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吹田市交響楽団 第64回定期演奏会

遅めのテンポが支配した素晴らしいチャイ5戻る


吹田市交響楽団 第64回定期演奏会
2008年2月2日(土) 18:00 吹田市文化会館メイシアター・大ホール

グリンカ: 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2番ハ短調op.18
チャイコフスキー: 交響曲第5番ホ短調op.64 (*)

(アンコール)チャイコフスキー: バレエ「眠りの森の美女」より「ワルツ」(*)

独奏: 石田 綾

指揮: 米山 信、新谷 武(*)


遅いテンポでたっぷりとしたチャイコフスキーの交響曲第5番、スキッと引き締まった盛り上がりの対比も見事。 とても面白く聴けて大満足でした。

今回の演奏会は、何といってもチャイコフスキーの交響曲第5番。 でも正直言って、演奏会が始まる前までは、昨年末から3度目の実演で食傷気味だったし、勢い付けて盛り上げるだけの演奏なら願い下げやな・・などと偉そうなことを思っていたのですが、指揮者の新谷さんの解釈はとても面白くて楽しませていただきました。

何より遅めのテンポが全体を支配していて、大きくたっぷりと歌わせる。 オケもこれに応えて、緩むことなくすっきりとしたサウンドで流麗。 木管楽器が、弦の響きの合間から透けて見えてきたりもして、こんなフレーズがあるのか、などの発見もありました。 幾度となくやってくる盛り上がりも要所のみ引き締まった盛り上げ。 金管楽器が一つになった響きのなかで、トランペットの艶ののった響きがすっと届く。 迫力はあっても、いたずらに騒がない演奏に唸りました。 毎楽章わくわくしっぱなし、良い意味で期待を裏切られて大満足でした。

なおこれに先立って演奏された、米山さん指揮によるグリンカの「ルスランとリュドミラ」序曲は、中音弦の頑張りが魅力的でしたけれど、ちょっと雑然とした感じもときにあって・・・というのも・・・ライナー指揮シカゴ交響楽団で刷り込まれているので、すみません、違うアプローチとは分かっていながらも、もうちょっとこなれた演奏にして欲しかったというのが実感。

違うアプローチといえば、石田綾さんをソリストに立てたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番もそうでした。 柔らかなタッチのピアノは室内楽風だったでしょうか、流れゆく演奏はバイロン・ジャニスの強靭な演奏で刷り込まれている自分にとっては少々物足りなさを感じ、それが最後まで拭えませんでした。 すみません。 米山さん、幾度となく精力的に振ってオケを引き締めていましたけれど、音量が大きくなるとかえってピアノのスケール感が小さくも感じられて、ラフマニノフは難しいなぁ、などと思ってみたりもしていました。

それもこれもチャイコフスキーにかけた時間との差かもしれませんね。 個人的にはチャイコフスキーを面白く聴けて大満足の演奏会でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

今年初めて、休日出勤してからの演奏会への移動となりました。
場所は吹田ですから、勤務先を5時20分頃に出れば充分ですが・・・小雨が降っています。 そう朝に聞いた天気予報は夕方から崩れるとのことでした。 傘は面倒だし、差すほどでもないと判断し、駅への道を急いだら、予定よりも早く到着しちゃいました。 電車を1本やりすごし、直通電車に乗り込み、開演20分前に吹田駅に着き、ここからも小走りでホールに駆け込みました。

雨なのでお客さん少ないかなぁ〜と思っていましたが、意外といっては失礼ですが、最終的には7〜8割の入りではなかったでしょうか。 2階席も7割は入っていたようでしたけど、着いたときにはまだ余裕がありました。 いつもの中央通路後ろの足元の広い席、そ-31を確保。

通路の前にはボーイスカウトの一団が・・・よく見るとカブスカウトの子供たちが一群を成していて、それを引率されている方々でした。 ボーイスカウトの制服を着てクラシック音楽の鑑賞、ちょっと違和感を持ったのは偏見でしょうね。

