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大阪大学交響楽団 第90回記念定期演奏会

しなやかに演じきった上質な演奏戻る


大阪大学交響楽団 第90回記念定期演奏会
2008年1月26日(土) 19:00 ザ・シンフォニーホール

ドヴォルザーク: 序曲「謝肉祭」 op.92
フォーレ: 組曲「マスクとベルガマスク」
サン=サーンス: 交響曲第3番ハ短調「オルガン付き」

オルガン: 高橋聖子

指揮: 籾山和明


籾山和明さんのリードのもと、いずれの演奏もスマートでお洒落な演奏でした。 サン=サーンスのオルガン交響曲では、さらに熱気を伴ってしなっていましたね。 圧倒的なパワーで押し切るのではなく、華やかさを散りばめて、しなやかに演じきった上質な演奏に酔いました。

シンフォニーホールは超満員。 開演30分前に到着したのに、座席を引き換えたら、なんと補助席で、しかも1階席後方で後ろから3列目。 1階の後方には立ち見の方も鈴なりとなり、開演が定刻よりも15分ちょっと遅れるというハプニングも。 立ち見はオケ関係者でしょうね、若い人が多くて熱気が渦巻いていました。

演奏は、そんな熱気ももちろん孕んでいますけれど、スマートで上品な響き、そんな印象のほうが強かったですね。 冒頭のドヴォルザークの序曲「謝肉祭」、コンパクトに振って進める籾山さんの指揮のもと、軽やかで活き活きとした旋律が滑るように流れてゆきました。 しかもどの楽器も柔らかく響きます。 中盤のコンミスのソロも静謐な感じで見事でした。 このあたり、素敵な響きが醸し出されて、ほんと素敵だったなぁ。 そしてフィナーレ、ここでは低音金管楽器の艶のある響きをシャープに畳み掛けてお洒落でカッコよく決めた着地。 うん、と唸りました。

そして中プロのフォーレの組曲「マスクとベルガマスク」、フランス音楽のエスプリが漂うしなやかな演奏は、とても馴染みやすい演奏でもありました。 正直、フランス音楽って苦手なのですけれど、推進力もあって、実に分かりやすくて、すっ〜と身体に入ってくるよう。 ちゃんとツボを抑えているので集中力が途切れないのでしょうね。 これも指揮者の籾山さんによるところ大でしょう。 上体のみをしなやかに使ってコンパクトに振る棒は、素人が見ていてもとても分かりやすい感じがします。 当然、オケもこれにしっかりと応えていて、軽やかな響きを連綿と連ね、お洒落で素敵な演奏として応えていました。 素敵な時間が流れていました。

休憩を挟み、いよいよメインのサン=サーンスのオルガン交響曲。 息を飲むような清楚な序奏に続き、さっと振って入った主題はしなるよう。 そして強弱の響きをフェードさせて進める演奏は、これまでと同じくスマートなのですが、熱気を多く孕んでいます。 そして横に拡がるような上品な響きは最後まで失われません。 丁寧に振って進める籾山さん、クライマックスになってもオルガンとオケの響きを見事に調和。 落ち着いた色彩感による華やかさも散りばめ、祝祭ムードを醸し出します。 力で強引に押し切るようなところは微塵もなく、最後の最後まで手綱をしっかりと保ち、オケをしなやかに歌わせていました。 響きの隙間を綺麗に埋めた演奏は、とても上品で美しいものでした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

寄る年波か、だんだんと夜の演奏会が億劫になっています。 しかし、魅力的なプログラムでもあり、これまで何度か聴かせてもらって、質の高い演奏を届けてくれた阪大オケですからね、重い腰を上げました。 家でゴロゴロしてても何も始まりませんし・・・

いつもよりちょっとだけ余裕を持って家を出て、開演30分前にホールに到着。 ま、このくらいで丁度いいや、と思って座席を引き換えると、なんと補助席。 しかも1階席後方、後ろから3列目のホS-2なんていう席、始めて座ります。 そもそもこのホールの補助席って初体験。 ちょっと硬くて丸いイスで、ちゃんと床にボルトで固定されているのですね。 座席が硬いのは眠気防止にいいかもしれない、と好意的に解釈しました。

