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第14回 天理の第九演奏会

人間の声のパワーに今年も圧倒戻る


第14回 天理の第九演奏会
2007年12月23日(祝・日) 16:00  天理市民会館・やまのべホール

<第1部>
グリーグ: 「ペール・ギュント」組曲より「朝」「山の魔王の宮殿にて」
エルガー: 「威風堂々」第1番

<第2部>
ベートーヴェン: 交響曲第9番「合唱つき」op.125

(アンコール):「ふるさと」「蛍の光」

独唱: 木澤佐江子(S)、野間直子(MS)、根木 滋(T)、片桐直樹(Br)合唱: 天理第九合唱団、合唱指導:千葉宗次

管弦楽: <第1部>天理シティーオーケストラ 
      <第2部>天理第九管弦楽団

指揮:船曳圭一郎<第2部>、安野英之<第1部>


熱い感動が今年もまた甦ってきました。 熱い声・声・声・・・気持のよく乗った人間の声のパワーに圧倒されました。

毎年この日のために相当の練習を積まれていらっしゃるのでしょうね、各声部がとてもしっかりとしていて、掛け合い、響きあう合唱はじつに感動的です。 CDやDVDでは決して得ることが出来ない迫力はもちろんのこと、いっしょに歌いたくなるような共感を持ち、そして聴いたあとの清々しさもまた1年を締めくくるのに相応しい素晴らしい演奏でした。

船曳さん、ちょっと指揮スタイルを変更されたのでしょうか。 指揮棒を持たず、しっかりと開いた両足はほとんど不動、上体のみを使って堂々とした音楽を創り出していました。 第3楽章まではやや遅めのテンポだったでしょうか、じっくりとした響きを紡ぎ出し、終楽章の行進曲を過ぎたあたりから温めたエンジンを吹き上がらせるようにオーケストラをドライブ。 熱い合唱とともに弦楽アンサンブルにも熱気が溢れていました。 合唱とオーケストラが一体となって高らかに歌い上げた力強いフィナーレは迫力満点。 熱い拍手がホールを埋め尽くしました。

これに先立って演奏されたのは、安野英之さんの指揮によるグリーグの「ペールギュント」組曲より「朝」「山の魔王の宮殿にて」と、エルガーの「威風堂々」第1番。 どちらもスッキリと纏められた演奏でした。 丁寧に進めた「朝」、まだ何となくざわつく会場内を落ち着かせましたし、キリっと引き締まって底力のある「山の魔王の宮殿にて」で聞き手の集中力を高めていたようです。 そして若々しくケレン味のないオーケストラの響きで満たされた「威風堂々」。 最初は、アレっと思った選曲でしたけど、第九への期待感も巧く高めていたのではないでしょうか。

昨年は長男を同行、今年は一家4人での鑑賞となりました。 そして今年もまた熱い音楽に心が満たされた演奏会のあとに見た駅前のイルミネーションがとても綺麗。 演奏会の余韻を楽しみながら家路につくことができました。 とても気持ちのいい演奏会。 ありがとうございました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

いつも満員盛況の天理の第九、今年は開演1時間前にホールに到着すべく子供たちを連れて家を出ましたが、壁際のQ-36となりました。 中央付近に座ってらっしゃる方はもっと早くから並んでいるのでしょうね。 それでもホール最後列には補助席が2列も出ている超満員。 単なる人気の高さ、というよりも、自分達の第九といった誇りも感じさせる雰囲気が漂っていますね。

話は前後しますが、座席を引き換えてすぐにホールに入るのも面白くないので、子供たちを連れ、駅前の天理本通りの商店街を散策しながら天理教本部の大きな建物を見て戻ってきました。 落ち着いていて、他とはちょっと違う落ち着いた雰囲気に満ちた商店街に子供達も驚いていた様子。 ここでは欲しかった長男のリュックが安く購入出来たのも収穫でした。 また機会があれば散策してみたいですね。

さて開演時間間際に奥さんとも合流、ホールに入ると先にも述べたとおりの超満員でした。 人を掻き分けるようにして座席に辿りつくとオケの方はすでに席についています。 10-10-9-6-5 の編成でしょうか。 通常配置でした。 しばらくすると拍手とともにコンミスが登場。 チューニングをして準備完了、ここまであっという間でしたが、こちらもなんとか準備が整いました。 安野さんがにこやかに登場されて、始まります。

グリーグの「ペールギュント」組曲より「朝」、ふわっとした響きによる慎重な開始。 フルートの凜とした響きがホールに流れます。 会場内はまだちょっとまだざわつき気味でしたけれど、清澄なフルートの音色にしだいにホールも落ち着いていったようです。 安野さん、とても丁寧に振って曲を進めます。 中低弦の響きが芯になり、ティムパニも抑制かけて打っていて、最後もまたきちんと決めて終わりました。

