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関西学院交響楽団 第110回記念定期演奏会

クールでしかも熱くカッコ良く戻る


関西学院交響楽団 第110回記念定期演奏会
2008年2月11日(祝・月) 17:00 伊丹市文化会館・いたみホール

シベリウス: 交響詩「フィンランディア」 (*)
ドビュッシー: 牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー: 小組曲
ラフマニノフ: 交響曲第2番op.27

指揮: 寺岡清高、渡辺夏希(学生、*)


クールでしかも熱くカッコ良く、関西学院らしいラフマニノフの交響曲第2番に、 満員の会場も熱く渦巻いていました。

今回の演奏会は、やはりラフマニノフの交響曲第2番の熱演でしょう。 熱演といっても、甘美なメロディ満載のこの曲を、理知的でクールに纏めた指揮者の寺岡さん、それを余計な感情移入を廃して真摯に演じきった関学オケの皆さん、この競演による都会的な演奏でした。 終楽章のフィナーレ、ティムパニの強打からぐいぐいと盛り上がってゆき、寺岡さんが瞬時アッチェランドをかけたと思いきや、すぐに締めてタイトで分厚い終結。 終始きちんと制御された巧いオケらしい見事な着地でした。 カッコ良い音楽でした。

これに先立って演奏されたドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」と「小組曲」。 こちらも巧い演奏でした。 透明感の高い弦楽器が軽やかなステップを踏み、管楽器はチャーミングな響きを聴かせます。 暖かさと明るさを持った音楽が滑るように流れてゆく。 ただ、これほど巧いとなると、予定調和みたいでもっと自由度を高く・・なんて思っちゃいました。

そして冒頭は、学生指揮者の渡辺夏希さんの指揮によるシベリウスのフィンランディア。 きりっと引き締まった響きの中に、若々しさが滲み出たような演奏でした。 オケの分奏もよく、整った演奏で指揮者を盛り立てていました。 渡辺さん、冒頭のフレーズの最後、ちょっと巻き込むのように伸ばしたりもして、実に落ち着いた指揮姿。 こちらもカッコ良ったですね。

とにかく満員のホールには若者の熱気が渦巻いていました。 自分の大学時代ってどんなのだったのかな・・などと思ってみたりもした熱い演奏会でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

今回もまた休日出勤してからの演奏会移動。 朝からみっちりと仕事してから、電車に飛び乗りました。 最近は、電車の乗換え時間をネットで調べられるのがとても便利。 予定どおり16時半にJR丹駅に到着し、いたみホールへと向かいました。 ホールロビーには人が少ないものの、なんだか熱気のようなものが漂っていました。 案の定、ホールに入るとすぐに2階席に入りましたが、すでに半分近くの席が埋まってます。 余裕のあった後ろから3列目の 29列14 を確保しましたが、すぐこのあたりも人が押し寄せてきました。 仕事ですっかり呆けてて、卒業公演だということを忘れてました。 人が埋まっているわけですね。

定刻を2分ほどオーバーしましたが整列入場開始。 客席が暗転し、ステージに照明が照らされます。 オケの編成は 14-12-10-10-8 の通常配置。 オケの方は席に着いてゆきますが、客席ではまだ席を探しているお客さんもいらっしゃいます。 コンマスが登場してチューニングを始めると、さすがに客席も落ち着いてきました。 準備完了。 スリムな女性指揮者、渡辺夏希さんがしなやかに歩いて登場しました。 さあ始まります。

シベリウスのフィンランディア。 きりっと引き締まった響きの中に、若々しさが滲み出たような演奏でした。 オケの分奏もよく、整った演奏で指揮者を盛り立てていました。 渡辺さん、冒頭のフレーズの最後、ちょっと巻き込むのように伸ばしたりもして、実に落ち着いた指揮姿。 カッコ良ったですね。

引き締まった響きによる開始。 フレーズの最後をちょっと巻き込むように処理し、落ち着きの中にも若々しさ、良い意味で気負いのようなものを感じました。 木管アンサンブルもよく整っていて、もちろん弦の分奏もしっかりとした音楽ですね。 スピードを上げ、覇気を持って進めます。 ホルンが勇壮に吹き、ゴージャスな感じの盛り上がり。 それを収めると今度はたっぷりとした響きになります。 ファゴットの響きがよかったな。 終始落ち着いて進める渡辺さんですが、すっ〜と力を込めてフィナーレへと向かいます。 低弦、低音金管、打楽器がよく纏まっていて、熱気も孕んでいますが、やはり終始落ち着いた音楽ですね。 最後はたっぷりとさせて丁寧に着地を決めました。