開演30分前で既にこのような状態で、3階ギャラリー、ステージ後方のクワイア席にも既に人が入ってます。 そして定刻前、立見席のチケットを持った若者がゾロゾロと入ってきて1階最後方の鉄パイプに若者が鈴なりになりました。 話し声がペチャクチャと騒々しいのですが、定刻を過ぎても始まる気配がありません。 定刻を5分過ぎた頃にようやくアナウンス。 混雑しているので暫くお待ちください、とこと。 そして定刻を10分過ぎた頃、ようやく1階席の左右の扉が係員によって閉じられました。 更にそれから5分が経過してやっと、携帯電話・アラーム付き時計などの注意事項を告げるアナウンスに続いて、まもなく開演と告げられました。

このあと暫くして団員の方が整列入場。 ちょっと緊張の面持ちで、左右の楽屋から出てきて席につきます。 13-13-9-8-6 の通常配置。 最後に静々とコンミスが登場し、チューニングを行って準備が完了しました。 指揮者の籾山さんの登場。 腕を振り、オケをまず立たせてからコンミスと握手、登壇して客席に向かって一礼のあと、きびすを返して1曲目が始まります。

ドヴォルザークの序曲「謝肉祭」、コンパクトに振って進める籾山さんの指揮のもと、軽やかで活き活きとした旋律が滑るように流れてゆきました。 しかもどの楽器も柔らかく響きます。 中盤のコンミスのソロも静謐な感じで見事でした。 このあたり、素敵な響きが醸し出されて、ほんと素敵だったなぁ。 そしてフィナーレ、ここでは低音金管楽器の艶のある響きをシャープに畳み掛けてお洒落でカッコよく決めた着地。 うん、と唸りました。

籾山さん、目の前で指揮棒を小さく勢い良く振ってキレの良い立ち上がりです。 スマートな音楽が流れてゆきます。 最初は場所のせいかな、と思ったのですが、低弦がゴリゴリと響いてこなくて、軽やかな感じ。 トランペットも軽快、オーボエも清楚、そして何より弦楽アンサンブルが力を入れても滑るようです。 コールアングレかな、しっとりとした響きですし、クラリネットも柔らかくて、見事に角の取れた演奏が続きます。 巧い。
そしてコンミスのソロ、これまた静謐な感じの綺麗な響き。 落ち着いた演奏はしっとりとしてて、その柔らかな響きにちょっと息を飲むほどでした。
素早くこれを切り、元の主題に戻した籾山さん。 小気味良く進め、丁寧に強弱を付け、響きを重ねて勢いづかせます。 軽快なトランペット、打楽器も柔らかな上品な響きです。 コンパクトに纏めていてもしっかりとした音量を持っていて、更にトロンボーンとチューバが艶のある響きをシャープに畳みかけ、お洒落でカッコ良く着地を決めて全曲をまとめました。
籾山さんのチェコ・スロヴァキアでズデニック・コシュラーさんにも師事されたとのこと。 なるほどと納得したしだいです。

いったん全員が退場、と思っていたら、ティムパニ奏者の方が一人残ってティムパニを組み替えて入念なチューニングをやっていました。 ようやく調整が出来たのでしょうね、いったん楽屋に下がってステージに誰も居なくなると、すぐに団員の方が出てこられました。 今度は 10-10-8-9-5 の編成。 ちょっと小ぶりです。 今度はコンマスが登場。 チューニングを行って準備完了です。 籾山さんが出てこられると、オケもさっと立って今度は指揮者をお出迎え。 さぁ、始まります。

フォーレの組曲「マスクとベルガマスク」、フランス音楽のエスプリが漂うしなやかな演奏は、とても馴染みやすい演奏でもありました。 正直、フランス音楽って苦手なのですけれど、推進力もあって、実に分かりやすくて、すっ〜と身体に入ってくるよう。 ちゃんとツボを抑えているので集中力が途切れないのでしょうね。 これも指揮者の籾山さんによるところ大でしょう。 上体のみをしなやかに使ってコンパクトに振る棒は、素人が見ていてもとても分かりやすい感じがします。 当然、オケもこれにしっかりと応えていて、軽やかな響きを連綿と連ね、お洒落で素敵な演奏として応えていました。 素敵な時間が流れていました。