「山の魔王の宮殿にて」、低弦のピチカートがよく響いてきました。 ホルンもまた芯のある響き、ピチカートが弦楽器を巡って徐々に音量を増加させます。 聴いている場所によるのかしら、右耳よりも左耳のほうが音量が多く聞こえるみたい。 壁際ですものね。 それはともかく、落ち着いた全奏により盛り上がりにパワーを感じますが、キリっと引き締まって底力のある演奏でしょう。 弾力あるティムパニの響きで締めました。

いったんここで安野さんは退場。 管楽器奏者を補強し、一部シフトもされたようですね。 チューニングを行ったあと、安野さんの登場により再開です。

エルガーの「威風堂々」第1番、若々しくケレン味のない響きで満たされた演奏でした。 堂々として恰幅の良い演奏を期待された向きにはちょっと肩透かしだったかもしれませんが、タテのりのリズムでキレ良く纏めている部分、ホルンの吹奏などじっくりと落ち着きを持って表現した部分、明快な演奏で若さに満ちてました。 そしてフィナーレも高らかなファンファーレ、キレの良いティムパニで清々しくも小気味良くまとめての着地。
最初は、アレっと思った選曲でしたけれど、第九への期待感を巧く高めていたのではないでしょうか。

15分間の休憩。 ちょっと時間を置き、しかも補助イスが出ている後方を回避して前方の出口からロビーに出てトイレ休憩としました。 超満員ということもあって、いつもながら女性用は大変みたいですが、男性用は大丈夫。 気合を入れなおして座席に戻ります。 なんせ満員なんで(気分的に)酸欠になりそうなのでした。
オケの方は三々五々集まっていて 10-10-9-7-5 の編成。 ちょっと大きな音量で電子音楽が鳴って驚きましたが予鈴のようですね。 これが終わると、コンミスによるチューニングを実施。 ステージが明るくなると客席の照明が落ちました。 船曳さんがにこやかに登場、全員を立たせてからコンミスと握手、深々と礼をされて、さぁ第九が始まります。

今年もまた熱い感動が甦ってきました。 毎年この日のために相当の練習を積まれていらっしゃるのでしょうね、各声部がとてもしっかりとしていて、掛け合い、響きあう合唱はじつに感動的です。 CDやDVDでは決して得ることが出来ない迫力はもちろんのこと、いっしょに歌いたくなるような共感を持ち、そして聴いたあとの清々しさもまた1年を締めくくるのに相応しい素晴らしい演奏でした。
船曳さん、ちょっと指揮スタイルを変更されたのでしょうか。 指揮棒を持たず、しっかりと開いた両足はほとんど不動、上体のみを使って堂々とした音楽を創り出していました。 第3楽章まではやや遅めのテンポだったでしょうか、じっくりとした響きを紡ぎ出し、終楽章の行進曲を過ぎたあたりから温めたエンジンを吹き上がらせるようにオーケストラをドライブ。 熱い合唱とともに弦楽アンサンブルにも熱気が溢れていました。 合唱とオーケストラが一体となって高らかに歌い上げた力強いフィナーレは迫力満点。 熱い拍手がホールを埋め尽くしました。

第1楽章、指揮棒を持たない船曳さん、前に伸ばした両腕を上下に小さく振って始まります。 やや重厚な感じのする開始、指揮者の意向によって今回は従来からのブライトコプフ版による演奏とのこと。 版のことは全くの無知ですが、オーソドックな響きを丁寧に重ねつつ、時にぐいっと力を込めて進めてゆく感じがします。 船曳さん、両足をしっかりと開いて立ち、下半身は不動の姿勢。 堅牢な構築物を見るような想いのする音楽が流れてゆきます。 オケも弦と管の響きがよく混ざり合って落ち着きのある音色で統一。 船曳さんが押さえ込むように振って全奏とすると、オケもまた響きを発散させるのではなく、内側に溜め込むような感じで音量を上げます。 ちょっと遅めのテンポでしょうか、たっぷりとしたオケの各楽器の響きが渾然一体。 そのまま終結まで持っていって、最後もぐいっと力のこもった終始。 後半ちょっと単調に感じた部分もありましたが、堂々とした演奏に、大きく息を吐きました。

第2楽章、キレよくスタート。 タイトなティムパニの打音、よく揃った弦楽アンサンブルによる緻密な響き。 決して冷たくは感じません、かえって熱いくらいでしょう。 ホルンの響きがオケの響きに綺麗に溶けています。 船曳さん、ここでも不動の姿勢で、手の平や甲も使って表情をつけています。 ややタメも作っているようですが、堂々とした演奏ですね。 第1楽章で気付いたのですが、先ほどまで指揮をされていた安野さんも演奏に参加されています。 それもあってか弦のアンサンブルが豊かに響いて歌っていますね。 木管楽器もきちんと決めていて、よく整った演奏。 冒頭の旋律が戻ってきました。 ホール内が熱気でムンムンとしているせいでしょうね、舟をこぐ人もいましたが、タイトなティムパニの打音で目覚めた人もいたようです(自分ではありません)。 ほんと気合入った硬い打音でした。 音楽が駆けていったあと、ゆったりと歌わせ、そしてふわっと消えるようにしてこの楽章を終了。

