もまた、16型の編成でコントラバスが9本(16-13-11-11-9 通常配置)。
今どき珍しいスタイルながら、こちらも「さすが芦響」。 まるで大きな一つの楽器ですね。 大型の編成でも解釈はオーソドックス。 何より引締まったオケの響きには爽やかさがあり、そして時に強靭も出して、ベートーヴェン29歳の交響曲を堂々と演じた機動力に目を見張りました。

大編成ながら引締まった響き、音程も揃って曖昧さの無い演奏内容は、さすが芦響、感想文なんてこれだけで充分じゃないかしら・・・


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

何を勘違いしたのか、兵庫県立芸術文化センターがあるのは三宮だと思っていて・・・ 自宅も「三宮に行く」と言って出たものの、駅までの道で急に不安になり、悩みました。 家に帰って調べる時間は無いし、アレコレ思い出し、やっと西宮北口であることを思い出しました。 昨年末の甲南大オケの演奏会で行ったことがあるのですが、ホント最近物忘れが酷くてダメですね。

西宮北口のホームの階段を登って、ここや、と確信したのですが、今度は改札を出て逆方向に歩き出して・・?? 東灘区民センター・うはらホールと勘違いしたのかなぁ〜 困るなぁ、とぶつぶつ言いながら、なんとかホールに到着。 開演30分前でした。

ホールのお姉さんに尋ねて当日券売場を教えてもらったのですが、預かりチケット窓口と当日券の窓口の列がぐちゃぐちゃ。 間違って預かりチケットに並んで、途中で気付いて並び直しましたが、列の前の女性が預かりチケットの人だったのでまたここでちょっと混乱・・・オケの担当らしい方もいらしたのですけどね、ニコニコ笑って知り合いに声かけてるだけじゃなく、ちゃんと整列させて欲しかったですね。

とにかく当日券で3階の最前列を確保しました。 3A-39。 芦響の演奏会では前売りは買ったことがなくいつも当日券です。 当日券にすると、招待状のお客さんと同じで座席表から自分で席を選べるシステムなのですね。 招待状と同じということは、悪い席には当らない、ということでもあって、お得なのです。 ただし売切れの場合もあるのでリスクはあるのですけれど。

エレベータで3階に上がり、まずはトイレ休憩。 前回ここに来たときは2階でしたが、やはり最前列。 最前列はステージを見やすいこともありますし、足元がちょっと広いようです。 楽ちんなのですね。 ステージではコントラバス奏者の方が練習されていたのかな、自由入場のようてす。 開演までプログラムを読んだり、チラシを見て時間を過ごします。 予鈴が鳴ると、続々とメンバーの方が集まってきました。 16-13-11-11-9 の通常配置。 今どきこの大編成でベートーヴェンの交響曲第1番を演るの? って感じですね。 チェロ11本、コントラバス9本ですからね・・

さて客席は4階ギャラリーまで人が入っていますし、1階席の最前列まで人で埋まっているので満員ですね。 オケの練習音がちょっと小さくなり、アナウンスがあったのですが、開演を告げるのではなく「暫くお待ちください」とのこと。 時計を見たらすでに開演時間を7〜8分過ぎています(後で知りましたが、満員で入れないお客さんが出たようで、トラブルになっていたようですね)。 練習音がまた大きくなり、ステージでは人の出入りもありましたが、ようやくてコンミスが登場。 入念なチューニングを始めるとホール内の照明も落ちました。 準備完了。 黒岩さんが堂々とした足取りで出てこられました。 15分の遅延ですが、いよいよ始まります。

ベートーヴェンの交響曲第1番。 16型の編成でコントラバスが9本という今どき珍しいスタイルながら、まるで大きな一つの楽器のように響いた音楽が見事でした。 大型の編成でも解釈はオーソドックス。 何より引締まったオケの響きには爽やかさがあり、そして時に強靭さも出して、ベートーヴェン29歳の交響曲を堂々と演じた機動力に目を見張りました。

第1楽章、黒岩さんの棒が縦に動き、まろやかな管楽器の和音による開始。 引き締まったコントラバスのピチカート、続く弦楽アンサンブルは分厚い響きですが、さすが芦響ですね、音程が綺麗に揃っているし、軽やかなステップを踏むように駆け出して、オーケストラが一つの楽器のように鳴っています。 オーボエ、フルートの可憐な響き、でも時にコントラバスがゴウゴウと強靭な響きが聞こえてくるのに少々違和感も感じないではありませんが、覇気のある堂々たる演奏。 解釈はオーソドックスだと思うのですけど、ちょっとないスタイルですね。 高らかにトランペットが吹き、力強くこの楽章を締めました。