「序曲」、上体をかがめた籾山さん、小さく振って軽やかな弦のアンサンブルを引き出します。 中音弦の柔らかな響きが素敵です。 管楽器もまたなんと柔らかな響きなのでしょう。 オケ全体が柔らかな響きで纏まっていて、エスプリを感じます。 ファゴット、オーボエもチャーミング。 しなやかな高音弦、暖かな弾力を感じさせるコントラバスを楽しんでから、最後もティムパニが柔らかな打音を響かせて終わりました。

「メヌエット」、クラリネットの柔らかな旋律にファゴットが長閑に絡んで素敵。 しなやかな弦楽アンサンブルとも相俟って、明るく暖かな響きが心地良いですね。 トランペットとホルンも暖かな響きを聞かせると、弦が軽やかな旋律で応えます。 籾山さん、上体だけを使って、丁寧に進めていて、なんだかとても分かりやすそうな感じ。 オケもそれにちゃんとつけて、柔らかな響きで終わります。

「ガボット」、張りのあるティムパニ、軽やかで弾力のある響きで始まります。 ヴァイオリンの軽快な旋律、木管に引き継がれ、またヴァイオリンに。 上品な音楽ですが、ちゃんと覇気もあって聴きかせ上手。 ゆったりとした部分になっても、先ほどまでの旋律をチャーミングに顔を覗かせもするお洒落な演奏です。 そしてその旋律が今度は勢いをつけてもどってきますが、ここもまたしなやかですねぇ。 きちんとして纏まりの良さ、皆さんほんと巧い。

「パストラル」、しっとりと美しいヴァイオリンのアンサンブル、中音弦も柔らかく絡みます。 ハープがこれまた柔らかで美しい響き。 ゆらめくように、クラリネット、フルート、ホルンも顔を覗かせつつ進みます。 響きと響きの隙間を美しい響きで埋めて丁寧に繋いでゆく、籾山さんとオーケストラに聞き惚れました。 そして最後、柔らかなティムパニのトレモロ。 あたたかな空気に包まれたみたい。 柔らかな響きを3度繰り返し、左手首をそっと回して止めました。 ホール内に素敵な時間が流れていました。

20分間の休憩、超満員で少々酸欠気味でしょうか。 素晴らしい演奏に、演奏中は集中していますが、休憩になって少々眠気を催してきました。 アンケートを書きながら演奏を思い返したりして開演を待ちます。

定刻、マイクを持った学生さんが一人で登場。 緊張の面持ちです。 満員によって開演が遅れたことのお詫びでしたが、その後すぐに「開演まで暫くお待ちください」と続けて引っ込んだ間合いがちょっと唐突な感じがして、客席の学生たちから「アレ何や」ってな感じでウケていましたね。 学生らしい真面目さと、何でも笑いにしてしまう学生らしさを久しぶりに味わった感じ。 挨拶した学生さんに申し訳なかったけど、つられて少々笑ってしまいました。

整列入場が始まりました。 今度は 12-12-10-11-6 の編成で席につきます。 ピアノには先ほどまでオーボエとヴァイオリンを担当していた女子学生さんが着き、クワイア席上段のオルガンにも高橋聖子(kiyokoさん)さんが着きました。 また別のコンミスが盛大な拍手を受けて登場。 オルガンの響きでチューニングを行います。 さて準備完了。 籾山さんが登場するとオケも立ってお出迎え。 指揮者とコンミスが握手をし、いよいよメイン・プログラムが始まります。

サン=サーンスのオルガン交響曲。 息を飲むような清楚な序奏に続き、さっと振って入った主題はしなるよう。 そして強弱の響きをフェードさせて進める演奏は、これまでと同じくスマートなのですが、熱気を多く孕んでいます。 そして横に拡がるような上品な響きは最後まで失われません。 丁寧に振って進める籾山さん、クライマックスになってもオルガンとオケの響きを見事に調和。 落ち着いた色彩感による華やかさも散りばめ、祝祭ムードを醸し出します。 力で強引に押し切るようなところは微塵もなく、最後の最後まで手綱をしっかりと保ち、オケをしなやかに歌わせていました。 響きの隙間を綺麗に埋めた演奏は、とても上品で美しいものでした。

