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神戸市民交響楽団 第60回定期演奏会

伝統、暖かな響き戻る


神戸市民交響楽団 第60回定期演奏会
2007年9月24日(休・月) 14:00  神戸文化ホール・大ホール

チャイコフスキー: 序曲「1812年」op.49
チャイコフスキー: 組曲 第4番「モーツァルティアーナ」op.61
チャイコフスキー: 交響曲第6番「悲愴」ロ短調 op.74

指揮: 大河内雅彦


大河内雅彦さんの指揮によるオール・チャイコフスキー・プログラム。
きりりッ!! と引き締まった演奏は大河内さんの指揮によるものですが、オケから迸るように出てくる暖かな音色はKCOの特色そのものですね。 しかもパワフル。 大オーケストラの魅力を堪能しました。

冒頭の序曲「1812年」、シンセを加えた大太鼓に通常の大太鼓2個も加えたド迫力。 ルミナリエの鐘も鳴り響く派手派手なクライマックスもさることながら、途中で聴かせた豊かな響きのアンサンブルがとても素敵でした。 たっぷりと鳴る大オーケストラの魅力を堪能しました。

組曲第4番「モーツァルティアーナ」、今度は絞り込んだオケによる演奏。 個人的には第3曲「祈り」の木管アンサンブルの柔らかさ、静謐とした弦楽アンサンブルに漂う色香が良かったですね。 もちろん第4曲「主題と変奏」のコンミスのソロ、うっとりとさせる響きも忘れがたいものでしたが、モーツァルティアンな自分にとってこの作品、あくまでもチャイコフスキーのものでしたね。

メインの悲愴交響曲。 大河内さんのキレの良い指揮のもと、きりりッ!! と引き締まった表情。 しかし、オーケストラからは常に暖かで底力のある響きが迸り出てきていたのが印象的。 義理と人情のオーケストラ、KCOの伝統を見た想いがしました。 パワフルでも刺激的にならない。 素晴らしい演奏でした。

そして恒例となっている演奏前の団員の方による解説、これが功を奏して終楽章の前の静寂。 そして終わったあとにも長い静寂。 演奏もさることながら観客も見事でした。 作曲家、演奏者(オーケストラ)、観客、いずれをとっても音楽は成立しません。 いいお客さんに囲まれることもまた伝統の成せる技なのでしょうね。
とにかくKCOの第60回定期演奏会、素晴らしい演奏会でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

おにぎりを持って家を出て、大阪駅から神戸に向かう快速電車の中で頂きました。 いつもながらドタバタと移動していますが、ちょっとした遠足気分でもあります。 神戸駅のコンコースでは鹿児島県の物産を売っていたので、黒砂糖を買うつもりが、ボンタン飴を売っていたのでこれもチョイス。 すると、おばさんにかるかんもと勧められ、ついでにこれも買っちゃいました。 何しに神戸に来たのかな、っていう感じですが、これもまた遠足の楽しみですね。

湊川神社の境内を通っていたら、パラパラと雨が・・・お参りは帰りにすることにして、ホールに急ぎました。 開場して15分ほど経っていたでしょうか、さすがに列に並ぶことなく受付でパンフレットを頂いて中に入りましたが、ロビーには大勢の人がいました。 ちょっと慌てて階段を上り、いつものように2階席へ。 このホールも2階席の中央通路の後ろの席が御用達です。 足元が広いのですが、うまい具合にここにはまだ余裕があり、4列25番を確保できました。 2階席といえども中央通路より前側の席は7割位埋まってましたし、1階席は前の方に空席はあるものの、満席に近い感じ。 いつもながらKCOの演奏会は人が多いですねぇ。

以前も何度か書きましたが、KCOのお客さんは皆さん朗らかな感じ。 本当に音楽会を楽しみにして通って来られているのがよく分かります。 客席の雰囲気に和やかな空気が満ちている感じです。 そんな空気に囲まれて、席も確保できたし、お行儀悪いけれど靴を脱ぎ、ふかぶかと座席に腰掛けて休憩です。 ちょっと最近疲れ気味なもので、ゆっくりと開演を待ちました。