船曳さんがいったん退場。 拍手とともに合唱団が入場します。 いつもながら切り立った壁のような合唱団の席。 中央上部に男声、それを凹のように囲む女声合唱団。 昨年よりも男声がちょっと少ないのかな。 合唱団が半分ほど入場したところで、コンミスが立ってチューニングを実施します。 いつもよりも大きな音みたい。 人が多いですからね。 合唱団もオケも準備が完了すると、ソリストに続いて船曳さんも入場します。 ソリストは指揮者前の席につき、第3楽章が始まります。

第3楽章、柔らかな木管の音色が素敵です。 ゆったりと歌い、弦の響きもしっとりとした感じ。 ゆっくりと紡ぐようにして音楽を流してゆきます。 中音弦の旋律が浮かびあがってくるようでもありました。 船曳さん、やはり不動の姿勢のまま上体を大きくくねらせています。 クラリネットの柔らかな響きが綿々と流れ、これがフルートに引き継がれると、クラリネット奏者の方、やっと終わった・・との安堵の表情。 でもまたこの後もクラリネットは奮闘、ホルンのまろやかな響きとも絡んで演奏を盛りたてます。 船曳さんが大きく手を回してピチカート。 上体を大きくくねらせて進めてゆきますが、船曳さんの左足がつま先立ち。 興が乗っている証拠ですね。 感情をたっぷりと込めた演奏としますが、これをまたもとの不動の姿勢に戻し、トランペットがキレ良く割って入ります。 絶妙なタイミング。 そしてまたゆったりと流し、短くフレーズを切ったファンファーレを挟んで、最後もまたゆったりと大きく進めた音楽をそっと静かに置いてこの楽章を終了。

第4楽章、アタッカで突入し、弾けるように勢いのよい開始。 ちょっと雑然とした感じを受けたのは気のせいだったかな、とにかく力強いコントラバスの響きにはまろやかさがあって、ゆったりとした推進力を持って進みます。 ヴィオラの優しい音色、ファゴットも素敵ですね。 金管がまたゆったりと歌っていました。 各楽器の響きを繋いでゆき、ゆったりとと進めてからティムパニのタイトな響き。 バリトンがたっぷりな声量で歌います。 目も覚めるようないい声ですね。 裏で吹く木管も素敵で、オケにもしだいに力が漲ってきたみたい・・と思ってると、合唱団のパワフルな声に圧倒されました。 ソリストの方々も気合の入った歌唱で応えますが、独唱者の全体的なレベルがとても高い印象を持ちました。 船曳さん、合唱団に更に力を込めた、オケも全奏として長くのぼっていったのを、スパっと切ります。

行進曲、軽やかなピッコロが綺麗な響きでした。 テノールは艶のある声で歌います。 ちょっと甘い響きもしたかな。 トランペットの軽やかな響きに導かれ、次第にオケにも熱気に満ちてきたようです。 タイトなホルン、弦楽アンサンブルの動きを見ていても気迫が篭っているみたい。 温めていたエンジンを吹き上がらせるようにオーケストラをドライブする船曳さん。 合唱団のパワフルな声に負けないトランペットの響きは「祝典」という言葉を連想させました。 まろやかな力を感じさせる男声、数の力もあってパワフルに響く女声、それに負けじとまた堂々と歌う男声・・とホールが熱い声・声・声・・・で満たされました。 曖昧さがなく、しかも気持のよく乗った人間の声のパワーに圧倒されます。 オケもたっぷりとした響きのトロンボーン、タイミングのよいティムパニ、そして見るからにも気合の入ったコントラバスの響き、渾然一体となった第九です。 ソリスト4名が立ってフィナーレも近づいてきました。 ソプラノの美しい響き、アルトの落ち着いた声と絡んで綺麗。 休符、徐々にスピードを上げ、力を込めてタテのりのリズムで力を込める船曳さん。 高らかに歌いあげる合唱、それを受けて堂々と進めるオケ、先が赤くて細いマレットで畳みけるティムパニの強打とともに力強い終結として全曲を熱く纏めました。

昨年、そして1年空けたその前年、今回で3回目の天理の第九となりましたが、いつもどおり各声部がとてもしっかりとしていて、掛け合い、響きあう合唱がじつに感動的。 CDやDVDでは決して得ることが出来ない迫力はもちろんのこと、いっしょに歌いたくなるような共感を持ち、そして聴いたあとの清々しさもまた1年を締めくくるのに相応しい素晴らしい第九でした。 今年もまた熱い感動を覚えました。
アンコールとして「ふるさと」をホールの全員で合唱し、光る棒を振って歌う「蛍の光」。 恒例の年越し行事の一つになった感じですね。 そして今年もまた駅前のイルミネーションがとても綺麗で、熱い音楽に心が満たされた気持ちのいい演奏会、その余韻を楽しみながら家路につくことができました。 ありがとうございました。