BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
衣笠交響楽団 第15回定期公演

全員で演奏することが大切戻る


衣笠交響楽団 第15回定期公演
2007年7月15日(日) 14:00  長岡京記念文化会館

ドビュッシー: 交響詩「海」
ラヴェル: ボレロ(*)
ベルリオーズ: 幻想交響曲op.14

(アンコール):不明

指揮: 伊藤和夫、平松久司(*)


全員で演奏することが大切、そんな当たり前のことが判ったボレロの演奏に感動しました。 1年に1回、北海道から九州にいたる全国各地のメンバーが集まって年1回の演奏会に臨んでいる衣笠交響楽団。 第15回目となる定期公演に熱い拍手を贈りました。

ボレロを指揮された首席客演指揮者の平松久司さんは、京響ソロ・トランペット奏者より音楽教諭へと転進、現在では吹奏楽連盟の理事長にもなられたとのこと。 衣笠交響楽団のルーツである1988〜1992年頃の立命館大学交響楽団のトレーナーだったのでしょうか(想像ですが)、その平松さんの正確な指揮に皆がきちんと寄り添った演奏でした。 各人がソリストになるこのボレロ、良い意味でそれぞれの個性がうまく出ていて、それが一致団結したアンサンブルに昇華されて白熱。 確かに技量は巧いにこしたことはないけれど、技量だけでは味わえない素晴らしい演奏に感動しました。

そしてメイン・プログラムの幻想交響曲。 学生指揮者時代よりこの衣響で毎回指揮されている伊藤和夫さんによる引き締まった解釈、想いも充分にこめて、オーケストラの全員と演じあげた演奏もまた素晴らしいものでした。 オーケストラのソリストについては、こちらの演奏のほうが余裕ありましたね。 そして終楽章のフィナーレ、ここでの高揚感、キリッとしてこちらもまた白熱した素晴らしい盛り上がり。 見事な演奏でした。 欲を言うならば、もう少し高音弦のパワーが欲しかったところですけれど、十二分に感動的な演奏でした。

冒頭のドビュッシーの「海」もこの伊藤さんの指揮。 浮揚感を漂わせて奥行きの感じられる演奏でした。 短い練習期間のせいでしょうが、ややきっちりと慎重に纏めたようにも思えた演奏でしたが、こちらも全員の気持がひとつになっていました。 実はこの曲、あまり得意ではないのですけれど、オーケストラの皆さんの気持によって最後まできちんと聴くことが出来たように思います。 演奏はやっぱり気持ちなのですよね。

会場にはお子さん連れが多く、また親御さんでしょうね、年配の方も多くいらっしゃいました。 関係者では全くないけれど、このような演奏会を15年も続けていらっしゃるとは脱帽です。
ボレロの演奏では、第1ヴァイオリンに未就学と思われるお子さん(椅子に座っても足が床に着いてません)と、小学生(中学生?)と思われる方も参加されていましたね。 このオーケストラがどのように進化してゆくのか、これから先が楽しみ。 2時間半の長丁場ながらも明るい気持で演奏会場を後にしました。
皆さんお疲れさまでした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

前日の演奏会をパスさせてもらってのんびりとしたこともあり、早朝4時過ぎから起きているのに体調は珍しく上々。 それもあって家事をアレコレとこなしていたら、出かける時間になっていたことに気付き・・ヤバイ・・慌てて昼食も採らずに家を飛び出しました。

梅田には13時に到着。 10分発の特急に乗れました。 昼食抜きはキツイはずですが、体調が良いせいか気になりません。 それよりも車内にはアベックが多く、浴衣姿の女性も2名ほどいらして、連休だからかな〜なんて思っていたのですが、祇園祭りだったのですね。 納得。

会場には開演15分前に到着。 受付でパンフレットを頂き、階段を登ってホール後方から入ります。 後ろから5列目、いつもこの辺りだと思いますが 24列-23 中央ブロックの右通路側を確保しました。 もうちょっとお客さんが入っているのかな、なんて思いましたけど、約6〜7割といった感じでしょうか。 OBオケらしくお子さん連れが多く、また親御さんでしょうね、年配の方も多くいらっしゃいました。