定刻、客席の照明が落ちると、団員のお兄さんが出てこられ、恒例の解説から始まります。 序曲「1812年」の初演では本物の大砲を撃ったとも言われているので、今回の演奏会もできるだけ初演に近づけようと工夫されたとのこと。 シンセサイザーによる大砲の音、鐘は2箇所から借りてきて、うち1つはルミナリエの鐘なのだそうです。 60回の記念、祝典ということでしょうね。 この解説の間に他の団員の方々が席につきます。 解説のお兄さんも第2ヴァイオリンの席につくと、弦楽器は 16-14-10-14-8 の大編成。 通常配置です。 コンミスの方によるチューニング、ステージが照明で照らされ、準備が万端整いました。 黒い詰襟を着た長身の大河内さんが出てこられ、さあ始まります。

序曲「1812年」、シンセを加えた大太鼓に通常の大太鼓2個も加えたド迫力。 ルミナリエの鐘も鳴り響く派手派手なクライマックスもさることながら、途中で聴かせた豊かな響きのアンサンブルがとても素敵でした。 たっぷりと鳴る大オーケストラの魅力を堪能しました。

豊かな中低弦のアンサンブルによる開始。 包み込まれるようにたっぷりと鳴っていて、この暖かさ、いきなり惹きつけられました。 大河内さんがキレのよい動きで振り、オケもしっかりと追随するのですが、オケの響きに深みが感じられるのがいいですね。 戦闘シーンなどは筋肉質な響きでぐいぐいと進めます。 でも一番素敵だと思えたのが中間部で聞かせるロシアの旋律。 たっぷりと鳴る柔らかな弦楽合奏でしたね。 中低弦がしっかりと弾いていて、くっきりと浮かぶ旋律に心奪われました。 そしていよいよクライマックスの戦闘シーン。 ここは豪華絢爛。 引き締まった表情で、迫力も満点。 しかしここでもオケは余裕を持った響きでたっぷりと鳴る大オーケストラの魅力を存分に味わいました。 引き締まったマーチのあと、ゆっくりと旋律を伸ばして着地。 堪能しました。

解説のお兄さんが前に出て来られると客席から拍手。 さっきの演奏良かったよ、という客席の意思ですね。 いいお客さんです。 さて「モーツァルティアーナ」の解説の間にオケのメンバーの半分くらいは楽屋に戻られたような感じでしょうか。 コントラバスやハープも前方に移動し、今度は 10-10-7-6-4 の編成になりました。 準備が整うのを待って解説を続け、お兄さんが席に付くと、コンミスによるチューニング。 そして大河内さんが出てこられて始まります。

組曲第4番「モーツァルティアーナ」、チャイコフスキーがモーツァルトの素晴らしさをロシアの若者に教えようと編曲した組曲。 個人的には第3曲「祈り」の木管アンサンブルの柔らかさ、静謐とした弦楽アンサンブルに漂う色香が良かったですね。 もちろん第4曲「主題と変奏」のコンミスのソロ、うっとりとさせる響きも忘れがたいものでしたが、モーツァルティアンな自分にとってこの作品、あくまでもチャイコフスキーのものでした。 甘美な組曲でしたね。

第1曲「ジーク」、軽やかなヴァイオリンとフルートによる開始。 中低弦も加わって快活な音楽になりました。 クラリネットやファゴットの響きが顔を覗かせ、引き締まったアンサンブルで盛り上がってゆくと、チャイコフスキーのバレエ曲みたいでした。

第2曲「メヌエット」、ヴァイオリンの柔らかな響きにフルートのデュオがからんで心地よい音楽です。 大河内さん、ここでもキレのよい動きで緻密なアンサンブルを紡ぎます。 ヴァイオリンの熱気をコントラバスにも波及させ、チャイコフスキーらしい豊かなアンサンブルに変身。 すっと潔く止めて終わります。