定刻、ステージが照明で照らされて整列入場が始まります。 12-11-9-8-7 でしょうか、通常配置です。 コンマスが立ち上がり、チューニングを実施して準備が完了します。 このオケの音楽監督の米山さんがちょっと俯き加減でゆったりと登場。 指揮台にのぼって客席に向かって一礼、これから始まります。

グリンカの「ルスランとリュドミラ」序曲、中音弦の頑張りが魅力的でしたけれど、ちょっと雑然とした感じもときにあって・・・というのも・・・ライナー指揮シカゴ交響楽団で刷り込まれているので、すみません、違うアプローチとは分かっていながらも、もうちょっとこなれた演奏にして欲しかったというのが実感でした。

米山さん、いつものように両手を同じように軽く振って弾力ある響きを導き、軽やかに駆け出します。 響きに含みがあってまろやかな響きではありますが、なんとなくオケ全体が雑然とした感じもしました。 この曲、ライナー/シカゴ響による筋肉質の演奏で刷り込まれてますのでハードルは高いのですが・・・それとは異なるアプローチだと頭で分かっていても、すみません、弦と管の繋がりとか、全体にこなれていないように思えてしまいました。 でも中音弦の頑張りは見事で、とくに暖徐部分のチェロの旋律にコトラバスのピチカートが柔らかく絡んでいたのは素敵でした。 米山さん、いつもよりも力を入れて指揮されているようですね。 最後も両腕を上下に振って力を込め、オケを纏めてぐいっと力を入れた着地を決めていました。

ステージは暗転、ヴァイオリン奏者の方が立ち上がって自分達で椅子を後方に動かします。 演奏されていたオケ団員の方も交えてピアノを運んできます。 手作りの演奏会の雰囲気がいいですね。 この間に管楽器奏者の方が何人か入って来ました。 ピアノをセットすると椅子を並べなおし、それぞれが席につくと、ステージ暗転のままコンマスが立ってピアノで音を確認してチューニングを開始。 ようやくステージが明るくなりました。 オケの弦楽器の編成は先と同じみたいですね。 準備が整うと、淡い小豆色? 落ち着いた色合いのドレスに身を包んだ石田綾さんが米山さんを引き連れて登場。 さぁ始まります。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、柔らかなタッチのピアノは室内楽風だったでしょうか、流れゆく演奏はバイロン・ジャニスの強靭な演奏で刷り込まれている自分にとっては少々物足りなさを感じ、それが最後まで拭えませんでした。 すみません。 米山さん、幾度となく精力的に振ってオケを引き締めていましたけれど、音量が大きくなるとかえってピアノのスケール感が小さくも感じられて、ラフマニノフは難しいなぁ、などと思ってみたりもしていました。

第1楽章、柔らかなタッチから次第に強靭になるピアノ、それを受けたオケの深い響き。 コントラバスのピチカートがたっぷりと響いてイイ感じです。 ピアノはちょっと線が細いのかな、柔らかく穏健な感じで弾き進めます。 オケが時にパワフルに鳴るからでしょうか、ピアノももう少し踏み込んで欲しいなぁ、なんて思ってみたり・・・これはバイロン・ジャニスによる刷り込みのせいでしょう。 石田さん、軽やかで綺麗な響きで更に進めます。 経歴を見ると、室内楽などで活躍されているとのこと。 なるほどね。 ところで米山さん、ピアノにしっかりと付けて伴奏していますが、時にリズムをつけて精力的にオケを引っ張って粘り気も充分。 うねるようでもありましたが、ピアノは終始端正だったので、かえってピアノとのスケール感の違いを浮き上がらせているように感じたりもしました。 そして終結部もまた重量感のあるオケの響きで押し切ってこの楽章を終了。

