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京都府立医科大学交響楽団 第83回定期演奏会

波打つ素晴らしい演奏に酔いしれた夜戻る


京都府立医科大学交響楽団 第83回定期演奏会
2007年10月20日(土) 19:00  京都コンサートホール・大ホール

ベートーヴェン: バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲
シューベルト: 序曲「アルフォンソとエストレッラ」
ラフマニノフ: 交響曲第2番ホ短調 op.27

(アンコール)ラフマニノフ: ヴォカリーズ

指揮: 井村誠貴


すべての楽器の響きが同じ色に纏まって熱くラフマニノフの交響曲第2番、波打つような素晴らしい演奏に酔いしれました。

ラフマニノフの交響曲第2番、期待どおり、いや期待以上。 井村さんらしいドラマティックで熱い指揮に応えたオーケストラが見事でした。 1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンが織り成す響きの綾、前から後ろのプルトまで綺麗に揃って波打っていて、ことに2ndヴァイオリンの奮闘ぶりが目に焼きつきました。 もちろんヴィオラもチェロもコントラバスも皆一体となっていて、管打楽器もまたそれぞれに響きを合わせて、まさに全員一丸の演奏に痺れました。

特に奇数楽章では連綿と繰り返される甘く美しい旋律にただただ身を任せ、偶数楽章ではキレの良い響きに爽やかな色香を感じました。 ソロを担った皆さんの響きがとても柔らかで素晴らしく、コンミスのソロは美しく可憐。 しかもすべての響きがオケ全体の響きに綺麗に合わさっていて突出することなど皆無。 長い長い交響曲だけれども、一瞬たりとも耳を離させない心を合わせた素晴らしい演奏に熱く大きな拍手を贈りました。

なおこれに先立って演奏された「プロメテウスの創造物」序曲、柔らかくまろやか、スッキリとした演奏。 序曲「アルフォンソとエストレッラ」もまたスッキリとしてキレの良い響きを快活に纏めていました。 いずれもオケの纏まり感が良かったのが印象的でした。
あとアンコールはお馴染みヴォカリーズ、たぶんアンコールするならこの曲、と思っていたとおりでしたね。

とにかくこの日はラフマニノフの交響曲第2番、これに酔ったままホールを後にしました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

奥さんが先日の演奏会で聴いたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番がきっかけで、ラフマニノフの交響曲第2番も聴いてみたい・・と言い出したので同行することにしました。 奥さんが出先の大阪より奈良の最寄り駅まで戻ってきて、ここで落ち合い、大和西大寺経由の近鉄京都線で京都へと向かいました。

北山の駅を出ると、とっぷりと陽も暮れていて肌寒い風が・・・一気に季節が進んだねぇ〜などと話しながらホールに到着。 開演30分ほど前ですが、大勢の人とともに建物内部の回廊をぐるりと一周して大ホールの入り口へ。 お客さんが吸い込まれていくような感じです。

ホールに入るとさっそく3階席へ。 真正面の3階席、最前列がまだ空いていたので、C-1列-24,25を確保しました。 ラッキー。 今度は1階ロビーに戻って腹ごしらえです。 奥さんが買ってきたお寿司を食べていると、遠くにTシャツ姿で手にスーパーのビニール袋のような物を持った大きな人物・・井村さんですねぇ。 遠かったのと、腹ごしらえをしていたのでそのままやり過ごしてしまいました(すみません)。

腹ごしらえも済み、眠気覚ましのコーヒーも飲み、席に戻ってパンフレットを読んだりしたながら開演を待ちます。 1、2階席のギャラリーは9割位入っていたでしょうか。 ここ真正面の3階席も6割程度の入り。 パンフレットには卒回生のページもあって、もうそんな季節なのですね。 客席が華やかなのもこのためか、と納得しました。

定刻、ステージが照明で明るくなると整列入場開始。 左右の袖からの入場ですが、コントラバスは右奥の扉から大きな楽器を抱えての登場します。 どなたか楽器ぶつけませんでした? 大変そうですね。 さてオーケストラは 14-12-10-8-7 の編成による通常配置ですが、コントラバスはステージに向かって右端ではなく、右側後方に配置していて、楽器の正面が客席に向くような感じで3列?で並んでいます。 コンマスが立ち、チューニングを始めると客席の照明が落ち、準備も完了。 靴音高く井村さんが登場されて、いよいよ始まります。

ベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲、柔らかくまろやかでスッキリとした演奏でした。 ベートーヴェンといった重厚さではなく、ハイドン的な軽さというかスッキリとした構成感を感じました。 丁寧に進めた、というのが正解かもしれませんけれど。

井村さん、広げた両手を絞り込んですくい上げるようにした開始、弾力のある和音ですがキレよく響きました。 井村さん、大きく丁寧に振っているようです。 オケもやわらかな響きでこれに応えています。 高音弦のトレモロが綺麗に響き、管楽器とくにフルートのまろやかな響きが特徴的だったかな。 大きな編成のオケながら、メンバを絞り込んだような緻密な響き。 金管が入っても響きのまろやかさは損なわれず、軽く弾むようにコンパクトに響かせてあっという間にエンディング。 もう終わったの、といった感じでした。

メンバーが一部増強され、編成が 16-12-10-8-6 になりました。 チューニングを終えて準備が整うと、今度はシューベルトの序曲「アルフォンソとエストレッラ」。 こちらもまたスッキリとしてキレの良い響きを快活に纏めていました。 全体的に単調な響きの繰り返しに思えるこの曲を、まとまりの良いオーケストラ・サウンドで十分に聴かせていたように思いました。

やはり井村さんの広げた両手、すくい上げるようにしての開始、すっきりとした和音をくり返し、集中力高く響きを重ねていってキレの良い快活な音楽とします。 引き締まった金管、トロンボーンとトランペットが素敵でした。 木管がやわらかな歌で絡み、また快活な金管、まとまりの良いオーケストラサウンドが響きますが、曲としては単調な繰り返しに思えますね。 それをオーケストラが十分に聞き応えのある演奏としていた、そんな感じかな。 力を内包させた快活な響き、最後まで軽やかな金管が綺麗に響いて纏めました。

開始から20分しか経っていませんが、ここで20分間の休憩。

ステージではパーカッションの場所を作ったり、金管のうちトランペット、トロンボーン、チューバを向かって右に移動し、ホルンは左へと対抗します。
そして定刻、オケのメンバーが登場、今度は 16-14-11-10-8 の編成となりました。 パーカッションも加わり、さすがにステージ上には多く人がいますね。 コンミスが静々と歩いて登場、チューニングを行います。

ところでこのオケのチューニング、先の曲でもそうでしたが、入念に行われています。 管楽器は木管と金管セクション、弦楽器は各パート毎にチューニングをやっていました。
そして準備が整い、井村さんが登場。 一礼のあと、しばし指揮台の脇で俯いて気力を充実させたのでしょうか、意を決したように登壇して始まります。

ラフマニノフの交響曲第2番、すべての楽器の響きが同じ色に纏まって熱く、波打つような素晴らしい演奏に酔いしれました。 期待どおり、いや期待以上。 井村さんらしいドラマティックで熱い指揮に応えたオーケストラが見事でした。 1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンが織り成す響きの綾、前から後ろのプルトまで綺麗に揃って波打っていて、ことに2ndヴァイオリンの奮闘ぶりが目に焼きつきました。 もちろんヴィオラもチェロもコントラバスも皆一体となっていて、管打楽器もまたそれぞれに響きを合わせて、まさに全員一丸の演奏に痺れました。

第1楽章、深い響きの低弦による開始、管楽器の響きも相俟って醸し出す不思議な雰囲気、高音弦が瞑想的に流れるかと思うと、時に深い低弦が割りこんできて、思わず前に乗り出して聴いていました。 香るような高音弦の柔らかな響き、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン、これらの織り成す響きに巻き込まれるようです。 そしてホルンの遥かな響き、熱い音楽がうねっています。
コールアングレも奥行きのある響きがとても素敵で、高音弦のうねりにコントラバスのピチカートが添えられて、ここも素敵に響きます。 濃厚な歌にしばし聞き惚れ、音楽に身を任せました。
コンミスのソロもまた甘く切なく響いて素敵。 綺麗な響きでした。 クラリネットのソロの静けさ、ヴィオラのアンサンブルもハリのある響き。 渦巻くようなオーケストラ全体の響きに巻き込まれ、こちらはただただ聴いているだけ・・・よく覚えていません。 パーカーションが入ってもオケの響きの質が全く変わらないのがまた素敵ですね。 自分たちの音楽、それを全員一丸で演奏しているからでしょう。 じつに素晴らしい。 爽やかで熱い音楽の渦に感動し、酔いました。 リズミカルに走って、最後の深い響きで長大なこの楽章を止めました。