ステージは暗転、全員が退場するとイスや譜面台の片付けが始まります。 これが終わるか終わらないかの状態で整列入場が開始。 大丈夫かな、と見てましたが、問題ありません。 10-10-8-6-4 の編成となって全員集合となりました。 今度はコンミスが立ち上がってチューニングを指示します。 先ほどまで指揮されていた渡辺さんもチェロで演奏に参加されていますね。 準備が整うと、寺岡さんがにこやかに登場。 コンミスと握手しました。 さぁ始まります。

ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。 フルートの好演が光っていました。 そして木管楽器全体がまろやかな響き。 素晴らしいですね。 寺岡さん、指揮棒を使わず、柔らかなオケの音色の中にも精力的な響きを感じさせ、きちんと纏まった巧い演奏でした。

フルート奏者が構えて、いざ始まるその瞬間、子供の声が響いてきて一瞬凍りつきましたが、寺岡さんが期をみて目で合図したのでしょう、フルートの流れるような旋律が心地よくホールを満たしました。 他の木管楽器、そして弦楽器も波打つようです。 寺岡さん、指揮棒を持たず、やわらかに腕を振って曲を進めます。 フルートの端正な響き、クラリネットは暖かだし、オーボエもまろやか、高音弦がうねるように絡んで、中低弦は落ち着いた響きで土台になっている。 巧いオケですねぇ。 躍動的になったヴァイオリンの響き、ホルンの暖かな響きがかぶさって盛り上がります。 ここを越えると今度はしっとりとしたヴァイオリンのソロ。 これにもうっとり。 終始好調なフルートの柔らかな響きにコントラバスのピチカートがそっと絡んだ終結もとても見事でした。

ステージは暗転、管打楽器奏者が出てきて増強されました。 コンミスと弦楽器はそのままです。 チューニングを終えると寺岡さんが出てこられて再開です。

ドビュッシーの「小組曲」。 こちらもまた巧い演奏でしたね。 透明感の高い弦楽器が軽やかなステップを踏み、管楽器がチャーミングな響きを聴かせます。 暖かさと明るさを持った音楽が滑るように流れてゆく。 これほど巧いとなると、予定調和みたいでもっと自由度を高く・・なんて余計なことを思っちゃいましたね。

第1曲「小舟にて」、チャーミングに響くフルート、高音弦のアンサンブルが暖かな響きを聞かせます。 明るくかわいらしい音楽。 低弦が加わって快活になり、シンバルの柔らかな響きがとても素敵でした。 ホルンも健闘してて、あまく太い響きのクラリネットもまた素敵で、魅力満載って感じ。 ここでも指揮棒を持たない寺岡さん、左手で摘むようにして音楽を止めました。

第2曲「行列」、軽く弾むようなステップで始まります。 やわらかな響きのヴァイオリンがとてもいい感じ。 ぐっと盛り上げると、思いのほか大きな音量で驚きましたが、すぐに戻ってまた楽しい音楽。 寺岡さん、丁寧な指揮ぶりでまた盛り上げてゆき、最後は右腕ですくい上げるようにしてフィニッシュ。

第3曲「メヌエット」、クラリネットとオーボエ、しなやかで艶やかな響き。 透明感の高いヴァイオリンが絡みます。 ヴィオラのアンサンブルが素敵に響き、ファゴットの暖かな音色、コールアングレの情緒的な響き、とにかく柔らかな響きが満載でしたね。 そこに力感のあるヴァイリンのアンサンブル、丁寧に抑えて冒頭のフレーズに戻してしなやかな木管アンサンブルで終了しました。

第4曲「バレエ」、小気味良く力が入り、快活に進みます。 ホルンの響きからぐいぐいと力を入れ、キレよく切り返して踊るような音楽。 やわらかな打楽器、すべるような弦楽器がいい感じ。 ぐいっと最初のように快活にすると、ティムパニが軽やかに打ちます。 寺岡さん、盛り上がった音楽を右手ですくいとるようにして止めました。

どこをとっても巧かったですねぇ。 しかしここまで巧いとなると予定調和みたく感じるのは意地悪だったかな・・

さて20分間の休憩。 ステージではまた人が出てきてイスを運び込んでいます。 今度の編成は大きいですものね。 準備が整い、定刻。 綺麗に並んでの整列入場が始まりました。 入場の練習をされているのかな、そんな風にも思える綺麗な行列でした。 16-14-12-10-8 で着席。 コンミスは先のプログラムと同じ方ですね。 スリムで長身なのに髪の毛をアップにしているので余計に細くみえるようです(何を見ていることやら)。 チューニングが終わって寺岡さんが出てこられ、オケを立たせてから中央に進み、一礼。 いよいよメインプロが始まります。