第2楽章、第2ヴァイオリン、続いてヴィオラ、チェロと端正に進めて響きを増してゆきます。 分奏がとてもしっかりしてますね。 芦響だから当たり前か。 そしてこの分厚い弦楽器の響きに木管が埋もれそうになりながら進みます。 響きは厚いけれど、端正で軽やか、曖昧さのない合奏です。 黒岩さん、要所でぐぃと力を込めていて、最後も大きく力を入れたあと、ふわっと流して止めました。

第3楽章、響きをクレッシェンドさせてゆき、重量感のあるスケルツォになります。 パワーを感じる音楽ですが、軽やかなステップ、機動力あります。 ティムパニ、全般的にそうなのですが、響きの少ない重たい音で打ってました。 トリオ、管楽器がしっかりとした響きでしたね。 そしてまた重たいティムパニの打音を伴った分厚い響きが戻ってきて、この楽章を綴じました。

第4楽章、重量感のある和音、ふくよかでチャーミングなヴァイオリンの響きでゆったりと奏でます。 そして音楽が駆け出すと、コントラバスの強靭な響きが耳を奪います。 スピードを上げても、また落としても安定感のある演奏。 機動力抜群ですね。 軽やかに吹く管楽器も綺麗です。 楽しい音楽に、時としてハガネのような響きも交え、自在に変化するオケの響きに魅了されたフィナーレ。 黒岩さん、身体を大きく左右に揺すってオケを乗せてから、堂々とした響きで全曲を纏めました。 機動力を感じた演奏でした。

アナウンスはありませんが、壁の電光板が19の数字を出していたので、20分間の休憩でしょうね。 座席でアンケートを書きながら、じっと開演を待ちます。 暫くするとオケの方も何人かステージに出てこられて準備開始。 開演前のアナウンスを告げると、オケの方も続々と集まってきました。 今度は 18-16-14-10-9 の編成になったでしょうか。 いつものシンフォニーホールよりもステージが広いのかしら。 いつもステージの端ギリギリまで弦楽器メンバーの方が座るのですが、1メートルほどの余裕がありますね。 でも多くの方がステージに乗ってます。 チューニングを行って準備完了。 黒岩さんが、にこやかな笑みをたたえながら、ゆっくりと登場しました。

マーラーの交響曲第7番、圧巻は終楽章の終結部。 それまで冷静に指揮していた黒岩さんがアッチェランドをかけて駆け込んだエンディングはもう圧倒的な演奏で、会場は興奮の坩堝(るつぼ)と化していました。 以前聴いた黒岩さん指揮によるマーラーの第9番も感動的でしたが、今回もしっかりとした造型を保ち、大きく抑揚をつけて歌わせた演奏。 また第1楽章のテナーホルン、第3楽章のマンドリンとギターだけではなく、前プルトだけやチェロのアウト側奏者だけの演奏、ホルンや木管のベルアップもありましたしね、CDでは聞き落としていたような響きも飛び込んできたりして(特に低弦)、見て、聴いて、感動しました。

第1楽章、落ち着いたコントラバスの響きに乗せてテナーホルンの響き、もうちょっとペラペラした響きかと思ってましたが、けっこう深い響きなのですね。 序奏部は集中力は高いもののちょっと手探りっぽい感じもしましたが、主部に入って速度が上がると、やはり芦響。 底力のある響きを聴かせて魅了します。 黒岩さん、そんな芦響の演奏に起伏をつけて、ゆっくりと歌わせたり、ぐぃっと力を込めて走らせます。 ちょっと安定感に欠けた場面もあったようですが、マーラーですからね、弦、管、打と多彩な響きが満載されていて、とにかく感激。 CDで聴いていた音楽が目の前で鳴っているということだけで、ちょっと冷静さを欠いて聴いてしまってましたね。 コーダでは黒岩さんが軽くジャンプをして急激な盛り上がり、タイトな演奏にはホルンのベルアップもあって、目を見張った力強い終結。 しばしホール内に静寂が流れてから、緊張感から解き放たれた咳払いがホールのあちこちから聞こえてきました。

