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千里フィルハーモニア・大阪 第37回定期演奏会

熱を帯びた美しい響き戻る


千里フィルハーモニア・大阪 第37回定期演奏会
2007年10月7日(日) 14:00  いずみホール

グリーグ: 劇音楽「ペール・ギュント」第1組曲 op.46
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2番ハ短調 op.18
ブラームス: 交響曲第4番ホ短調 op.98

(アンコール)ブラームス: ハンガリア舞曲第1番

独奏: 岡田博美

指揮: 澤 和樹


綺麗な弦のアンサンブルが熱を帯びて波を打つ素晴らしい演奏に酔いました。

久しぶりに奥さんと二人でいずみホール、奥さんはラフマニノフがお気に入り、僕は若々しく熱い情熱が迸り出たブラームスが気に入りました。 もちろん折り目正しく引き締まったグリーグのペールギュントもまた素晴らしい演奏でした。

そのペールギュント第1組曲、弱音の美しさに目を見張りました。 特に「オーゼの死」での弦楽アンサンブル。 力をこめても透明感が漂っていますし、何より一音一音が連綿と連なって音楽が奏でられてゆく。 千里フィルならではの名演奏だったでしょう。 「オーゼの死」の素晴らしい演奏に固唾を飲みました。

奥さんのお気に入りのラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、ピアニストはロンドンで活動されている岡田博美さん。 飄々とした風貌ながら、深く張りのある響きによる開始、そして高音域の透明感の高い響きもまた魅力的。 これにオケの濃厚な響きのオケが絡んだ素晴らしい演奏でした。 もちろん演奏のキレの良さもありました。 個人的には第2楽章でのヴァイオリンの綺麗なアンサンブルに酔いました。

休憩を挟んでメインのブラームスの交響曲第4番、若々しく熱っぽい演奏が渦巻いていました。 タイトに響く演奏、もちろんメリハリもつけてたっぷりと歌いますが、ここでは終楽章のフルートの深い響きに痺れました。 その美しい木管、タイトに打つティムパニ、落ち着いた響きの金管で彩られた熱いブラームスに大きな拍手を贈りました。

創立25周年の千里フィルハーモニア・大阪、かつての千里市民管弦楽団が改称して5年目だそうです。 残念ながら千里市民管弦楽団の時代は知りませんが、このオケのイメージは弦の響きの綺麗なこと。 今回も素晴らしい弦のアンサンブルを堪能しました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

久しぶりに奥さんと二人でいずみホール。 でも、いつもながら時間に追われるように家を出たのは残念でしたが、なんとか開演15分ほど前に到着。 引き換えた座席が U-24,25。 後ろから2列目ですね。 これはラッキー。 後ろのほうが落ち着けていいんです。 ちょうどいい時間に到着しました。

しかしホール内はびっしりと人が入ってますね。 2階席のギャラリーもほとんど埋まっています。 そして後ろから見るいずみホール、やっぱり綺麗ですねぇ。 シャンデリアを眺め、しばしパンフレットや挟み込まれたチラシを見て開演を待ちます。

定刻、ステージが照明で照らされると、メンバーの方が左右の袖より整列入場。 編成は 10-8-7-8-4 の通常配置です。 コンミスによるチューニングが始まると客席の照明が落ちました。 入念なチューニングが終わって準備完了です。 ゆっくりと巨躯を運ぶ指揮者の澤和樹さんが登場。 コンミスと丁寧な握手をし、これまたゆっくりと指揮台に上がり、さぁ始まります。

ペールギュント第1組曲、弱音の美しさに目を見張りました。 特に「オーゼの死」での弦楽アンサンブル。 力をこめても透明感が漂っていますし、何より一音一音が連綿と連なって音楽が奏でられてゆく。 千里フィルならではの名演奏だったでしょう。 「オーゼの死」の素晴らしい演奏に固唾を飲みました。

「朝」、フルート、オーボエによる凜とした響きから開始。 これも素晴らしかったけれど、これを引き継いだ弦楽アンサンブルが沸き立つようでもありました。 澤さん、小さく鋭角的に振って、折り目正しく曲を進めて盛り上げます。 しっかりとした演奏ですね。 そして音量を増しても刺激的な響きは皆無。 エンディングも丁寧に小さく盛り上げて、すっと退いて閉じました。

「オーゼの死」、指揮棒を持たない澤さん、オケの響きを溜め込む密度の濃いアンサンブルを演出して始めます。 素晴らしいのは音量を下げても、密度の濃さが変わらないこと。 そんな弱音の美しさに目を見張りました。 そして力をこめても透明感が漂っています。 一音一音が連綿と連なっていて、もうこれ以上の言葉はありませんね。 ひたすら音楽に耳をそばだてました。 そして、静かにそっと終えたあと、澤さんが動きません。 長い沈黙。 固唾を飲みました。 ようやく手を下ろすと客席から大きな咳払いがこぼれ出ていました。 見事な沈黙でした。