第1楽章第1部、籾山さん、首を曲げてヴァイオリンを見ながら柔らかく振りますと、清楚な響きが流れます。 凜としたオーボエ、やわらかなフルート、丁寧にピチカートを絡ませた序奏は息を飲むほど。 しかしこれをさっと切り上げ、引き締まった響きで主題を呈示。 推進力のある響きがしなるようです。 籾山さん、強弱の響きをフェードさせて進めていて、これまでと同じくスマートな演奏なのですが、熱気を多く孕んでいます。 金管はカラフルな感じですが、落ち着いた響きで統一。 ほんとよく纏まっていますね。 響きの角が綺麗に取れているので、筋肉質でパワフルな感じじゃないけれど、存在感のある演奏が続きます。 籾山さん、左手の拳で力を入れてますが、やはりしなやかで弾力ある響きが返ってきます。 トランペットもカラフルですが控えめに決めていました。

第2部、しっとりしたピチカート、ちょっとテンポは遅めかしら、ゆったりとピチカートを回して止めて、オルガンが静かに入ってきました。 清楚なアンサンブルと調和しつつも存在感を増すオルガンの響き。 弦とオルガンが響きあって美しく染み入るような感じです。 慎重に管楽器が入ります。 小さく振って集中力を高める籾山さん。 美しく柔らかなオルガンの響き、オケも落ち着いた音色で曲を進めます。 そして気持ちが一つになった音楽に心洗われるようですね。 どんどんと惹き込まれてゆきました。 最後は暖かな中音弦、オルガンとヴァイオリンが絡んで歌いまわしたあと、籾山さん、目の前でそっと腕を回し、余韻を残すような感じで止めました。

第2楽章第1部、ちょっと前屈みで鋭く振って覇気のある響きにも艶が感じられます。 決して声高にならず、コンパクトで左右に拡散するような響きが小気味良くもあります。 打楽器もまたまろやかな響き。 力に任せた無愛想な響きがストレートに伝わってくることなど皆無。 よくこなれた響きが回り込んでくるのです。 シンバルだってそんな感じ。 主題を戻します。 ヴァイオリンなどは、弦に弓を押し付けるような感じかしら。 弾き飛ばすなんてことなく、粘り気のある響きがしなるような感じなのです。 チューバ、トランペット、甘い響きで盛り上げたあと、しとやかな弦のアンサンブルで終結します。

第2部、ふっと息をついで、鋭く振った籾山さんに合わせてオルガンが鳴り響きます。 明るい響きが綺麗。 これまでと同じく傍若無人に割って入ってくるような感じではありません。 オルガンの響き、3度目は音量をちょっと大きくし、ピアノが瑞々しい響きで引継ぎます。 華やかで盛り上がってはいますが、ここでも響きの隙間を綺麗に埋めて、しっとりとして落ち着きがあります。 そう堂々として落ち着いているのですね。 声高に叫ばなくても迫力も華麗さもきちんと出ています。 ちょっと静かになり、木管に旋律が回ったあとから次第にまたゆったりと力を増してゆきます。 シンバルが打ち鳴らされてスピードがアップ。 籾山さんの腕は軽やかで悠然とした感じのまま、煽ったりしません。 オルガンはここでもオケにきちんと寄り添っていて、しなやかな力を感じさせるコーダとなります。 ティムパニが弾力を持って打ち、全オーケストラが一体となったフィナーレを形成して全曲を閉じました。

パンフレットには、決して深遠な内容を持った音楽とは言えぬ・・と書かれてありますが、だからといって劇的、刺激的な演奏とはきちんと一線を画した演奏は、上品で美しいものでした。
また第90回の記念すべき定期演奏会に相応しく、落ち着いた色彩感による華やかさも散りばめられていて、祝祭ムードも醸し出されていたと思います。 とにかく素晴らしい演奏に客席からも熱い拍手が鳴り止みませんでした。
立見席で最後まで聴いておられたオケ関係者の方も含め、皆さんお疲れさまでした。