5分前のアナウンスに続いてブザーが鳴り、暫くして客席の照明が落ちてステージが照らされるとオーケストラの皆さんが整列入場。 拍手が沸き起こります。 よく見えませんが、弦楽器が 10-12-10-8-6 編成のようで、通常配置で着席します。 コンマスが立ってチューニングを始めると、ヴァイオリン席の後方にも立っている人が。 指揮者の伊藤さんでした。 チューニングを終えると指揮台のところに進み出て、皆を立たせてから、客席に向ってにこやかな笑顔で両手を挙げ、そして深々と礼。 さぁ始まります。

ドビュッシーの「海」。 浮揚感を漂わせて奥行きの感じられる演奏でした。 短い練習期間のせいでしょうが、ややきっちりと慎重に纏めたようにも思えましたが、全員の気持がひとつになった演奏でした。 実はこの曲、あまり得意ではないのですけれど、オーケストラの皆さんの気持によって最後まできちっと聴くことが出来たように思います。 しっかりとした演奏でした。

1楽章「海の夜明けから真昼まで」、深い響き、ハープの響きも奥行きを感じさせる開始。 伊藤さがん大きくゆったりとした動きでリードしています。 低弦が軽く響いてまますが芯を感じさせていいですね。 凛とした木管、ホルンが手探りな感じで始まりましたが次第に調子を上げてきちっと纏めながら進みます。 独奏ヴァイオリンの濡れたような響き、オケも浮揚感を感じさせつつ奥行きの深い響きですが、全体的にキリっと引き締まった緊張感。 しっかりと演奏しているといった感じかしら。 力を内包させた荘厳なコーダの盛りあがり。 最後は伊藤さんが大きく振りかぶるようにして柔らかな力をぐっ〜と込めて止めました。

2楽章「波の戯れ」、しっかりと拍をとって精緻なアンサンブル。 全体的にそうなのですが、パーカッションが落着いた音色で打っていて素敵です。 ヴァイオリンの響きもまた落ち着いていて、集中力の高さを感じます。 キレ味鋭く駆けあがったかと思うと、伊藤さんが思いを込めて振って進めます。 パワーを秘めたホルンの響き、澄んだフルート、響きの深いハープ、そして落着いた音色のパーカーション。 陽光、きらめき、波しぶきでしょうか。 そっと終わります。

3楽章「風と海の対話」、ぎゅっと引き締まったタイトな響きのコントラバスに耳を奪われました。 そしてドロドロと鳴る打楽器、ミュート・トランペットによる嵐。 ちょっと猫背になった伊藤さんが引き締まった響きをすっと収めます。 凛と響く木管による旋律、落着いた響きで繋いだあとまたぎゅっと引き締まったコントラバスの響き。 ホルンの咆哮、大太鼓の張りのある一撃。 慎重に曲を進めているようです。 リズムに乗せて盛り上げ、バストロンボーンとチューバの底鳴りのする響きが素敵。 大太鼓もパワーを感じますが、上品で柔らかな打音です。 伊藤さん、大きく振りかぶってから袈裟懸けにように切って全曲を止めました。
もうちょっと盛り上げてもいいかな、なんて思えた潔い終結でした。

全員がいったん退場。 指揮者の譜面台に譜面を置く人とティムパニの女性奏者の方が自分の譜面を持って登場され、この女性奏者の方一人がステージに残って楽器のチューニングを行います。 準備完了かしら、両手で丸印を作ってからオーケストラの皆さんが整列入場。 今度の編成は 12-11-11-11-8 かな。 よく見えません。 スネアは第2ヴァイオリンとフルートの間に挟まれるような位置に2名が陣取っています。 コンマスによるチューニングを終えると、白いジャケットを着た平松さんが登場されます。 万面の笑みを称えた初老の紳士といった感じ。 オケの面々を立たせて一礼。 始まります。

ラヴェルの「ボレロ」、全員で演奏することが大切、そんな当たり前のことが判った演奏に感動しました。 平松さんの正確な指揮に皆がきちんと寄り添った演奏でした。 各人がソリストになるこのボレロ、良い意味でそれぞれの個性がうまく出ていて、それが一致団結したアンサンブルに昇華されて白熱。 確かに技量は巧いにこしたことはないけれど、技量だけでは味わえない素晴らしい演奏に感動しました。