「アニトラの踊り」、透明感の高いヴァイオリン、これと柔らかなトライアングルの音色がとても素敵でした。 高音弦のアンサンブルがうねるようでもあり、これにチェロの旋律がたっぷりと弾いて対比。 そして終結部もきちんとコントロールされたオーケストラの響きが駆け込むようで、上品で丁寧な響きに魅了されました。

「山の魔王の宮殿にて」、ミュート付きホルンかしら、低弦のピチカート、そしてファゴットの響きが素敵でした。 徐々に速度を上げて力をこめ、しっかりとした造形の音楽とします。 これをさっと止め、重い響きの大太鼓、引き締まったエンディングも気負うところなく充実した響きで纏めて全曲を閉じました。

きちんと整理された澤さんの指揮のもと、巧さで聴かせる千里フィルらしい演奏だったでしょう。 何度も書きますが、じつに素晴らしい演奏でした。

いったん全員が退場し、ピアノを中央に持ってきます。 弦楽器の席が少々後方に詰めらました。 メンバーの方が登場して着席。 先と同じく 10-8-7-8-4 の編成のようで、少々窮屈かもしれませんね。 さて、コンミスがピアノで一音叩いてチューニングを実施。 準備が完了すると、華奢で飄々とした感じの岡田博美さんが燕尾服で登場。 後ろから澤さんがちょっと離れて登場です。

一礼のあと、澤さんが指揮台に上り、岡田さんがピアノの椅子に座って椅子とピアノの前後の距離を確かめるように椅子を動かし、その一連の動作の流れで鍵盤までの距離をはかるような感じで両手を前に突き出したら、そのまま弾き始めちゃいました。 驚きました。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、一瞬試し弾きかな・・と思ったほどでしたが、飄々とした風貌ながら、深く張りのある響きによる開始、そして高音域の透明感の高い響きもまた魅力的。 これにオケの濃厚な響きのオケが絡んだ素晴らしい演奏でした。 もちろん演奏のキレの良さもありました。 個人的には第2楽章でのヴァイオリンの綺麗なアンサンブルに酔いました。

第1楽章、ピアノの独奏、深く張りのある響きには艶が乗っているようでした。 オケがたっぷりと濃厚な旋律を奏でると少々音量が大きく、ピアノの響きがかき消されて気味。 粒立ちのよいピアノの響きが、高音域ではキラキラっと輝くようでもあります。 オケはパワー十分で、先ほどとはうってかわって情熱的に進めますが、ピアノは理知的な感じのままですね。 
金管が鳴って行進曲風、オケがぐいぐいっと踏みしめるように歩きますが、ピアノはキリっとした澄み切った響きでつなぎます。 遥かな響きのホルンも素敵で、オケの響きはロマンティックなのですね。 終結部もぐっと力をこめて力強く終了しました。

第2楽章、やわらかな弦のアンサンブル、ピアノがしっとりとぬれたような響きで入ってきました。 クラリネットがしっとりと絡みます。 澤さん、拍をきちんととった指揮で進めてゆきます。 このオケの響きのうえでピアノが華麗に舞っていますが、やや淡々とした感じでもありますね。 徐々に力が漲ってきたのをスパっと止め。 高音域でキラキラと輝くピアノで惹きつけたあと、またやや淡々とした感じに戻りますが、オケの高音弦のアンサンブルが今度は澄んだ響きで旋律を歌って魅了。 それを受けたピアノもまた澄み切った響きで引き継ぎます。 あまりに美しい音楽。 耳を奪われたまま終わりました。

インターヴァルを少しだけとってすぐに第3楽章、澤さん、小さく振って中低弦に力のこめて、かつキレよく盛り上げ、軽快に進めます。 ピアノが軽快に弾き、オケと掛け合いますが、オケの弦アンサンブルがちょっと濃厚な感じ、たっぷりしてうねるようでもあります。 クライマックに向けてぐいぐと登りつめてゆきますが、ピアノは技巧的なパッセージも軽々とクリア。 オケもまた丁寧に纏めながらキレ、力感ともに十分です。 そしてまたたっぷりとして深みが感じられる音楽からエンディングに向けて集中力を更に高めます。 オケ全体がうねるようになって旋律を歌って力を込め、最後は澤さんが更にぐいっと押さえつけるようにして幕。 ものすごく熱気のこもったエンディングでした。

この熱気に負けじと客席からもブラボーと熱い拍手が沸き起こり、しばらく拍手は鳴り止みませんでした。 素晴らしいテクニックを聴かせてくださった岡田さん、オケのメンバーからもまた熱い拍手を受けていましたが、登場したときと同じく飄々とした風貌で何度もカーテンコールを受けられていました。