第2楽章、陰鬱としたオケの響きが出て、柔らかなタッチでピアノが絡みます。 フルートやクラリネットと絡みも端正で淡々と・・なんだか淡白な感じのピアノの演奏ですね。 ヴァイオリンの響きがしっとりとしていて、とても素敵。 だから遠慮してないでもうちょっと想い入れを深くして欲しいなぁ、などと思ってみたり・・でもラフマニノフは難しいですからね。 さて中盤にかけてオケの響きもイマイチこなれていないような感じに思えましたが、すると米山さん、精力的に振ってオケを纏めて盛り上げ、ピアノのソロに繋ぎます。 しっとりとした響きのピアノソロ。 そしてこのあとヴァイオリンがまた伸びやかに歌って引き継ぎますと、石田さんの柔らかで軽やかなタッチのピアノが最後までそのままで、静かにそっとこの楽章を終えました。

第3楽章、引き締まって弾力あるオケの響き、中低弦の押し出しの強さを感じます。 ピアノが柔らかなタッチで流れるように弾きますが、やはり軽く力を込めているけれど、どことなく室内楽風。 オケの太い響きとは対照的なのですが、この場合スケール感にギャップが感じられてしまうのが個人的に好みではありません。 すみません。 それでも後半になるにしたがってピアノにも力が入ってきました。 でも楽器を存分に鳴らしてオケと対峙するのではなく、オケに合わせているような感じかな。 また米山さんも、ピアノをよく見ては併せています。 両者は師弟関係にあるようですから、石田さんが遠慮されているのかな、なんて余計なことを思ってみたり。 そうこうするうちにフィナーレ、米山さんが力を込めてオケをたっぷりと鳴らし、石田さんが丁寧で端正なピアノ演奏を最後まで変えることなく、弾力のあるたっぷりとしたオケの響きが着地を決めて全曲を閉じました。

15分間の休憩。 ラフマニノフの演奏の最後のころに客席を見たら・・・2階席の入り口のところに立って聴いてらっしゃる方が大勢いらっしゃいました。 このオケ、いつもいい演奏をしているのにお客さんが少なくて・・・ちょっと残念に思っていましたけれど、雨も降っているのにこのお客さんとは、驚きました。 プログラムによるのでしょうか。

とにかく休憩時間は席でゆっくりとすごしました。 定刻となり、団員の方が整列入場して席につきます。 弦楽器の編成はこれまでと同じでしょうか 12-11-9-8-7 の通常配置。 コンマスによるチューニングを行って準備が完了すると新谷さんがにこやかに登場。 まずコンマスのところに行ってオケを立たせ、自分は指揮台より前の客席側に出て深々と礼をし、登壇しました。 さぁ始まります。

チャイコフスキーの交響曲第5番、とても面白く聴けて大満足でした。 何より遅めのテンポが全体を支配していて、大きくたっぷりと歌わせる。 オケもこれに応えて、緩むことなくすっきりとしたサウンドで流麗。 木管楽器が、弦の響きの合間から透けて見えてきたりもして、こんなフレーズがあるのか、などの発見もありました。 幾度となくやってくる盛り上がりも要所のみ引き締まった盛り上げ。 金管楽器が一つになった響きのなかで、トランペットの艶ののった響きがすっと届く。 迫力はあっても、いたずらに騒がない演奏に唸りました。 毎楽章わくわくしっぱなし。 こちらは、良い意味で期待を裏切られました。

第1楽章、指揮棒を持たない腕を柔らかに振ると、ゆたっりとしたテンポでよくブレンドされた響きが流れます。 深い音楽ですが、息づいてもいます。 指揮棒を持っていない、と思っていたら左手で握ってらっしゃいました。 序奏をすっーと止め、指揮棒を右手で持ち、弦の歩みから主部に移りますが、テンポは遅いまま。 ゆったりと大きく抑揚をつけ、しなるようでもあります。 これは面白いですね。 スローテンポがどこまで続くか、楽しみになってきました。 オケも新谷さんについて、たっぷりとした演奏ですが、キリッと締まっています。 だから木管楽器の響きが透けて見えるようです。 これも面白い。 さぁあて、音量を増した最初のクライマックス。 タイトな響きがしっかりと制御されています。 これまた見事。 騒々しくなんかありません。 ここでも粘り気を感じ、大きく歌うようでもありましたので、全体の延長でしょう。 そしてまたもや遅めのテンポでたっぷりとした音楽を続けます。 同じように次のピークも越え、そして再現部のクライマックス。 新谷さん、ここぞとばかりぐいぐいっと盛り上げ、タイトで劇的な音楽とします。 しかし、ここも野放図にならないのが素晴らしいところ。 カッコ良い。 最後はファゴットと低弦の呻き声のような響きとしてこの楽章を終了しましたが、素晴らしい演奏に感動しました。