第3曲「祈り」、柔らかな木管の響き、ハープが豊かな響きで加わった開始。 これが静謐な響きのヴァイオリンに引き継がれ、心に響きます。 とても静かで落ち着いた響きなのだけれど、香りたつような華やかさを秘めているのは、やはりチャイコフスキーだからでしょうね。 ほのかな色香の漂うアンサンブル、ほんと素晴らしいですね。 うっとりと聴きました。 徐々に音量を小さくし、最後は消え入るようにして終わりました。 原曲は「アヴェ・ヴェルム・コルプス」だそうですが、まったく原曲を意識せず、これはこの曲として楽しみました。

第4曲「主題と変奏」、落ち着いた弦の響きと柔らかな木管による開始。 掛け合うようにして進む第1変奏、クラリネットと弦による快活な第2変奏、愉快な楽しい響きを聞かせた第3変奏、フルートの綺麗な響きによる第4変奏、力を持ってずんずん進めた第5変奏、一転弦の柔らかな響きに落ち着いたファゴットによる第6変奏、軽やかで心地よく楽しいアンサンブルだった第7変奏、しっとりとしながらも弦の分奏のしっかりとした第8変奏、とここまであれよあれよといった感じで聴きましたが、第9変奏は鉄琴の愛らしい響きを聴かせるチャイコフスキーらしい開始、そしてコンミスによる独奏ヴァイオリン、うっとりとさせる調べにホール内が魅了されていました。 たっぷりと歌うように弾くヴァイオリン、これがアマチュア? とも思える素晴らしい音色、演奏でした。 そして快活になって止めると最後の第10変奏、クラリネットのソロがおどけたように入って主題を戻し、力を増します。 クラリネットのソロが戻ってきて、おどけたような音楽が力をどんどん増して、最後は引き締まった響きで纏めて全曲を閉じました。
う〜ん、モーツァルトというよりもチャイコフスキーそのものって感じかな。 キレの良い大河内さんの指揮だから気になりませんでしたけど、甘美な組曲でしたね。

15分間の休憩。 休憩に入る前、解説のお兄さんが慌てて出てこられてて、60回記念なのでパンフレットに「当たり」のシールが付いているのがあるとのこと。 客席から暖かな笑い声が沸き、当選者の方への拍手もまた柔らかなもので、ほのぼのとしていい雰囲気でした。

定刻、解説のお兄さんがまたまた登場して始まります。 当然のことながらこのあと演奏もするのだから大変ですね。
しかも今回は指揮者の位置まで出てゆかれ、すでに座って待っている第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの方に、第4楽章の冒頭をそれぞれ分けて弾いてみるように依頼。 この2つのヴァイオリンの旋律が合さって初めて美しい旋律になることを実証し、第3楽章で盛り上がったあと、この美しい旋律が流れるので、くれぐれも盛り上がったからといって拍手をしないで欲しい、とのお願いでした。 凝ってますね。 しかも分かりやすい。

さてオケの編成は 17-16-10-14-8 、コンマスが立ちあがってチューニングを開始。 準備が整って大河内さんが登場して、メインの悲愴交響曲が始まります。

悲愴交響曲。 大河内さんのキレの良い指揮のもと、きりりッ!! と引き締まった表情。 しかし、オーケストラからは常に暖かで底力のある響きが迸り出てきていたのが印象的。 義理と人情のオーケストラ、KCOの伝統を見た想いがしました。 パワフルでも刺激的にならない。 素晴らしい演奏でした。 そして団員の方による解説が功を奏した終楽章の前の静寂。 しかも終楽章が終わったあとの長い静寂。 演奏もさることながら観客も見事でした。