平松さん、指揮棒を持たず軽く振り始めてスネアのリズムを導き出します。 フルートが慎重な感じで吹き、クラリネットが明るみを帯びた音色、ファゴットも落着いた音色といずれも端正な感じ。 ソプラニーノクラリネットは凛としてますが少々堅い感じも受けましたけどオーボエダモーレが柔らかな響きが素敵でした。 コントラバスのピチカートも柔らかく響きます。 ミュート・トランペットの落着いた輝きもよかったけれど、サックスが深いコクのある響きが素敵でした。 サックスの響き出てくるところが好きなのですね。 もうちょっとスィングして欲しかったけれど。 ソプラノサックスは少々緊張気味のスタートでしたが伸びのある後半はとても良かったですよ。 ゾクっときました。 ピッコロは響きが堅かったけれど、続くホルンはまろやかで落ち付いていました。

と、ここまで来て第1ヴァイオリンの席に子供が座っていることを発見。 3プルト目のインには未就学でしょうね、座っていても足が床に着いてません。 2プルト目のアウトには小学生か中学生かしら、しっかりと演奏されていますね。

トロンボーンのグリッサンドはやや酔っ払い気味で味わいあるものでした(演奏に自信なかったのか終演時に指名されてもちょっと腰を浮かしただけでしたけど、味わいありましたよ)。 木管アンサンブルは最初ちょっと怪しかったけれど挽回し、ヴァイオリンのアンサンブルではさっきの子供さんも含めとうとうと音楽が流れて堂々とした音楽。 平松さん指揮棒を持たれたようです。 一段を音量を上げ、スネアも2台になったみたい。 しだいに演奏に熱が篭もってきたのがよく解ります。
平松さんの振りは正確でやや動きが大きくなっただけみたい。 コントラバスの響きに力入っていて、そして最後に打楽器が登場。 白熱した鮮烈な演奏となりました。 これを平松さんがコントラバスの方を向いて両手で網を掬い上げるような感じで全曲を止めました。

ソロを演奏される方々はかなり緊張もされていたと思いますが、それぞれが良い味になっていました。 確かにテクニックは大切なのですが、それだけでは決して味わえない素晴らしい演奏でした。 会場からも大きな拍手が沸き起こっていました。

20分間の休憩。 いつもなら席でじっとしているのですが、慌ててやってきたのでトイレ休憩に立ち、一度席に戻ってきてからもペットボトルのお茶を持って再度ロビーに出ました。 茶腹も一時(いっとき)と言いますしね。 ロビーには子供さんもいらして「子供いるね」なんて自分以外にも子どもがいることをお母さんに告げていたりして、可愛いなぁ。 うちの子供もそんな時代があったのですけども・・・

定刻、客席が暗転しステージが明るくなるとオーケストラメンバーの方々が拍手とともに入場。 毎回暖かな拍手が沸き起こりますね。 12-10-11-8-8 の編成のようです。 コンマスによるチューニングのあと、伊藤さんが登場。 コンマスと握手、全員を立たせて客席へ深々とした礼のあと、オケに向って指揮台には登壇せず、暫くうつむいて沈思黙考。 そして意を決したように登壇するともに音楽が始まりました。

ベルリオーズの幻想交響曲。 伊藤さんによる引き締まった解釈、想いも充分にこめて、オーケストラの全員と演じあげた演奏が素晴らしかった。 ボレロでは緊張気味だったオーケストラのソリストの皆さん、こちらの演奏のほうが余裕ありましたね。 そして終楽章のフィナーレ、ここでの高揚感、キリッとしてこちらもまた白熱した素晴らしい盛り上がり。 見事な演奏でした。 欲を言うならば、もう少し高音弦のパワーが欲しかったところですけれど、十二分に感動的な演奏に大きな拍手を贈りました。

第1楽章、やわらかな弦のアンサンブル、ふくよかで静けさのある上々の滑りだし。 タメもしっかりととってあります。 コントラバスが柔らかく絡むのもまたいいですし、ホルンの響きもタイトなんですが柔らかです。 そして何より中音弦の響きに深みがあるのが素晴らしいなぁ。 盛り上がっても音楽がビタっと決まっている感じ。 高音弦がこの上で歌います。 伊藤さん、リズムに乗せて歌うよう・踊るように曲を進めてゆきます。 フルートやオーボエの旋律がオケの響きに溶けるようです。 力が漲ってきて、伊藤さんがジャンプしてファンファーレ。 ティムパニ奏者の方、マレットの先が青いのに交換して軽やかな打音で盛り上げ。 すぐに元の白のマレットで響きを深めにとったロールで止めます。 柔らかな木管アンサンブルのあとまたタイトに盛り上げたクライマックスをすっと引き、想いを込めた和音を端正に纏め、左手をくるっと廻して止めました。