第2楽章、中低弦の深い響き、じっくりとなぞるようで、ここでも遅めのテンポ。 ホルンのソロはちょっとヨロめきましたが端正です。 クラリネットやオーボエなども凜としてますが、これらもどこか鄙びたような佇まい。 落ち着いてゆっくりと進みます。 低弦の深い響き、チェロの旋律もいい感じ。 遠い日を思い出すようにしみじみとした雰囲気が伝わってきます。 たっぷりとしたピチカートから主題が回想され、次第に音量を増します。 粘りつくような盛り上がり。 トランペットは艶のある響き、でも金管全体は引き締まっています。 大きなうねりをもって進み、そして今度は劇的にピークを形成。 チューバ、トロンボーンのタイトな響きがカッコ良く、ここでも金管楽器群は磐石の響きでした。 それも収まるとまたもや遅いテンポ。 柔らかな弦とクラリネットで静かに終えて、これまた素晴らしい終結でした。

第3楽章、新谷さん、汗を拭ってからの開始、ハナ息がちょっと聞こえたでしょうか。 爽やかな旋律が流れます。 ここでも巧く抑揚をつけてますね。 木管の暖かな響きに、ホルンがミュートをかけた響きが顔を覗かせて快活です。 弦の流麗なワルツ、しっとりとして、しなるようでもあってあります。 やはりここもちょっと遅めのテンポだったかな。 ここでも弦と管がよく呼応しあいながら進み、前半の爽やかなワルツを戻し、明るい気分としてこの楽章を閉じました。

第4楽章、今度はしっかりと聞こえた新谷さんのハナ息、すっきりとした響きながら、それを遅めのテンポでたっぷりとさせた序奏でした。 テンポは遅くとも引き締まったオケの響きが素晴らしいですね。 艶のあるトランペットで軽く盛り上がります。 フレーズの最後により一層艶が滲み出ていたみたい。 うっとり。 ティムパニのロールが深い響きでクレッシェンドしてきました。 スマートな響きの高音弦、リズミカルな低弦で流麗に主題を演奏。 金管は落ち着いた響きで引き締まったファンファーレです。 新谷さん、オケを煽ることなく、じっくりと歩みを進めてゆきます。 そしてティムパニの強打、パワフルな盛り上がりも落ち着いた表情できちんと決めた偽終始。 間合いをちょっと多くとってから、たっぷりとしたオケの響き、ゴージャスでした。 これもまたゆっくりと。 金管楽器が一つになった響き、迫力はあっても、いたずらに騒がない演奏に唸りました。 そしてホルン、ベルアップして壮大なコーダを演出。 たっぷりと盛り上がった音楽、最後は新谷さん、ソフトボールの選手が剛速球を投げ込むように右腕を素早く廻して締め上げて終了。

素晴らしい音楽に、ブラボーも飛び出したました。 後ろのおっちゃんなどカーテンコール時には「ええでぇ」と大阪弁で叫んでいたんじゃないかな。 とにかくそれらに負けないように大きな拍手を贈りました。

正直言って、演奏会が始まる前までは、チャイ5って昨年末から3度目の実演で食傷気味だし、勢い付けて盛り上げるだけの演奏なら願い下げやな・・などと偉そうなことを思っていたのですが、指揮者の新谷さんの解釈はとても面白く、毎楽章わくわくとして楽しませていただきました。
前2曲はちょっと期待を違えた部分もありましたが、皆さん一所懸命で爽やかでした。
何はともあれ、皆さんお疲れさまでした。