第2楽章、ホルン2本による掛け合い、ちょっと怪しくなりそうな感じもしたのですが、見ていても複雑に入り組んだような開始ですねぇ。 ゆっくりと歌い込むように進める行進曲調の音楽。 楽しい気分なって響きに身を任せるように聴き進めてゆきましたが、カウベル。 小さなものみたいですね、よく見えませんでしたが。 ドラも静かに鳴ったりして、生演奏を見ていると、ほんと色々な発見がありますね。 飽きません。 そして張りのあるトランペットの響き、力を感じさせる小さな盛り上がりのあとまた歌い込むように進み、またカウベル。 明るい気分になります。 単純ですね。 遥かなホルンの響き、木管アンサンブルが複雑に絡んだあと、ドラとハープが鳴ってこの楽章を静かに終えました。

第3楽章に入る前にチューニングを実施、ティムパニとコントラバスの響きに乗せてテナーホルンとチューバかしら不気味な夜の雰囲気を描き出した開始。 端正でちょっと懐かしい感じもしました。 フルートとオーボエがしっとりと吹き、ヴァイオリンも抑えて効かせてます。 コントラバスのピチカートが響いてきたりもして(CDでは意識してなかったので少々吃驚)深みのあるスケルツォ。 ヴァオリンのソロは軽やか、あとヴィオラのソロだったのですね、暖かく響いてゆったりとした歩みが徐々にテンポアップし、ステップを踏むような場面ではちょっと軽めのアクセント。 そしてまた不気味な夜の雰囲気が戻り、複雑に入り組んだ音楽が続きます。 途中トロンボーンがいい響きを聴かせてましたね。 最後、軽く打つティムパニとヴィオラのピチカートで潔く止めました。

第4楽章、しとやかなヴァイオリンのソロ、ホルンのソロの柔らかな響き、ゆったりとした夜の歌が素敵に始まりました。 これまでの楽章も見ていて楽しかったのですけれど、この楽章はまた格別。 第2ヴァイオリンの後ろに位置したマンドリンとギターの登場を待ちながら聴き進めていたのですが、弦楽器の前プルト奏者のみの演奏もあったりするのですね。 そしてマンドリンの可憐な響きを交えつつ、黒岩さんが左右に大きく振るとオケがうねるようなアンサンブルで応え、ゆったりと歌い進みます。 そしてまた時にぐわっと盛り上げ、起伏を大きくつけた音楽に耳も奪われます。 フルートやオーボエ、ファゴットの響きがまた綺麗ですねぇ。 ギターをつまびく音のあと、その綺麗な木管アンサンブルが引き継いで静かにこの楽章を終えました。

第5楽章、張りのあるティムパニ、ホルンの斉奏がタイトな響きで畳み掛けると興奮しました。 この楽章のホルン、凄まじいとも言えるほどの引き締まった響きを要所に聴かせて演奏のハイライトになっていました。 凄かった。 木管のベルアップもあった最初のクライマックをすっと止め、弦アンサンブルがやわらかく歌いますが、これもまたすっと止めて熱いファンファーレ。 喧騒の音楽、いえいえ堂々とした音楽が豊かに流れてゆきます。 全奏となっても余裕を感じさせ、力強いのに端正。 黒岩さんも、大きな起伏をつけているものの、きちっとした振りで冷静な曲の運びですね。 こちらも木管やホルンのベルアップを見ながら、引き締まった音楽の流れにそって聴き進んでゆきましたが、フィナーレで様相が一転。 トランペットの熱い斉奏に続き、凄まじいホルンのベルアップによる響きに、黒岩さん、初めてグーにした左手を掲げて更なる力を要求。 チューブラベルが高らかに鳴り響いたあと、熱い血潮も吹き出るかのような金管の響きがホールに充満。 更に黒岩さん、両手を大きく左右に広げてオケ全体より渾身の力を込めた演奏とし、熱く歌い上げた頂点でジャンプをして幕。 実に感動的なエンディングでした。

場内から多数のブラボー、そして熱狂的な拍手でまさしく興奮の坩堝(るつぼ)状態。 素晴らしい演奏に、かなり興奮気味に熱い拍手を贈りました。 ほんと素晴らしい演奏、素晴らしい経験になった演奏会でした。