クールでしかも熱くカッコ良く、関西学院らしいラフマニノフの交響曲第2番。 満員の会場も熱く渦巻いていました。 熱演といっても、甘美なメロディ満載のこの曲を、理知的でクールに纏めた指揮者の寺岡さん、それを余計な感情移入を廃して真摯に演じきった関学オケの皆さん、この競演による都会的な演奏でした。 終楽章のフィナーレ、ティムパニの強打からぐいぐいと盛り上がってゆき、寺岡さんが瞬時アッチェランドをかけたと思いきや、すぐに締めてタイトで分厚い終結。 終始きちんと制御された巧いオケらしい見事な着地でした。 カッコ良い音楽でした。

第1楽章、コントラバスの方を向き、ゆっくりと振って紡ぐような低弦の響き、管も絡んで端正でモノクロームな感じのする開始。 丁寧に音楽を紡いでゆき、柔らかな弦の分奏が絡みあい、爽やかな色合いも見えてきました。 頂点をすっと超えるスマートな音楽。 コールアングレ、ソロ・ヴァイオリン、ともに粘り気を持った素晴らしい演奏に耳を奪われました。 ぐいぐいと盛り上げてゆき、それを手刀でスパっと切り落とす寺岡さん。 パワーもあるけど、ほんとスマートで理知的な演奏です。 ここでもまた予定調和的な面も感じましたけれど、不満などあろうはずもありません。 底力を感じさせるコントラバスの響き、両腕をぐいっと振り下ろして止めました。

第2楽章、さっと振ってヴァイオリンが走ります。 ホルンのタイトな響きに深みを感じます。 更に低弦に力がみなぎってますね。 ちょいとテンポが速いかな。 ぐいぐいと進みます。 ティムパニの打音、ちょっとワイルドな感じ。 これが収まってゆったりとした旋律、今度はうねるように進みますけれど、ちょっと外から見ている風で、余計な感情移入を廃しているみたいです。 またホルンが勇壮に入ってきて、畳み掛けるティムパニ、締まった響きの大太鼓、そしてまたたっぷりとした金管で進みます。 しかしスネアはちょっと控えめに打ってきちんと制御された行進曲となりました。 このあとまたぐぃぐぃと盛り上がりますが、引き締まった響きはそのまま。 ちょっと強弱などの対比が欲しい気はしましたが、よく考えられた演奏には違いありません。 たっぷりとしたオケの響きからトロンボーンが厳かな響きがまた素晴らしい。 寺岡さんが左手のひらを出してこの楽章を終了しました。

第3楽章、ヴィオラの方を見て振り始めるとすぐに正面を向きたっぷりとした弦のアンサンブルで満たされます。 クラリネットの柔らかな響き、ファゴットも優しく絡んでサポート。 丁寧に心を込めている? これまでちょっと外から見ているような感じもしましたけれど、ここではちょっと感情も移入されていて深みを感じました。 寺岡さんもまた両腕を大きく使ってたっぷりと振ってらっしゃいます。 弦の響きが折り重なり、ますます熱くすると金管が入ってきて、じわりと頂点。 すっと退いて止まるとタイトなホルン。 これに続くヴァオリンソロの可憐なこと。 しみじみとさせる旋律に、各ソロも歌い綴ってゆきます。 そしてまたしだいに熱気を帯びると、金管。 纏まりの良さというのかな、都会的で洗練された感じですね。 ヴィオラに旋律が戻り、弦楽器全体に波及したあと、そっと静かに着地をしました。 甘美なメロディ満載のこの曲を、理知的でクールに演奏していました。

第4楽章、軽い鼻息とともに引き締まった弦のアンサンブルで走ります。 ホルンとトランペットが一体になり、しだいに力を入れ、弾けるようなパーカッション。 しかし実に丁寧な印象。 寺岡さん、この次の盛り上がりもまたきちんと纏め、大太鼓・シンバルともに控えめ。 きちんと制御しているオケも立派です。 寺岡さん、右手でぐっと力を入れ、スピードを上げますが、やはり落ち着いた響き。 ファゴット、そしてヴィオラの響きのあとから徐々に緊張感が高まってきた感じ。 寺岡さん、集中力を高めた盛り上がりとしてクールな感じ。 パーカッションが入ってまた盛り上がってゆきますが、ここも落ち着きと丁寧さが支配。 アクセントもすっと流してゆきました。 締まった響きによる盛り上がりも落ち着いてますね。 さていよいよフィナーレが近くなってきました。 ティムパニがタイトな響きのロールをし、金管の咆哮、アッチェランドがかかったかしら、ぐぐっと盛り上がったように思いましたが、それをまたぎゅっと手綱を絞り、堂々とした響きとしでタイトな終結。 全曲を纏め上げました。

終始きちんと制御されていて、クールでしかも熱くカッコ良く、いかにも関西学院らしいラフマニノフの交響曲第2番を堪能しました。 若者で満員のホールには熱気が渦巻いていましたね。 これほどまでに打ち込めることができる学生生活があるなんて・・・自分の大学時代ってどんなのだったのかなぁ〜などと思ってみたりもした熱い演奏会でした。