第1楽章、しばらく下を向いていた大河内さん、意を決したように顔を上げ、コントラバスの方を向いて振り始めました。 コントラバスの静かな響きに深い音色のファゴット、じっくりと音を紡ぐような開始でした。 引き締まった表情で進めたあと、徐々にテンポを上げてゆき最初のピークを形成。 少々トランペットの響きが突き抜けるような感じでしたが、これを越えたあと、なんと柔らかな弦のメロディなんでしょう。 木管の響きも暖かく、心に沁みる音楽に身を任せました。 大河内さん、さっと翻すように一撃。 少々唐突な感じを受けるほどのパワフルな音楽に変身。 オケ全体に力が漲っています。 キレのよい大河内さんの動き、即物的にぐいぐいと進めているのですが、オケの響きに深みがあるから刺激的になりませんね。 そしてどこか温かみも感じさせます。 いい感じ。 そして低音金管楽器も艶のある音色で響かせたあと、ゆったりとした力の漲った音楽のまま最後は厳かに消え入るように終わりました。

第2楽章、豊かなチェロの響き、低弦のピチカートも心地よく届きます。 たっぷりとした音楽が明るく響いてきます。 ホルンが裏で朗々と吹き、木管も明るく暖かな響きを垣間見せていて、しっかりとした音楽ですね。 ティムパニがリズムを刻み、高音弦の波打つような旋律が渦巻くようでもありますが甘美になりすぎず、覇気のある響きは一緒でやはり即物的かしらね。 最初の旋律に戻し、明るい音楽が戻ってきます。 快活で、きりっと締まった響き。 変な色などつけずに進めてゆき、そっと着地をしてこの楽章を終えました。

第3楽章、チューニングを実施してから始まりました。 緻密に響く導入部、軽快に進み、次第にスピードを上げつつ音量も増します。 じっくりと熟成するように響きを溜め込んだ分厚い響きですね。 クラリネットの落ち着いた響きもいいですね。 大河内さん、冷静に振り、各パートに的確な指示をして進めています。 オケも落ち着いていて各パートとも分離が良く、かといって冷たい響きなんかじゃありません。 このオケ持ち前の暖かな響きですね。 トロンボーンが入って、ティムパニが力強く打つ行進曲。 これを繰り返しつつ音楽を拡大し、シンバルの一撃も見事ツボにはまって感動。 大河内さん、小さな振りのまま引き締めたクライマックス。 ホルンの斉奏もパワフルで素晴らしい響き。 大河内さんが左手を回し、更に力を込めてタイトな盛り上がり。 ティムパニの轟音とも取れる激しい打音で素晴らしく盛り上がった終結。 潔く切って落としました。

終楽章、間合いを短めにとってすぐに始まりました。 深い響きの弦アンサンブルですが、艶も感じられました。 キレのよい大河内さんの動きに合わせて、オケも素早く反応しますが、ここでも感じられるオケの響きの暖かさ。 ファゴットの低い音色にも怨念がこもっているようではなくどこか愛情のようなものが感じられました。 これが老舗オケの伝統なのかもしれませんね。 そして丁寧に盛り上げてゆき、力強いティムパニも勘所良く入ってきて、巧い。 このあとのくぐもったような感じも、重過ぎない深さがありました。 そしてオケ全体の響きがとても良く纏まっていて、うねるように盛り上がってゆくと、雄大さも感じました。 そして静かにドラが鳴り、エンディングに向かいます。 中低弦のみならず、高音弦からも深い響きを醸し出していました。 一丸となったオケの響きを次第に刈り込んでゆき、最後のコントラバスの響きが消えてもなお深い静寂。

ようやく我にもどったかのようにパラっと拍手が出て、パラパラっとした拍手になってから大きな拍手へと。 すばらしい終結でした。 この曲、拍手もまた演奏の一部なのですね。 素晴らしい演奏でした。

当たり前のことながら、作曲家、演奏者(オーケストラ)、観客、いずれをとっても音楽は成立しませんが、このようないいお客さんに囲まれることもまた伝統の成せる技なのでしょう。 そしてこの深い感銘のままお開きとし、アンコールをしなかったこともこのオケの良識でしょう。
KCOの第60回定期演奏会、とても素晴らしい演奏会でした。 ますますの発展を期待しています。 とにかく皆さんおつかれさまでした。