20分間の休憩。 奥さんと一緒なのでロビーでコーヒーをいただいて休憩。 キオスクも覗いたりなんかして、一人のときとはやっぱり行動が違います。
定刻、全員が整列入場して座席につくと、これまでと同じく 10-8-7-8-4 の編成。 コンミスが立ちあがってチューニングを行うと、客席の照明が落ちました。 準備は完了し、指揮者の澤さんが登場され、いよいよメインのブラームスが始まります。

ブラームスの交響曲第4番、若々しく熱っぽい演奏が渦巻いていました。 タイトに響く演奏、もちろんメリハリもつけてたっぷりと歌いますが、ここでは終楽章のフルートの深い響きに痺れました。 その美しい木管、タイトに打つティムパニ、落ち着いた響きの金管で彩られた熱いブラームスに大きな拍手を贈りました。

第1楽章、澤さんがふわっと振って柔らかな響きを導き出しました。 弦の各パート、木管楽器が彩る素晴らしいアンサンブルによる開始。 澤さん、シャキシャキと小さく動かす棒で、ぐいぐいと曲を進めてゆきます。 もちろん、左手でニュアンスをつけてメリハリもつけた若々しいブラームスですね。 オケは各パートがとてもしっかりとしていて安定感抜群なのですが、その落ち着いた響きの中に熱い響きが満ちていて、思わず前に身を乗り出して聴いていまいそうな感じ。 終結部はティムパニの引き締まった打音、熱いオケの響きが渦巻くタイトな音楽となり力強く閉じました。 残響が少しホールに残っていました。

第2楽章、張りのあるホルンによる序奏。 たっぷりとしたピチカートを奏でるなか、木管が落ち着いた音色で歌います。 柔らかな弦のアンサンブル、ホルンも柔らかく響いてきました。 ヴァイオリンが艶やかな響きで歌って盛り上がると、今度はチェロも落ち着いた響きで返し、たっぷりとしていながらもハッキリとした構成感のある音楽。 織り成す楽器の響きを楽しみました。 これがブラームスの世界ですね。 力を増しても、この柔らかな響きの質は変わりません。 素晴らしいですね。 刺激的な響きは皆無。 たっぷりと丁寧に進めてゆき、折り目正しく静かにきちんと楽章を閉じました。

第3楽章、さっと小さく振ってスケルツォの開始。 フレーズを短く切るようにしてぐいぐいと盛り上げます。 第2主題の柔和な表情を挟みこみ、また、盛り上がります。 トライアングル、愛らしい響きが顔を覗かせていました。 速度はあがっていますが、引き締まっていて、丁寧に進めらた音楽には落ち着きが感じられます。 ホルンのやわらかな斉奏のあと、またぐいぐいと盛り上がります。 ティムパニが小気味良く打ち、トランペットなどの金管もまた小気味良く吹いて、若々しく息づいた音楽。 やや開放的な響きで盛り上がったあと、潔くこの楽章を締めました。

第4楽章、フルート、オーボエ、トロンボーンによるタイトなファンファーレが豊かに響く充実した開始。 力の入ったヴァイオリンのアンサンブルが熱気を孕んでます。 澤さん、力入ってシャープに動く指揮棒、パンチを効かせていますがここでも刺激的な響きはありません。 弱音もゆったりと柔らか。 そして何よりフルートのソロが素晴らしかった。 深い響きがホール内に流れ、痺れました。 これが他の木管にも引き継がれ、そしてゆったりとしたトロンボーンによる柔らかなコラール風の旋律もまた素敵でした。 澤さん、さっと振って切り替え、エネルギッシュな音楽として熱いブラームスが戻ってきました。 タイトに振って、時に美しい木管の響きも絡ませますが、最後はオケ全体が熱気に包まれていて、それを更に力づくで鳴らした澤さん。 渾身の力を込めて最後の一音を絞り出すようにして全曲を綴じました。

熱を帯びて波を打つ素晴らしい演奏に酔っていました。 最後の一音のあと、我に返って大きな拍手を贈りました。 そしてアンコールのハンガリア舞曲第1番、こちらはさらに濃厚で情熱的な演奏でしたね。 たっぷりと楽しみました。

創立25周年の千里フィルハーモニア・大阪、かつての千里市民管弦楽団が改称して5年目だそうです。 残念ながら千里市民管弦楽団の時代は知りませんが、このオケのイメージは弦の響きの綺麗なことですが、今回も音程のきちっと揃った弦楽アンサンブルで、しかも全体が波打つように響いていました。 素晴らしい演奏を堪能しました。 ありがとうございました。 そして皆さんお疲れさまでした。