第2楽章、オーボエ奏者の女性が退場したあと、伊藤さんが両手を左右に広げてゆったりとした音楽を始めます。 深い響きのハープ、コントラバスの響きも堂々とした響き。 トランペットが明るく輝いてワルツに突入。 しっとりと滑るような高音弦による舞踏会のシーンが柔らかく進みます。 コントラバスの響きが一つに揃っていて、これにフルートやオーボエ、クラリネットも絡みつつ進みます。 中低弦の響きがここでもいい感じですね。 ワルツが戻ってきて、澄んだクラリネット、弦楽器もまた滑るよう。 スピードを上げて、コントラバスがぐいぐいと引っ張っていったのを伊藤さん、右手を大きくグルリと廻して着地を決めます。

コンマスが立ちあがってチューニングを行います。 この間にパーカッションの2名がそれぞれのティムパニのところに移動。 入念なチューニングを終えてから始まります。

第3楽章、コールアングレの落着いた響きが素敵でした。 バンダで吹くオーボエも澄んだ響き、巧く絡んで掛け合います。 ヴィオラのトレモロも加わって落着いて進めてますが、このヴィオラの響きもまた良かったなぁ。 伊藤さん、この辺りは指揮棒を持たずに音楽をゆったりと紡いでゆきました。 そして指揮棒を手に、ぐっと力を込めた盛り上がり。 力を増してタイトにします。 伊藤さん、左手をジャブのようにして力を込め、ティムパニが小気味良く打ちます。 低弦が心臓の鼓動のように響いたアンサンブルのあと、ティムパニを2人1組になった2台が叩いての盛りあがり、じっくりと進めて低弦も豊かに響きます。 コールアングレを挟んだあと、テンポを早めて打音がクレッシェンド。 ステージに惹きつけられました。 そして弦楽アンサンブルが厳かに入ってきてこの楽章を終了。
迫力ありましたね。 この楽章が終了すると、会場内のアチコチから咳払い聞こえてきて、それだけ皆さん集中して聞いていたのでしょう。

第4楽章、深く張りのある響きによる開始。 トロンボーンとチューバが重厚な響きです。 低弦の引き締まった響き、そしてファゴットの深い音色もまた素敵でした。 トランペットがシャープに吹いて、ピチカートも鋭角的な響きがします。 ファンファーレ、舞台左のトランペットと右のトロンボーンによるステレオ効果も満点。 しかもトロンボーンの響きが底鳴りしていてブリブリッと気持ちいいなぁ。 雄大で力強い音楽です。 シンバルが打ち鳴らされますが、この響きといいタイミング、全体の音楽にビタっとはまっていて見事でした。 重層的なオーケストラの響きを伊藤さんが左手で止めました。

第5楽章、伊藤さんの腕は上がったまま止まっていますが、しばしインターヴァルがあって始まります。 低音弦と高音弦による不気味な響きによる開始。 木管が凛として絡む緻密なアンサンブルで、低弦がいつもながら締まっていますが、ここでは更にハガネのような響き。 クラリネットがからかうように歌い始めるとティムパニの轟音とともにカラフルな金管ファンファーレ。 リズムに乗って息づいた音楽ですけれど、きちっと制御されてもいるが見事。 暴走などしません。
バンダの鐘が鳴ります。 もうちょっと深みのある響きが好みでしたが、しだいにそんな感じになってきたようです。 チューバの重い響きにも魅了。 重厚ながら落着いた盛りあがりを演出しています。 もうちょっと高音弦に厚みが欲しいところなのですが、これは欲張りというものでしょう。 太鼓がドロドロッと鳴り、トロンボーンがカッコ良く吹いてエネルギッシュなクライマックを形成。 タイトに引き締まった演奏で、最後の伸ばした音を右手で掬い取るようにして全曲を閉じました。

引き締まった演奏には想いも充分に詰っていて、熱気だけではない雰囲気の感じられる素晴らしい演奏でした。 熱い拍手を贈りました。
関係者では全くないけれど、このような演奏会を15年も続けていらっしゃるとは脱帽です。 ボレロでは、団員のお子さんも参加されていて、このオーケストラがどのように進化してゆくのか、これから先が楽しみです。 2時間半、ちょっと長丁場でしたが明るい気持になって演奏会場を後にしました。
皆さんお疲れさまでした。