第2楽章、ヴァイオリンが力強く駆け出し、ホルンの斉奏がまろやかな響きを強く出し、またもや弦楽器が渦巻くよう。 ここでも全員一丸となった音楽で邁進します。 熱い響きながらも清涼感が漂う演奏でした。 一転してヴァイオリンを甘く歌わせて、中低弦を熱っぽく絡ませてから主題を戻しました。
休止、井村さんのハナ息で大太鼓の一撃、力強い第2ヴァイオリン、熱く弾くヴィオラ、迸り出る熱い想いが溢れていました。
そしてまたハナ息、力を込めて主部を戻します。 駆け出すヴァイオリン、ホルンの斉奏がまたまろやかで力強くカッコ良いなぁ。 トロンボーンのファンファーレ、落ち着いていながらもコクのある響きで客席を魅了。 緻密に進めていったあと、そっとこの楽章を止めました。

井村さん、指揮台を降りてチューニングを実施。 客席も咳払いなどして体調を整えます。 長く丁寧なチューニングを終えました。

第3楽章、深いヴィオラの序奏からヴァイオリンの甘いメロディ、そして柔らかなクラリネットの響きが清楚で可憐。 客席を惹きつけて離しません。 弦楽アンサンブル、ファゴットのサポートも素敵。 よく見るとコントラバスは半分がピチカート、半分がアルコなんですね。 高音弦の柔らかなアンサンブルに引き継がれ、連綿と織り成されてゆく旋律がどこまでも美しい。 井村さんたっぷりと進めてゆきます。 コールアングレの響き、そのうらでヴィオラが奮闘していましたね。 このあとも第2ヴァイオリンが大きく揺れ動いて情緒を高めた熱い歌に痺れっぱなし。 ここでもまた酔いました。 ピークのあとなだらかに下がって休止。
ホルン、ヴァイオリンのソロが甘く、フルートが柔らかな響き、コールアングレも清楚で、どれもこれも素晴らしいのですが、すべてが一つのオーケストラの響きに綺麗にマッチしていて、突出することなど皆無。 全体の響きに溶け合わされています。 見事な一体感。 やはりただただ音楽に身を任せてゆくと、そっとこの楽章が閉じられました。

第4楽章、ぐぃと序奏をえぐるのように出し、明るくハリのある響きで主題を奏で、大きくうねるように進めます。 金管の響きがまろやかで素敵。 躍動感をもったマーチもリズミックで井村流かしら。 ノリ良く進めます。 金管がよくまとまっていてまろやかで素敵ですし、ここでも第2ヴァイオリンがよく歌っているのが感じられました。 どこもかしこも甘い旋律をたっぷりと演奏しているのですが、学生さんの若い情熱が勝っているのでしょうか、もたれることなどなく、爽やかな色香となって届けられます。 井村さんはこれをダイナミズムを持ちつつも丁寧に進めてゆきます。
さっと棒をタテに振って、弾力のある響きで場面転換。 集中力を高めつつ力を蓄えてゆき、ぐいぐいと登りつめて金管そして打楽器。 ホルンが遥かな響き、カッコ良い。 トランペットの艶のある響きもまた、カッコ良い。 弦楽器が渦巻くようでここでも爽やかな力を感じます。 井村さん、更に大きく伸び上がるようにして力を込めます。 たっぷりと弾く弦楽器、弦パートはいずれも最後までよく揃っていますね。 見ていてホント気持ち良いんです。 最後のフレーズまできちんと纏めて進めて、そのまま気負うことなくきちんと決めて全曲を締めました。

すべての楽器の響きが同じ色に纏まって熱いラフマニノフの交響曲第2番、波打つような素晴らしい演奏でした。 特に奇数楽章での連綿と繰り返される甘く美しい旋律、ただただ音楽に身を任せ、酔いしれていました。 井村さんもしばらく指揮台からお客さんと一緒になってオーケストラに拍手を贈っていました。

アンコールはヴォカリーズ。 アンコールをするならたぶんこの曲、と思っていたとおりの選曲でしたけれど、これだけの素晴らしい演奏のあとにアンコールは無くてもよかったのではないかな、なんて思って聴き始めました。 でもこの演奏もまた次第に熱を帯びてきて客席を惹きつけていました。

でもね、今宵はやはりラフマニノフの交響曲第2番。 これに酔いしれたままホールを後にしました。
卒団される方には素晴らしい思い出になったと思います。 そして皆さんお疲れさまでした。